ところで数年前、このスキー場の麓で実に情けない状況を目撃したので、今更ながら書き留めておく。
このスキー場は山頂からは初心者でも滑走できる程度の斜度だが、超コブコブ斜面の「チャンピオンコース」を挟んだ左右のコースや、「中社ゲレンデ」の各コースは圧雪された急斜面であり、降雪量が多いためかアイスバーンにもならない。これが気に入った俺は埼玉から4時間近い道のりであるに関わらず、何度か訪れたことがある。(つーか俺みたいな下手っぴはコブとか滑りにくい所でじっくり練習するべきだなw)
しかし一昨年の3月中旬某日のこのスキー場のコンディションは残念ながら湿った重い雪であり、しかもその日はお目当ての「中社ゲレンデ」の各コースは圧雪されていなかった。(上達の為にはそういう所でじっくり練習するべきなんだがw)
重い雪に疲れきったヘタレな俺は中社ゲレンデの麓の「食堂八方」に入り、カツ丼を食いながらビールを飲み始めた。昼間の飲酒は酔いが早い。
平日で昼食の時間を過ぎていたため店内はまばらで、俺のほかは大学生ぐらいの男女二人連れと、後から入ってきた外人夫婦(ヨーロッパ系?)だけだったが、男の方がテーブルに突っ伏したまま動かない。まあスキー場の食堂で熟睡する姿など珍しくもないのだが、しばらくして携帯を弄んでいた女の子が、食堂のおばちゃんに「この人、ちょっと気分が悪くなったんですけど・・・」と話しかけた。
おばちゃんは「疲れたのなら、近くに温泉があるからそこで休んでください!」と冷たく突き放す。
何を話してるんだこの人たち・・・と様子を見ていたが、どうやらこの青年はスノボのジャンプ台で着地に失敗し頭を打ったらしい。離れた席にいた外人夫婦も、流暢な日本語で「頭を打ったのなら、早く医者に診せた方がいい」と、突っ伏したままのこの青年を心配していた。
おばちゃんたちもようやく状況を理解したようだが、どう対処したらいいか悩んでいた。
見るに見かねた俺が「救急車を呼べばいいんじゃないすか?」と口を出すと、やっとこの常識的な対処があることに気付いたようだった。しかし「この電話(食堂に備え付けの電話)で救急車を呼んでいいのかしら?」「先にスキーパトロールを呼んだ方がいいかしら?」「ここに来るまでの道は除雪してないけど、救急車入れるのかしら?担架持ってくるのかしら?」と、愚図愚図していた。
パトロールも呼ぶべきだがサッサと119番すればいいじゃねえかよ!つーか客がテメエんとこで食った物で腹があたったときも救急車呼ぶのをためらうのかよヴォケ!
結局おばちゃんたちが119番し、その後パトロールのオッサンもやってきた。女の子の方が携帯で呼んだらしく、同行者の男5、6人もやってきた。カップルかと思ったが違ったようである(つーか早く呼べよ!)
俺がもう一本ビールを飲み干したころに救急車も到着し、無事に搬送された。救急隊員の呼びかけには何とか応えていた。その後の経過はもちろん知らんが大丈夫だったろうか?しかし最後まで面倒を見ていた外人夫婦は立派だと思う。
さて、この出来事について俺も含めて反省すべき点がいくつかある。
●あの女の子だが、一緒に滑ってた奴の異常に気付いたら救急車を呼ぶなり、同行者を呼ぶなり、早急に対応すべきじゃんか!
●食堂と言えどもスキー場の施設の一部である。その従業員は怪我人が発生した場合には迅速に対応する義務がある。119番するのを躊躇っているようでは言語道断!
●つーか見ていた俺だって、女の子から携帯を奪い取って119番すればよかった!
●日本人には多かれ少なかれ、このような無責任かつ無関心な面があることは否めないだろう。あの外人夫婦を見習って、他人事でも首を突っ込んで面倒みてやるべし!
・・・ところで、おばちゃんが食堂の電話で119番するのをためっていたことには少々気にかかる。そういう申し合わせがあったんだろうか?「怪我人、病人が出たときは、スキーパトロールを呼んで、あとは全て任せなさい」みたいな・・・?
たとえば、2004年8月9日に関西電力・美浜原発の3号機にて二次冷却水の配管が破裂する事故が発生し(“冷却水”といっても圧力10k、温度140℃)、5名の従業員が亡くなった事故があったが、その際消防署への通報は次のように行われたそうである。
美浜発電所3号機における原子炉自動停止の調査状況について
(抜粋)
当直運転員が現場で倒れている被災者を発見(15時27分)し、中央制御室を経由して所長室長は救急車の出動を要請しました。(第1回目15時30分)なお、この時、当社社員および協力会社で倒れている被災者を順次タービン建屋から建屋外へ運び出しました。なお、その後、消防署とともに建屋内に残っている人の有無を確認するため、建屋内の点検を行い、確認を完了しました(19時00分)。
このように発見者自身が消防署に通報したわけでなく、まず中央監視室に連絡し、中央監視室が責任者に連絡し、そして責任者が通報したのである(発見の3分後に通報したという発表だが実際はどんなもんだか?)。このような無駄な手順を踏むより先に、発見者が119番すべきではないだろうか?
しかし災害発生時のためのこのようなフローを作っている事業所は少なくないだろう。たとえば俺が以前勤めていた東芝府中工場なども、まず警備と責任者に連絡し、警備が119番する手順になっていた。こういう決まりごとの為に咄嗟の対応にまごつく事もあった。
ここをご覧頂いている皆さんがお勤めになっている、オフィス・大規模店舗・ホテル・娯楽施設・工場などのいろいろな事業所でも、災害発生時の対応に無駄な決まり事がありますか?もしそうならばそんなものは無視して直ちに119番しましょう!