2002年11月、JR東労組に所属する京浜東北線の7人の運転士が強要罪で逮捕され、一審で懲役1〜2年の有罪判決(執行猶予付き)を受け、JRから懲戒解雇された。控訴審も棄却され上告中。
これは一般に「浦和電車区事件」と呼ばれている。(ちなみにこの7人が結成した「美世志会」は、344日間勾留されていたことに因んでいるという)
俺が通勤に利用している南浦和駅前でも、十数人の若者たちが「不当逮捕だ!冤罪だ!政治弾圧だ!」と訴えるチラシを配っていたことがあり、平日のまっ昼間にこの動員力は羨ましいなあ、と思いつつ普通にチラシを受け取った。もちろんどんな事件なのか全く知らなかったわけだが。
そのチラシには、
「組合は嫌いだが昇進昇給に有利だからと加入していたY君は、組合の決まり事を守らず、我々と敵対する組合幹部の言いなりにウソをついたりして職場を混乱させた。同僚らはY君を反省させようと話し合いをしたのだが、強要罪として逮捕されてしまった。なぜ話し合いが犯罪になるのか」という意味のことが書いてある。被告らは連日厳しい取り調べを受け、「お前は革マル派だろう、認めろ」などと詰め寄られ、体調を崩した者もいたという。また、捜査は「Y君」が訴え出るより先に「一本の匿名電話から」始まっていて、被害届けも警察が作成して「Y君」はサインするだけだったという・・・。
たしかに政治弾圧を感じさせるものがあるが、予備知識無しにこれを読んでも、なんとなく腑に落ちない感じがするよな?
その「Y君」は自主退職したそうだが、会社辞めたくなるほど組合の「話し合い」が激しかったんじゃないの?
「組合は嫌いだが昇進昇給に有利だからと加入」したのがどうかしましたか?お前らだって本音は同じだろ?つか職場をJR東労組が仕切ってんだから加入しなきゃ昇進昇給は望めないよな?
「Y君はトイレの中でA君に脅迫されたというが、自分を脅迫している人間が用を足しているのにわざわざ同じトイレに入るか?」ってゆうか我慢できなかっただけじゃないの? それに気まずい奴を見つけて引き返したらますます気まずくなるじゃん?
「Y君らは被告らの罪名も答えられなかった」それがどうしましたか?てゆうか強要ってゆうより脅迫っぽいですけど?それに「ウソ」ってなによ?
そもそも上司がイヤな奴だとか会社が気に食わないとかで辞めるんなら分かるけど、組合の中のトラブルで辞めたくなるなんて、よっぽどのことがあったんじゃねえの?
・・・などと思いつつググってみると真相が見えてきた。流行語で言えば「コンプライアンス違反」とか「パワハラ」?ともかく重大な人権侵害である。JR連合のサイトよりより引用する。
■ 従業員の組合加入についての取り決めの一つにユニオンショップ制があり、必ず労組に入らなければならない、という決まりである。その反対?が「オーブンショップ制」であり、組合に入っても入らなくてもいい、どこの組合に入ってもいい、という約束事だ。JR各社はこれを採用している(そりゃそうだ、国鉄分割民営化のときに全員一つの組合に入らせようとしたらそれこそ日本中大パニックだよな?)
