米の戦中派議員、靖国参拝批判 下院公聴会で次々と
2006年09月15日11時38分
米下院の外交委員会は14日、日本と中国、韓国など近隣諸国との関係に関して公聴会を開き、戦争体験を持つ長老議員らが、A級戦犯を合祀(ごうし)した靖国神社を日本の首相が参拝することは「モラルの崩壊だ」などと相次いで苦言を呈した。靖国批判は米議会全体の声ではないが、太平洋で日本と戦ったハイド外交委員長(82)=共和党=ら「戦争世代」の議員には批判的な意見が根強い。
ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)の生存者のラントス議員(78)=民主党=は「A級戦犯が合祀された靖国神社への(日本の首相の)参拝は、ドイツのヒムラー(ナチスの親衛隊長官)やヘス(ナチス副総統)、ゲーリング(同元帥)の墓に花輪を手向けるのに等しい」と反発。日本の次期首相へのメッセージとして「戦犯に敬意を払うのはモラルの崩壊であり、日本のような偉大な国家にはふさわしくない」と語った。
ハイド氏は同神社にある戦争博物館「遊就館」について「日本がアジアを西欧の帝国主義支配から解放したと若者に教えている。戦争を経験した世代として困惑している」と指摘。「この博物館で教えられている歴史は事実に基づかない。修正されるべきだ」と求めた。
今期限りで引退するハイド氏は昨秋、小泉首相の靖国参拝について「(アジアの)対話が阻害されるとしたら残念だ」と懸念を示す書簡を加藤良三駐米大使に送った。今年4月には、米議会での首相演説の実現には「靖国参拝をしないと自ら表明する必要がある」との書簡をハスタート下院議長に送っている。
一方、戦後世代の議員からは「独裁政権の中国は日米間にくさびを打ち、我々が過去に注目することを望んでいる」との意見も出た。公聴会で証言した知日派のグリーン前米国家安全保障会議(NSC)上級アジア部長は、同委員会に提出した書面で「日本が歴史を忘れ、戦前のような好戦性に回帰しているという議論は全く的はずれだ」と指摘した。
もっともっと国際的に問題にして欲しいもんだな。首相が靖国に参拝するということは、ドイツの首相がナチスの指導者の墓を詣でるどころか、そういうナチス幹部を神と崇めホロコーストを正当化するようなもんだからな。
米下院委員長、「遊就館」の展示内容見直し求める
【ワシントン=五十嵐文】米下院国際関係委員会のヘンリー・ハイド委員長(共和党)は14日、日本と中韓両国など近隣諸国の関係に関する公聴会で、靖国神社に併設されている展示施設「遊就館」について、「ここで教えられている歴史は事実に基づいておらず、訂正されるべきだ」と述べ、展示内容の見直しを求めた。
遊就館をめぐっては、旧日本軍の行為を正当化しているといった批判が日本国内でも出ているが、米議会有力者が公式に歴史観の見直しを求めるのは異例。
ハイド委員長は「西洋の帝国主義からアジア、太平洋の人々を解放するために日本が戦争を始めたと若い世代に教えているのは困ったことだ。日本の植民地支配を受けた人々は、誰も日本を解放者とは見なしていない」と述べた。
このほか、公聴会では、トム・ラントス議員(民主党)が日本の首相による靖国神社参拝について、「北東アジアの緊張を引き起こし、米国の安全保障上の利益を傷つけている」として、参拝中止を求めた。
(2006年9月15日12時14分 読売新聞)
首相の靖国参拝、米下院公聴会で賛否
アメリカ議会の下院外交委員会は14日、日本のアジア外交についての公聴会を開催し、小泉総理の靖国神社参拝について賛否両論の意見が出されました。
「次の日本の首相への私のメッセージはとても簡単です。戦犯に敬意を表すことは道徳的破たんであり、日本のような偉大な国にふさわしくない。この慣行は終わらせなければなりません」(民主党 ラントス下院議員)
ラントス議員はこのように述べ、小泉総理の靖国神社参拝を批判した上で、次期首相の参拝中止を求めました。
「中国は独裁国家であり、過去に目を向けさせて、米国と日本との間にくさびを打ち込みたいのです」(共和党 ローバッカー下院議員)
一方、ローバッカー議員はこのように述べ、反中国の立場から小泉総理の靖国神社参拝を問題にすべきでないとの意見を示しました。
また、共和党のハイド委員長は靖国神社の展示施設、遊就館に触れ、「太平洋戦争は、日本がアジアを西洋の帝国主義から解放する戦いだったと説明してあることに当惑している」と述べました。(15日10:35)
ドイツの戦没者追悼は靖国とどう違う
自民党の総裁選でも争点の1つに挙げられる靖国神社参拝。日本と同じく第二次世界大戦で敗戦国となったドイツでは、戦没者への追悼は、どのように行われているのでしょうか。ドイツ中央追悼施設を取材しました。
