2009年08月09日

7/30ラビア・カーディルさんが出るはずだった集会

 毎度のことで非常に非常に遅くなってみっともないが、この集会で出た話を書いてみる。

※ ラビア・カーディルさんとウイグル問題については、ぜひ「真silkroad」をお読み下さい。

 7月28日に来日した世界ウイグル会議・議長ラビア・カーディルさんは7月30日夜に都内で講演を行う予定だったが、急遽アメリカ下院外交委員会でウルムチ事件について証言することになり当日朝アメリカに渡った。そのためこの集会では前夜に撮影されたラビアさんへのインタビューの上映と、ご主人のシディック・ハジ・ロウジさんの講演が行われた。
 場所は市ヶ谷駅のすぐそばの「アルカディア市ヶ谷」(宿泊・宴会施設)。市ヶ谷駅から日テレの方に向かえばイスラエル大使館、法政大学の「ボアソナード・タワー」も見えるぞ。なにかと市ヶ谷に縁があるなあ。
 ラビア・カーディルさんが出席できないことは事前に申込者にメールで通知があったが、これを印字して受付で提出し、青いリボンを貰って胸につけた。「セキュリティのために必ず目立つところにつけて下さい」とのこと。昨年の長野やソウルでの中国人留学生の乱暴狼藉を思えば過剰とは言えないだろう。ちなみにラビアさんはアメリカで不審な事故にあったこともあるという。
 会場はかなり広くて立派な宴会場で、俺が入場したときは既にほぼ満席(主催者発表で500人以上)。まず中国現代史研究者の水谷尚子さんからウイグル問題の解説があり、そしてラビアさんのインタビューの模様が大スクリーンに上映された。続いてラビアさんのご主人のシディック・ハジ・ロウジさんが講演を行った。以下はこの集会で出た話と配布された資料より引用。(注:報道が厳しく制限される中国国内の事件の情報を正確に知ることは不可能に近いと言える。これは「世界ウイグル会議」も同じで、現地のウイグル族からの電話・メールや伝聞に頼る比重が大きくなる。そのため以下に書き記すことは確定的な情報とは言えないことをお断りしておく)

 中国共産党政権は漢族をウイグルに移住させる一方、ウイグル族の15歳から25歳の女性を中心に就職させてやる、という名目で内陸部に連れ出している(政府発表で30万人)。これがウイグル族を根絶やしにせんとする民族浄化政策であることは言うまでもない。中共のウイグル支配が始まった1949年にはトルコ系民族が90%、ウイグル族が70%、漢族が6%という人口比率だったが、現在はウイグル族45%、漢族40%という比率になっている。
 7月5日のウルムチの騒乱の直接的な原因は、6月26日に広東省のおもちゃ工場で発生した漢族とウイグル族のトラブルである。共産党の「改革解放路線」によって格差が拡大し、貧しい農民や諸民族が故郷を離れて職を求めているが、世界ウイグル会議によると広東省の工場でウイグル族が何百人も働かされているのも、中共による民族浄化政策の一環だという。
 この夜、数千人の漢族がウイグル族を襲撃し60人以上が殺害・100人以上が負傷したが、4〜5時間に渡った襲撃の間に警察は現場に現れず、一週間経っても誰も逮捕されなかった。政府の発表では死者わずか2名だが、イギリス人の記者に対し「俺一人で7人殺してやったぜ」などと豪語する漢族もいたという。

 この虐殺に抗議するためウルムチのウイグル族が7月5日に中国の国旗をかざしながら(つまり中共に対抗するものではないことを示しつつ)デモを行ったが、私服警官がデモに紛れ込んで扇動し、暴動に発展。武装警察がデモ隊にいきなり暴力を振い、さらに天安門事件のように戦車がデモ隊に突入。こうして少なくとも数百人が殺された。
 さらに午後9時にウルムチ市内が一斉に停電し、国際電話が遮断され、暗闇の中で機関銃の音が響いていた。トラックにウイグル族の死体が積み込まれ、翌朝には道路の血の跡がすっかりふき取られ、代わりに漢族の死体が並べられていた(無論海外のメディアに見せるためである)。1万人近いデモ隊の姿が一夜のうちにすっかり消えてしまったのである。さらに翌朝から警察が一軒一軒を訪ね歩き、怪しいと見た男性をどこかに連行している。報道されている人数の何倍ものウイグル族が(ウルムチだけでなく各地で)連行されたという。(注:8月3日毎日新聞は拘束者は2000人を越えていると見られる、と報じた)
 ラビアさんはこの集会の前日に自民党本部を訪れ、日本政府独自の調査団を派遣してほしいこと、国連に対しても調査団を派遣するよう提案してほしいこと、拘束されている人々を速やかに釈放するように働きかけて欲しいことを要請した。

