2005年03月25日

水俣病医療費、保健手帳所持者も全額支給へ

水俣病の患者のうち、重度の患者は「医療手帳」の交付を受け医療費を全額補償されているが、軽症であるとして「保険手帳」を交付された患者は全額支給されていなかったという。
しかし昨日環境省は「保険手帳」所持者についても全額支給する方針を固めたとのこと。ということは、現状では全ての水俣病患者に対して医療費が全額支給されているわけではないということか。知らんかった!
(以下は問答有用:33879より転載)

水俣病医療費、保健手帳所持者も全額支給へ 環境省案
(アサヒ・コムより)

・・・・「水俣病」という恐ろしい公害病の最初の患者が発生したのが1953年ですが、その前年から水俣湾の沿岸の猫が奇怪な死に様を見せていたそうです。そして熊本大学が水俣病の原因はメチル水銀であることを発表したのが1963年、チッソが「アセトアルデヒド」廃水回収工事を完了したのが1966年、同物質の製造設備を廃止したのが1968年、そして政府がやっと水俣病はチッソの工場の廃液が原因となった公害病であると認定したのが同年9月です。このような長い年月を浪費することになったチッソの無責任と政府の無為無策ぶりには言葉もありません。(その間、1964年に新潟県でも工場廃液中のメチル水銀による重度の神経症状―――つまり水俣病が発生しています)。

●「奇病」の原因が自社工場の廃液中のメチル水銀であることを悟りながら垂れ流しを続け、排水経路を変更して被害を不知火海全域に拡大させ、責任を追及され始めた後も見苦しい言い逃れを続けたチッソについては言うまでもなく、
●既に多くの患者が発生しているのにもかかわらず、メチル水銀の発生原因となる「カーバイド・アセチレン方式」(当時すでに「エチレン酸化法」への転換期に差し掛かっていたのですが)による「アセトアルデヒド」大増産体制をチッソに許可した通産省、
●原因の解明を避け続け食品衛生法を適用しなかった熊本県、そして通産省に気兼ねして全ての対応が後手後手に回った厚生省などの責任も非常に重大です。
これは一企業の不正による公害病というだけでなく、国家的犯罪とも言えるものでしょう。
その被害者の治療費は全額国家負担になっていると勝手に思い込んでおりましたが・・・恥ずかしながら現状は「保健手帳の医療費支給額は月5回、7500円が上限」だったとは知りませんでした!

さらには・・・
★チッソ水俣工場はなんと大正時代から戦前から廃液垂れ流しによる漁業被害を起していたこと、
@そして1926年に漁業組合に1500円を支払い「此の問題に対して永久に苦情を申出さる事として多年の物議を解決したり」という「証書」を交わしたこと、
Aまた1943年にもチッソが漁業組合から被害漁場の漁業権を買い取ることで垂れ流しを公認させ「将来永久に一切の損害賠償を主張せざる」という念書を交わしていたこと、
Bさらに1951年にも、漁業組合に無利子で融資する代償として、水俣川河口の沖合いの一角の漁場に関して「会社の事業による害毒が生じても一切異議は言わないこと」という覚書を交わしていたこと(これが前述の不知火海全域への汚染拡大に繋がりました)、
つまりチッソは金に物を言わせて漁民を封じ込め、廃液の垂れ流しを恒久化しようとしたこと、
★1946年の「アセトアルデヒド」生産再開の翌年、既に水俣病とそっくりの症状を起し亡くなった被害者がいたこと(これは水俣病として認定されていません)、
★そもそも「チッソ」とは、植民地朝鮮に君臨した「日本窒素肥料株式会社」という国策企業だったこと、
★そしてこの、「並みの企業ならとうに倒産しているこの加害企業を、国や熊本県はこれまで、あの手この手で支え続けてきた」ことなども、全く知りませんでした!
(この投稿は「水俣病事件四十年」(宮澤信雄/著 葦書房)を参考にしました)


