「横浜市内のマンション建設をめぐり最高裁は6月、『民間の検査機関が実施した建築確認は自治体の監督下で行われており、自治体の事務である』と判断した。これとは別の裁判で横浜地裁は11月30日、『検査機関に故意や過失があれば、自治体も損害賠償の責任を負う』との見解を示した。」
公的機関が検査していたことを、ロクでもない「民間検査機関」に代行させてたんだから、自治体が責任を負うのは当然だと思う。
補償、支援策どうなる マンション耐震強度偽装
2005年12月04日10時28分
やっと手に入れた住宅に降りかかってきた突然の危機。耐震強度の偽装問題は、欠陥を抱えた建物が毎日のように見つかり、居住者の不安は募るばかりだ。住宅ローンを抱えながら、退去を迫られる居住者にとって補償や支援策はどうなっているのか、被害はどこまで広がっているのか。 ●契約解除、返金 業者で対応まちまち 「住宅ローンの返済に加え、すでに民間住宅を借りて家賃を負担している」「睡眠薬を飲まないと眠れない人や、不安で体調を崩した人が出ている」 3日、東京都新宿区で開かれた、欠陥住宅全国ネット主催の被害者説明相談会で、耐震強度不足が判明した分譲マンションの住人から質問や訴えが相次いだ。 自分の家の耐震強度が偽装されていた場合、どうしたらいいのか。 購入者は瑕疵(かし)担保責任を根拠に契約解除や賠償を建築主に求めることができる。これとは別に、相手に過失があったとして民法の不法行為を理由に、施工、設計業者などに損害賠償を求めることも可能だ。 ただ、建築主や施工、設計会社の資金繰りが厳しい場合、補償を求めても十分もらえない恐れが強い。 今回、問題が指摘されたマンションを建築・施工した業者の対応は分かれている。 完成済みの分譲マンション4棟の建築主シノケン(福岡市)は購入代金を全額返還すると表明している。 7棟の建築主ヒューザーは11月26日、購入者全員の同意が得られた場合、購入価格の106%にあたる金額で買い戻す考えを示した。ただしヒューザーと購入者がともに債務を負う内容で、ヒューザーが経営破綻(はたん)した場合、住民はすでにマンションの所有権を手放しているにもかかわらず、ローンは払い続けなければならない。このため、提案を拒否するマンションの住民組合も出ている。 一方、8棟の施工を手がけた木村建設(熊本県八代市)は東京地裁に破産を申し立てた。 破産管財人は資産を換金し、まず税金や従業員の賃金、退職金を支払い、残りを請求額に応じて債権者に配分する。木村建設の代理人の弁護士によると、負債総額約57億円に対し、把握できた財産は現金5億円程度と不動産など。住民が請求しても配分を得られる見通しは極めて厳しい。 ただ、倒産事件に詳しい弁護士はこう指摘する。「破産管財人が、税金債権を持つ国や、貸金債権を持つ銀行に債権放棄を求め、住民への配当を増やそうと努力する可能性はある」 豊田商事事件やオウム真理教事件では、従業員から徴収した税金を国税当局に返還させたり、国が持つ債権を放棄させたりといった手段が駆使された。 ●自治体責任問える例も とはいえ、こうした努力にも限度がある。そこで、欠陥住宅全国ネットの弁護士らが請求相手とみているのが、民間の検査機関や、マンションがある自治体だ。 二つの判例がその根拠となっている。 横浜市内のマンション建設をめぐり最高裁は6月、「民間の検査機関が実施した建築確認は自治体の監督下で行われており、自治体の事務である」と判断した。これとは別の裁判で横浜地裁は11月30日、「検査機関に故意や過失があれば、自治体も損害賠償の責任を負う」との見解を示した。 実際に訴訟になった場合、焦点になるのは過失があったかどうか。 同ネットは「イーホームズなどの検査機関は建築確認で計算書の偽造を見逃している。自治体の賠償責任も問える可能性がある」とみている。ベテラン民事裁判官も「欠陥だということには争いがなく、チェックすれば発見できたのだから、過失は立証しやすいのではないか」との見方だ。 ただ、裁判は1年以上かかることが多い。同ネット幹事長の吉岡和弘弁護士は「まず住民が連携して要望や交渉を重ねて解決を目指すべきだ」とも話す。 ●公的支援・補助も検討 自治体が使用禁止命令や退去勧告を出す中で、これまでの住宅ローンや解体費用も大きな負担として住民にのしかかりかねない。 本来は、業者と居住者の間で解決するのが一般的だが、今回、国や自治体はさまざまな支援の検討に積極的に乗り出している。被害が拡大しているうえ、「公の事務」(北側国交相)である建築確認で偽装の見逃しが相次ぎ、「住民の支援に公共性が高い」という考え方が政府内で強まっているためだ。 住めなくなってしまった住宅のローンは居住者にとって大きな重荷だ。国交省は、住宅金融公庫による融資の返済期間の延長などを検討している。全国銀行協会も返済期間の一時繰り延べも含めた対応を取ると公表した。 同公庫によると、過去に地震や台風の被災者やリストラに遭った人を対象に返済期限を延長したことはある。ただ、住宅の欠陥を理由に返済が免除されたことはなく、国がこの点にまで踏み込むかどうかが注目されている。 退去した後の建物の撤去費用をだれが負担するのかも課題となる。欠陥住宅関東ネットの谷合周三弁護士によると、自治体が居住者に撤去を命じ、居住者がいったんその費用を立て替えた後、建築主に請求するケースが考えられる。 しかし、国交省は、建築主に最大限の費用を払わせたうえで、居住者が負担せざるをえない分の一部を国が補助する方針で検討している。 税の減免に向けた動きも広がりそうだ。 総務省は2日、使用禁止や退去勧告が出たマンションの居住者が支払う固定資産税と都市計画税は減免することが適当だとする「通知」を各自治体に送った。 川崎市、横浜市、東京都も独自に固定資産税の免除などを決めている。 |