26日のサンデープロジェクトは、立川弾圧事件と公安警察の特集だった(ビデオに録画して見た)。
昨年11月にテレ朝が問題の自衛隊官舎付近にて隠しカメラで撮影したところによると、確かに部外者立ち入り禁止の表示があるが、ピザ屋や寿司屋のチラシ配りなどが自由に敷地内に入っていた。もちろんお咎めなし。また、立川市も市内の全住居に、広報「たちかわ」を事前の許可無く配布している。
また、4人の入居者(代表者)からそれぞれ被害届けが提出されたが、それらは署名が違うだけで一字一句同じ文書だった。
一審の第二回公判で弁護側が、被害届けを出した入居者に対し、
「あなたが被害届けを出しに行かれたとき、もう被害届けが出来ていませんでしたか?」
「ただ署名をすればいいだけの状態になっていませんでしたか?」
と質問したところ、
入居者は「はい」と答えたという。
要するに被害届けの文章は警察が作成し、入居者は署名するだけだったのである。
またある代表者は、
「ビラ入れのときに取ったアンケートで、不安を訴える家族の声もあった」と証言したが、テレ朝が防衛庁から情報公開制度によって入手した文書によって、それが虚偽だったことが明らかになった。
「不安を訴える家族の声・・・」という文章は「立川署が作成した」と記されていた。警察が捏造したものだったのである。
これで、この事件について2年以上に渡るネット議論もいいかげん終息することだろう。警察は反戦ビラを投函する活動家を弾圧したいために「住居侵入罪」という難癖を考え付き実行した。そして被害届けを自身で作成し、住民に被害感情があったというガセネタをこしらえたのである。威力業務妨害という言いがかりで中核派のデモを弾圧した手法と同様である。
こういうせこい手口で弾圧を続ける「公安警察」という“Public Enemy”についても実に興味深い話があった。
2年前、ある国家公務員が共産党の機関紙をマンションの集合住宅のポストに投函したところ、「国家公務員法違反」だとして逮捕されてしまった。公安警察はこの人の行動を徹底的に尾行し、ポストに機関紙を入れるところをビデオで隠し撮りし、東京地裁にて証拠としてこの模様を流した。休日に演劇を見に行ったことまでチェックするほどの執拗な尾行は29日間続き、一日最大11人、延べ179人も動員する規模だったという。
元公安警察官の犀川博正氏は、自分でも隠し撮りは行うだろうと語る。
「どんな罪名でもいいから逮捕したい。ガサ入れ(家宅捜索)が出来ればセクションの中での自分の評価が上がる」
実際にこの弾圧事件で共産党は、千代田地区委員会などへ家宅捜索を受けた。
元公安警察の刑事という異色のタレント北芝健氏は、「公安は今でも共産党が暴力革命を起すと信じているのか?」という問いに対して、
「三つ子の魂百までという。人間は簡単に変わるものではない」と答えていた。
公安にとって左翼は永遠の仇なのだろう。もっとも「活動家のビラは有害性がある」という北芝氏の発言が、公安はテロリストも反戦運動家も同一視していることを示している。
「刑事警察は誤認逮捕をすれば当事者に謝罪し、処分もありうるが、公安警察は過ちを犯しても謝罪することはない。処分もない。出世とも関係ない」という特殊な性質を持つこの組織は、1945年の終戦に伴う特高警察の解散の後、同年の12月19日に内務省の中の「公安課」という形で誕生した。これは戦前の特高と同様に、「日共の幹部となり得るようなスパイを養成するのが目標」だったという謀略集団に育っていった。
戦後間もなくの下山事件、三鷹事件、松川事件などの怪事件は公安が深く関わっていたと見られる。松川事件では労組や共産党の関与が疑われ多くの逮捕者が出たが、後に冤罪だったことが明らかになり全員に無罪判決が出た。左翼を弾圧するための自作自演だったのかもしれない。
元公安の島袋修氏は、「警察と日共は水と油だ。互いに戦闘集団だ」・・・と指導されていたと語る。このような組織である公安警察は、一般の犯罪を捜査する「刑事警察」に対して一種のエリート意識があるという(実際に公安警察のエリート20人中15人も警察庁長官に任命されるなど、優遇されている)。
グリコ森永事件、朝日新聞阪神支局襲撃事件はいずれも未解決のままだが、公安が刑事警察を蔑視し、情報提供していなかったことも影響していると見られる。
「公安は、国を奪われないようにするための天下国家の仕事である」(前出、犀川氏)
「泥棒や殺人犯を捕まえなくても国は滅びないが、左翼を泳がせておけば国が滅びる」(島袋氏)
60年の安保闘争、その後の学生運動の興隆、東アジア反日武装戦線など一部過激派の暴走は、公安に予算・人員の拡大をもたらした。中核派vs革マル派の激しい内ゲバなど新左翼の分裂は、公安がスパイを送り込んで工作をしていたのではないかという疑惑もある。
もちろん右翼も公安の捜査対象なのだが、阪神支局襲撃事件で捜索を受けたこともある一水会代表・鈴木邦男氏は、
「公安の人に『鈴木さん、あなたも口ばっかりじゃないで男になってみたらどうですか?ギリギリで止めますから、共産党か日教組に突入してみませんか?』と、けしかけられた」(この逸話は週刊金曜日にも掲載された)
「右翼と公安は、極端に言えば一緒にお茶飲んでいるようなもんです」
と語る。
公安にとって右翼は少々人騒がせな集団に過ぎないが、左翼に対しては「国家転覆を狙っている」として敵視しているのだろう。
1991年のソ連崩壊・冷戦構造に伴う左翼運動の衰退によって公安は縮小を余儀なくされたが、1995年のオウム事件によって再び存在感を増すことになる。
公安はオウム信者に対して、偽名でホテルに宿泊したので「有印偽造」
ナンバー灯が切れていたので「道路交通法違反」
・・・などの「微罪逮捕」を繰り返した。(俺もハチロクに乗ってたころヘッドライトが切れて整備不良のシールを貼られたことがあるが、すぐ直したんで減点されなかった。ナンバー灯なんか切れっぱなしだったが酒気帯びの検問の時にも何にも言われなかった。つーか強化サス・爆音マフラーだったが全然注意されなかったでw)
この「微罪逮捕」は500〜600人に及んだが、そのうち起訴できたのは189人だった。公安がメンツの為に躍起になっていたことが窺われる。
しかしその後オウムは衰退し、最大のターゲットである日本共産党も議席数を減らしていった。左翼活動は全般的に衰退しつつあるという昨今の状況は、公安にとって厳しい状況であるはずだ。
しかし元公安の真田左近氏は、最近のビラ配布弾圧などの不当な行為ついて、
「自らの既得権を死守するために行っていること」だと指摘する。オウムを弾圧したような手法を踏襲し、テロ集団でも過激派でもない、市民運動をターゲットに弾圧を行う理由は、組織の維持が目的なのであろうか?
・・・さてこのシリーズ、そのうち続編があるらしいので楽しみにしている。「共謀罪の取材は共謀罪になる?」(田原総一郎)
2006年03月29日
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