2006年04月02日

≪安保条約では米こそ受益者≫

4/2の朝日投書欄より引用。
山口県岩国市の米軍基地再編の住民投票で反対が9割近くを占めても、小泉首相は「日米合意に変更はない」と明言した。住民の声は無視された。
政府は口を開けば、日米安保条約があるから米国が日本を守ってくれているのだと力説する。しかし、私は常々、守られている順位は逆で、日本列島の地理的条件が米国を守っていると思っている。
世界地図を広げれば一目瞭然、日本はアジアの要に位置している。目の前にはロシア、中国、北朝鮮が並んでいる。米国の世界戦略上、最も気になる国々で、監視や威圧をするには絶好の位置にあり、日本は「不沈空母」なのだ。
米国は自国を守るために安保条約を利用しているのだから、日本は一方的に庇護されているわけではない。地位協定の問題や経済的な支援要求に対して、決して卑屈な姿勢をとる必要はないのだ。
日本は独立国である。「ポチ」「属国」「日本州」などと揶揄されることなく、誇り高いサムライ日本を取り戻してほしい。
亀の甲より年の功・・・というが、この76歳の人は日米関係を見事に看破した。今まで俺は「安保条約は日本にとって危険」とか「東アジアの緊張を不用意に高める」などと書き散らしてきたが、この人のように具体的なことを書けなかった。
日米安保条約はアメリカのためにあるのである。日本を守るつもりなんかないのである。戦前の日本が「満州は日本の生命線」と称したように、アメリカにとって日本は東アジアに於ける防御線なのである。もとい、アメリカの世界戦略のための前線基地なのである。アメリカが他国を侵略するために、日米安保条約があるのである。(実際にベトナム戦争に於いては日本の米軍基地は重要な中継地になった)
それでも、安保があるお陰で中国・ロシアの侵略を受けない・・・と反論したい人もいるだろう。それももっともだが、それは現在のイラクが周辺の中東諸国から侵略を受けることはないことと同じである。戦前の朝鮮半島や中国東北部が(終戦末期までは)ソ連から侵略を受けることはなかったことと同じである。
現在のイラクはアメリカに守られているのではない。戦前の朝鮮半島や中国東北部が日本に、守られていたのではない。侵略を受けて占拠されていたのである。
現在アメリカ軍の勢力下にあり、「米軍再編」によってさらに厳しくアメリカ軍への従属を強いられようとしている我が国は、アメリカの属邦に近いと言えるだろう。つーか建前上は独立国のはずである。「ポチ」「属国」「日本州」などと揶揄されることなく、誇り高くなくてもいいから真の独立を取り戻してほしい。
posted by 鷹嘴 at 23:31| Comment(7) | TrackBack(1) | アメ公 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>日米安保条約はアメリカのためにあるのである。

 日米安保条約が、アメリカに日本の防衛を義務付けているのに対して、日本にはアメリカの防衛を義務付けていないという、極めて片務的な条約である以上、アメリカにとって何らかの「旨み」が無ければ、アメリカは条約を締結しないでしょうし、そもそも米連邦議会が承認しなかったでしょう。
 日本の防衛にアメリカが寄与することが、結果的にアメリカの国益にもなっているからこそ、日米安保が成立するのです。アメリカは慈善事業で軍事力を提供しているのではありません。

>それでも、安保があるお陰で中国・ロシアの侵
>略を受けない・・・と反論したい人もいるだろ
>う。それももっともだが、それは現在のイラク
>が周辺の中東諸国から侵略を受けることはない
>ことと同じである。

 国家間の関係とは、戦争か平和の2種類しかないわけではありません。「戦争には至らないが、平和でもない」状態、例えば、軍事力を背景にした強制外交などは、世界中に事例を見ることができます。仮に、日米安保によって日本への侵略が抑止されているのではないとしても、日本が、アメリカ以外の大国や軍事国家からの恫喝に屈せずに済んでいる理由を、いかにして説明できましょうか。そもそも、アメリカの「核の傘」を抜きにした場合、日本が独自に持つ防衛力などというものは(ハード面でもソフト面でも)極めて限定的であり、そのような日本が例えば中国のような核保有大国と対等な立場で外交交渉を行なうことも、本来であれば不可能でしょう。
 アメリカに対して反旗を翻すことは、確かに、「対米自立」とはなるかもしれませんが、その結果、日本が、アメリカ以外の大国や軍事国家に対して、「ポチ」「属国」「日本州」として屈服を余儀なくされる可能性もある以上、本末転倒ではありませんか。少なくとも、日本が独力で現在の国際的地位を保つことがどれほど困難であるかは、自覚しなければならないでしょう。
Posted by NISSHA at 2006年04月03日 00:33
防衛は、いつでも錦の旗でありますが、本当に大事なのは誰が血を流すのか、ということだと思います。

