100年前の1911年1月24日と25日、「大逆事件」で有罪判決を受けた幸徳秋水ら12名が処刑された(死刑判決を受けた24人のうち12人は無期懲役に減刑)。実際に天皇暗殺計画に関わったのは4、5人という、恐るべき弾圧事件だったのだ。
もう2月になっちまったが、1月23日東京新聞【こちら特報部 非戦僧侶に汚名・獄中死 冤罪生む構造変わらず】より引用。朝日止めて東京にしたせいで新聞の切り抜きがやたら増えていく・・・。
愛知県一宮市・圓光寺の住職の大東仁さんは、この弾圧事件の被害者となり獄中自殺した真宗大谷派の僧侶・高木顕明の足跡を研究し、「大逆事件と真宗僧侶 高木顕明の平和と平等」(仮題)の出版を準備しているという。
高木は1864年愛知県清須市で生まれ、小学校教員の後に和歌山県新宮市・浄泉寺の住職となった。檀家には被差別部落出身者が多かったという。高木には元々「差別意識があり戦争も賛美していた」が、「住職として人々の生活苦を目の当たりにするうちに『徐々に考え方を変えた』。(大逆事件の被害者として有名だが)『仮に弾圧がなくても立派な僧侶だった』。
『町の人の生活を見て、これでは駄目だと思った。例えば亡くなった遊女が行き倒れのように捨てられるのを見て、高木は廃娼運動を起した。理論より人と出会って動いた。貧乏な人がもっとひどい目に遭うのが戦争だと気付き、日露戦争にも反対を貫いた』
1910年、そんな高木を国家権力の魔の手が襲う。長野県の機械工で社会主義者だった宮下太吉が、天皇暗殺のために爆破実験を行っていたとして逮捕。これが大逆事件の発端だった。幸徳秋水もこの計画に関わっていたという容疑が「捏造」された。高木も、幸徳と親交のあった大石誠之助からこの計画を伝えられたとして逮捕された。ありていに言えば反体制勢力を一掃するため、天皇暗殺計画の摘発を利用し、冤罪を押し付けたのだ。
当時の「大逆罪」は、実際に皇族に危害を加えなくとも、その計画を立てただけで死刑となる恐ろしいものであった(まるで共謀罪だな)。高木は死刑から無期懲役に減刑されたが、14年に秋田監獄で自殺、享年五十。
大逆事件とは、国家権力が幸徳秋水のような社会主義者や無政府主義者を根絶やしするために、天皇暗殺計画とは無関係な者まであらぬ罪を着せた「とされる」が、高木自身は『本来の社会主義者とは異なっている』という。
『当時は平和や平等を説く仲間が社会主義者しかいなかったから友達になった。ただ、彼の主張の根底にあるのは仏教。社会主義の理論を学んだわけではない』
これ、現在にも通じるよな。俺みたいな極端なのはともかく、ネットでちょっと日本やアメリカの戦争犯罪を口にしただけで、やれサヨクだ反日だ過激派だマルクス主義者だとレッテルを貼られるし、公安にとっては権力になびく日共も、ごく普通の市民団体も、監視対象だもんな。国家権力にとって、高木の思想自体はともかく政治・体制に批判的な者だから抹殺する必要があったのだろう。
言うまでもなく当時の世論は、戦争反対の主張や社会主義を嫌悪していた。国家権力にそのように操縦されていたのである。仏教会もそういう世情に媚びていた。『大谷派も日露戦争で、開戦を決める御前会議よりも前に、戦争協力の部署をつくった』。大谷派は弾圧された高木を永久追放にし、しかも宮内大臣に「事件の反省と今後も国家に尽くす決意を表明」する手紙を送ったという。
大谷派が高木の名誉を回復したのは1996年。大逆事件の再審請求は67年に却下された。しかし苦労しながら高木の資料を集め研究を進める大東さんは『法的な名誉回復は難しくても、実質的な名誉回復が目的。周囲が高木の生き方から、プラスの面を学び取ってくれれば』と語る。
「大阪地検による厚生労働省の文書偽造事件で、証拠改竄が発覚したのと同様、権力者側が都合よく犯罪者をつくり出した大逆事件の構図は冤罪が絶えない現代にも通じるという。大東氏はこう訴えた。
『警察や検察が事件や証拠を捏造することは今もあると思う。だからこそ、逮捕や冤罪だからといって相手を安易に切り捨てるなと強調したい。国が言っただけで、良い人か悪い人かを決めるなというのが教訓だろう』」
・・・国家権力は、支配を維持するために、反体制派を弾圧し犯罪者のレッテルを貼り、国民に対しては単なる犯罪摘発だと見せかけようとする。かつ政権を批判すること自体が犯罪的であると、洗脳しようとする。また、権力のメンツを守るため冤罪を生み出すことを厭わない。そういう被害者を晒し者にして「犯罪者は国民の敵であるから憎め」と仕向ける。現在ではマスメディアを利用して行われるのでより巧妙かつ悪質になっている。
そういう策動に乗せられてはならない。奴らは自分の立場を守るために生贄を求めているだけなのだ。「国が言っただけで、良い人か悪い人かを決めるな」という教訓を忘れてはならない。
2011年02月08日
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