■ 福島第一原発で働く東電下請企業の労働者を東京新聞が電話取材した。タービン建屋地下や立て坑に溜まった汚染水を移送するホース設置作業を行っているという。言うまでもなくきわめて高い放射線に晒される危険な作業である。しかも「二重、三重に着たカッパや靴下、ゴム手袋と、顔全体を覆うマスク」で体力を奪われる。「じっとしているだけでも汗がにじんでくる」「昨日(4月12日)は移動や待機時も含めて9時間この格好。トイレにも行けなかった」
当初は線量計が足りなかったが今は一人に3個支給、危険度が高い場合は一度に2個着用しているという。「故障を考えてなんだろうが、逆に不気味」。体調を崩して搬送される作業員も多く、「体力、気力は限界に近づいている」。
それに、冷却水系統からの水漏れが発生しているが原子炉を冷却するため注水を続けざるを得ない。つまり汚染水も増え続けることになる。「注水したら水が漏れ出てまた汚染水が増えるんじゃないか。イタチゴッコで、先が見えない」
この段階ではまだ東電は、事故前の冷却水循環系統の復旧を目指していたんじゃないかな?その後水棺作戦に変更、それも断念して現在のような漏れ出した汚染水を浄化してまた注水、という極めて効率の悪い方式を選ばざるを得なかったわけだ。
取材を受けた労働者は60歳、30年以上原発の仕事に従事しているという。震災後に一時避難したが会社要請で3月下旬から戻った。「頼まれたら断れない」。そんな彼も「妻と娘の顔がちらつきはじめたよ」という。(4月14日東京新聞)
■ 原子力安全・保安院の2009年度版資料によると、国内約8万5千人の原発作業員のうち、下請労働者は約7万5千人。「定期点検では原子炉にヒトが入るが、そういう危険な労働は全て下請け。孫請け、ひ孫請けも当たり前で、原発は彼らの犠牲の上に成り立っている」(写真家・樋口健二氏)
ところで東電の送電線や電柱に登って作業している労働者は、関電工あるいは下請企業の労働者。まあ大半が関電工の下請か孫請けだと思う。しかし昭和女子大・木下武男特任教授によると、昔は東電社員も電柱に登るなどの作業に従事していたんだと!知らんかった。しかし「感電死などの労災が問題とされたため」1960年代に請負化が進んだという。社員が死んじゃ面倒だから下請労働者に死んでもらうことにしたのか。
原発労働についても労組が「被曝の多い場所は請負にしてほしい」と要求、「労使一体となって危険な作業を下請化させた」。なんちゅう労組だ!自分たち組合員の安全は守るが、下請労働者は殺してもいいというのか!
しかも「建設業にあるような労災保険の元請責任」がなく、「三次、四次下請になると、事故責任もあやふやになりがち」。それが東電の狙いなんだろうな。
「原発労働者たちを非人間的に扱う差別構造がある。40年以上も放置されてきた。こうした差別がある限り、原発労働者は集まりにくいし、厳重な被曝量の管理が無ければ、健康被害も怖い。被曝と人手不足の双方の意味で、事故の悲劇はこれから始まる」(樋口氏)
■ ある下請業者は福島第一・第二原発の作業について、「夏場に向け、作業員不足が生じかねない」「あんなに暑い現場はない。目を覆うゴーグルも内側から曇り、作業にならない。原発をシールドで覆えば、もっと温度が上がる。耐えられない」と語る。
地元では福島原発の作業を断る業者も出てきたらしい。「機材は業者の自前だが、汚染される。そうなると、ほかの現場では使えない。だが、東電からの補償は聞かない。とても割に合わない」たしかに断ったほうが無難だな。
作業者が携行しなくてはならない線量計については、
「実際は何分ぐらい我慢していいのかという目安だけ聞いて、切ってしまう。すぐピーピー鳴って仕事にならない。例えば、ボルトをあと一つか二つ締めて終わりというとき、それを残して戻ってくる職人はいない」もちろんピーピー鳴り始めたら急いで戻って来いって指導されてるんだろうけど、自分の仕事を途中で投げ出す気にはなれねえよ。労働者だったら分かるはずだ。
それに、言うまでもなく防護服は「空気を通さないだけで外部被曝には無力」。防護服を着ていれば放射能を帯びたゴミやホコリから肌を守れるだろうが、放射線自体を防げるわけがねえもんな。作業後に放射線管理手帳に被曝量を記入するが、「正確に記入すれば、すぐ限界値に達する。だから、まともには記入されていない」。
「かつては60歳前後の人など東電側は働かせなかったが、いまは逆にそのくらいの年齢層を集めていると聞く。あとで労災でもめることを避けるためではないか」ぶっちゃけ東電は、なるべく早く死んでくれる労働者を集めたいんだろう。
