2005年12月18日

元コスタリカ大統領からの忠告

12/17朝日の「私の視点」より、元コスタリカ大統領オスカル・アリアス氏のコラム「間違った安保観は避けよ」より引用。
氏は、日本が「改憲」すれば軍事力の増強につながる(そりゃ当然だな)ので発展途上国への援助が疎かになり、「我が国のような途上国」は「痛めつけられる」と主張し、近年日本のODAは減り続ける一方だが「ここ数年間、自衛隊には対外援助予算の4倍以上が割かれてきた」ことを指摘する。肝心なのは以下。

もし日本が、旧連合軍起草の現憲法を直したいのなら、軍事上の制約を緩めるのではなく、むしろ規制を強化し自衛隊が膨張し続けないように改めるべきである。
軍事費に憲法の歯止めが無いとき、どんな事態を招くか。政府がひとたび軍国主義の虫を飲み込むや、軍備への欲望は膨れあがり、国の資源をやせ細らせるだろう。
そうした例はラテンアメリカでも見られる。飢えや教育の欠如、病気もはびこる中、この地域の諸政府は軍備に年間260億ドルものカネをつぎ込んできたのだ。
チリでは昨年、なぜ5億ドル近くも投入して2隻の攻撃用潜水艦を買い入れたのか。エクアドルが水陸両面から侵攻してくるとでも思ったのか。
そんなことはないだろう。だが、残念なことに軍というのは抑制がきかなければ、身の程知らずに膨張する。
潜水艦購入に使ったカネで、チリの子供たち1200万人にコンピューターのネットワークを用意してやることができたはずだ。国家のプライドが国家の発展を阻止するものであってはならない。
・・・要するに、
軍隊というものは具体的な安全保障上の危機など関係なく、肥大するときは勝手にどんどん肥大してしまうものであり、憲法九条を改悪すればそれに拍車をかけることになる。もっと有益なお金の使い方もあるだろう・・・
と、コスタリカの元大統領が我々日本人に説いてくれているのである。つーかこんなことは一度軍部のせいで国を滅ぼしてしまった日本人なら骨身に沁みて分かっているはずなんだがねえ。
理由などなくとも軍隊というものは勝手に膨張していくものだ、という氏の説明につけ加えれば、
軍備増強を続ける国家は、昔の日本のように「満州は日本の生命線」だの「共産主義の脅威」など、後づけで理由をこしらえて、戦争を始めてしまうものである。今のアメリカも同様。

・・・余談だが、
[AML 4966]によると岡山大学で憲法九条を巡る学生投票が行われ、7割が九条をいじることに反対だったそうである。いい流れが出来つつあるのかもしれないね。
posted by 鷹嘴 at 17:18| Comment(14) | TrackBack(1) | 憲法九条を守ろう! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
長文失礼します

>肥大するときは勝手にどんどん肥大してしまうものであり

それが一番の問題点ですね。
そもそも、日本の欠点は、組織作りまでなあなあでやってしまって、ちゃんと相互に監視・抑止する健全な組織を作るのを苦手としているところにあるのではないかと、私は思います。(まあ、この辺はあくまで私の印象なんですが)
だから癒着構造とかがやたらと出来るんです。
組織の質は構造できまるものであり、その基準作りと軌道に乗るまでの初期管理は峻厳であらねばなりません。
要は、どのくらいの軍事力が適当であるかという基準の算出手法を明確にしつつ、過剰な増大に歯止めをかけるシステムを構築する事が憲法改正論議には不可欠だと思います。
とはいえ、そのシステム作りもさることながら、『適切な軍事力』の算出というのは難しそうです。
もっとも難しいのは『これで行きましょう』と提示されたときに、我々がいかにしてそれを検証するのか、というところですね。
難問山積です。
まあ、どこの国でも悩みどころなんでしょうね。
Posted by 江ノ伝 at 2005年12月18日 22:00
戦争をできない国になるには、日本国民に対してもう一度60年前の出来事について学んでもらわないといけませんね。朝日新聞を含めて、多くのメディアが戦争責任についての特集を避けているのはどうしているでしょうか?戦前・戦中の好戦的な明治憲法帝国主義体制を憎み、そして朝鮮や中国を侵略し、アジア民衆に被害を与え、悔いなければならないという贖罪感情を国民一人一人が改めて認識すべきなのです。
Posted by 右翼討伐人 at 2005年12月19日 00:23
良識派による市民的ニュース総合研究スレ8
http://news18.2ch.net/test/read.cgi/news2/1130298768/
2ちゃんねる右翼と戦っているのですが、軍人恩給の問題点について私ながら考えています。お力を貸して頂けませんか?

