1984年12月3日の深夜、インド中部の都市・ボパールの殺虫剤製造工場から、猛毒の化学物質が漏洩する事故が発生し、周辺の住民の命を奪った。設備のコスト削減を無理に進めたため、安全装置が機能しなかったとも言われる。
州政府によると死者5295人、負傷者56万8千人ということだが、地元NPOの調査によると死者2万3千人。ただし事故直後に川に投げ捨てられた人数はカウントされず、「政府は後遺症による死者の登録も途中でやめた」という。
■ 朝日の記者が現地を訪れたところ、工場の跡地では今でも異臭が漂い気分が悪くなるという。
「工場の廃棄物が、まだ土壌に残っている。周辺の地下水も汚染され、だれが処分するかまだ決着がついていない」(地元の警察官)
工場の敷地からわずか100mのスラム街に住むラッチョさん(60)は、「六畳ほどの掘っ立て小屋の隅に、まるで動物のようにうずくまっていた」。事故で全盲となり、今では精神に異常を来たしトイレも夫が世話をしている。「事故前はいつも身奇麗にしていた。事故から4〜5年ほどしたころから、脈絡のない受け答えをするようになった」(近所の住人)ラッチョさんがユニオンカーバイド社から受け取った補償金はわずか2万5千ルピー(約4万7千円)だという。
主婦のオムワティさん(62)は事故の夜、異変に気づいて目を覚ました。「家の中にもスモッグが漂い、ランプがロウソクのようにぼやけて見えた。目が痛くなり猛烈な吐き気が襲った」。1歳の娘を抱いて逃げたが、翌朝には「娘の目は風船のように膨らみ」亡くなった。11歳と9歳の孫は重度の知的障害があり、歩くこともできない。「汚染された地下水の影響ではないか」と医者に言われたという。自らも後遺症に苦しんでいる。「一瞬一瞬、生きているのがつらい。もう一度事故が起きれば、みんなで死ねるのに」
■ 6月7日ボパール地裁にて、事故を起こしたユニオン・カーバイド社の当時のインド法人幹部7人(全員インド人)に対し判決が下った。過失致死罪などで禁固2年、全員判決直後に10万ルピー(約19万円)を支払って保釈されたという。この軽い判決に法務大臣さえ「正義は事実上、否定され、葬り去られた」と嘆いたという。
アメリカ本社の当時の会長ウォーレン・アンダーソンには逮捕状が出ていた。インド政府がアメリカ政府に身柄引き渡しをもとめたが、04年に「十分な証拠がない」として拒否された。
「事故前に本社から調査団が来て、安全装置の不備を指摘している。本社側が知らなかったはずがない。大国のインド政府に強く言われれば、インド政府は今も昔も反発できない」(ボパール在住のジャーナリスト、ラジクマール・ケスワーニ氏)
また、インド政府は33億ドル(約2900億円)の損害賠償を求めて米連邦地裁に提訴したが、のちに「インドの問題はインドの法律で裁くべきだ」との判断でインドの裁判所に「移管」された。89年にインド政府とユニオン・カーバイド社が和解、4億7千万ドル(約410億円)を支払って和解成立、となった。よくあるような話だな。
「和解を仕切った裁判官がその後、国際司法裁判所の判事に任命されたり、刑事訴訟で起訴内容の軽減を決めた裁判官がユニオン社の基金の理事に就いたりしている。これでは米国側から賄賂をもらっていたのと同じではないか」(ケスワーニ氏) よくあるような話だな。
ユニオン社は2001年にダウ・ケミカル社に買収された。同社は事故の責任を認めていない。これもよくあるような話だな。
ちなみに、メキシコ湾で原油流出事故を起こしたBP社は、この事故に関わる総出費を、補償基金の200億ドルを含めて322億ドル(約2兆8千万ドル)と見込んでいるという(7月28日朝日新聞)。もちろんこの原油流出事故も恐るべき環境テロであり、BP社の全資産を没収しても足りないぐらいだと思うが、ボパールの事故では約2万人が犠牲になり、生存者も後遺症に苦しみ、有害物質も未だ除去されていない。BP社の322億ドルとユニオン社の4億7千万ドル、あまりに桁が違いすぎる。インド国会の野党はBP事故を例示し「米国の対応はダブルスタンダード。インドも外国企業には厳しい態度で臨むべきだ」と訴える。