全国各地の労組を束ねるJR連合は7万4千人、JR総連は約6万9千人の組合員を擁する(国労は1万6千人、動労千葉は400人程度)。JR東日本ではJR総連に加入しているJR東労組がなんと79%を占めるという(引用元)。このJR東労組によって浦和電車区事件が起こされたのだ。
「Y君」は2000年2月、浦和電車区に配属となったが、そこはJR東労組の異常な支配が行われている職場だった。「Y君」が国労の組合員をJR東労組に誘う「ハガキ行動」を拒否したり、前の職場の友人らとキャンプに行ったこと(JR東労組の組合員4人、「グリーンユニオン」の組合員が1人)、さらに「ハガキ行動」しつこく勧められてキレたのか「そんなに無理強いしないで下さい。ハガキを書くくらいなら脱退届け書きますよ」と言い返したことが原因となり、その年の暮れから執拗なイジメ、組合からの脱退要求、さらには退職要求を受けることになる。しかも連中は「Y君」を糾弾するための「闘争委員会」なるものを立ち上げたという。
うちの組合から出て行け、ならまだしも?会社辞めろと要求するとは全く理解できない。しかも「俺たちが勝ち取ったボーナスを返せ!」などと脅されたという。別に組合が給料払ってるわけじゃないよね?まさか本気で言ったわけじゃねえと思うが。国鉄分割民営化直前に松崎明氏(JR総連の元顧問)の支配する動労は、年配の組合員には陰湿に退職を迫ったというが、その伝統?はまだ生きているようだ。
「Y君のウソ」というのも、執拗な追及をかわすために「グリーンユニオンの人をJR東労組に誘うためのキャンプだった。もっとも私自身はその人も来るとは知らなかった」という方便だった。
■ こうした中で、前にも引用したが「おまえ組合やめろ、会社もやめろ、おれは革マルだ、やってやるからな」「黙ってばかりいるな!俺は革マルだぞ!」などという脅迫が行われたという・・・。もちろん被告らは否定しているが。
これでは言った言わないの堂々巡りになるが、それはともかくJR東労組側のサイトからも彼らの異常性が垣間見える。「えん罪JR浦和電車区事件を支援する会」には、「ハガキ行動」を拒否した、他の組合員とキャンプに行った、「ボーナスの3.15ヶ月なんて出て当たり前」などと組合活動にケチつけた、ウソをついていたなどの「Y君」の言動が記されている。要するに彼に対して因縁をつけた経緯を隠していないのだ。だいたい、なぜ「ハガキ行動」のような馬鹿げた慣習を拒否してはいけないのか?なぜ他の労組の組合員とキャンプに行ってはいけないのか?つーか「グリーンユニオン」主催のキャンプだったのならまだしも、JR東労組の組合員の中に「グリーンユニオン」の組合員が1人混じっていただけじゃねえか。それがなぜ組織を乱すことになるのか?また上述の「闘争委員会」の存在も隠していない。まともな神経があるのならこの5文字を見て、何に対して「闘争」するのか混乱するだろう。まさに「説得」などではなく「闘争」(イジメ)だったのだ。
しかも「344通信」の2009年11月30日号では、「Yへの説得は、グリーンユニオンからの組織破壊攻撃を跳ね返すための正当な活動だ!組合の団結権を否定するな!」などと開き直っている。
「Y君」がキャンプに行ったのが「グリーンユニオンからの組織破壊攻撃」なのか?お前らの「団結権」とは、こういうイジメを続ける権利なのか?全く笑わせてくれる。なによりもこんな事件になっても正当化しているのは恐ろしい。このように彼らは(被告もJR東労組も支援者も)全く反省していないのだ。
■ 無論彼らは組合脱退要求・退職要求を行ったことは認めていないが、実際に何が行われていたか示す重大な資料を彼ら自身が残している。「闘争委員会」の2001年2月28日発行「ニュース第5号」は、身の毛もよだつ恐ろしい内容である。
「2月13日〜16日の『**追及集会』において出席者全員で**本人に心からの怒りをぶつけてきましたが、相も変わらず無表情であり人間としての感情を持ち合わせているのか疑わざるを得ません。私たちの猛烈な追及に耐えかねたのか、ついに**本人の口から『東労組を脱退します』という言葉が発せられました」つまり「**本人」を取り囲んで怒鳴り散らし、組合脱退を要求したということか。これが「強要」でなければなんなのか?「脅迫」か?
