■ 10月31日、航空自衛隊の幕僚長の田母神(たもがみ)俊雄というオッサンが、マンション分譲やホテル経営を手がける「アパグループ」が募集した「真の近現代史観懸賞論文募集」で最優秀賞(賞金300万円)を受賞したことが明らかになった。
この懸賞の「審査委員長」は渡部昇一なんだってさ。なにしろこいつは「南京大虐殺なんて無かった、なぜなら『昭和天皇独白録』にはそんな話は出てこないから」ってほざいた奴だからな。どんな審査だったのか想像するまでもないぜ。つーか航自幕僚長、という大物の投稿だから審査するまでもなく一等賞に決まったんじゃねえか?
受賞した「日本は侵略国家であったのか」という文章は、
「日本は侵略国家ではない」
「日中戦争の被害者は日本だ」
「真珠湾攻撃はアメリカの罠だった」
「蒋介石はアカに操られていた」
「ルーズベルトもアカに操られていた」
「大東亜戦争のおかげでアジアが独立できた」
「東京裁判のマインドコントロールが今でも効いている」
「だから自衛隊の活動は縛られている」
という、今までネトウヨが書き散らしてことをツギハギしただけの代物。「張作霖爆殺事件もコミンテルンの謀略」という主張には驚いたな。最近そういうの流行ってんの?(これもトンデモらしい)
つーか、「・・・侵略の証みたいに言われてきた。」とかいう言い回しって、これが航空自衛隊の最高指揮官の文章かよ?その辺のネトウヨだってもうちょいマシな作文できるぞ。つーかアメリカの影響から抜け出せ、みたいなこと書いてあるから反米コヴァなのかと思ったら、
「日米関係は親子関係のようにあるべきだ」
「子供(日本)がいつまでも親(アメリカ)に頼ってちゃいかん」
と主張する、ありふれたポチでした。ちなみにこのオッサンは、イラク自衛隊派遣差し止め訴訟・名古屋裁判の判決文の中の違憲判断について「そんなの関係ねぇ」と言ったよな。
■ また、自衛官は外部に論文を発表する場合、その旨を文章で通知する内規があったが、このオッサンは防衛庁の中江官房長に口頭で伝えただけだったという。しかもその中江という人によると、
「田母神と雑談をしているとき、論文のことを言っていたが、報告だとは思わなかった。つーかいつ聞いたのかも憶えとらん」
とのこと。この「論文」の内容がちゃんと報告されていれば、みんなは止めたろうな。
つーかマスコミはこの事件について「元空幕長が政府見解と異なる論文を発表した件について・・・」などと報じているが、この「論文」は政府見解云々する以前に、歴史を歪曲し侵略を肯定する反社会的な妄想なのである。余計な能書きいらんからちゃんと説明しろよ。
■ この「政府見解と異なる論文」の発覚を受けて防衛相は直ちにこの田母神を更迭、「航空幕僚監部付」に落とした。そして田母神は11月3日付けで定年退職。懲戒免職にする場合、本人に異存がなければスムーズに進むが、田母神は辞職を拒否していたので本人に意見を述べさせる「審理」が行われるが、これには10ヶ月程度かかる。
審理を続けるため定年を延長しても田母神の場合は翌1月までが期限だが、そこまで処遇の決定が延びて批判を受けることを恐れた政治判断だったと思われる。退職金は6千万円とのこと。俺の20年分くらいの稼ぎだなw
こいつに大金が渡るのか。つーかこんな侵略戦争を美化する奴が、規則も守れない奴が、航空自衛隊のトップにいたというのは恐ろしいことだよな。
■3日の記者会見でこの馬鹿は、「政府見解に反論できないんだったら北朝鮮と同じだ」とほざいたという。
別に言いたきゃ言えばいいのに。ここは北朝鮮じゃねえから何言っても逮捕されねえよ。ただし、自衛隊の幹部なのにそういうことを言いたいのならお辞めいただくしかないってこと。辞めたあと好きなだけ言えばいいってこと。こんな簡単なことを混ぜこぜにすんじゃねえよ。
■ ところで、11月1日朝日新聞は以下のような秦郁彦センセのコメントを掲載していた。
日本の近現代史に詳しい秦郁彦さんの話たしかに、秦センセの「盧溝橋事件の研究」の中に、「中国共産党の謀略だった」なんて主張は出てこなかったよなあ。
論文は子引き・孫引きのつぎはぎで、事実誤認だらけだ。論文では私の著書「盧溝橋事件の研究」も引用元として紹介されているが、引用された部分は私の著書を引くまでも無く明らかなデータだけ。私が明らかにした事件の1発目の銃弾は(旧日本軍の)第29軍の兵士が撃ったという見解には触れもせず、「事件は中国共産党の謀略だ」などと書かれると、まるで私がそう主張しているかのように誤解される。非常に不愉快だ。
これだけでも田母神にはあきれるが、間抜けなのが朝日新聞。「事件の1発目の銃弾は旧日本軍の第29軍の兵士が撃った」なんてことも、書いてなかったと思うで。つーか、第29軍って日本軍だっけ?と思っていたら、翌日2日に小さい訂正記事が載っていた。
【訂正】ドジだねえ。よく分かんないことはちゃんと調べてからにすればいいのに。
1日付の空幕長更迭問題の記事の関連で掲載した現代史家の秦郁彦の談話で、
「事件の1発目の銃弾は(旧日本軍の)第29軍の兵士が撃ったという見解には触れもせず」
とあるのは、
「事件の1発目の銃弾は(中国軍の)第29軍の兵士が撃ったという見解には触れもせず」
の誤りでした。盧溝橋事件で1発目を撃ったと秦さんが明らかにしている第29軍は宋哲元の軍でした。訂正します。
秦センセに叱られて気付いたのかな?もしかしたら思考錯誤の論客に教えてもらったのかもしれんw
(つづく)
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ひさしい前からバカウヨの口に膾炙してきた虚言妄言そのものでしたね。
こんな男の論文が「入賞」したことはぜんぜん問題じゃありません。
多くの人が指摘するように、アパなんとかの審査自体がまったくの出来レースなのは間違いないでしょう。
(あの渡部昇一の選んだ論文をかの小堀桂一郎が褒める。この猿芝居!)
たとえれば、ナチ党員が『わが闘争』から書き写した文言を党関係者が褒めちぎるのと同じことで、せまい仲間内での満足劇にすぎません。
「エライ! 全文書き取り、よく出来た」
実際、その内容ときたら、「やれやれ、またか」と呆れるような、2ちゃんねるに流布する靖国派の宣伝そのままで、新しさというものがまるでない代物です。