2012年02月22日

水俣病「救済」7月打ち切りを許すな!

 3.11原発事故によってこの国で起こった現象を簡単に羅列すれば・・・日本政府は重要な情報を隠蔽し、実態とは程遠い収束宣言を発し、低線量なら危険は無いと根拠も無く決めつけ、加害企業の東京電力を手厚く保護し、その東電は実態を公表せず、責任逃れを企み、マスゴミと御用学者は安全キャンペーンを張り、経済界は原発が無ければ電力が足りない・経済が成り立たないとほざき、原発労働者の被曝は黙殺され、福島県や東日本どころか全国民に被曝が強制されつつあるわけだが・・・これはこの国での(現時点での)最大最悪の公害病である水俣病を巡る経緯とそっくりではないか?
 誰かどう考えてもチッソの廃液が原因であるのに、旧日本軍の遺棄された砲弾が原因であるという珍説がまかり通り、東大教授某は腐った魚を食べたのが原因であると言い放ち、マスゴミはニセ患者説を唱え、加害企業チッソは原因・責任を認めず、(実際にはメチル水銀の除去は出来ない)「サイクレーター」(参考)設置によって廃液は浄化されるとペテンをかけ、毒液を垂れ流し続け、工業製品に重要なアセトアルデヒド製造を維持させたい日本政府はチッソの行状を黙認し、チッソが倒産しないように手厚く保護し、水俣病被害者は見殺しにされてきた。これがこの国の戦後の「豊かさ」の実態である。

 ところで2012年2月3日、水俣病であるのに水俣病だと認定されていない患者を「救済」するための水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法に基づく給付申請の期限を、2012年7月31日までにする、と発表された(環境省の告知)

 つまり今年7月31日を過ぎてしまえば、自分に水俣病だとしか思えないような症状があっても、一切の補償が受けられないのだ。見殺しにされるのだ。時間が過ぎれば国家犯罪も時効になるというのか。戦争被害者への補償拒否と同じ構図だ。
 2月22日、恥知らずなことに細野の馬鹿はこれを告知するため新橋駅前でチラシ配りをしたという。


 一般論だが、何らかの自覚症状があっても、まさか自分が病気だとは思わず、あるいは医者に行くのが億劫で、あるいは家族に気兼ねして、何年も何十年も受診せずに過ごす、というのは珍しくないと思うが。手足の痺れや感覚障害を自覚していても、まさか自分が水俣病だとは思えず、あるいは家族に知られたくないので沈黙している患者も多いだろう。あるいは現在は症状が軽くても年齢とともに悪化していくかもしれない。
 細野ら、というか政治屋どもは、今まで日本政府が水俣病患者の訴えを無視し見殺しにしてきた経緯を知らないのだろうか。もちろん水俣病患者の救済が遅れているのは政府と加害企業チッソの無責任な姿勢が第一の要因だが、沈黙したままの患者らがどんな思いで過ごしてきたか知らないのだろうか。気になる記事を二つ紹介する。
◇(魚拓)水俣病:救済申請締め切りへ 期限先行に憤り 偏見・差別、潜在患者多く
◇ 山あい 救済法の対象地域外 芦北の黒岩地区 (魚拓)

 原発のある市町村が電力会社の城下町と化すのと同様、現在でも水俣市はチッソの城下町と言える、らしい。身内にチッソや関連企業で働く者がいれば、症状があってもおいそれと声を上げることは出来ない。そうでなくても地域社会の中で水俣病だと名乗り出ることは容易ではない。患者たちは差別と偏見を恐れて耐え忍んできたのだ。
 また、熊本県芦北町の黒岩地区は海から約6km離れた山間部にある。11年10月に集団検診が行われたところ、受診した39人の住民のうち37人に感覚障害など水俣病と思われる症状があったという。
 ある80代の男性は、長年行商人が運んでくる魚を毎日食べていた。40歳のころから手に痺れを感じ箸がうまく使えなくなり、手足の激痛に襲われることもあった。
 「でも、自分が水俣病なんて考えたことは一度もなかったです。まさか体に水銀が入っとったとは」
 住民たちに救済法申請を呼びかけた地区長は「あん頃はみんなに、他人の目を気にする雰囲気があったけん、自分が先頭に立とうと思って」と振り返る(沿岸部ではないので不知火海の魚を多食していたという証明が必要だった)。「私らは申請に間におうたが、他の所にも同じ思いの人がまだいるとじゃなかでしょうか」。