ついでに面白い本を見つけました。
『墓標なき島 ある受刑者の戦争』
著者    北川幸一著
http://m-take-web.hp.infoseek.co.jp/hoka4.html
自費出版で出されたそうです。日本人強制連行・労働問題だといえそうですが大変興味をもっております。戦争を考える上で重要な作品だと思いますが、どうでしょうか?

Posted by 右翼討伐人 at 2005年12月19日 00:45
右翼討伐人さん、お久しぶりです。コメントありがとうございます。軍人恩給については私も興味があります。受給の資格に理不尽な面があるようですね。


ところで私事ですが・・・
最近パソコンの調子が悪く、対策を考えております。場合によってはしばらくネットに接続出来なくなるかもしれません。
とりあえず明日の夜、普通に立ち上がればホッとしますが。

ところで、何か不具合(リンク先や、トラックバック元が開かないなど)がありましたら、教えていただけたら幸いです。
Posted by ノンポリ at 2005年12月19日 01:49
>日本が「改憲」すれば軍事力の増強につながる
>(そりゃ当然だな)ので発展途上国への援助が
>疎かになり、「我が国のような途上国」は「痛
>めつけられる」と主張し、近年日本のODAは
>減り続ける一方だが「ここ数年間、自衛隊には
>対外援助予算の4倍以上が割かれてきた」こと>を指摘する。

 改憲が国防費の増額につながるというところに論理的飛躍がある点は置いておきますが、「ここ数年間、自衛隊には対外援助予算の4倍以上が割かれてきた」ことは、国防費を増額するとODA予算が減少するという、ということの根拠にはなりません。そもそも、ここ5年間で減少しているのは、防衛費もODA予算も同じことで、防衛費を増額した(そもそもそのような事実がない)からODAが減らされた、という主張には当たりません。また、ODA支出額上位五カ国の統計を見ても、国防費との割合が4倍を切っている国はありません。それどころか、これといった対外脅威を抱えていないニュージーランドですら、陸海空軍を備えているだけでなく(主にPKOのために運用しています)、国防費はODA予算の3.8倍に達しています。

>もし日本が、旧連合軍起草の現憲法を直したいのなら、
>軍事上の制約を緩めるのではなく、むしろ規制を強化し
>自衛隊が膨張し続けないように改めるべきである。
>軍事費に憲法の歯止めが無いとき、どんな事態を招くか。
>政府がひとたび軍国主義の虫を飲み込むや、軍備への欲望は
>膨れあがり、国の資源をやせ細らせるだろう。

 憲法は、自衛隊の恣意的な運用に対する歯止めにはなりえても、自衛隊の拡張に対する歯止めにはなりえません。憲法には、文面上も、政府解釈上も、「防衛費はGDP比1%」という条文は存在しません。それは、あくまで政治判断によって事実上の規定として存在しているに過ぎず、そのときの為政者の意向によっていくらでも変更が利くものであります。
 また、例え軍人が為政者になったとしても、それが即軍拡につながるかというと、必ずしもそのようなことはありません。例えば、第二次世界大戦中に陸軍大臣として活躍したアイゼンハワーは、大統領に就任後、民主党政権下で膨れ上がった国防費を削減することに努めました。

 オスカル・アリアス氏の主張は、日本が自給自足可能な小国家であれば当てはまるかもしれません。しかし、資源希少国として数々の大国と外交交渉を渡り合わなくてはならず、さらに、大量破壊兵器を背景に交渉を行なう国家との間に外交上の問題を抱えているような日本が、国際社会に対して、カネだけを出し、汗も血も流さないような引っ込み思案の態度を示していては、憲法前文に謳われているような、「国際社会において、名誉ある地位を占め」ることなど不可能なのであります。
Posted by NISSHA at 2005年12月19日 19:18
度々失礼いたします。

