2010年11月26日

労働教養制度=政治犯の強制収容所

 2010年10月8日、中国で服役中の人権活動家・劉暁波さんのノーベル平和賞受賞が発表された。劉暁波さんは天安門事件の時代からの活動家であり何度も投獄されたことがあり、今年2月には「国家政権転覆扇動罪」で懲役11年が確定した。
 権力がこの仰々しい名前の刑を科した理由は、政府に対し人権の尊重・民主化・公職選挙制・言論の自由などを求め、ネット上で発表された08憲章の起草者の一人である、ということだけだ。
 ネット上に自分の思うところを書き込んだだけの者に刑罰を与えるとはあってはならないことだ。世間のネット論者はこれを他人事だと思ってはいけない。劉暁波さんを直ちに釈放するよう、訴えなければならない。

 ところで今月中国で、08憲章に署名していた人権活動家の女性がネット上の書き込みを理由に逮捕され、1年間の「労働教養所」送りとなった。
◇ 中国、民主活動家を拘束 ネット書き込み理由に…2010年11月16日23時17分 (魚拓)
 ネット上でありふれているような書き込みが、弾圧の口実にされてしまったという。劉暁波さんや胡佳さんは(不当なものとは言え)有罪判決を受けて服役しているが、彼女は起訴されることもなく1年間も収容されるのだ。この労働教養制度とは、思想犯などを裁判も行わず最大3年間収容する恐ろしいものである。

 (以下、9月24日朝日新聞より引用)2007年3月、北京市の中国中央テレビ前で、「投資した会社の倒産処理をめぐる政府への抗議デモ」が行われていたが、開始から15分ほど経ったとき、リーダー格と見られた女性一人が当局に拘束された。何度もそこで同じデモを行い、この日も事前に警察にデモの時間を伝え、警官が同行していたという。要するにわけも分からず突然逮捕されたのだ。
 彼女には容疑事実も告げられず、裁判も行われないまま、4月に「社会秩序を乱した」として1年9ヶ月の労働教養所送りを宣告された。
 「警察は罪を認めれば釈放すると言った。でも私は(何の罪かも分からず)認めなかった。起訴できないから、労働教養になったのだろう」

 彼女は北京市郊外の施設に移送され、看守に「しゃがめ」と命令され髪の毛を短く切られた。ダブルベッドのある12人部屋に収容された。70歳の法輪功信者もいた。翌朝顔を洗ったとき首を水で拭こうとすると「いつ首を洗うことを許可したのか」と怒鳴られた。許可を求めたが認められず。
 「罪人でもないのになぜこんな目にあうのか。ひたすら服従を強いることで、人間としての尊厳を徹底的に打ち砕くやり方だった」
 ところが彼女の境遇は「罪人」以下だった。食事は1回15分、トイレ使用は1日4回で時間指定、なぜか朝一番は大便禁止。時間に間に合わず大便を漏らしたこともあった。割り箸を袋に入れる作業のノルマは一人で1日1万個、報酬ゼロ。夜12時まで作業させられることも。教養もクソもない、資本のための単なる奴隷労働だ。看守の機嫌を損ねると壁の前に一日中座り続ける罰を受ける。しゃべるのも身動きするのも禁止。別の収容者二人が両脇を挟み込んで監視。
 翌年12月に釈放されたとき、体重は59キロから43キロに減っていた。精神に異常をきたさなかったのは、「歴史の証人になろうと心に決めたからだと思う」。この体験を約300ページの文章にまとめたが、出版のあてはない。

 別の女性は自分の勤務する政府機関の腐敗を匿名で告発したところ、「正常な業務を邪魔した」という理由で04年から1年間収容され、30人部屋に押し込まれた。身の回りのものは出入りの業者から買うが、トラブルが起こると連帯責任を負わされ業者が入れず、生理用品を買えないこともあった。
 「刑務所よりひどい、人権などどこにもない地獄だ。もう二度とあんな経験はしたくない」

 こういう施設は中国全土で約350ヶ所あり、収容者は約16万人、政府に抗議するデモや「上訴」する人々が収容されるケースが多い。
 「警察にとってこんなに使い勝手のいいものはない、『社会秩序を乱した』といった極めて曖昧な理由で裁判もなく政府に文句をいう人は誰でも勾留される、早急に撤廃すべきだ」(元弁護士の江天勇氏)
 一方、「政府系シンクタンクの中国社会科学院の劉仁文教授」という御用学者は次のように述べる。
 「改革の必要性ではみなが一致している。ただ中国の刑法には(犯罪のある者を収容するような)『保安処分』の規定がない。法治の要求にあった何らかの方法が必要だ」
 要するに反政府デモをするような奴、ネットに変なこと書き込むような奴は事前に収容所送りにしておこう、ということかね?

 かつてはこの制度も「全国人民代表会議」で改革が検討されていたらしいが、1999年に法輪功信者が北京の政府・共産党の中枢機関がある「中南海」を取り囲んで座り込みをして以来、「これを機に政府による制度廃止の動きはピタリと止まった」という。ある当局者は「労働教養制度は、まだ、その存在価値が十分にある」と語る。中国には法も正義も人権もへったくれもない、ただ体制を守れればいいだけなんだ。

 一党独裁政権を維持するためにナショナリズムを煽り、ガス抜きのために反日デモを容認しつつも、気がつけばデモ参加者が「多党制を認めよ」などと政府への抗議を始める皮肉な情勢の中で、共産党政権は言論弾圧を強め、この制度にしがみついていくだろう。こんな無茶な支配には遅かれ早かれ限界が訪れるが、少しでも早くこの政権を崩壊させるために、少しでも早く不当に勾留・投獄されている人々を救うために、全世界から厳しい抗議を集中しなくてはならない。
posted by 鷹嘴 at 00:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 中国の人権問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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