インテリぶった主張には、自分は安全な場所で修羅場を傍観するんだ、というのが見え隠れする。

俺は、国のために戦うのはナンセンスと考える。白旗降伏するのが正しい選択でしょうね。
中国や北朝鮮が、日本に攻める利点って有りますか?
具体的に教えて下さいよ。
危機を煽ることで、儲かるのは誰なのか。
戦争とは、経済政策の延長なのですよ。
Posted by 死ぬのはやつらだ at 2006年04月03日 03:19
白旗降伏する→尖閣島その他諸々の利権を奪取される。
イラクがそうされたように。
Posted by qwert at 2006年04月03日 08:15
> 少なくとも、日本が独力で現在の国際的地位を保つことがどれほど困難であるかは、自覚しなければならないでしょう。

いつも思うのですが、キューバは冷戦が崩壊した後もアメリカにすり寄るようなことはなくて立派だと思います。
Posted by ノンポリ at 2006年04月03日 21:58
「アッテンボロー」の尖閣諸島についての記事。

http://rounin40.cocolog-nifty.com/attenborow/2006/04/post_e275.html
Posted by ノンポリ at 2006年04月03日 22:05
歴史で領土が決まるだなんてバカな。
それではドイツやチベットの領土は回復しなきゃならないだろうが。
昔から領土は条約で決まってきた。
サンフランシスコ条約を受け入れる代わりに日本は独立ができた。
西側諸国が勝手に決めたものであっても、中ソがそれを拒否できなかったのであれば、結局は有効なままだろう。

まぁアメリカは牛はともかく、領土ではまだ日本のことを分っているから中国の言い分を撥ねつけられるわけだが。
Posted by qwert at 2006年04月04日 01:20
ノンポリ氏
>いつも思うのですが、キューバは冷戦が崩壊し
>た後もアメリカにすり寄るようなことはなくて
>立派だと思います。

 「立派」であるかどうかは主観の問題ですので、私はコメントする立場にありませんが、キューバが冷戦後もアメリカに対して距離をとっていることの意味合いは、「その必要がないから」ということに尽きると思います。
 今もカストロが政権を掌握している以上、アメリカに対して融和的になるということは、大きな政策転換を意味しますし、今そういった転換をしなければならないほど、独立が侵されそうな危機にあるわけでもありません。

死ぬのはやつらだ氏
>中国や北朝鮮が、日本に攻める利点って有りますか?
>具体的に教えて下さいよ。

 貴下や私が、「中国や北朝鮮が、日本を攻めることの利点」の有無を論じたところで、それは結局、貴下や私の主観にしか過ぎません。
 これは全ての国家間関係について言えることではありますが、中国や北朝鮮が、日本に対してどのような外交戦略をとるか、ということに対して、日本は常に受身でしかありえないのです。日本国民の意志に基づいて中国や北朝鮮の政策決定が行なわれるわけではありませんから。
 確かに、様々な要因から、中国や北朝鮮が、日本に対して大規模な侵略を行なう確立は、高くは無いと思われます。しかしながら、中国や北朝鮮の政策決定が、常に合理的な判断をするとは限らないわけで、サダム・フセインのように、彼我のパワーの差を読み違えたり、日本帝国のように、賭けに出たりすることもあるわけです。
 外交上、相手国の出方には不確実性が付きまとう以上、「相手が攻めてこないから、こちらは何の準備もしなくてもよい」という主張は、そもそも議論の前提を見誤っています。中国や北朝鮮の政策決定を、自らの主観によって置き換えて議論を行なう一部の「非武装中立」論者こそ、主観主義的で、地球が自分を中心に回っているかのような驕った姿勢がが見えると、私は思います。

>本当に大事なのは誰が血を流すのか、というこ
>とだと思います。

 私もそう思います。軍人が、結局は政治の決定に従って、駒となって使われる以上、現場を知らない理不尽な政策決定は、軍人に死を強要することにつながります。軍人も人間であり、国民である以上、政治が軍人に対して理不尽な要求をすることのないように運営されなければなりません。

>戦争とは、経済政策の延長なのですよ。

 経済政策のみではなく、全ての政策の延長が戦争です。外交の最終手段と言ってもいいでしょう。
 もちろん、前述したように、戦争に至らない段階においても、軍事力を背景に外交が行われることは十分ありえますが。
Posted by NISSHA at 2006年04月04日 17:22
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Tracked: 2006-04-03 00:34