1月29日に東海道新幹線で停電が発生し(復旧に3時間以上かかった)、車両が立ち往生し乗客が缶詰になった事故の原因は、事故の直前に現場を通過した車両の、パンタグラフ部品のボルトつけ忘れだったという。
この車両は27日に、架線と接触し給電する「舟体」の交換作業が行われたが、その際舟体とアームを接続する4本のボルト全てをつけ忘れたらしい。このため舟体が脱落し跳ね上がったアームが補助架線を切断、停電させてしまったのだ(画像)。
車のタイヤの4本ないし5本のボルト全てつけ忘れて走り出せば、タイヤはすぐ外れて走れなくなるだろうが、この件は舟体が架線のテンションとアームの力で挟まれているのですぐには脱落せず、事故発生まで1000km以上走行していたという。なんともお粗末過ぎるミスである。車のタイヤのボルトをつけ忘れて走り出すようなバカさ加減ではないか?
◇ 東海道新幹線、架線切れ3時間余り不通 15万人に影響 (魚拓)
◇ 新幹線架線切断 原因はパンタグラフのボルト付け忘れ (魚拓)
◇ 東海道新幹線のボルト締め忘れ、ベテラン社員も見逃す(1/2ページ) (魚拓)
◇ 東海道新幹線のボルト締め忘れ、ベテラン社員も見逃す(2/2ページ) (魚拓)
◇ 東北新幹線で一時停電 パンタグラフに黒いすす (魚拓)
◇ 新幹線停電 パンタグラフ甘い検査 年に2、3回 舟体交換 確認項目なく (魚拓)
ところでJR東日本は4月から、構内・検修業務をあらかた外注化しようと目論んでいる。車両・線路・信号通信・電力設備の点検整備、駅業務などほとんどを外注化しようというのである。「JRは鉄道会社であることを放棄しようとしているのだ」。そうなれば、このボルトつけ忘れのようなお粗末なミスが多発し大事故につながる可能性が高まるだろう。上記はJR東海の事故であり、新幹線の整備は外注化する予定は今のところないらしいが、外注化がJRの安全性を大きく損ねるのは予想できる。
既に一部の業務は外注化され、かつコスト削減のため検査周期が伸ばされているが、レールの破断、車輪のフランジの異常な磨耗(脱線しやすくなる)が多発し、ディーゼルエンジンのエンジンオイルのホースと冷却水のホースを間違えて接続するなど信じられないミスも起きている。昨年12月には、東北新幹線の荒川橋梁付近で、作業のミスで資材が落下し孫請け労働者が死亡する事故が起きている(前進2425号)。
業務の委託、請負・・・などと言えば聞こえはいいかもしれないが、要するに仕事の丸投げであり、正規雇用労働者を減らして非正規雇用労働者に仕事を任せるということだ。現在でも新聞広告でJRの契約社員募集を見ることがあるが、この方針をさらに強めようとしているのだ。
JRは動労千葉との団交で、「(外注先の)作業責任者を介して指示等を行う体制を整備する」ことで偽装請負は回避できると回答した」(前進2425号)が、どんな小細工をしても事実上の偽装請負であり、派遣労働に他ならない。非正規雇用の拡大は雇用を不安定にし業務の質を低下させる。しかもJRは人名を預かる企業である。人件費削減のための外注化を許してはならない。
もう明日の話だが(俺は仕事で行けない)、代々木公園で動労千葉などの呼びかけにより「1047名解雇撤回、検修・構内業務外注化阻止、反合理化・運転保安確立」を訴える「2・13全国労働者総決起集会」が行われる。集会後、JR東日本本社に向けてデモが行われ、雇用を不安定にし安全性を疎かにするJR資本に怒りが叩きつけられる。
・・・余談だが、JRで最大規模のJR連合は検修・構内業務外注化についてどういうスタンスなのだろう、と思ってサーチしてみたところ、「JR連合安全指針U」では「外注化が技術の継承を阻害している」「正社員と契約社員の仕事の範囲が不明確」などと指摘しているが、別に外注化反対とは書いていない。
「JR連合・JR西労組共催 第3回安全シンポジウム報告」では、「JR連合 企画部長 荻山市朗」という人が、
「外注化について。我々の場合は、国鉄改革の経過もあり、人件費削減をかなり考慮して、いろいろ効率化に取り組んできましたが、ここで、外注化のポリシーをしっかりと持つべきだと思います」
と、わけの分からんことを述べている。
何度も言うが労働者が正規雇用と非正規雇用で分断されている状態を黙認しているようでは労働組合とは言えまい。(JR東労組と国労は検修外注化に反対しているようだ。どちらも動労千葉ほどの熱意は無さそうだが)
それどころか正社員同士の間でも(役職や階級以外の面で)待遇に大きな隔たりがある企業もあり、そんな差別待遇を黙認している企業組合もある。これはまた別記。
2010年02月12日
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いや、あの時はイラつくなんてものじゃなかった。本当に発狂するかとマジ思いましたw
この事故では停電になって空調まで止まったというから乗客も半端じゃない苦しみだったと想像できますよ。