 ラビア・カーディルさんは1948年アルタイで生まれた。62年にラビアさん一家は「資本家」だと糾弾されて財産を没収され、父親は逃亡、母と弟妹はタクラマカン砂漠に移送され置き去りにされた。ラビアさんは姉の元で貧しい生活を送った。結婚後、刺繍細工を売っていたら「不法な商売」をしていたと糾弾され、夫と離縁することになった。
 その後は「がむしゃらに働き」、不動産業を手がけて財を成し、78年に現在の夫であるシディック・ハジ・ロウジさんと結婚した。
 そして政界に勧誘されて中国共産党に入党し、商工会議所の副議長や全国政治協商会議の委員などを務めた。「改革解放路線で中国は良い国になる」という期待があったのである。

 シディック・ハジ・ロウジさんは44年アトシュで生まれた。父は地主階級だったため55年に「労働改造所」に収容され、同年死亡。母が女手一つで大学卒業まで育て上げた。
 66年に新疆大学文学部を卒業。この年に始まった文化大革命の嵐はウイグルでも吹き荒れ、イスラム指導者に豚を飼わせるなど信じられないことを強いていた。67年にウイグル族の青年たちが政治組織を立ち上げ、大規模な抗議デモを行ったが弾圧された。組織のリーダーだったシディック・ハジさんは69年1月にデモを扇動したとして逮捕され激しい拷問を受け、以降78年1月まで収監された。妻とは獄中で離婚に同意したという。
 出所後農場で働いていたが、この「共産党に刃向かった英雄」の話を当時30歳のラビアさんが聞きつけ求婚した。再婚を考えていたラビアさんの「学があって、文章が書け、自民族のためなら投獄されることも厭わない男性」という理想に一致したのである。
 当時のウイグル族の社会では女性から男性にプロポーズするなど考えられないことであり、シディック・ハジさんは最初は無下に断ったが、出所から半年足らずの78年6月に結婚した。
 89年に一子をもうけたが、当時の一人っ子政策のため強制中絶されそうになり、シディック・ハジさんはラビアさんを連れてすんでのところで逃げ出した。その後この夫婦に5万2千元の罰金が科されたという。

 82年からシディック・ハジさんは新疆教育学院(新疆教育大学)で中国現代文学を教えつつ、新聞雑誌に共産党批判を投稿した。93年にはウイグル族の民謡を漢族が自分の作曲であると偽っていること、漢族の映画がウイグル族を侮辱していることなどの「文化侵略」を厳しく批判した。また96年には、ヤルタ会議によって東トルキスタンの戦後の命運が決したことを示す“Chinese - Soviet Relations 1937-1945”のウイグル語版を出版した。これによって官憲は以前からマークしていたシディック・ハジさんを逮捕しようと画策し、これを察知したラビアさんは同年4月、夫のパスポートを用意し日本経由でアメリカに政治亡命させた。

 ラビアさんは96年から97年にかけて、北京の人民大会堂で行われる政治協商会議にて、ウイグル族の信教の自由、母語を用いる権利が尊重されていないこと、多くの政治犯が処刑されていることを訴えた。そのためラビアさんは人民代表などの要職を解かれパスポートを没収された。99年8月、ウイグル族政治犯の名簿を訪問中のアメリカ議会代表団に渡そうとしたところを拘束された。同時に二人の息子も3年及び2年半の強制労働の実刑を裁判もなしに言い渡された。ラビアさんは2000年3月、「国家安全危害罪」として懲役8年の実刑が確定。
 しかしアムネスティの働きかけや欧米諸国の圧力によって、05年3月ラビアさんはアメリカに移送された。以後ウイグルの人権回復のために精力的に活動している。ウイグルに残る二人の息子は06年に再び拘束され収容所に送られたという。

