2009年03月05日

裁判員制度絶対反対!

先月、「良心的裁判員拒否宣言 2・15埼玉集会」に行ってきた。場所は県庁の近く、国道17号沿いのさいたま商工会議所会館。「裁判員制度はいらない大運動」事務局長の佐藤和利弁護士、4月から埼玉弁護士会の会長に就任する小出重義弁護士、そして「大運動」の事務局の皆さんが、裁判員制度の危険性を分かりやすく説明した。いつものように非常に遅くなってしまったが当日の模様を書いておく。

今年5月21日からスタートする予定の「裁判員制度」だが、既に全国で裁判員候補者名簿登録の通知が行われている。各県の人口によって異なるが、埼玉県では350分の1の確率でこの名簿に登録されるという。名簿の中からクジで選ばれて裁判所に出頭すれば3日間(ないし5日間)拘束されるが、この期間の休業補償など無い。自営業者や、有給休暇制度が与えられない非正規労働者、日雇い労働者は生活に打撃を受けることになる。つーか有休のある労働者にとっても、休みたくもない時に仕事に穴をあけることになるし、限られた有休をこんなことに使いたいわけがないし、大迷惑である。
裁判員候補者には「8000円以内」、裁判員には「1万円以内」の日当が支給されるが、出頭しても裁判員に選ばれなかった人には「半額態度」しか支給されない。せっかく3日間予定を空けておいても見返りがたった4000円なのだ。また出頭命令を拒否すれば最高10万円の罰金刑が課せられる。
このように裁判員制度とは「現代の赤紙」とも言うべき徴用制度なのだが、被告も大きな不利益を蒙ることになる。

裁判所に出頭する初日の午前中は「選任手続」に当てられるが、佐藤弁護士によると「あなたは死刑判決を出せますか?」「警察官の作った調書を信用できますか?」などの「思想調査」が行われるという。ここで「冤罪事件が多いし、単純に鵜呑みには出来ない」などと答えればはじかれるのではないか?
午後からは、選任された6人の裁判員と3人の裁判官で審理が始まり、三日目の午後には多数決で量刑が定まる。つまり審理する時間は実質二日間である。死刑や無期懲役など重い刑罰がたった二日間で決定してしまうのだ。「面倒臭いから早く判決を出したい」という人もいるだろう。つーか法律の専門家が何ヶ月も何年もかけてやっていることを、なぜ当日初めて参加するド素人に二日間でやらせようとするのだろう?
12人の陪審員によって審理するアメリカでも、今まで125人の死刑囚が再審によって捜査ミスが明らかになり無罪になったという。裁判員制度の導入によって誤った判決が増加するのは明らかである。

裁判員には証拠物件として被害者の死体写真などが提示されるという。裁判員の心証に訴え重刑に導こうとする姑息な手段である。光市母子殺害事件の弁護団に懲戒請求を送ったような連中なら、容疑を審理することも忘れて迷わず死刑判決を下すだろう。はっきりいってあんな連中に裁かれるのは真っ平御免だ。てゆうか日本人一般の「民度」が冷静な判決を下せるほど成熟しているとはとても思えない。(たとえば俺が裁判員になったら何でも死刑にするだろうなw)この点でも裁判員制度には猛反対である。

死体写真を見せるほどサービス精神?を見せる一方、裁判員に提示される調書はA4一枚程度に要約されているという。警察の取り調べの違法性や、検察が提出する証拠の虚偽性が分かるはずが無い。自白が強要されていたとしても知りようがない。富山強姦冤罪事件や高知白バイ事故冤罪事件のような狂った判決が続出することだろう。つーかわざわざ冤罪が起こりやすいように司法制度を捻じ曲げているとしか思えない。

また裁判員は一生「守秘義務」を背負うことになる。裁判の内容について死ぬまで口外してはらないというのだ。
つまり、不当判決に加わってしまった場合でも、どのような過程でこのような判決に至ったのか、どの裁判官or裁判員がこの判決に導いたのか、明らかにすることが出来ないのだ。
また、「守秘義務」を破れば50万円の罰金刑になるという。冤罪に至った過程を隠蔽するための脅迫と言えるだろう。(ちなみに、アメリカの陪審員は裁判が終了すればこのような義務は課せられないという)
警察権力は一度「こいつが犯人だ!」と決め付けたら、どんなに取調べの不当性を指摘されても撤回することはない。司法も自らのミスを認めることは無い。(日本という未開国では、この二つの権力は一体のものになっているようだ)どうやら裁判員制度とは国家権力の体面というか権威を守る目的もあるようだ。
さらに佐藤弁護士は「この制度の目的は治安強化のため」「監視社会を作るため」「戦前の5人組のような、市民が市民を監視する制度」と指摘する。
被告が正当な裁判を受ける権利を奪い、厳罰化を進め、国民への監視・統制を国民自身の手で行わせる制度なのである。
※ 余談だが裁判員制度は2004年4月、衆議院で全会一致で可決し、5月に参議院で可決したが、日共は「冤罪を防ぐのに有用だ」などとふざけたことを述べている。