■ ところで、アメリカや日本などの原発企業が、原発を持たない国々に売り込みをかけつつあるようだが・・・インドの国会では5月に「原子力損害賠償法案」が提出された。以下のような内容だという。
1. 設備を運営する電力会社が被害者に支払う補償金の上限は50億ドル
2. 設備の供給会社に重過失があった場合、電力会社は支払った補償金を肩代わりさせることができる
3. 被害者が補償金を請求できるのは事故から10年以内
しかもこの法案では被害者が直接、海外の企業を訴えることができない。トンデモないことである。野党は「ボパールの悲劇を繰り返す」と反発、補償金の上限の大幅な引き上げや請求できる期間の延長を求めている。
ところがアメリカ政府にとって、この法案すら許せないもののようで、自国の設備供給会社に高いリスクが及ぶことを恐れて2の部分の削除を求めている。こんな内政干渉を恥じない国の企業に進出してほしくないよな。
7月下旬の国会で再び審議の予定ということだが、「いくら二国間の原子力協定が成立しても、この法律が成立するまで、米国も日本も原子力関連の設備をインドに輸出することはできないだろう」(インド防衛研究分析機構)。
それにしても東芝とか三菱みたいな糞企業が海外に原発の技術を持ち込み大事故を起こしても、現地の国にこんな法律があれば、あるいは2の部分すら存在しないようなひどい法律があれば、責任逃れは容易であろう。第二・第三のボパールの惨劇が発生しても被害者は泣き寝入りを強いられるのだ。
しかし、アメリカ帝国主義が他国の人間をいくら虐殺しても涼しい顔してるのは当然かもしれんが、国家というものは自国の国民の生命よりも、企業の利益や軍事的・経済的な結びつきの強い国の立場を優先するものだ、ということがよく分かった。再確認した。それはともかく、原因企業、アメリカ政府、それに尻尾を振るインド政府・司法を、絶対に許してはならない。ボパールの惨劇はまだ終わっていない。
参考:
◇ 印地裁、米化学大手幹部に禁固刑 ガス事故、26年ぶり判決 (魚拓)
◇ ボパール化学工場事故 - Wikipedia
◇ 史上最悪の化学工場事故から25年 ボパールの悲劇は終わっていない AMNESTY INTERNATIONAL JAPAN
◇ 人類猫化計画 インド「ボパールの悲劇」に26年ぶりの判決
◇ 三菱原子燃料、海外原発向けを開拓 (魚拓)
◇ 東京電力・東芝など6社、原発を海外に提案する新会社設立に向けて準備室を設置 (魚拓)
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でも後半の原発施設の件は、東芝や三菱は設備を売るだけで運用は現地の法人かあるいはインド政府なんでしょ?仮に事故が起こったとしたら責任とるのは運営主体でしょ。
この2つを一緒くたにするのは無理がありすぎる。
アメリカは内政干渉を行っていない。
内政干渉内政干渉と中国みたいな事を言うのはよくない
もし売った製品・システムに欠陥があれば、メーカーも責任を問われるのは当然ですが?「もんじゅ」の事故のように。
たとえば、病院の医療機器に欠陥があって患者が死ねば、病院だけでなく医療機器を製造したメーカーも責任を問われますよ
帝国主義のほぼ逆の道を進んでるのに、自国民の生命や安全より、企業の利益より、同盟国より、平和よりも与党政治家個人の利益と見栄が優先される国もあるらしいですよ。
なんでも、ちょうど地球を一周したところにある国だとか。
ええ、戦後64年ほとんど与党だった政党のおかげでそうなりましたw