2009年03月01日

ゾウの乱

2月27日朝日新聞「ゾウの乱」より引用(アサヒ・コムに掲載されず)。ゾっとするねえ?

中国・雲南省の南端のシーサンパンナ・タイ族自治州のさらに南端(ラオスとの国境付近)の、アイニ族やヤオ族が暮らす大広村や南坪村で、最近野生ゾウによる被害が多発しているという。バナナ畑を喰い散らかし、バイクを破壊し、砲丸のような巨大なクソを垂れ、人間を見れば殴りかかり(?)踏み殺すなどやりたい放題である。ゾウさんと人間じゃウエイトが違いすぎるから勝負になんねーよな。1991年以降この州で、140人以上がゾウに襲われ約30人が死亡、経済損失も約26億円に相当するという。

しかしこれも環境破壊が原因である。ゴムの木の植林によって天然林が減少するにつれ、ゾウによる被害の増加傾向がある。要するに原野を伐採してゴム園にするので、餌の減ったゾウは人里を荒らすのだ。日本でサルやクマやイノシシによる被害が増加しているのと同じである。つーかゴム園といっても省内外の資本家が山ごと使用権を握り、地元民は低賃金で雇われているだけだ。
農業の傍ら30年間環境調査を続けてきた張正祥さんによると、この州の天然林占有率は25年前は8割から3割に減少したが、特にゴム植林がゾウに与える影響が大きいという。
ゴムの木が育つ条件は、ゾウが住む場所とマッチしており、しかも「ゴムの木は地下水吸い取り器のようなもの。森や大気の湿度が減ればゾウの飲み水も不足する」というのだ。気象統計によるとこの州の「首府」である景洪市では、1970年代には3日に一度は霧が出たが、05年は延べ30日になり、平均気温も徐々に上がっているという。
つまりゴム栽培とはゾウの生息地に侵入することであり、なおかつ自然環境を変化させゾウの生息を脅かしているのだ。

100人ほどのヤオ族が暮らす南坪村では、90年代末からサトウキビを作ってもトウモロコシや米を作ってもゾウに荒され、ゴム栽培に頼るようになったが、06年に州から作付けの再開を指示され、稲作を行っている。ゾウに荒らされても被害補償制度によって食糧が「ある程度」保障されるという。
つまりこれは、ゾウが他の畑を荒したり、ゴムの木を踏み倒したりしないために設けられた「ゾウのレストラン」なのである。村民は「食われるのを知りつつの耕作はむなしい」とぼやいているという。州政府は、農民を生命の危険に晒し続ける見返りに若干の援助を与え、環境破壊を続けるつもりらしい。農村と環境の復元には興味が無いようだ。
地元の自然保護区管理所幹部は、
「ゾウはこれからも増えるだろう。エサが足りずに山を下りてくるのは当然かもしれない。農民には気の毒だが、自主的に被害を防いでもらうしかない」
と他人事のように語ったそうな。

一方、張正祥さんは次のように語っている。
「ゾウは今、人類の行いに報復しているとしか思えない。しかも本当に責任のある政府や大企業にではなく罪の無い庶民に牙をむく。こんな不条理があるだろうか」

【関連】
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posted by 鷹嘴 at 00:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 環境問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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