■ 法政大学を舞台にした弾圧は2006年から始まる。3月14日、学内に設置した立て看板を撤去するという大学側からの通告に抗議するデモが行われた。学生たちがキャンパス周辺を一周し、解散地点である学内に戻ってきた時、突然約200名の公安刑事が襲いかかり、29人の学生が「建造物侵入罪」の容疑で逮捕されてしまった。届出済のコースの通りにデモを行っていたのに逮捕されてしまったのである。法大と警察が事前に仕組んだ弾圧であることは言うまでもない。しかも逮捕された中には法大の学生もいた。自分の大学の構内に入ったのに逮捕されてしまったのである。馬鹿馬鹿しさに言葉もない。
また、学生たちは立て看板の撤去作業を妨害したとして「威力業務妨害罪」の容疑も受けたが、これも全くの冤罪である。大学側は3月14日に看板の撤去を通告していたが、実際は延期を決めていた。撤去作業など全く行われていなかったのである。
【参考】アッテンボローの雑記帳 法政市ヶ谷弾圧弾劾と支援を訴える
■ この弾圧についてはあまりにも不当性が明白であり、学生たちは3月25日に全員不起訴釈放された。しかしその後も法大は学生活動家に退学などの処分を課し、部外者の構内の立ち入りを禁止するなどの異常な措置に出た。大学のキャンパスとは授業を行うだけでなく、他の大学の学生や市民との交流の場ではないだろうか。大学のサークル活動とは、他の大学の学生も参加するものではないだろうか?もはや法政大学は大学とは言えまい。
さらに馬鹿馬鹿しい弾圧も何度となく続いた。ガードマンが一人で勝手に転び、そのガードマンから10〜15m離れた所にいた学生が「暴行を加えた」として逮捕されたこともあるという。
【参考】ブログ「旗旗」 法政「逮捕劇」の真相が明らかに by 草加耕助 - 旗旗
■ 今年5月28日には、1ヶ月以上前に法大の警備員へ暴行を加えたとして3人が逮捕され、そばにいた2人も公務執行妨害として逮捕された。翌日の学内の抗議行動では、またしても百数十人の公安刑事が乱入し、建造物侵入罪として33人が逮捕されてしまった。
2006年3月以降の弾圧事件で逮捕された学生は述べ88人を数える。現在も19人の学生が拘留され、法廷闘争を行っている。
11月20日に俺が傍聴したのは5月29日の弾圧事件の被告グループ@(7名)の第5回公判である(東京地裁 刑事15部 平成20年(わ)第1814〜1817,1820,1821,1825号 以上は建造物侵入罪容疑、1821号のみ建造物侵入罪及び公務執行妨害容疑)。429号法廷にて13:30〜17:00という長丁場の公判だった。
■ この日は夜勤明けで、退社したあとしばらくブラブラして、抽選か先着順か知らなかったので早めに裁判所を訪れた(以前訪れたときは先着順だったので傍聴しそこなった)。受付で抽選が行われることを確認し、時間に余裕があるのでビラ配布を手伝ったりした。11月2日の日比谷公園の集会で仕事着で(ナース姿

傍聴の抽選時間が近づいたのでみんなで並んだが、どうも法大に雇われたバイトも並んでいたらしい。「あなた、バイトでしょう」とみんなから声をかけられても押し黙っている。バイトじゃなかったら否定するだろうな。
429号法廷の傍聴席30に対し抽選券は34枚。意外と少ない人数だったが、バイトのせいで本当に傍聴したい人が4人も外れたのである(法大弾圧事件の裁判はいくつも行われているが、どれも毎回429号法廷で行われているという)。
クジ運の悪い俺も傍聴券を手にして合同庁舎の4階に上ったが、法大総務部の職員もやってきたので(バイトから傍聴券を受け取ったと思われる)法廷前の廊下は激しい怒号が飛び交った。傍聴したけりゃ学生たちと一緒に抽選の行列に並んでみろっつーの。そんな勇気はないだろうけどさw
■ 開廷前から荒れ模様だったが、この日は一人の退廷者も出なかった。三谷幸喜に似た(笑)裁判長やカーキ色の警備員が「静かにしろ静かにしろ」と叫びつづけていたが。以前沖縄戦裁判の集会に行ったとき、いろいろな裁判を支援してきたジャーナリストが「傍聴席で戦う心構え」が必要だと述べていたが、学生たちはそれを実行しているのである。
