2010年11月12日

TPPで日本壊滅!

 昨年、FTA(自由貿易協定)について岩波「世界」の記事(08年5月号)より引用して投稿した。FTAは二国間で関税を撤廃するものだが、いま話題になっているTPP(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement 環太平洋戦略的経済連携協定)(参考)は、加盟する国々全てが関税を原則ゼロにしてしまうという協定である。これが「グローバリズム」というものだろうか。国内産業を守る砦の関税を無くそうというのだから恐ろしいことだ。こんなものが成立すれば日本の農業は壊滅し「食糧自給率は限りなくゼロに」近づくであろう。


 TPPは2006年5月、ブルネイ、チリ、ニュージーランド、シンガポールの4ヶ国が参加し発効した。さらにアメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアも参加に向けて交渉中、カナダも参加に関心を示しているという。これに日本も参加しようというのである。現在開催中のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の主要な議題である。
 またTPPは関税の撤廃・貿易手続きの簡略化だけでなく、保険業など金融サービスに於いても国家間の障壁を低くするものである。民主党のプロジェクトチーム会合でも「自由化で米国の民間医療保険も入ってきて、国民皆保険制度にも影響が出る」という反対意見が「続出」したという(11月3日東京新聞)。まさに売国への道だ。

 関税がゼロになるというのは自動車・家電製品などの製造業にとってはたしかに魅力であろう。既にライバルの韓国は先月、EUとFTAを署名した(つまり韓国の工業製品の関税が撤廃される)。さらに韓国はアメリカともFTAの交渉中だという。戦後の日本経済は工業製品の輸出によってここまで拡大してきたわけであり、財界は世界の流れに取り残されてはならないという焦りを感じているだろう。
 しかし農業はどうなるのか。日本の農業が、TPP参加国&参加を検討している国々からの輸入品に勝てるのと思うのか?オーストラリアやアメリカの農家と日本の農家はまるっきり規模が違う、生産力が違う。比較にならないほど安価で供給される。だいたいTPP参加国&検討している国々はアメリカと日本を除いてお世辞にも「工業先進国」とは言えない。各国の安価な農作物が怒涛のように日本市場を席巻するだろう。
 たとえば(9日、日テレの「ミヤネ屋」で出た話)、現在輸入米の関税は778%だが、アメリカの米作農家は「コシヒカリ」などのブランド米も生産し、日本市場参入も期待しているという。農林水産省の試算によると現在の日本の米10kgの値段は平均2450円だが(これは安すぎる気がするが)、もし関税が撤廃されればカリフォルニア米は10kgが700円程度で販売されるという!アメリカで日本人の好みに合わせた米が生産され、関税ゼロで日本に輸入されれば、国産米は市場から消える。貧乏な俺も当然安い方を買うだろう。
 しかし「ミヤネ屋」ではこういう恐ろしい現実に言及しながらも、キャスターもゲストも「日本の農作物の特色を生かして国際競争に勝つべきだ」などと夢のような言葉で締めくくっていた。実際に「TPP大賛成、現在でも自分たちの輸出するブランド米は現地生産の米より10倍も高い値段なのに売れている」という強気の生産者もいるようだが、そんな競争に勝てる生産者はごくわずかだろう。

 11月4日の日本経済新聞「いまTPPに参加すべきか」という特集では、経済同友会代表幹事の桜井正光氏が賛成の立場で、全国農業共同組合中央会理事の冨士重夫氏が反対の立場で主張している。
 冨士氏は次のように指摘している。
「すでに農業分野は十分(国際市場に)開かれている」(高い関税で守られているのは米・乳製品・小豆など一部で、農作物の平均関税は12%)
アメリカと競争しようとしても「地形などの条件が違う」ので土台無理な話
小麦や乳製品などは輸入品と同じ価格でも「供給量や利便性で輸入品が」優位だ
「品質格差がある牛肉にしても価格差が2倍、3倍もあると厳しい。生き残れるのは一部の特定産地だけだ」
もしTPPなどに参加すれば国内農業の生産量は大きく減り、「政府が掲げる食糧自給率向上の目標と矛盾する」
「他国に食料供給を頼って自国の農地を潰してしまうのも食糧安全保障上、不安がある」

・・・この冨士氏の指摘に有効な反論など存在しないだろう。現在でも就業人口260万人、平均年齢65歳!という危機的状況にある日本農業に、TPPという大津波が襲おうとしている。以前引用したがブッシュが日本へあてつけるように、
 「食糧自給できない国を想像できるか。それは国際的圧力と危険に晒されている国だ」
 と語ったことを忘れてはならない。
 不況・雇用低迷に打つ手が無く先日のアメリカ中間選挙で大敗したオバマ民主党は、日本に対し性急なTPP参加を迫っている。日本の「食糧安全保障」を犠牲にして政権を維持しようとしているのだ。日本の財界や菅民主党はこれに従おうとしている。
 日本の食糧自給率は現在でも40%程度である。TPPに参加すれば農林水産省の試算でも14%まで落ち込むという。我が国の「安全保障上」、絶対にTPPに参加してはならない。

 一方桜井氏は次のように主張する。
TPPは今後、「ヒト・モノ・カネの移動を巡る世界的なルールとなる」
韓国に遅れをとってはいけない、アメリカと協力して「自由経済圏」を築くべきだ
農業が「相当な痛手を被る」ことになるが、農業強化に必要だと試算される数十兆円も「思い切って使い、農業を産業化する必要がある」
  (どこにそんな金があるんだ?)
具体的には農地の売買賃借を容易にし、企業参入を容易にし、「大規模化」するべきだ
  (そうなれば個人農家は壊滅し、生産力アップのために農薬に強い遺伝子組み換え作物を使おう、という流れになるだろう)