上記の「陸軍大臣として活躍したアイゼンハワーは」とあるのは、「陸軍大将、元帥として活躍したアイゼンハワーは」の誤りです。お詫びして訂正いたします。
Posted by NIISSHA at 2005年12月19日 19:53
以前に恩給のことで調べたことがあります。恩給を受け取る資格というのが、いろいろな点で問題があると思います。大きく負傷したり(指一本なくしているなど)死亡したりした場合は無条件でもらえますが、無事に帰ってきてしまうと軍隊に入っていた年数が多くないともらえません。何年必要かというのは、少しややこしい計算をします。日本国内に一年いれば一年ですが、中国に一年いれば二年と計算するとか、階級は何だったかで差があったと思います。はっきり覚えていませんが、こうしたややこしい計算があります。また支給される金額が旧軍隊内部の階級によって相当な違いがあります。戦争被害者を助ける目的で復活していくものですが、靖国神社と同じように、あの戦争を正当化し、かつ賛美する構造が直接、国家の手で残されていることは、私にとってかなり驚きでした。
Posted by oia at 2005年12月20日 03:39
NISSHAさん、いつも丁寧なコメントをありがとうございます。

> そもそも、ここ5年間で減少しているのは、防衛費もODA予算も同じことで、防衛費を増額した(そもそもそのような事実がない)からODAが減らされた、という主張には当たりません。

ご指摘ありがとうございます。もちろん私も、ODAを減額することが悪いことだとは思いません(オスカル・アリアス氏の寄稿は、防衛費は差し置いてODA額は維持すべきと主張するような論調でしたが)
だいたいダム建設など、環境を破壊し住民の生活を脅かす事業に用いられている日本のODAのあり方について、考え直すべきだと思います。

> 憲法は、自衛隊の恣意的な運用に対する歯止めにはなりえても、自衛隊の拡張に対する歯止めにはなりえません。

これもご指摘の通りですね。戦後日本は、なし崩し的に自衛隊を増強してきました。さらにはアメリカと共同で迎撃ミサイルシステムの構築という税金の無駄遣いを始めようとしているのですから。

> 国際社会に対して、カネだけを出し、汗も血も流さないような引っ込み思案の態度を示していては、

湾岸戦争終了後、クウェートは多国籍軍として参加した諸国に対する謝辞の新聞広告を出し、その中に日本が入っていなかったことを嘆く声が高かったと記憶していますが、
むしろ、毅然とした態度でカネすりゃ出さない勇気も必要だと思います。

> 憲法前文に謳われているような、「国際社会において、名誉ある地位を占め」ることなど不可能なのであります。

そもそも自衛隊という軍隊の存在自体が憲法に違反しています。
Posted by ノンポリ at 2005年12月22日 05:55
oiaさん、軍人恩給について教えていただいてありがとうございます。

> また支給される金額が旧軍隊内部の階級によって相当な違いがあります。

全く滑稽なことですね。

> 戦争被害者を助ける目的で復活していくものですが、靖国神社と同じように、あの戦争を正当化し、かつ賛美する構造が直接、国家の手で残されていることは、私にとってかなり驚きでした。

軍人恩給という制度の本質に対する、この重要なご指摘は忘れないようにします。ありがとうございました。
Posted by ノンポリ at 2005年12月22日 06:09
あの・・・・。コスタリカは中米で第三位の軍事力を保有していますけど・・・。
Posted by ぽへぽへ at 2005年12月26日 17:04
ぽへぽへさんへ
こんばんは。フナずしです。
>コスタリカは中米で第三位の軍事力を保有していますけど・・・。

済みませんが根拠となる資料を見せていただけますか?
それから、むしろこちらの方が重要なのですが、
1.「中米」は引用元資料でどこからどこまでを含むのか。
2.資料のデータは西暦何年のものか
3.第一位&第二位の軍事力を持つ国とはそれぞれどことどこなのか
4.対GDP比率何%か

