2005年02月14日

NHK番組改変問題の根底にあるもの

前の記事のの続き。


1月20日の早朝、関越道を走りながらNACK5の「WARMING-UP MUSIC」を聞いていた。大野勢太郎さんはもう長年のこと、この早朝番組のパーソナリティを努めているという。
眠たくて飛ばすのタリいので真ん中の車線をおとなしく走っていると、番組は松尾の前言撤回ニュースに触れ、大野さんは「NHKと朝日新聞という、日本のマスコミのトップ同士がこのように醜く争っているのを、子供にどう説明したらいいでしょうか?」と嘆いていた。(その後「日本のマスコミのトップグループの一員」と言い直していた)
たしかに(最早NHKは救いようがないが)、訴訟も辞さぬと意気込んでいる朝日も方向を見失っていると言えるだろう。(つーか録音したテープがホントにあんならさっさと出してケリつけちまえばいいのに、と思うが。週刊文春2/3の記事では録音テープは存在すると観測しているが、公開について朝日は「倫理規定に縛られ、慎重にならざるを得ない」らしい。もっとも朝日もこの騒動を有耶無耶のままでFade Outさせたいのかもしれない)
問題にするべきなのはNHKと朝日のどちらが正しいか、ではなくて、あの番組の内容がなんらかの理由によって内容が改変されたことである。この騒動の「被害者」を挙げるとすれば、それはNHKでもなくましてや朝日でもなく、「VAWW-NETジャパン」と視聴者なのである。そして我々は、彼らが試みたのは何だったのかを再認識するべきである。

この国の政府は戦後60年、日本がアジア諸国に対して何を行なったのか、どのような責任があるのか、そしてまた誰がどのような行為を働いたのか、国民に全く説明していない。たとえば日本軍性奴隷については、政府は国会で↓このように言い逃れしていたのである(1990年6月6日の参議院予算委員会)。
「従軍慰安婦なるものにつきまして・・・・やはり民間の業者がそうした方々を軍とともに連れて歩いているとか、そういうふうな状況のようでございまして、こうした実態について、わたしどもとして調査して結果を出すことは、率直に申しましてできかねると思っております」(吉見義明「従軍慰安婦」P-3より。その後吉見教授の調査で日本軍が「従軍所」の運営に関わっていたことが明らかになった)
また七三一部隊(の人体実験についても、国民に広く知らしめたのは森村誠一という一推理作家であり、政府が調査し公表したわけではない)の石井四郎など、重大な戦争犯罪を行なった者に対する追及を全く行なっていない。さらには昭和天皇裕仁がどのように戦争遂行に関わったのか、全く明らかにしていないのである。あの男は日本がアジアの人々と自国民に苦しみを与えたことに自分も関与していたことを顧みることなく、天寿を全うしたのである。

「その問題の一つ。横井さんは『天皇陛下に会いたい』と語ったという。どういう状況で語ったのか詳細は知らないが、この問題が昭和天皇の戦争犯罪問題と無関係でありえないことからみて、象徴的な言葉であった。横井さんの“先輩”格として、グアムのジャングル生活16年で出てきた伊藤正さんは、その手記の中で次のように考えている。『戦争が終わったら、いちばん先に東条さんが死刑になる。天皇陛下も死刑にされても仕方がない、と考えた。(中略)天皇陛下も東条さんも、日本の軍事裁判で、日本の刑法により、死刑になっているものと、想像したわけだ。アメリカ側の手で、戦争裁判があろうとはユメにも考えなかった』(朝日新聞連載「ジャングルの中の16年」第14回=1960年6月18日より)
そう、私たちは自分の手でついに裁かなかったし、今も裁かないままでいるのだ。いま出てきた『化石』は、これをどう見るだろうか。(週刊朝日1972年2月11日号)」
(・・・・「『化石』は天皇をどうみるか」本多勝一全集より引用)

別に裕仁を裁くべきだったとか、処刑するべきだったとかは思わない。しかし、少なくとも彼がどのように戦争遂行に関わったのか、日本の戦争犯罪をどの程度把握していたのか、たとえば七三一部隊と何らかの接点があったのかなど、厳しく尋問するべきだったのである。それを我々国民は怠ったのである。
仮に(どうやら実現性ゼロだが)、NHKが政治家の圧力に屈して番組を改変してしまったことを認め、「VAWW-NETジャパン」とNHKの受信料を支払っている人々(及び、かつて受信料を支払っていた人々、俺のようにこの問題が表面化するまで受信料を支払っていた者も含む)に謝罪し、そして安倍や中川がNHKに圧力を加えたことを認め国民に謝罪したとしても、全てが解決したとは言えない。この問題の根底にあるものを見据えなければならない。
日本の侵略戦争の被害者の証言や、「場内が拍手のウェーブと興奮の坩堝の中で歓喜に包まれるという極めて異常な状況」がテレビで放送されることに、恐らく耐えがたいものを感じたのであろう議員(しかも政権党の)が存在すること、そういう議員を選んでしまっていることに、我々国民は猛省しなければならないのである。
posted by 鷹嘴 at 15:19| Comment(0) | TrackBack(1) | NHK番組改変問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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