【追記のお知らせ 2017年4月9日】
 記事「【5月7日】雁屋哲さんの講演+井戸川克隆さんと対談」に、「美味しんぼ『鼻血問題』に答える」から福島現地での鼻血の症状についての報告例を引用しました

2009年05月28日

「多数決の国」では全員死刑!

 やたら裁判員制度をヨイショしてやがる朝日新聞に、興味深い論考があった。5月14日【裁判員元年C 「民主的多数決」の懸念】より引用。

 俺は読んだことなかったが、「キノの旅」(いわゆるライトノベル)に、「多数決の国」という一編がある。主人公「キノ」が訪れたある国は、圧制を布いていた王族が革命で倒され、全てを国民投票による多数決で決定する新政府が樹立された。この新政府は王族の死刑を皮切りに、代表民主政治を提案する者、税制に不満を持つ者、死刑制度廃止を提案する者などを次々に多数決で死刑にするうち、ついに国民は三人だけになってしまった。ある日一人の男がこの国を出て行くと言い出し、国家への反逆として二対一の多数決で死刑になった。残った一組の夫婦の妻は病没し、ついに国民は一人っきりになってしまったと・・・という話。ネタバレごめんねw
 作者の時雨沢恵一氏は、
 「子どものころ、面倒な係を誰かにやってもらう時はいつも多数決で決められた」経験がある。「先生は『民主的な決め方』と言っていたが、パッと手を挙げさせられて『多い方が勝ち』という場合が多かった」
 と語る。こういう経験、誰でもあるよね。俺も学級委員とかやらされたもんなw

 5月21日にスタートした裁判員制度は、裁判官3人、裁判員6人による多数決で有罪無罪・量刑が決定する。たとえ4人が反対しても5人が賛成すれば重い判決が下されてしまう。(注:コメントにてご指摘を受けたので訂正。判断が分かれる場合の評決は多数決で行われる。5名以上が有罪に賛成し、その中に裁判官が最低1名含まれた場合のみ、有罪判決となる(参考)。たとえば6名の裁判員のうち4名が無罪、2名が有罪と判断しても、裁判官3名が有罪と判断すれば有罪判決だ)
 今月、明治大学で開かれた日本法社会学会で「そもそも裁判は、民主的な方が良いのでしょうか」という「問題提起が波紋を呼んだ」。民主的な裁判がいいというのなら、「多数決の国」のような「国民投票による裁判」や、「世論調査による刑罰決定」の方がよっぽど民主的なはずだ、という「逆説的な問いかけだ」。
 そして50年前のある法学者の発言が紹介された。「司法の使命は少数者の自由を保障するための安全弁であって裁判所に多数意見が働くことに危険が感じられる」。これは全く同感だ。
 たとえば不法滞在外国人が特別在留許可を求める訴訟を起こしたとする。これを国民投票で決めれば、まあこの国の民度から考えて3:7ぐらいで原告敗訴・強制送還決定じゃねえか?凶悪犯罪の裁判なら、被告が容疑を否認していても物証に乏しくても、警察発表を垂れ流すマスコミに世論が流されて同じ結果が出るだろう。人権感覚の無い一般国民に代わって、少数者の権利、人権を守るのが司法の使命だと思うぞ。何でも多数決で決めていい、ってことはないと思うぞ。

 3月に龍谷大学で行われたシンポジウムでは、青山学院大学法科大学院・宮沢節生教授が、刑事司法の現状を「『被害者は仲間。それに対決する弁護士は敵』と考える空気が市民に生まれ、裁判官もポピュリズムに舵を切った・・・」と分析した。「この流れの中で、何の対策もなく裁判員制度が導入されれば、厳罰化の方向へ進む懸念が強まっている」。
 「カムイ外伝」に、村の嫌われ者が役人の承認のもとに村民らの手で縛り付けられて死ぬまで放置される話が出てくるが、そういう野蛮な時代に逆戻りしようというのか?こういう「ポピュリズム」から被告の権利を守るのが司法のはずだけどな。
 宮沢教授本人は裁判員制度を推進してきたそうだが、こうした「ポピュリズム」は予想できなかったという。しかし「裁判員が、被害者だけでなく被告も『市民の一人』だととらえられるようになれば、流れは変わるかもしれない」と語る。
 しかしそこに至るまで何百年もかかるだろうな。なにしろ戦争被害者の人権を守るとか言ってる市民団体が、トラブル起こしたメンバーの粛清を多数決で決めちまうんだからよ(あんまり突っ込むなよw)。国民の意識の向上が大事なのは当たり前だが、今日明日裁判を受ける被告の権利を守ることが急務だ。
 それに、国民にそういうことを考えさせず、犯罪者なんて人間じゃねえ、みんなの力で死刑にしましょう、という流れを作るのが裁判員制度だ。法の知識など無く人権感覚に乏しい一般国民を動員し国民統制を狙うこの制度は絶対に廃止しなければならない。

 (この動画は5月20日の夜、日比谷公園→弁護士会館前→新橋→銀座を行進したデモ)


 付け足すが、裁判なんて特に興味の無い人間を無理矢理連れてくるのが根本的に間違ってるぞ。早く終わらせたきゃ、何も考えず多数派の方に賛成するだろう。
 それが国の狙いなんだろうが、考えてみりゃ選挙だって同じ弊害があるよな。政治に興味が無いというかまるで政治を考えようとしない人間が森田健作のような馬鹿に投票しちまうのである。まあ無党派層のせいで政治が動くこともあるだろうし、自民党のセンセイがたも「寝てればいい」って本音を漏らすこともあるし、迂闊なことは言わないようにしようwww



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posted by 鷹嘴 at 01:06| Comment(4) | TrackBack(1) | 悪法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今や、「疑わしきは罰せず」じゃなくて「疑わしきは即、死刑」ですからね。

足利事件みたいに十数年たってから冤罪だとわかったらどうするんだか・・・・。

裁判に参加するというのはそういう可能性があるというのを視野にいれなければならないのですが・・・・。

あと自分が素人に裁かれるという可能性もね。

Posted by メタル忍者 at 2009年06月25日 18:40
判事はそういう重い十字架を背負う可能性がある仕事だから高い給料もらってんだろ?

雀の涙ほどの金(しかも参加中は日常の業務に支障をきたす)で一生背負い続けなければならないような十字架を背負わされたらたまったものじゃないな。
Posted by 海砂利水魚 at 2009年06月27日 15:29
裁判員制度における多数決のルールについて、「不条理日記」さんは認識が不十分ではありませんか?「たとえ4人が反対しても5人が賛成すれば重い罪が下されてしまう」というのは間違いです。裁判官3名、裁判員6名で、そのうち5名の多数により有罪・無罪が決するわけではありません。5名以上は必ず(裁判官+裁判員)の構成でなければなりません。例:裁判員のみ5名が有罪とした場合は無罪となります。裁判官1名を含む5名が有罪とした場合なら有罪です。
Posted by Horatio at 2012年10月03日 10:51
ご指摘ありがとうございました。訂正します。
Posted by 鷹嘴 at 2012年10月04日 00:53
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