もお伺いしたいですね。
Posted by フナずし at 2005年12月31日 22:30
外務省ホームページでは
1・ぽへぽへさんはわかりませんが自分はメキシコからパナマまでです(西インド諸島は含めません、不明な国が多いからです)
2・2004年となっています
3・メキシコとパナマ(軍隊はないとされていますが)です。軍事費が同じぐらいの国としてはエル・サルバドルとグァテマラがあります。西インド諸島を含めるとキューバもコスタリカより多いです
4・GDP134億ドルに対して軍事費1億ドルだそうですちなみに日本は0・9パーセントほどです
コスタリカは「常設された、組織としての軍隊」を廃止したのであって「防衛力」を持たないわけではないのです法的には警察の一部という扱いです。8000人の警察官がいて、その中の実質軍隊は4000千人だそうです
後、コスタリカはアメリカの保護国下にあるのでそんなに軍隊はいらないのだそうです
というかほとんどの中米諸国は事実上アメリカの保護国です(メキシコのような大国や反米のキューバを除いて)

ちなみに拾ったものですが軍隊を持たないといわれている国の実態ですが
>アイスランド→まるで武力を持たないがNATOに加盟、米軍が駐留。
バチカン・サンマリノ→僅かな武力を有すが軍隊はない。イタリアの軍事保護化にある。
モナコ→軍隊はない。フランスの軍事保護化にある。
リヒテンシュタイン→非武装中立。ただしスイスと緊密な友好関係にある。
コスタリカ・ハイチ→軍隊はない。アメリカの軍事保護化にある。
パナマ→軍隊はないが国家保安隊をもつ。アメリカの軍事保護化にある。
モーリシャス→全方位外交を展開。機動隊・沿岸警備隊をもつ。
ガンビア→人口(130万)に比べれば少数だが、志願制の国軍(800人)をもつ。
キリバス・バヌアツ→非武装中立。太平洋諸国との友好を重視。
ツバル→軍隊はない。西側との強調重視、共産圏とは距離を置く。
ソロモン諸島・サモア→軍隊はない。ただし有事の際は豪州・NZの軍事支援を受ける。
ナウル→軍隊はない。独自の外交を展開。
モルディブ→非同盟中立だが国家保安隊をもつ。

というように、
1「軍隊」という名前を持つ組織が存在しないが、実質同じ役割をする物を持つ
2他の国に国防を代行してもらっている(軍事同盟に加盟している)
3超小国で資源もないので、戦略的価値がない
のうちどれかか複数であったりします
ちなみにナウルは軍隊とかそれどころではなく、
島国なのに航空機も差し押さえられチャーター便で凌いだり、国際電話も不通になったりする始末で、国家として成り立ってません
Posted by 横槍失礼しますが at 2006年03月05日 17:33
日本は、スウェーデンを模範とすればよい。
彼らは、高度な福祉国家であり、他国の不当な干渉を跳ね除け、WWRIIではナチに対するレジスタンスやユダヤ人を保護。小学校では成績をつけない教育、ダイオキシンを出さない焼却施設、国連との協力重視、国連の活動を通じた国際平和維持協力を強力に推進(PKOの他GNIの1%を開発援助に)スウェーデン鋼、ノーベル・ボルボ・エリクソン社の工業力による豊富な外需。
世界第三の音楽大国でもあるのです。

サーブ社の戦闘機の性能は、高度なSTOLと世界第一線級の攻撃力により世界各国に輸出され、国民は象徴としての王家を敬愛している。

中立(自国を他のいかなる体制、組織、思想から一線を画し距離を置くこと)というのは、単に日和見主義とは違うので、見極めが重要である。 この中立を保つためには他国、他の組織等からの不当の圧力を阻害するため、 相当程度の軍事力を保持する必要がある。(非武装中立についてはwikipedia参照のこと)

ちなみに、wikipediaの「中立」「コスタリカ」を参照してもらえばわかることだが、コスタリカの憲法(第147条・121条)では非常時には軍隊を組織する事を認めている。


Posted by qwert at 2006年03月05日 20:50
あのコスタリカは、ロケット砲などを装備した。国民警備隊とか言う民兵まがいの組織があったと思います。それとコスタリカにはアメリカの後ろ盾があり、非常時には軍隊を組織することも認められています。つまりコスタリカは「自分達を守るためとはいえ、人殺しなんて野蛮なことはしないよ。有事の際には周りの国々が自分達の代わりに手を汚してくれるからね」と言っているようなことです。ほかの軍隊を持っていない国は攻め込む価値が無かったり、攻め込む価値のある国は大国が守っていたり、軍隊ではなく民兵組織などがあります
Posted by クルトmk2 at 2006年07月13日 16:06
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