「(下請け作業員のG氏)相変わらず最後はクロス屋(壁紙貼り職人)さんがヒビとかカビはきれいに隠してます。恐怖の“水コン”だって、暗黙の了解で使ってますよ」以前にも述べたが、“水コン”とは規定値以上にコンクリートに水を混ぜ込んだ物。流動性が増し、施工が容易になる。
コンクリートとは、セメント(石灰石や粘土などを混合して焼成する)、骨材(砕石、砂)、水を混合し、化学反応によって固化する構造物であるが、製造時の水の量が多すぎると完成後も内部の微細な空隙の多い、脆弱な構造になってしまう。また二酸化炭素も侵入しやすく腐食の進行が早まる。
また、圧送・充填した直後のコンクリートには空隙が多く、水との化学反応によって結晶が生成され空隙が減少し充分な強度が得られるのに約1ヶ月を要するが、この原則が無視されている現場も多いらしい。
「・・・現場では工期短縮が絶対ですから、コンクリを流し込む際、ミキサー車を一度に3〜4台も呼んじゃう。そうすると最後の車ではコンクリが固まりだす。それじゃあ使い物にならないので多めの水で溶くんです。でも、そうすると強度はガクーンと落ちるし、乾きも遅れる。特に基礎で水コン使っちゃうと、建ててる最中に崩れちゃうぐらいですからね。だから、さすがにもうやめようって・・・」
「(電気工事職人のT氏)朝、現場に着いたら職人さんが一ヶ所に集まって、上を見ながらなにやら騒いでいるんですよ。そしたら、2階部分のスラブ(鉄筋コンクリート製の床板、つまり1階の天井)が夜の間に落っこちたそうなんです。昼間の作業中だったら人が死んでましたよ。完全に水コンのせいですね。ダメとわかりながらも、無茶な工期と作業効率を考えると仕方がないってことでしょうか」
このようなズサンな施工はコンクリート充填作業だけではない。
「(ベテラン鉄筋職人のM氏)トラックで鉄筋が運ばれてくるだろ。で、手前の部屋からどんどん組んでいくんだけどな、奥の方に行ったら鉄筋が足りねえんだよ。おかしいぞと思って図面見たら、いつもよりもひと部屋に使う鉄筋の本数が少ないだな。これじゃ危ねえぞって思ったけど作業進めなきゃ全体が遅れちゃうから、そのまま作ったよ。だから、奥の部屋は壁も床も鉄筋スッカスカだよ」俺自身も常に感じていることだが、現場の人間は施工・作業方法、設計、仕様に問題があると感じても口を出せるような立場ではなく、ただ黙々と作業を続けノルマをこなす以外にないのである。
また、無理な工期圧縮は思わぬトラブルを呼び込むものである。
「(前出・G氏)現場に人、特にシロウトが増えたことで、“型枠”を踏んで壊しちゃう人が多くなった気がします」数ヶ月で逃亡した、俺みたいな奴のことだなw つーか工期にも予算にも余裕のない現場は、孫受け・曾孫ウケの零細業者を使うしかなく、俺のようなドシロウトがウロウロすることになる。
「(今度は型枠って、なんだ、それ?)分厚いベニヤ板で出来た型枠のことで、これにコンクリートを流し込んで壁とか土台を作るんです。でも、木だから踏んだり、思いモノ置くと歪んだり、ヘタすると壊れちゃう。けど、型枠大工さんに言うと怒られるかた、みんな直すんです。シロウトなのに」こういうことって、あるだろうねえ。
(新入りの俺は見ていただけだが)壁に開けちまった余計な穴を、ボードのきれっぱしで補修したことがある。(別に間違って開けたわけではなく、その突貫工事の現場は施工図が出鱈目だったのである)翌日ボード屋さんに「これやったの、お前ら、電気屋かあぁぁ!!」と、もの凄い剣幕で怒鳴られてしまった。恐怖でチビリそうだったw 結局ボード屋さんがその部分のボードを丸ごと交換したけどね。
型枠屋さんなんかもっと恐そうだったなあ。シロウトだけど自分で直しちゃうのも理解できるが、そこにコンクリートを流し込んで建物の重要な部分を作っていくのだが・・・