 こうしてウイグル族の人権のために活動するラビアさんを、中共は「テロリスト」呼ばわりし、ラビアさんのビザ発給を認めた日本政府に圧力を加え、オーストラリアのメルボルン国際映画祭の公式サイト(ラビアさんの記録映画が上映される)にハッキング攻撃を行い、さらにメルボルン市に天津市との姉妹都市関係を解除すると脅すなど卑劣極まりない行動に出ている。
 また中共はラビアさんからの国際電話を盗聴し、ウルムチ騒乱の前日に市内に住む弟に「事件が起こる。気をつけるように」と電話していたことを公表した。これが、ラビアさんが今回の騒乱の黒幕である根拠だというのだ。しかしアメリカに住むラビアさんが現地に住むウイグル族に対しどれほどの指導力があるというのか?どれだけ現地の情勢に通じているというのか?デモが計画されている程度のことを察知していたとしても不思議ではないが(だから肉親に警戒を促すのも当然である。なにしろ世界ウイグル会議の議長の肉親である、中共から危害を加えられる恐れは常にある)。だいたい、同胞が殺されるのを見越して暴動をけしかける人間がどこにいるだろうか? 
 さらに中共は、ラビアさんの息子、娘、弟の3名の連名で書いたとされる手紙を公開した。「暴動は母が率いる世界ウイグル会議と分裂主義者が、扇動した、全てのウイグル族は母を信用してはならない」という内容である。そう書かなきゃどんな目に遭わされるか分からねえもんな。まったく中共の卑劣さに言葉も無い。情けないのは、日本にはこういう中共の宣伝に乗じてラビアさんをテロリスト呼ばわりする左翼(を装った中共の狗)がいることである。

 ところで、この集会の主催者である「日本政策研究センター」は、その名前から想像できるとおり保守的な団体であり、その外交・憲法・歴史認識についての主張に俺は全く同意できない。しかし、チベット・ウイグルなど中国の人権問題を黙殺している自称左翼に、この団体がウイグル問題に関わるのを批判する資格は無いだろう。文句をつける前に自分でも何かやってみろや。本当に中国が好きなら、一党独裁を続ける中共を厳しく批判して然るべきである。水谷尚子さんの「私は中国に4年も留学していました。中国が大好きだからこそ、いい国になって欲しいのです」という言葉を噛みしめるべきだ。


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◇ 【グローバルインタビュー】中国は真相を隠している ラビア・カーディル氏(上) (3/4ページ) (魚拓)
◇ 【グローバルインタビュー】中国は真相を隠している ラビア・カーディル氏(上) (4/4ページ) (魚拓)
◇ 【グローバルインタビュー】私たちはテロリストではない ラビア・カーディル議長(下) (1/5ページ) (魚拓)
◇ 【グローバルインタビュー】私たちはテロリストではない ラビア・カーディル議長(下) (2/5ページ) (魚拓)
◇ 【グローバルインタビュー】私たちはテロリストではない ラビア・カーディル議長(下) (3/5ページ) (魚拓)
◇ 【グローバルインタビュー】私たちはテロリストではない ラビア・カーディル議長(下) (4/5ページ) (魚拓)
◇ 【グローバルインタビュー】私たちはテロリストではない ラビア・カーディル議長(下) (5/5ページ) (魚拓)
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※ 追記 配布された資料から引用するが、中共の弾圧から逃れてアフガニスタンやパキスタンに入国していたウイグル族数十人がパキスタン警察などに拘束され、キューバのグアンタナモ米軍基地に収容された。無実の人々を捕らえ、犯罪の容疑者としても戦争捕虜としても扱わず、ただただ「テロ容疑者」として残忍な拷問と無期限の拘束を強いるあのグアンタナモ基地である。
 ウイグル族の拘束者のうち何人かは釈放され、中国に送還せず難民として第三国に移送したという。しかし「米政権からの謝罪や補償はない」。
 アメリカ帝国主義もまた、中共と同じく人権など眼中に無いことを忘れてはならない。もっともアメリカには国民の選挙で選ばれた議会がある分、中共よりいくらかマシだが。
 アメリカ下院がラビアさんの訴えを聞き入れ、中共に対し厳しい姿勢で臨むことを期待する。
posted by 鷹嘴 at 21:54| Comment(3) | TrackBack(1) | 中国の人権問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>水谷尚子さんの「私は中国に4年も留学していました。中国が大好きだからこそ、いい国になって欲しいのです」

水谷さんはそのような発言はしていませんよ。
Posted by k at 2009年08月12日 15:49
> 水谷さんはそのような発言はしていませんよ。

いえ、しました。録音はしてませんがメモを取りました。
そういう無責任なコメントはやめてください。
Posted by 鷹嘴@このブログ書いてる奴 at 2009年08月14日 22:46
過去に行った南京大屠殺のことを考えれば
日本は中国に何も言ってはいけない気がする・・・
Posted by 中国大好きっ子ちゃん☆ at 2009年08月16日 12:53
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