「皆、こうした状態を訴えたいが、仲間に迷惑がかかりかねないと思うと口に出しにくい。いま現場にいるのはよほど金に困っているか、使命感の強い人。作業員不足は時間の問題だ」余談だが取材に応じた下請業者は「東電さんに名前で呼ばれたことはない」。いつも「オイ、オマエ!」などと呼ばれていたという。「『私たちは人扱いされてないから』と寂しげに笑った」。
まあ東電社員が全てこういう態度だとは思わんけどさ・・・。資本家にとって労働者は単なる道具だって昔の偉い人が言ったそうだが、東電にとっても御用労組にとっても、下請会社の労働者は人間ではなく、使い捨ての道具なんだろうな。(以上は5月28日東京新聞・こちら特報部)
■ 福島第一原発の免震重要棟で働くある労働者はこの道40年、管理業務が専門。長年福島第一原発で働いている。自宅は警戒区域内、震災後は避難していたが「東電関係者の度重なる復帰要請」に「これまで原発で食ってきた。何か出来ないかと思って決断した」。
免震重要棟は事故後、常時数百人が出入りし、机が足りず床の上でメモを取り指示を出している。しかし「最も安全なはずだが、実は汚染だらけ」。
事故前には、測定装置で4000cpmが出れば「強い汚染」として始末書を書かされた。また福島第二原発では除洗が必要なレベルを6000cpmに設定。しかし福島第一原発1号機の免震重要棟内部には「10000cpmを越える場所が複数ある」。
放射線量の多い場所では内部被曝を避けるため飲食厳禁のはずだが、「汚染された廊下に座り、ひしめき合いながら食事をしている」。その食事もパン、オニギリ、缶詰、レトルト食品などで「被災地の避難所で余った支援物資の食べ物を回してほしいとさえ思う」。(ちなみに東電によると5月末から弁当を支給しているという)
「こんなに汚染された場所で呼吸し食事しているのだから、ある程度の内部被爆は覚悟している。体内に放射性物質がどんどん蓄積されていると思う」
「特に初めて作業する人は、危ない場所を知らない。せめて張り紙などで汚染状況を注意喚起してほしい」
東電によると、免震重要棟の内部汚染は原発の爆発事故で扉が歪み放射性物質が入り込んだためという。出入口に空気清浄機を設けた小部屋を設置するなどの対策をとったが、「すでに棟内が汚染されてしまっている」ので意味がない。
また、既に「放射線を膨大に食っている人がいる」という話も耳にするという。「(線量計の)貸し出し係はいても、点検係がいない。線量計なしでも現場に入れる状態になっている。自分の身は自分で守れ、自己責任でやれということだろう」。(6月9日東京新聞・こちら特報部)東電の正社員が24時間体制で「点検係」を務めるべきじゃねえか?
■ 東電の一次下請会社の元社員は、3月11日から14日まで第一原発で勤務、その後退職、県外へ出た。5月になって元の会社から「東電が実施している線量測定を受けられる」というので測定を受けたが、その時の担当者は「値は教えられない。東電の判断によって後日、知らせるかもしれない」とふざけたことを抜かした。被曝量が多すぎれば「東電の判断」によって開示されない、ということか。労働者の健康より東電サマの都合を優先ってことか。その後連絡は無いそうな。(6月18日東京新聞)
■ 「放射線従事者中央登録センター」によると、事故後、原発労働者一人に一冊渡される「放射線管理手帳」発行数が急増、5月6月は例年の2倍から3倍に。「今まで登録したことのない建設業者にも発行している」。
こういう状況は当然、「知識がないから怖くないんだ。だから被曝もする。おっかない」という危険性を招く。例えば電気の怖さを知らない新入りに電気の怖さを教えるのは苦労するもんな。これは大変な問題だよ。門外漢に電気配線改造工事を任せ、活線のまま(通電したまま)配線をいじってるのに放置してるようなもんだ。電気も放射能も目に見えないが、感電すりゃ黒焦げになって死ぬかビックリしてのけぞる。被曝してもその場じゃ自覚できない放射能は余計タチが悪い。
別のベテラン作業員によると「放射線などについての教育は一応やっている。ただ、現場レベルで周知徹底できているかどうか」。どうも全然徹底されていないようだ。
防護服のファスナーを胸元まで下ろしたり、手袋をしていなかったり、線量の高い場所で防護服を脱いだりする作業者も多く、免震重要棟の出入り口でベテランが注意しても「俺のやり方だから構うな」などと反発する者もいるらしい。(7月15日東京新聞)
放射能の怖さを教えられなきゃ、暑いんでだらけた格好をしたくなるのも当然だ。本来東電が労働者の安全を守るために厳しく監視・指導しなくてはならないはずなんだが。大きな現場って、気の荒い職人さんもおとなしく従うような、ゼネコン側の監督者とかいるはずなんだけど。どうなってるんだろうね東電って。イレギュラーな事態のためかき集めた労働者など放射能浴びせといて放り出せばいい、とか思ってんだろうか。
もちろん被曝しているのは下請会社の従業員・非正規雇用労働者だけではないけど。