また、公団のエアコン用の穴を鉄筋を切断して開けていたことが発覚した件も以前書いたが、このような行為は日常茶飯事らしい。
「(設備工・K氏)配線の際、コンクリの梁に設計図にない穴をドリルで開けたりは常識。」ちなみに俺の(賃貸)マンションの、同居人の寝室にはエアコンを設置していないが、エアコンの配管用の穴は開けられていた。

見事に鉄筋をぶった切ってやがるw
また、↓この告白も非常にいただけないねえ。
「それと、天井に埋め込まれているエアコンありますよね。あれの取付金具がうまくつかなくて、何本か抜くのなんてしょっちゅうっス」天井裏でファンコイルユニットやエアコンの室内機、空調ダクト、配管などあらゆる重量物を吊り下げている全ネジは、コンクリの中にある鉄筋と溶接されているんだと勝手に思っていた。実際はコンクリートスラブにドリルで穴を開け、抜け防止のアンカーを叩き込んで吊り下げるのである。それが何本か少なくても、自然に脱落することはまず無いと思うが、日本のように地震が多い国だと何が起きるか分からん。
最後に、これだけはどんなに真面目に設計・施工しても太刀打ち出来ない致命的な話。
「(再びG氏の登場)埼玉県の現場で職人さんに聞いた話。以前勤めていたビル管理会社で、都内東部の某公共施設に配属されたが(ここも数ヶ月で逃亡したw)、雨が降ると数日後に、地下駐車場の側壁から地下水が漏れてくるので参った。パネルを外してみると水溜りになっていて、バキュームで何度吸ってもすぐ溜まってくる(お陰で仮眠時間が無くなった!)。話によるとその場所は以前は水田だったらしい。
その土地は以前は倉庫街だったんですけど、不景気のせいで倉庫業者が倒産。その跡地に高層マンションを建てるんだって。でも、なんで今まで倉庫街だったかっていうと、もともと沼地だったから。そういう場所って土地が安いんです。職人さん言ってました。いくら長い杭を入れても地形には勝てねえ。このマンションは沈むって」
2002年W杯の舞台になった埼玉スタジアムは、旧浦和市の東の外れの、元は水田や畑だった所に建設された、地盤が悪いため海に近い横浜国際総合競技場より基礎工事に苦労し、「想定外」(笑)の出費を要したという。
東京の東部から埼玉県の南部にかけては、古来は海だったという(「浦和」「川口」という地名からして海を連想させる)。もちろんしっかりとした基礎工事を行えば倒壊するようなことはないだろうが、沼地だった場所に高層マンションを建設するような冒険は避けてもらいたいものである。少なくともそこがかつて沼地だったことは告知して欲しいなあw
・・・ところで昨日のテレ朝「スクランブル」に、耐震強度偽装問題を追及している民主党の馬渕議員が出演し、脅迫を受けたことを語っていた(「不易塾日記」12/10を参照のこと)。恐らくは、追及が進むと都合の悪いお偉方がいらっしゃるのだろう。国交省とか、自民党のセンセイとか。
オジャモンの証人喚問が17日に行われるそうだが、自民党はこれに乗り気ではなかったらしい。是非とも彼に、洗いざらいぶちまけて欲しいものである。
(参考ニュース)
問題マンション、軟らかい生コン使用? 民主議員が指摘
2006年01月12日21時12分
マンションなどの耐震強度偽装問題で、神奈川県藤沢市の分譲マンション「グランドステージ藤沢」について、民主党の下条みつ衆院議員は12日、記者会見し「(規定より)軟らかい生コンクリートが使われた可能性がある」と指摘した。納入した業者は「指摘は事実に反する。規定通りの強度になるよう出荷時に検査を行い、その記録も残っている」と反論している。
下条議員は、生コンを現場に納入した際に撮影されたとされる写真を公表。1級建築士や第三者の納入業者に確認したところ、生コンが鉄板に広がった様子から、同じ写真上の確認用の黒板に書かれた規定の数値より軟らかく見えると指摘されたという。規定の数値は日本工業規格(JIS)に基づいている。