被告らの両脇を拘置所職員(みんな体格がよろしい)が固めるという物々しい雰囲気の中、まず被告のうちの2名(一人は女性)が発言した。取調官は建造物侵入についてはろくに取り調べを行わず、「活動をやめろ」と迫るだけだという。またこの事件の検察側の証人のいい加減さを厳しく糾弾した。
上田という証人は、「学生活動家たちが法大の**門から構内に入っていった」と証言したそうだが、実際に構内に入ったのは**門ではなくて@@門だった。入ってもいない門から入ったという、間違った実況検分調書が出来てしまったのである。しかも学生の誰が入っていったのが、名前一人も挙げられない。
また永島という証人(ジャージ姿で学生に暴力を振るっていた人物)は、最初の供述調書では自分のことを「法大の嘱託職員」と述べていたのだが、11月5日の公判で、実は「ジャパンプロテクション」という警備会社の社員だったことを白状した。
以前は「東京警備保障」という会社が警備を担当していたが、法的な問題で警備会社には学生に対する「暴力的な排除」は出来ない。だから「ジャパンプロテクション」という警備会社の社員を法大の嘱託職員であると偽装させ、学生の首を絞めるなどの暴力を行わせていたのである。他の証人は「デモを行う学生は犯罪者だ」と発言していたという。
ちなみにこの日も拘留取り消し請求は却下された。
■ 続いて警視庁公安4課の刑事・河原崎と、法大職員の清宮隆(5月29日当日は総務部長)の二人が証人として出廷した。
河原崎は、5月29日に逮捕された33人の学生を麹町署の5Fの踊り場に並べて撮影したが、そのうち13人分の写真を、一人ずつ顔の周りに黒枠を置いて、接写したという。こういう写真を撮った目的や当時の状況、このような写真を撮ったことの有無、河原崎の今までの職務について、弁護団が厳しく追及した。俺はこの裁判を傍聴するのは始めてなのでどんな論点があるのか分からなかったが。
法大職員の清宮隆は、5月29日の時点では総務部長だった。かつて法大の警備の全権を任されていたこの人物は、「ビラを撒いたりが恒常化していたので、立て看板やビラ撒きに関する運用についてルール化した」「学生活動家が入構禁止を無視した」「警備員を配置したのは退学抗議に備えるため」「正門を封鎖したのは一般学生を巻き込まないため」などと、ボソボソとした口調で今までの不当な処置の正当化を続けた。
■ 二人の証言が終わると既に閉廷予定の17:00が迫っていたが、証拠資料として提出された学内の模様の映像が、2台の液晶テレビによって再生された。
学生が拡声器で叫びながら行進する5月29日の学内抗議行動の映像は、裁判官にあまりいい印象を与えないかもしれない。しかしこれまでの不当な仕打ちに対して激しく抗議するのは当然である。おとなしい学生でも、テストの採点にミスがあり留年することになれば、学長室でもどこでも怒鳴り込むだろう。納得できない理由で退学処分になれば、友人がそのような仕打ちに遭えば、学長室でもどこでも怒鳴り込むだろう。そのような抗議に対して「建造物侵入罪」を科すのはあまりにも不当である。
つーか建造物侵入罪だの公務執行妨害といった容疑は政治的弾圧の口実に過ぎない。学生の政治活動を一掃するためにふざけた言いがかりをつけているだけなのである。
また、大柄な二人の「ジャージ部隊」が、一人の学生の首を押さえ込み(ヘッドロック状態)、「おめえがちゃんと歩けばいいんだよ」などと罵りながら連行する映像は、法大による日常的な暴力を法廷に知らしめることになった。
■ 閉廷後、弁護士会館の1Fホールで、横浜事件の再審請求にも参加した森川文人弁護士から、今後についての説明があった。そろそろ釈放への展望が開けつつあり、年内釈放を目指していくという。
しかし富山大学でビラを配布して弾圧された一人の被害者は先日釈放されたが、保釈金に400万円も要したという。法大弾圧事件で拘留されている学生は19人である。こんな保釈金を19人分も要求されるのだろうか?俺もスズメの涙ほどのカンパをしたが・・・
■ この弾圧事件の裁判はいくつかのグループに分かれて別々に行われているが、全て東京地裁の429号法廷で争われている。俺が傍聴した裁判(5月29日グループ@)の第6回公判は12月8日、被告側の反対尋問が予定されている。ちなみに被告の一人(女性)は現在拘置所で虐待を受けているという。
◇ 5・28〜29法大弾圧救援会
◇「頭から床に落とす」などの暴行と虐待