(このニュース)
水俣病医療費、保健手帳所持者も全額支給へ 環境省案
2005年03月24日15時24分
 国と熊本県の責任を認めた水俣病関西訴訟の最高裁判決を受けた新たな対策を検討していた環境省は、24日の自民党水俣問題小委員会で、保健手帳所持者の医療費自己負担分を全額支給する方針を示し、了承を得た。関係省庁と調整し、今月末をめどに最終案を公表する。
 対策案を協議する中で国側が、現在は月5回、7500円が上限の保健手帳の医療費支給額を引き上げる素案を提示。これに対し、県や被害者団体から、全額支給するよう要望が出されていた。
 この日の小委員会で、松岡利勝委員長らは、新たな財政負担を嫌う財務省に対し、全額支給を前提に同省が前面に出て解決の道を探るよう指示。地方自治体を管轄する総務省なども含め成案作りに当たるよう要請した。
 また、財源負担の割合を巡っては、熊本県から「責任が重い国が、より多く負担すべきだ」との意見が出ている。この日の小委員会に出席した鹿児島県も「国の責任で実施すべきだ」との考えを明らかにした。
 これに対し、国側は、国と県が2分の1ずつ負担する総合対策医療事業の現行の枠組みは変えないとしている。一方、来年の水俣病公式発見50年記念事業などで、県の負担を軽減する考えだ。
 現在、保健手帳所持者は約750人。95年の政治決着の際、医療手帳の対象外とされた「軽症者」に交付された。96年7月に受け付けは終了しているが、新対策を受けて再開すれば、最終的に2000〜3000人規模になると見られる。
 保健手帳の自己負担分が支給されると、すでに全額支給となっている医療手帳(所持者約1万人)との違いがあいまいになるとの指摘に対し、環境省は「医療手帳所持者には一時金も支給されており、違いは明確だ」としている。

【解説】チッソ分社化案 国、なお加害企業支援を優先?
政府・自民党が分社化の検討に着手した水俣病の原因企業チッソの水俣本部・水俣製造所=4日、水俣市
 水俣病の原因企業チッソをめぐり、政府・自民党は十三日までに、同社の公的債務を事業会社から切り離す分社化に向けた検討に入った。水俣病関西訴訟の最高裁判決で、国とともに公害拡大の責任が確定した熊本県も、未認定患者らに新たな療養費を支給する独自の水俣病対策案をまとめるなど、最高裁判決を契機に、水俣病問題の枠組みは激しく揺れ始めた。
 ただ、熊本県が曲がりなりにも被害者に対する新たな国費、県費投入を提唱したのに対し、霞が関、永田町の視線は、なぜか加害者側のチッソに向いている。
 最高裁判決を受け、自民党関係者は「チッソの抜本再生は政治が残した課題」と分社化の意義を強調する。しかし、それは何より優先されるはずの未認定患者救済に手を差し伸べないまま、加害企業だけを支援することを意味する。
 水俣病発生、拡大の代償として、チッソは現在、千五百億円以上の累積債務を抱えている。しかし、並みの企業ならとうに倒産しているこの加害企業を、国や熊本県はこれまで、あの手この手で支え続けてきた。
 その大義名分は、公害における汚染者負担の原則(PPP)。特に二〇〇〇(平成十二)年二月の閣議了解以降、チッソの公的債務弁済は、国が事実上の肩代わりを続けており、同社はいわば「究極の国策会社」。ただ、この枠組みも、チッソが今後数十年間、毎年経常黒字を上げ続けることが大前提。
 一方、チッソにとっては、企業活動の“足かせ”となる債務の分離は長年の悲願。特に二〇〇〇年以降、一定の利益を留保できるようになった同社の信用力は急速に回復、他社との業務提携なども進み、業績は上り調子だ。チッソは今年六月にまとめた新中長期経営計画(〇四〜〇六年度)に、正式に将来の分社化構想を盛り込み、既に国、熊本県にも要望済みという。今回の政府・自民党の分社化検討にも、こうした動きが反映しているとみられる。
 政府関係者は分社化の利点として、チッソの収益力を高めることで、国が肩代わりしている公的債務の完済を早めるというバラ色の未来を描いてみせる。
 さらに、最高裁判決が断じた国、県の行政責任についても、「むしろ行政がチッソを支援する根拠が、より明確になった」(同関係者)。そこには最高裁判決を逆手に取り、あくまで過去の水俣病行政の枠内で、チッソの患者補償問題も収束させたいという、国のしたたかな思惑も透けてみえる。
 「われわれは五十年近く苦しんできた。なぜ国はチッソを守るのか」。最高裁判決の当日、関西訟訴の川上敏行原告団長は訴えた。その最高裁判決から一カ月。被害者に対しては、かたくなな対応を続けている政府が、チッソ支援を声高に叫んでみても、長年苦しみ続ける被害者の理解を得られるとは思えない。(報道部・宮下和也、東京支社・毛利聖一)
熊本日日新聞2004年11月14日朝刊
posted by 鷹嘴 at 12:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 公害 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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