・・・1984年、埼玉県所沢市の西武球場にて「スーパー・ロック '84 イン ジャパン」というイベントが開かれ、スコーピオンズ、マイケル・シェンカー・グループ、ホワイトスネイクなどの大物バンドやデビューしたばかりのボン・ジョヴィなどが出演した。俺も観に行ったよ。とにかくスコーピオンズが良かったぞ。
数年後ボン・ジョヴィは大ブレークし、既に大御所だったスコーピオンズやホワイトスネイクも全米で大成功を収めた。一方このイベントのトップバッターだったアンヴィルというバンド(俺はちょっと遅刻したんで観てない)は、当時音楽雑誌で話題になっていたが、あんまり印象が残っていない。俺的にはMANOWARとキャラがかぶってたりして。つーか1984年といえば既にメタリカやスレイヤーも活動してたじゃねえか。スラッシュ/デスメタルが流行り、メタルだかハードコアパンクだか区別するのも面倒臭くなってからは、アンヴィルみたいなオーソドックスなヘビメタバンドが生き残るのは難しかったろうな。よっぽど早弾きギタリストがいるとかヴォーカルの女の子が超カワイイ、とかなら別だけど。
映画の中でメタリカのラーズ・ウルリッヒやスレイヤーのトム・アラヤ、元ガンズのスラッシュなど大物ミュージシャンが「あのパフォーマンスにはぶっ飛んだ」「彼らが売れなかったのはおかしい」とかほめまくっいてるけど、専門家がほめるバンドって何故か売れないんだよなあ。サクソンとか。つーかこんなバンドがあったことすら、すっかり忘れていた。つーかヘビメタとはすっかり縁の無い生活を送っていたわけだが。
しかしリップス(ギター、ヴォーカル)とロブ(ドラムス)の二人はこのバンドを捨てようとしない。先月のラウドパーク(二日目)は彼らにとって二度目の同イベント出場だった。俺にとってヘビメタというジャンル自体が物珍しかった時代の遺物、という認識しか無かったが、この映画の宣伝をしているブースに釘付けとなり、1984年に見逃した彼らのパフォーマンスを体験したのである。・・・しかし言っちゃ悪いが寄る年波には勝てないなあ、と感じたね。若い頃はパワフルだったんだろうなあきっと。でもその音楽自体が、メイデンとかに飽きてスラッシュ系ばっか聴いてた俺らメタル中年にとっては何を今更、って感じだけど。
それにしても30年頑張っても売れないのにまだやる気かよコイツら?はっきり言うけど売れるわけねえよ、空気読め。そんな夢を追い続けるより老後の心配したほうがいいじゃねえの?ほんまにアホやの・・・と思うけど、俺のように世間の顔色を窺いながらうまく立ち回ろうとする人間が、彼らの情熱を理解しようなんぞ100億年早い!この50過ぎのおっさんたちはガテン系の仕事で生計を立てつつ、レコード会社にコケにされつつ、「ロックスター」を目指して頑張っているのである。
そして彼らの奥さんも、いい歳こいて夢を捨てないダメ亭主にサジを投げつつも、暖かく見守っている。つかなんてよく出来た女房だ、お前ら果報者だよ。奥さんだけじゃなく親族の理解も彼らを大きく支えている。世界中のファンも決して彼らを見放すことはない。
ヘビメタが嫌いな人も観てみたらどうかね?いや絶対観ろよ、なにしろ「ヘビメタが大嫌いだった」ダスティン・ホフマンさえ感動したっていうからな。上映は東京や大阪だけじゃないからな。こんな泣かせてくれる映画は滅多にないぞ。そういうわけで今回はネタバレなしだ。もうネタバレしたようなもんだけどよ。
◇ 映画『アンヴィル!夢を諦めきれない男たち』公式サイト
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