死んだ息子を抱く母親の像。ドイツの中央追悼施設「ノイエ・ヴァッヘ」は、この母子像が施設のすべてです。
ここでは、敵味方を問わず、戦争で亡くなった兵士や民間人、戦争の犠牲となったあらゆる人々を追悼しています。政治犯やユダヤ人、旧東ドイツで迫害された人も対象です。
ノイエ・ヴァッヘは、1993年、東西ドイツの統一をきっかけに誕生しました。追悼の対象とされているのは、「戦争と暴力支配の犠牲者すべて」。ドイツ政府はここに、第一次大戦で息子を、第二次大戦で孫を亡くした女性芸術家、ケーテ・コルビッツがつくった母子像だけを据えたのでした。
「この像が人の心を動かすのは、人の苦悩と、苦悩を味わった人間への追悼がテーマだからです。国籍などは大きな意味を持ちません」(フンボルト大学・歴史学 デンプス元教授)
戦後60年だった去年の終戦記念日には、大統領や首相が追悼に訪れました。しかし、ナチスドイツの侵略を受け、多大な犠牲を払った隣国のポーランドも、こうしたドイツの追悼のやり方を評価しています。
「ノイエ・ヴァッヘがドイツとポーランドの関係で問題になったことはありません。この40年で許し合う文化が存在しているのです」(ポーランド人雑誌編集長 ケルスキ氏)
ドイツの歴史学者は、追悼の対象に主要な戦犯やヒトラーの親衛隊員などは含まれていないと話します。
「ナチス時代の犯罪があまりに重大だったので、ドイツ国民はニュルンベルク裁判を受け入れています。ノイエ・ヴァッヘで加害者の追悼はしていません」(フンボルト大学・歴史学 デンプス元教授)
被害者の分類をせず、すべての戦争犠牲者を追悼するノイエ・ヴァッヘ。戦犯を排除する規定はありませんが明らかな加害者は対象外ということが既に定着しています。ただ、対象を明確にしないその姿勢がかえって追悼施設としての重みをそいでいるとの声もあります。
開設から13年、様々な議論をよそに、施設はすっかり街に溶け込み、訪れる人々に戦争の愚かさと平和の大切さを静かに訴えかけていることだけは確かなのです。(13日18:15)
ついでに、このニュースも見逃してた。
靖国神社、朝鮮戦争で死亡した元海保職員の合祀を拒否「A級戦犯」が処刑されたのは終戦のあとだが?
2006年09月02日
朝鮮戦争時に北朝鮮沖で掃海作業中、乗っていた掃海艇が機雷に触れて爆発し、死亡した元海上保安庁職員の遺族が、「国に殉じた戦死者だ」として靖国神社に合祀(ごうし)を求めていた問題で、神社側が要請を拒否していたことが2日、分かった。同神社は遺族への回答書で、合祀の範囲について「太平洋戦争の戦没者まで」とし、朝鮮戦争は対象外とした。
合祀を求めていたのは、弟の坂太郎さん(当時21)を亡くした大阪市浪速区の会社役員、中谷藤市(とういち)さん(79)。
靖国神社は8月25日付の回答書で、「時代ごとの基準に基づき、国が『戦没者』と認め、名前が判明した方をお祀(まつ)りしてきた」と説明。「協議の結果、朝鮮戦争にあっては現在のところ合祀基準外」と結論づけた。
坂太郎さんは50年10月、米軍の要請で極秘に編成された海上保安庁の特別掃海隊員として、北朝鮮の元山(ウォンサン)沖に出動し、死亡。戦争放棄をうたう戦後憲法が発効していたことから、同庁は遺族に口外を禁じ、事故記録も廃棄されたという。
中谷さんは「弟は戦後の『戦死者』第1号であり、神社には再考を求めたい」と話しており、今後も合祀申請を続ける構えだ。
>「A級戦犯」が処刑されたのは終戦のあとだが?
「A級戦犯」はあくまで太平洋戦争(大東亜戦争)の戦没者であり、中谷坂太郎さんはそうではないということになるのでしょう。実際に亡くなった時期がいつかということを問題にしているのではなさそうです。
A級戦犯 昭和46年に厚生省が合祀取り消し 週刊文春
http://www.uesugitakashi.com/archives/50558927.html
>上記文書は「昭和31年4月19日から同45年8月4日まで」の、靖国神社合祀事務協力に関する「諸通知」を廃止するとしているのだが、A級戦犯の祭神名票が送られたのは昭和41年。合祀されたのは昭和53年である。ところが46年に41年の「通知」が廃止されたのだから問題の祭神名票は効力を失い、「靖国神社側が主張してきたA級戦犯合祀の行政の支えが失われたことになるまいか」、と上杉氏は問いかけている。
昭和26年の宗教法人法施行時に靖国神社は宗教法人となってますから国との関係は完全になくなってます
「国が合祀を云々・・」というために厚生省の力を借りようとしたら政教分離の原則が問題となるためにはしごを外してしまったのです。