「脱退は勿論言動・行動からすれば極めて当然のことではありますが、心から反省させるとして今日まできましたが本日2月28日に脱退届を提出させました。ただ脱退させればいいというものではありませんし、これからも**に対する追及の手を緩めることは決してありません」要するに退職を要求していく、ということであろう。
あまりの事実に言葉もないが、この「浦和電車区事件」は氷山の一角であり、JR東労組は各県で同様な事件を数多く引き起こしているという。
■ イジメの実態がJR東労組内部の文書からも窺えるのはこの事件だけではない。JR東労組の組合員である三鷹電車区の運転士が、仲間と芋煮会に参加したが、「グリーンユニオン」の組合員も参加していたことから、浦和の事件と同様に脱退要求や嫌がらせを受けることになったという。「三鷹電車区事件」と呼ばれている。
同労組の三鷹分会青年部発行の「炸裂 No.44」では、画像がちと荒くて読みにくいが被害者の実名を挙げて激しく罵っている。
「この確信犯め!これが天下のJRの労組がやることか?いい年こいた大人が同僚に対してやることか?まるで2ちゃんねるで実名を晒して侮辱するような調子ではないか。
皆さんもご存知のとおり、9月5日に武蔵五日市・秋川バーベキューランド付近で、?????会が主催する『イモ煮会』が開催されました。この会に**が参加していたことが発覚しました。
多数のブラックユニオンと一種に和気あいあいと酒なんか飲んじゃってさぞかし楽しかった事でしょう」
しかもこの連中は、被害者が助役から時刻変更・着発点変更・徐行区間などの重要な伝達を受けているときに取り囲んで大声を出したり、被害者が運転する電車とすれ違うときにパッシングしたり、信号機の前に4、5人で立ちふさがるなど妨害を続けたという。よく事故が起きなかったもんだ。情けないことに浦和の場合も三鷹の場合も、上司らは嫌がらせを目にしながらも制止しなかったという。
■ 「Y君」を組合から脱退させ退職まで追い込んだ梁次邦夫(大宮地本副委員長)、山田知(同青年部事務長)、上原潤一(浦和電車区分会長)、齋藤秀一(分会執行委員)小黒加久則、八ツ田富男、大澗慶逸ら7人は上述のように執行猶予付き懲役刑を受けた。正直言って執行猶予も未決勾留算入もいらなかったんじゃねえかと思うぐらいだ。
それにしても有罪判決を受けても自分らは弾圧されたなどと開き直るとは、本当にコイツらもJR総連も人間としての良心を持ち合わせているのか疑わざるを得ません。「Y君」を組合破壊者だ・裏切り者だ・ウソつきだと誹謗すれば誹謗するほど、人権侵害で有罪になったことを政治弾圧だと言いくるめれば言いくるめるほど、本当の被害者である「Y君」を傷つけるとは思わないのだろうか?
■ しかし、警察が馬鹿げた取調べを行ったのも事実だ(被告のブログ)。この事件はカクマルの内ゲバではなく職場での人権侵害なのに無駄なことをしてくれたもんだ。というか被告側に政治弾圧だと主張させるネタを与えてしまっている。
そもそも捜査を主導したのは公安だ。「Y君」の父親が浦和警察署に相談に行ったが「真剣に考えてくれないような感じ」だったのであきらめていたが、その後警視庁公安部が訪ねてきたという。
浦和署が相手にしなかったというのも腹立たしいが(たしかに警察は滅多なことでは動かないよな)、公安が動いたためにこの7人を裁けたことも事実だ。
公安がカクマル撲滅を目的にして捜査に乗り出したのでこの事件が摘発できた・・・とすれば、皮肉にも人権弾圧が目的の組織が人権侵害を摘発したことになる。
公安に言わせりゃ、サヨクは全てテロリストであり、日共すら監視の対象であり、百万人署名運動や杉並親の会は中核派であり、JR総連はカクマルなんだ。組織の維持のためにそうやって弾圧を続けているんだ。
もちろんJR総連と革マル派はいろいろと関係があるようだが、末端の組合員まで全てカクマルなわけがねえだろ?つかカクマルが何をしていようが関係ねえよ。これはJR東労組・JR総連の問題だ。夜勤明け、京浜東北線の車内でまさか事故なんか起こるまいと爆睡してる俺にとって、同僚を会社辞めろと脅すような人間が運転してるなんてシャレになんねえよな。この事件については一審判決確定は間違いないだろうがJR総連の体質が直ったわけではない。いまもJRのどこかの職場でこういう人権侵害が行われているだろう。マジでどうにかならんもんだろうか?
