長野新幹線の本来の名称は「北陸新幹線」であり、全線開通すれば長野から新潟、富山、石川、福井を経由して大阪まで結ばれるんだとさ。2014年度には取りあえず金沢まで開通させる予定だが・・・新潟県の泉田裕彦知事は先月、同新幹線の2011年度分建設負担金を県の当初予算に計上しない方針を発表した。「国との協議が順調に進んだ場合、補正予算で対応することもあり得る」ということだが。
■ 同新幹線の建設費は国が3分の2、沿線の各県が3分の1を負担することになっている。09年1月、総事業費が2200億円プラスされ1兆7900億円となり、新潟県の負担も1423億円に220億円が追加された。
このとき泉田知事は「説明が不十分」と支払いを拒否し前原国交相(当時)と交渉、「1年程度で解決を図る」ことで合意、10年度予算には150億円を計上した。しかしその後国交相がコロコロと代わり協議は行われず、ついに決意したようだ。150億円のうち「既に約26億円を建設主体の鉄道・運輸機構に支払ったが、残り分の負担も拒む構え」。
2月16日の記者会見で泉田知事は、
「医療、教育、福祉の水準を下げて、地域振興に資さない新幹線整備を、自治体が行うということはありえないと、考えている」と語った。新潟県内では「上越(仮称)」、「糸魚川」の二つの駅が出来るようだが、一日何本止まるんだろうか。「地域振興に資さない」んだったら金出せねえよな、当然だ。つーか北陸新幹線が新潟県を通る位置とか新潟県の全体図とか見てみりゃ、たしかに新潟にとっちゃ必要ないかも。
「(県内に)停車してもらえるのか。(東京までの)所要時間は短縮するのか。各駅停車しか止まらなければ、今よりも不便になることすら予想される中で、一切説明がなされていない」
■ そもそも、新幹線が通れば地元が潤う、と考えるのは大間違いなんだって。新幹線が出来たせいで人も企業も大都市に流れる「ストロー現象」で寂れたり、並行していた在来線が廃線になったり第三セクター化され、不便になることも多いんだと。
たとえば八戸〜青森間は従来1620円だったが、昨年12月に東北新幹線が新青森まで開通したため、在来線が第三セクターの青い森鉄道に移譲され、運賃は2220円となった。同区間を約1時間で結んだ特急もなくなり、現在では一日2本の快速でも1時間20分ほどかかるようだ(ヤフー路線図で調べてみな)。東北新幹線の全線開通は観光客や帰省客にとっては便利だろうが、地元住民には不便をもたらしたわけだ。またこの「青い森鉄道」が保有するのは車両のみ、レールや駅舎は県が保守管理する。このように第三セクター化は自治体の財政にも負担を与える。こうした全国的な状況のため、基本計画の1972年からやっと開通が近づいた北陸新幹線が「夢の超特急」と呼ばれることはなくなった。
■ 沿線各県の労組や市民団体などが構成する「北陸新幹線並行在来線問題連絡会」は、北陸新幹線の開通後も並行在来線はJRが運行することを求めている。同会のメンバーが石川県庁を訪れ「県境で運賃やダイヤが変わったりしないか」という懸念を伝えたところ、県側も第三セクター化の不安を打ち明けた(九州新幹線開通によって第三セクター化された「肥薩おれんじ鉄道」などは、利用客の多い区間だけJRが経営を続けているため、「思った以上に苦しい経営に追い込まれている」という)。
つーか新潟県は県民の利益を重視しているのかと思ったらそうとも言えないようだ。同会によると新潟県は隣県と相談もせず、北陸新幹線の並行在来線の第三セクターを設立し運賃を1.5倍にする構想を示しているという。国も自治体も住民を無視してんな。
結局は新幹線も空港も高速道路も、政治屋・役人・土建屋の利益のためなんだろう。何か作ってやればその地域が潤う、なんて考えが根本的に間違ってたんだよ。【こち特】のおまけの「デスクメモ」を引用しとく。
日本列島を高速道路と新幹線で結び、雪国を救おうと夢を語った「日本列島改造論」がベストセラーになったのは1972年。著者の田中角栄元首相も新潟県出身。今は雪深い上越新幹線・浦佐駅前に、銅像に姿を変えて立っている。泉下の今太閤に聞いてみたい。あなたの夢はかなったのですか。
◇ 北陸新幹線:新潟県が負担拒否 建設費新年度分、国協議応じず強硬 (魚拓)
◇ 北陸新幹線負担金、計上せず=新年度予算案に−新潟県 (魚拓)
・・・余談だが、旧国鉄の赤字拡大は新幹線の建設も一因らしい。それがあたかも国労のせいで赤字が増えたように宣伝され分割民営化が強行、多くの国労組合員が不当解雇され、あるいは自ら職場を去った。そして現在では新幹線延長などによって三セク化が進んでいるわけだが、上でリンクを載せた「青い森鉄道」なども従業員の内訳はJRからの出向者や契約社員「等」が半数を超える。要するに今も昔も新幹線建設が職員の非正規雇用化に利用されているわけだな・・・。