下条議員は「この通り使われているとすれば危険性が増す。迷わず生コンを受け入れたとしたら最終責任は施工会社にある」と語った。
このマンションは木村建設(破産手続き開始)が施工し、ヒューザーが販売。耐震強度は0.15で、偽装が判明している中で最も低い。
・・・余談だが、同誌のP-85「今週の脱北者」によると、1992年2月、平壌市内の完成間近の高層マンションが突然崩壊し、建設に動員されていた約300人の人民軍兵士が死亡したと、仮名の脱北者が証言した。
別に鉄骨を減らしたわけではなく、金正日総書記の誕生日である2月16日に間に合うように工事を急がせたことが原因という。
2月の平壌市は−10℃まで冷え込むが、このような低温だとコンクリート内の水分が蒸発する前に凍結し「スカスカ」になってしまうという。「1〜2月はコンクリート打ちをしないというのが建設業界の常識」らしい。現場サイドも春先までコンクリート打設を延期することを主張したが、党幹部に押し切られてしまった。将軍様のご意向に逆らうことは出来なかったのだろう。全くどうしようもない国である。
ところで以前イスラエルで結婚式場の床が突然抜けたことがあった。韓国のデパートなんか地震もないのに突然大崩壊した。台湾の大地震のとき、崩壊した建物のコンクリートの柱の中になぜかペンキの缶が入っていた。日本はまだマシな方かもしれん。
「指定確認機関が普通にチェックしていれば、構造計算書がパスすることはなかった。私だけの責任ではない」
偽造計算書を提出したことだけではなく、偽造計算書を合格させてしまう検査機関やその仕組みにも責任がある。それが彼の言い分だ。
・・・
「法令に則した審査を行って書類の不備を指摘することで、不正を防止できた」。国交省建築指導課の小川富由課長は、こう言ってイー社を真っ向から批判する。だが、民間でずさんな審査がまかり通っていた実態を把握できていなかったのも事実だ。「民間開放」を口実に、監督の手を緩めることはなかったのか。』
(2005年11月20日:http://www.sankei.co.jp/news/051120/morning/20iti002.htm、産経新聞耐震偽装特集)
もう一度時系列を見てみよう:
2004年
3月8日:A元建築士、横浜の設計事務所で偽装を指摘されるが偽装をやめず。
2005年
10月20日:イーホームズ社が告発に基づいてA元建築士の偽造を発見。
10月22日:イーホームズ社がヒューザー社に連絡。
10月25日:★イーホームズ社に呼ばれて追及されたA元建築士が偽造を認める。
10月26日:イーホームズの藤田社長が、国交省に通報の電子メールを送るが、国交省は「当事者同士で解決せよ」として取り上げない。
10月27日:イーホームズの藤田社長と、偽装公表に反対するヒューザー社の小島社長がヒューザー社で激しく対決(「公表すれば叩く」と圧力をかける)。
同日:藤田社長が国交省に電話するが理解を得られず。
10月28日:藤田社長が国交省に出向いて通報。国交省も通報を了解する。
11月15日:国交大臣に偽造設計の報告が届く。伊藤元国土庁長官と、小嶋社長が国交省内で建築指導課長と会う。
11月17日:国交省が偽造問題を発表。
11月18日:★ A元建築士が自宅入口で突如、TV報道陣に釈明のインタビュー(イーホームズ批判)。国民にショックが走る。
同日:イーホームズが記者会見を開き「確認検査制度上の過失」はないと断言する。(この発言が後日メディアで攻撃の対象とされる)
11月26日:発覚した工事でA元建築士に(形式上)外注した森田設計事務所代表が遺体で発見。
(以降、メディアは民間検査機関のイーホームズの藤田社長に対するバッシングに踊る)