 水俣病と思える症状を抱えながら、現在も沈黙している人々は決して少なくないだろう。しかし日本政府は今年7月で救済申請を打ち切ろうとしている。国家犯罪に幕引きを図ろうとしているのだ。絶対に許してはならない。
 言うまでもなくこの問題は水俣病だけに留まらない。今後福島原発事故が原因と思われる健康障害が明らかになり、政府が何らかの補償を行うとしても、やはり水俣病救済と同様に申請に期限を設けるのではないか。その数年後あるいは数十年後にいかなる健康障害を訴えても黙殺されるだろう。体内に放射性物質を取り込んでしまって内側からアルファ線やベータ線を長期間浴び、数十年後に癌などを発症しても、見殺しにされるのだ。水俣病患者の立場に無関心なら、近い将来我々も同じ立場になるかもしれない。今回の申請打ち切り通告は、いわば政府が「放射能の被害が出た場合でも補償は早々に打ち切りますよ」と予告したようなものではないか?
 そもそも経済の拡大のみを求める政府や大企業が、経済活動がもたらす公害の被害者を見殺しにしようとするのは当然だ。こういう政府・官僚・大企業による支配を打破しなければならない。(追記あり)

【参考】
◇(魚拓)水俣病:救済申請締め切りへ 期限先行に憤り 偏見・差別、潜在患者多く
◇ 水俣病救済申請期限の撤回を求める 全国保険医団体連合会 (魚拓)
◇ 水俣病救済「打ち切り許さない」 不知火会が特措法部会 (魚拓)
◇ 水俣病不知火患者会会長 大石利生(登壇者) ≪ 3.11 さよなら原発 くまもと集会
◇ 原田正純(呼びかけ人) ≪ 3.11 さよなら原発 くまもと集会
◇ がれき反対派で京都騒然 配布中止 (魚拓)



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追記:  4月7〜8日、横光克彦環境副大臣が熊本県を訪問し、各患者団体に救済特措法の期限設定について説明した。「水俣病被害者芦北の会」の村上喜治会長と面談した際、次のように語ったという。
 (今年7月末の申請期限後は集団健康調査を)「慎んでもらいたい。いつまでも(潜在的な患者発見のための健康調査を)やっては、他団体にも迷惑がかかる」

 なんともあからさまだな。日本政府が期限を設けた理由は言うまでもなく、水俣病患者のために支出する金額をなるべく低く抑えるため、かつ水俣病被害の実態を出来るだけ小さく見せかけるためだが、この横光という男は政府の本音を正直に吐露したのだ。たしかに申請を打ち切ったあとに「また新たに水俣病の患者を確認した」と公表されれば困るだろうよ。

 「水俣病不知火患者会」の林田直樹事務局長は、この発言を批判すると共に政府が無視している水俣の現実を訴える。
 「われわれは意図的に患者をつくっているわけではない。現実に患者が残されているにもかかわらず、申請を締め切るという方がおかしい」
 「地元には(水俣病の加害企業である)チッソから年金をもらっているため患者の申請をしづらい人、周囲からの差別を恐れている人、症状を単に老化のためと思い込んでいる人などがいる。今後、こうしった人たちも水俣病と診断されれば、申請する可能性がある」

 また、熊本県の山間部(芦北町黒岩地区)で健康調査を行い多くの潜在患者を確認した医師の藤野糺氏は次のように語る。
 「他県への転出者や鹿児島県の被害者を含めれば、被害者は10万人を超すかもしれない」
 「水俣病と、原発事故の福島は地域の問題として似た構図がある。水俣病にきちんと取り組むことが、福島の被害者救済にもつながる。健康調査を命懸けで続けます」


posted by 鷹嘴 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 公害 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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