2011年07月18日

【こち特】放射性物質含む汚泥 肥料化OKに懸念

 でかいウンコして流すたびに、生ゴミを捨てるたびに、「俺は今、資源を無駄に捨ててるなあ」と思ったりして。ちょっとした庭付きの家に住んでりゃ、ウンコは近所に顰蹙だけど生ゴミは庭の畑に埋めて肥料にできるのにね?
 昨年12月、各地の自治体で下水道の汚泥からリンを回収する取り組みが始まっているそうだが、いっそのことウンコをそのまま肥料として利用すればいいじゃん、ということを書いた。
 しかし今年の原発事故によって各県で、肥料にするどころか埋め立てすら出来ないほど放射線量の高い汚泥が発生してしまった(参考)
 考えてみれば当然のことだ。人間の大小便や地面を洗い流す雨水(雨水管が下水道菅に合流する構造も多い)が集められ濃縮された汚泥に、福島原発から大量に放出されている放射性物質が混ざっていないわけがない。
 とてもじゃないが肥料に使える代物ではなくなったが、まだ日本政府は望みを捨てていないようだ。7月9日東京新聞【こちら特報部 放射性物質含む汚泥 肥料化OKに懸念】より引用。


 下水処理場の沈殿池などにたまっていく汚泥は、セメントなど建築資材にリサイクルされる以外にも、肥料として年間139万トンが販売されている(化学合成肥料や窒素肥料など肥料全種類の合計は約1000万トン)。下水処理場から出た汚泥に木屑を混ぜて発酵させて肥料にするという。
 6月24日に農林水産省は、汚泥を肥料の原料として利用する場合、放射性セシウム濃度が1kg当たり200ベクレル以下であれば許可すると発表した。
 同省の説明によると・・・10アールの畑を15cmの深さで耕し、4トンの汚泥肥料を使った場合、土壌1kg当たり5ベクレルとなるという(*注1)。
 米の作付けは土壌が1kg当たり5000ベクレル以下なら許可される。土壌から作物への放射能「移行係数」は0.1のため、「最終的に米に移るのは1kg当たり0.5ベクレル以下」という計算である(*注2)。

 数値自体は問題は無さそうだが、近畿大・山崎秀夫教授(環境解析学)は次のように批判する。
 「いくら低濃度であっても、明らかに汚染されている肥料を使うことは問題だ」
 「低濃度でも大量に使えば、それだけ蓄積量が増える。環境学的には原理原則に反する」


 たしかに、汚染されていない農地に、わざわざ(低濃度とは言え)放射能で汚染された汚泥を撒くことはねえよな。「収穫したけど放射能高くて出荷できません残念です」だけじゃ済まないだろ。一度撒いちまえば1年や2年じゃ抜けねえよな。
 それにさ、食品や水道水など人間が口にしたり肌に触れるものに対する規制は、「食べても害は無いから許可」ってゆうだけじゃないはずだけど。どんなに濃度が低くても、汚染されていること自体が問題だと思うんだけど。
 たとえばさ、環境省の定める「人の健康の保護に関する環境基準」だと、全シアン、アルキル水銀(水俣病の原因のメチル水銀もこれに含まれる)、PCBなどは検出されてはならない。
 そりゃ微量に含まれているものを飲んだり食っても「直ちに健康に影響はないレベル」だろう。水俣でメチル水銀に汚染された魚を食べた人全員が水俣病をを発症したわけではない。しかし微量なら規制は不要、という問題じゃないんだ。
 PCBなど人間が作り出したものと違って放射線というのは自然界に普通に存在するものだが、福島原発事故の影響で数値が高くなっていると思われるものを、わざわざ肥料に使うことはないと思うのだが?それとも下記のような目的があるのかな?
 「下水処理場に放射性セシウムがたまりすぎて、それを解消するために基準を決めたのだろう。本来なら、そうした汚泥の再利用は望ましくない。どこかに一時保管すべきだ」(山崎教授)

 出来ることなら数百年くらい「どこかに一時保管」してほしいものだ。東電本社ビルとかにね(笑)それに問題なのはセシウムだけじゃない、ストロンチウムはどうするつもりか(参考)。残念だが東北関東各県で発生する汚泥の肥料への転用は諦めたほうがいいだろう。このように農業に影響を与える問題は食糧自給率をさらに低下させるのではないか?
 それにしても人糞を肥料として利用できない、とはなんという事態か。原発などという馬鹿げたものを造ったために、今まで当たり前のように行ってきたことができなくなっていくのだ。何もかもぶち壊しである。今すぐ全ての原発を廃炉にしなくてはならない。



*注1 勝手に解釈すると、
 10アール(1000平方メートル)の畑を深さ15cm(0.15m)まで掘り下げれば、
 土壌の体積は、
 1000 × 0.15 = 150立方メートル = 15万リットル

 そこに混ぜる汚泥肥料4トンを、大雑把に比重1だと考えて合計すると、
 15万リットルの土壌+4千リットルの汚泥肥料 = 15万4千リットル

 汚泥肥料1kg当たりセシウムが200ベクレルの場合、4トンだと、
 200 × 4000 = 80万ベクレル
 
 畑の土壌も比重1として計算すると、
 80万ベクレル ÷ 15万4千kg ≒ 5.19ベクレル/kg
 つまり1リットルあたり約5ベクレルになる、ということかな?

*注2 2010年3月17日厚生労働省通達によると、穀類に含まれるセシウムの「暫定規制値」は500ベクレル。
 この通達では飲料水に含まれるセシウムの暫定規制値は200ベクレルだが、WHOの基準では10ベクレル(参考)
posted by 鷹嘴 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 原発 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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