昨年6月の、渋谷の温泉「シエスパ」ガス爆発事件は、U字型になったガス排出管の底の部分に水がたまり、ガスが抜けなくなったことが原因だったという。
洗面所の排水管の悪臭を遮断することが目的のトラップの如く、たまった水がガスの排出を遮っていたのである。
◇ 管詰まりガス逆流、渋谷・温泉爆発から1年 (魚拓)
温泉といっても地面から湧き出しているわけではなく、深く掘削して温まっている地下水をくみ上げる施設なので、同時にくみ上げてしまう天然ガスを確実に排出する必要があったのである。
関東地方南部の地下には「南関東ガス田」があり、「可採埋蔵量が3750億立方メートル」という天然ガスが埋蔵されている。ただし地盤沈下を避けるため採掘は制限されている。 実に残念なことだ。
ところで先日、東シナ海のガス田開発について日中間の合意が成立した。(以下は朝日新聞6月19日の記事より引用)
東シナ海のガス田のうち、白樺(春暁)の開発に日本企業が出資し、楠(断橋)、樫(天外天)翌檜(龍井)などは共同開発のために協議を続けることになった。
これらは日本側が主張する「日中中間線」をまたいでいるので交渉が続いていたのだが、日中の海岸線の中間点を境目とするということは、日本とアメリカの境目はハワイあたりか(笑)もちろん中国側の、「大陸棚」を根拠にした境界の主張にも説得力を感じない。何もない大海原の上に手前味噌な国境線を互いに引いて争って、情けなくないのだろうか?
つーか、中国に盗られるのがイヤならこっちが先に吸い取っちまえばいいじゃねえか?まあ、技術的にも資金的にもそんな簡単な話ではないんだろう。
別に中国共産党政権の肩を持つつもりはないが(それどころか政権崩壊してほしいくらいだw)、中国が長年資本をつぎ込んで開発してきた所に横から割り込んだ、という感じが否めない。
ある「大手石油会社首脳」も、「何もしてこなかった日本が今から対等に参加させてくれでは、虫が良すぎる」と述べたという。
で、肝心の埋蔵量は、白樺が原油換算で6380万バレル、楠が1520万バレル、樫が1260万バレル、翌檜(龍井)は不明。三つ合わせて9160万バレルである。(1バレルは約159リットル)
日本の天然ガス年間需要量(原油換算で20億3000万バレル=3億2277万キロリットル)と比較すると大した埋蔵量でもないね。全部日本に持ってこれるわけでもねえし。
ちなみに、サハリンの天然ガス埋蔵量は、「サハリン1」が41億6000万バレル、「サハリン2」が53億6000万バレルという桁違いの埋蔵量(日本の企業も開発に出資しているらしい)。
「南関東ガス田」の方は、原油換算してみると(参考)、3億9570万7500キロリットル(=立方メートル)、つまり24億8872万バレル。なんと日本の年間需要を越えてしまう。こりゃ、海の底を掘るよりも関東地方の地下のガスをなんとか利用する方法を考えてほしいもんだな。
採算面についても難しいものがある。この事業には「帝国石油」という会社が参入するが、関係筋は「問題は(権益取得で払う)対価と、それに見合う利益が得られるのか」「経済的には難しい」と心配している。
もっとも読売の4年前の記事によると、「東シナ海の日本側海域全体で、石油や天然ガスが、原油換算で5億キロ・リットルも埋蔵されている」らしい。
しかしこの読売の記事も採算性には疑問を投げかけている。なんと、海上の油田基地から陸地までパイプラインを敷設しなければならないという。
「財団法人 天然ガス導入促進センター」によると、日本で生産される天然ガスは国内消費量のわずか4%であり、それ以外は海外からの輸入。
海外のガス田で生産された天然ガスは、マイナス162℃に冷却するプラントによって液化されLNG(液化天然ガス)となり、海を渡って今度は国内のプラントで気化され、家庭や事業所に供給されるのである。海上の基地で、あるいは輸送用のタンカーで、液化するのは不可能というか現実的じゃないんだろうね。
一方中国は、すでに、大陸に向けたパイプラインを敷設中であり、関係筋は「日本が権益を取得しても結局、中国に売るしかない。向こうの言い値になるのでは」と指摘する。
結局、大した資源でもなく、採算を取るのも難しいものを、「日本の貴重な資源だ」とか「中国の盗掘を許すな」とか、騒いでたわけか。捕鯨の問題と同じだな。
つーか中国も大した埋蔵量じゃなかったんで頭を抱えてるんじゃねえかな。もしかして中国が、赤字になるのを見越して、損害を少なくするために日本を引っ張り込んだとか?あるいは密約があったとか?誘いに乗った会社が潰れるだけならいいけどさ。
つーか化石燃料を使わない方法をもっと考えてほしいなあ。天然ガスだって無限の資源じゃないんだし、二酸化炭素を出さないわけじゃないんだし。
◇ 東シナ海ガス田、共同開発2カ所で 日中合意を発表 (魚拓)
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◇ 東シナ海 天然ガス田 境界線問題 採算性 事業化は多難 (魚拓)
◇ ガス田合意で批判集中 中国の武大偉次官が「釈明会見」 (魚拓)
付録:天然ガスの原油換算
原油の発熱量は1キロリットルあたり38.2GJ
天然ガスの発熱量は1000立方メートルあたり40.9GJ
(GJはグッジョブじゃなくてキロジュールだよ)
単純計算してみると、
40.9÷38.2≒1.07
つまり天然ガスを1000立方メートル使うと、原油を約1.07キロリットル燃やしたことになる・・・んじゃなくて、なんか係数があるらしく、
通常は1000万KJ(10GJ)のエネルギー使用は原油0.258キロリットルに相当したと見なして計算する。
1GJだと原油0.0258キロリットルになる。(参考)
たとえば天然ガスを1000立方メートル使ったときは、
40.9×0.0258≒1.055
つまり原油を約1.055キロリットル燃やしたことになる。
2008年06月28日
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