■ マイミクさんが教えてくれたことだが、かつて俺も活動に参加していた「南京への道・史実を守る会」や「撫順の奇蹟を受け継ぐ会」を仕切っている熊谷伸一郎氏(岩波書店編集者)も、この事件を冤罪だと主張する集会にパネラーとして出席していた(JANJANの記事はリンク切れ)。
また、彼がかつて編集長を務めていた雑誌「自然と人間」は、元々はJR総連から出版されていたという。この事件の特集も何度も組んでいたようだ。熊谷氏も参加している「八王子平和市民連絡会」には、JR東労組の組合員が数名参加している。 熊谷氏が浦和電車区事件やJR総連を本音じゃどう思うのか知らないが、連中にいい顔を見せておくのは彼のビジネスにとって必要なんだろう。
つーか彼がJR総連と関係しているのも驚くに値しない。中国の人権問題には一切言及せず、掲示板でもMLでも差し障りのある発言をする者はすぐ排除し、長年の同志でも簡単に排除する彼だから、ああそうなのか、と納得できる。せめて護憲とか平和とか抜かしてサヨク面するのは止めてほしいけどよ、まあそれが彼の商売だからな。これは熊谷氏だけでなくその配下と、カクマル・JR総連及びそのシンパ全てに言えることだな。
(参考:チラシ類)
※追記: 2012年2月6日最高裁は、浦和電車区事件被告の上告を棄却した。これによって被告7名の有罪判決が確定した(参考)。しかし被告らもJR東労組も全く反省していないようだ。被告7名はJRを懲戒解雇されたが、現在でもJR総連とJR東日本は彼らを専従職員として雇っているという(参考)。
それにしても毎月徴収される組合費を、こんな穀潰しのために使われ、さらに、「休みを半強制的に潰され」て裁判傍聴や集会に動員されてきた一般の組合員は気の毒だ。「もう、何のことだかわからないで駆り出されている社員も多い」という(引用元)。被告らの中には30代もいるようだが、それこそ「何のことだかわからないで」職場いじめに付き合わされたのかもしれない。ある意味被害者かもな。
ところで同労組の石井副委員長は上告棄却前に、以下のように語っていたという。
「考えてみれば浦電事件が起こってから、労使関係もギクシャクしてきましたので、そんなことも頭に入れて、これからのことを考えなくてはならない」(引用元)
上告棄却を見通して今後の方針を考えるということか。彼らにとって「労使関係がギクシャク」するのは困るんだろうな。労組と雇用側は「ギクシャク」どころか、絶対に相容れずに対立するのが本来のあり方、のはずだが、東労組はそれを望んでいないのだろう。
奴らは本来「弾圧」と闘うような組織ではない。それどころか権力や資本と結託して弾圧を招き入れるような性質ではないか?労働者を守るどころか、勢力拡大と職場支配のために労働者を犠牲にするような連中だ。
JR総連の母体である動労は国鉄分割民営化を前にして、自分たちの保身のために国労組合員ら多くの鉄道員を裏切り、退職・解雇に追いやった。一方で電力会社の労組を束ねる電力総連は、経営側と一体になって原発を推進し、危険な作業は下請孫請け会社の従業員に押し付けた。
こうして国内に原発が林立すると共に、企業は外注化を進め、非正規雇用労働者が激増した。政治家・官僚と資本家が進めたこれらの策動に、電力総連やJR総連などは協力してきた。これらのような組織の維持を全てに優先する労組が、政界財界と一体になって社会を歪めたのだ。
現在JRは検修・構内業務の全面外注化を進めようとしているが、JR東労組はこれを阻止するつもりなど無いようだ(参考)。JR東労組の組合員も行ったきりになる出向に出されるだろう。奴らは組織を守るため労働者仲間を裏切り、内輪の組合員さえ裏切るのだ。
先月の投稿でも書いたが、大企業の御用組合が労働者と社会に何をもたらすのか、労働組合とは本来どうあるべきか考え直さなければならない。現在、巨大企業JRの中で人数的にはごく僅かの労組である動労千葉だけが、JRが鉄道会社であることを放棄するが如き検修・構内業務の全面外注化を阻止するために闘っている。
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東日本旅客鉄道労働組合中央執行委員長殿