2006年10月27日(金) 朝刊 1面
PAC3配備「幸い」と久間長官
「沖縄は喜んでほしい」
【東京】久間章生防衛庁長官は二十六日の参院外交防衛委員会で、地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の沖縄配備について「沖縄の人は喜んでもらいたい」と述べた。岡田直樹氏(自民)の質問への答弁。
嘉手納基地、嘉手納弾薬庫地区へのPAC3配備をめぐっては嘉手納町、うるま市、沖縄市、北谷町などの関係自治体が一斉に反発している。久間長官の発言は、政府と地元の「温度差」をあらためて際立たせた格好だ。
久間長官はミサイル防衛(MD)の重要性を説明する中で「幸いなことに沖縄には米軍がPAC3を置いてくれた。わが国の予算の中で追いつかない点を先にやってくれたわけだから、むしろ沖縄の人は喜んでもらいたいと私は思っている」と述べた。
本土のMD体制については「PAC3(の配備)は二〇〇七年度末になるだろうし、SM3(スタンダード・ミサイル)は翌年になるのではないか。しかし、気持ちとしてはできるだけ前倒しでやらせたい」と述べ、可能な限り配置を急ぐ考えを強調した。
社説(2006年10月28日朝刊)
[久間長官発言]
基地機能強化はご免だ
地対空誘導弾パトリオット(PAC3)の沖縄配備について、久間章生防衛庁長官が参院外交防衛委員会で「沖縄の人は喜んでもらいたい」と述べた。県民の神経を逆なでするような発言としか言いようがない。
久間長官は、ミサイル防衛(MD)の重要性を説明する中で、米軍が独自にPAC3を配備したことに歓迎の意を表し、「わが国の予算の中で追いつかない点を先にやってくれたわけだから、沖縄の人は喜んでもらいたいと私は思っている」と述べた。
県内で批判の声が上がっていることに対し、翌日の閣議後の会見で「それは間違っている」と指摘し、「機能は今までと変わらないわけだから心配いらない。攻撃的な武器であるかのように誤解している」と述べている。
米軍の存在自体が沖縄のリスクを高めており、PAC3は米軍基地を守るためのものだ。ミサイル防衛も万全とは言えない。県民が不安を抱くのは当然であり、批判は正当なものだ。
政府は、弾道ミサイルの脅威から沖縄を防護するために配備される防御システムであり、米軍の抑止力も維持されると強調してきた。
これに対し、沖縄配備に真っ先に反応したのは嘉手納基地を抱える本島中部の自治体の市町村長らである。
「基地負担の軽減に逆行する」「県民を守るなら、基地を撤去すべきだ」「沖縄を軍事緊張の最前線に立たせるもの」―。住民の視点に立った批判が間違いという発言の方がおかしい。
本紙が県内の基地所在市町村長を対象に実施した緊急アンケートでは、回答した十八人のうち十三人が反対し、五人は「どちらとも言えない」と答えた。「賛成」は一人もいなかった。
PAC3が機能するのはどのような事態下なのか。想像力を働かせればいい。今後の負担軽減の道筋も不透明な中で、防御的で抑止力が高まるからと単純に歓迎できるわけがない。
米軍は嘉手納基地に次期攻撃戦闘機F35Aを五十四機配備することを検討しており、今後、さらに嘉手納基地の機能強化が予想されている。
米軍再編で米軍と自衛隊の一体化が進む。政府は憲法改定を視野に、従来解釈で禁止されてきた集団的自衛権行使を検討する方針を表明している。
諸状況を勘案すれば、沖縄の負担軽減どころか基地の固定化に拍車がかかり、米本土防衛の盾としての機能も強化されかねない。
多くの県民が求めているのは基地機能の強化ではなく、外交努力による負担軽減であることを忘れてもらっては困る。
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