 しかし、それで日本の農業に競争力はつくか、という疑問に対し桜井氏は、
 「すべてを生き返らせるのは難しい。政府は自立できそうな分野と補助金をつけて残す分野、やめるべき分野を選別して戦略を立てるべきだ」
 と言い放つ。農業を産業の一分野としか捉えていないようだ。桜井氏にとって農業も、国際競争に敗れれば「やめるべき分野」なのか?これが桜井氏の本音だろうな。

 TPPに双手を挙げて賛成している新聞もあるだろう、と思ってゴミ置き場を漁ってみたら日経のこの記事が見つかったわけだが、全く期待通りの記事を書いてくれている。この両者の意見とは別に「編集委員 吉田忠則」氏の見解も添えられているが、完全にTPPに賛成する主張である。
 (TPPについての議論を)「農産物市場の開放問題に矮小化すべきではない。TPPは関税引き下げだけでなく、知的財産の保護や政府調達、投資条件の改善など幅広い分野を対象にしている。そのルール作りに日本が参加できるかどうかが問われている」
 「交渉を進めるのは米国。1年後の妥結を目指し米国が交渉を急ぐ背景には台頭する中国とどう対峙するかという、日本が直面しているテーマがある。もはや日本だけでは対処できない課題だ」
 「安い農作物の流入を農家が懸念するのは当然。だが普通の産業なら競争力のない企業は退出するのに、なぜ農業は守るのか。その点を整理し、保護策と競争力の強化策を区別して検討する必要がある」
 結局桜井氏のような財界人にとっても日経編集部にとっても、農業は自動車製造や家電製造のように産業の一分野に過ぎないのだ。日立がパソコンから撤退したように、ソニーがウォークマンの国内出荷を終了させたように、農業が利益の出ない産業ならば撤退すればいいのだ。農業の保護など「矮小」な話なのだ。それにしても国と企業を一緒くたにしないでほしい。

 そりゃ日本経済が永久に世界市場の中で一定の勢力を保てるなら、それこそ国内農業など全廃し全て輸入に頼ってもいいのかもしれないけどさ。2、3年後にどうなってるか分からないくらいなんだけど。普通、自分の勤務先が経営破綻して給料出なくなれば退社して違う会社を探せばいいが、農業分野から撤退して工業分野一本に絞った「日本株式会社」が経営破綻したら、「社員」たる国民はどうなるのか。飢えて死ぬだけだ。せめて食い物さえあればなんとか生きていけるだろうけど。
 一昨年の「リーマンショック」は、いわゆる「先進国」が展開している大量生産・大量消費型経済など、いつなんどき転覆するか分からない脆弱なものであることを示した。それどころか「レアアース」なるものの生産が滞っただけであたふたする程度のものである。実際に遅かれ早かれ破綻が来るのは見えている。TPPなるものは、「先進国」が主導する世界経済に死期が近づきつつあるのに、これを延命させようとする悪あがきに過ぎない。これに日本政府・財界も飛び込もうとしているのだ。
 このように農業を単なる斜陽産業と見ている連中と一緒に餓鬼道に堕ちるのは御免だ。農業を他の産業と同列に扱うべきではないのだ。国内の水資源が枯渇すれば「ボルヴィック」や「エビアン」を輸入すればいい、というものではないのと同様に、農業とは人間が生きていくために何事にも代えがたい、命の綱ではなかろうか。尖閣諸島事件では国家主権を放棄し、そしてTPP参加によって国民の命の綱を断ち切ろうとする菅、仙谷らはまさにこの国を中共やアメリカに売り渡そうとする「売国奴」である。「売国奴」という言葉はこいつらのために作られたと思えるほどだ。
 さらに売国奴・菅は韓国に対抗するためにEUとのEPA(経済連携協定)締結を目指すという。日本の工業製品の関税撤廃の条件は、「食品や工業製品の安全基準認証の簡素化など、非関税障壁の撤廃」(*注)だという。売国奴どもにとってはこのような(国民の生命を脅かすような)条件など気安く受け入れるだろう。
 EPAだのFTAだのTPPだの横文字の頭文字ばかりではぐらかされているような気分だが、わざわざ国内農業を壊滅させるような国際協定は断固拒否しなくてはならない。
 もちろん国家資本にとっては、工業製品輸出だけが頼りの日本経済の延命のために成立させたいものなのだろう。しかし、需要を無理矢理起すため工業製品を生産しては廃棄し、食糧を廃棄し環境を破壊し、非正規雇用労働者・外国人労働者から搾取し続けなければ維持できない「先進国」経済など、なにをどうあがいてもあと5年持つか10年持つか、くらいの違いではないか?


*注: 非関税障壁とは、政府が関税以外の方法によって輸入を制限することで、「輸入数量制限、輸入課徴金、製品企画の基準・認証制度・輸出入時の検査手続きの厳しさ」などがある。日本の関税は既に特定分野を除いて低いが、海外からは「日本の基準・認証制度は煩雑で非関税障壁となっている」と批判を受けているという。
 日本はEUとのEPA交渉にあたり、
 「自動車・液晶テレビなど高関税品目の関税の撤廃・削除」を要求。
 EUは日本に対し、
 「建築用木材の強度認定手続きの簡素化」
 「自動車や医療機器などの安全基準の認証手続きの簡素化」
 「政府調達の情報公開など非関税障壁の撤廃」
 などを求めている。11月11日の日経新聞より引用。そういえば日本の林業は木材の完全自由化によって破綻し、山が荒れ放題になったんだよな。

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posted by 鷹嘴 at 00:49| Comment(0) | TrackBack(1) | 政治ニュース | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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