小出重義弁護士は先月行われた埼玉弁護士会の会長選で、わずか5票差で当選し4月から就任する。この会長選の結果は裁判員制度に反対している弁護士が会長に選ばれただけあって注目され、全国紙で報じられた。
小出弁護士はこの裁判員制度だけでなく、昨今司法試験合格者が増加している点についても言及した。2010年には3000人を合格させるつもりらしいが、これは弁護士会の力を弱めるための政府の企てだという。
現在我が国の弁護士は約2万5千人だが、政府は12万人まで増加させる方針だという。歯科医の約9万人より多い人数だが、日常生活の中で弁護士の世話になるより歯医者に通う機会のほうがよっぽど多いではないか?
現在でも「貧乏暇なし」の弁護士が増えている。自分の生活が大変で、「人権」どころではない。橋下のようにサラ金の顧問弁護士でもなんでもやるだろう。こういう弁護士は、国家権力から与えられる目先の利益に踊らされることになり、国家権力と闘ってきた弁護士会の団結は弱まる。弁護士会がどんなに政府や財界を批判しようとも、貧乏な弁護士にとっては自分の生活を保障してくれる側につくだろう。
自民党政権が小選挙区制を導入して少数政党を排除し、総評を解体して労働活動を弱体化させたように、弁護士会も骨抜きにしようとしているのである。
小出弁護士は、弁護士増員と裁判員制度は司法制度改悪の二本の柱だと指摘する。弁護士の数を増やすことは弁護士への攻撃であり、裁判員制度は国民への攻撃であり、ともに国家権力の都合のいい社会を作り上げる目的なのである。

俺は知らなかったが、この集会の前に事務局の方々や有志で、浦和駅前で裁判員制度に反対するチラシ配布を行い、なんと800枚もさばけたという!通り過ぎても戻ってきて署名してくれる人もいたらしい。
この制度について質問を受け、拒否した場合の罰金10万円、守秘義務を破った場合の罰金50万円、これらの罰金を払わないと逮捕させることを説明すると、
「そんなの知らなかったわ。とんでもない、反対だ!」と、反対の署名をしてくれる人もいたという。国民の間でこの制度の危険性の理解が深まれば、廃止に追い込むのも不可能ではないだろう。

集会後、会場から浦和駅西口までデモ行進が行われ、途中のさいたま地裁前で立ち止まってシュプレヒコールをあげた。「警察には届出済だが、裁判所前は早めに通り過ぎて下さいと言われている。もしなにかあったとしても弁護士がいるから多分大丈夫w」ということだが、ポリはほんの数名で何もトラブルはなかった。
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今後も集会が予定されているので、俺は4月のシフトなんか全然決まってないんで参加できるかどうか分からんけど宣伝しとく。

※ 4月11日、埼玉会館小ホールにて、「裁判員制度に断固反対する市民集会」が行われる。発言者は立石雅彦弁護士、松永光氏、埼玉県医師会会長の吉原忠男氏など。主催は「裁判員制度に反対する埼玉市民の会」

※ 4月21日、日比谷野音で全国集会+銀座デモが行われる。詳しくは「裁判員制度はいらない大運動」を参照のこと。


【関連】
◇ 2004年5月8日(土)「しんぶん赤旗」「裁判員制度」を推進するのはなぜ? (魚拓)
◇ 日本弁護士連合会新会長に大阪弁護士会の宮崎誠氏、現執行部反対派の高山俊吉氏破る
◇ 司法試験合格者「年間3000人」計画に待った 日弁連 (魚拓)
◇ 埼玉弁護士会の新会長に小出氏 裁判員制度に反対姿勢 (魚拓)
◇ (魚拓)埼玉弁護士会・小出次期会長、集会で裁判員制度の廃止訴える
◇ 裁判員制度:埼玉弁護士会新会長が反対 (魚拓)
◇ 修了者増え 就職厳しく (魚拓)
◇ 新人弁護士の年収低下 事務所調査、最多が5百万台 (魚拓)
posted by 鷹嘴 at 00:51| Comment(5) | TrackBack(0) | 集会、デモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして!
・・・いえ、(ある意味)約1ヶ月ぶりというのが正しいですね。
私もデモ行進に参加しました。
内容はホームページアドレスのリンク先参照。
裁判員制度はひどい制度ですね。
私も反対を唱えさせていただきます。
(それにしても日本共産党にはちょっと失望・・・)
Posted by カイネル・ドゥ・ラファティ at 2009年03月09日 00:34
カイネル・ドゥ・ラファティさん、初めまして!
デモに参加なさったんですか!!
HP読ませていただきました。
これからもよろしくお願いします。
Posted by 鷹嘴 at 2009年03月09日 22:45
どうしても裁判員なんてやりたくない人に耳より情報。

まず候補に選ばれた時点でブログ等で「候補になった」と公表する(候補の時点でというのがポイント)。

そして裁判所に呼ばれたときに「私は候補になったことを公表しました」と正直に言う。

そうすると裁判所は「こんな規則も守れない人にやらせるわけにはいかない」と裁判員からはずす。そしてその後も他の事件でも候補からはずされる。たったこれだけです。

重要なのは「候補になった」時点で公表すること。選ばれた後で公表したら罰則があります。しかし候補の時点では公表しても罰則はありません。
Posted by シルコ・ワンカップ at 2009年03月10日 23:00
裁判員制度に関して裁判所の労働組合が推進しているというか、少なくとも反対していないのもどうかと思います。
http://www.zenshiho.net/kaikaku/2004-01.html
今や共産党ですら「延期」に宗旨替えしたというのに。
http://www.jcp.or.jp/seisaku/2008/20081003_senkyo-seisaku-bunya/25.html
Posted by 黒天使 at 2009年03月12日 08:01
始まって、一年が過ぎましたが、反対運動の勢いは衰えたようで心配です。新聞記事などによると裁判員経験者の質問や感想からは、偉そうに権力サイドに陥ってしまった市民の姿が見えてきて、一般市民の生き方?、、、司法の、特に刑事裁判の行方が気になります。ところで、カイネル・ドゥ・ラファティさんはお元気なのでしょうか。どこかでお会いしていますよね、きっと。
(埼玉羊の毛より)
Posted by 小川司 at 2010年09月11日 18:59
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