2008年11月18日

NHKスペシャル「アブグレイブ刑務所事件」

さきほど、NHKスペシャル「微笑と虐待 〜証言 アブグレイブ刑務所事件〜」を見た。イラクのアブグレイブ刑務所で起きた捕虜虐待事件の関係者を取材したドキュメントである。

この事件は、リンディ・ラナ・イングランド(Lynndie Rana England)元技術兵が全裸の捕虜の股間を指差してニヤケながらポーズを取ったり、首に縄をつけて引っ張る写真があまりにも有名である。
貧しい家庭に生まれ、トレーラーハウスで育った彼女は、大学に進学したいために軍に志願し、イラクに派兵された。当時は「悪い奴らをぶっ倒してやる」という気分だったという。
釈放されて現在もトレーラーハウスで両親や息子と住んでいる彼女は取材に対し、あの虐待写真と同じようにタバコをくわえながら、アブグレイブ刑務所では事務の担当だったが周囲に流されるまま虐待に加わってしまったのである。「なぜ同僚らはあなたにあのようなことを行わせたのか?」と問われると、「命令があったのではないか、と思う」と答えた。

記憶に新しいところだが2003年の4月のバクダッド陥落以降も武装勢力の反撃が激しく、アメリカ軍の犠牲者は激増していた。あるとき、捕虜や政治犯だけでなく一般の刑事犯も収容されていたアブグレイブ刑務所をミラー少将という人物が視察し、尋問が「手ぬるい」と批判した。
キューバにあるグアンタナモ米軍基地ではテロ容疑者を犬のように扱い、極限まで精神を追い詰めて尋問に臨んでいるというが、アブグレイブでも同様に捕虜を圧迫しなければ尋問の効果が出ないというのである。そういう彼の意見によって、厳しい尋問が行われるようになった。しかも尋問のノウハウなどない民間軍事会社がイングランドらを指揮することになり、暴走が始まったのである。

虐待写真を偶然目にした憲兵(当時)のジョー・ダービー氏の告発によって虐待の事実が全世界に公開され、イングランドが禁固3年の刑を受けるなど、直接虐待に加わった7名が処罰されたが、チャールズ・グレイナー元技術兵(禁固10年)による、
「捕虜への虐待は、彼らの『心身を整えて』(つまり虐待で精神を追い詰めて)尋問を行うように、という指導に従ったまでだ」
という供述は証拠として採用されなかった。
当時彼らの上官だった女性の准将は、
「ブッシュもラムズフェルドもあの写真を見たが、彼らは
『ああ、なんてひどいことをしてくれたんだ』
『俺たちの努力がこいつら7つの腐ったリンゴのために台無しだ』

と言った」

と、涙声で語った。最初に厳しい尋問を提案したミラー少将も、事件発覚当時はこの事件に遺憾の意を表していたが、その後は一切沈黙しているという。毎度のことだが指導的立場にあった連中は追及を受けず、謝罪することもないのである。

最後に取材陣はイングランドに「なぜあの写真で微笑んでいたのか?」と質問したが、「(自分の息子の父である)グレイナーに頼まれただけだ」と淡々と語った。結局この取材を通じ、彼女から虐待の被害者への謝罪や反省の言葉は、一言も無かったのである。指導者も実行犯も全く反省の意を表さないという、なんとも救いようの無い現実だ。

また、この事件を告発したジョー・ダービー氏は、軍の食堂にいたときテレビでラムズフェルドが「この事件はジョー・ダービー氏の告発によって明らかになった」と自分の名前を出したことに驚愕した。除隊し故郷に帰ることを望んだが、軍は彼の地元での評判を調査し、彼の身に危害が及ぶ可能性を指摘、帰郷しないことを勧告した。
現在も住所を明かさず、身を潜めるように住んでいるという。元の彼の家は今も空き家のままである。戦争犯罪の告発者が中傷を受け、肩身の狭い思いをするのもいつものことである。

※ この番組は11月20日の午前0時55分(19日深夜)に総合で再放送されるそうなので、見逃した人は是非見て欲しい。こういういい番組やるんなら受信料払ってやってもいいと思ったぜw (ちなみに俺は19日は夜勤だし、ビデオ壊れちまったから予約録画もできまへん!)
posted by 鷹嘴 at 01:32| Comment(1) | TrackBack(0) | 中東情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
この番組見たのは覚えてる。もう一度再放送してほしいな
Posted by くーみん大好き at 2011年12月17日 21:55
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