2012年06月21日

【核のゴミ】『近づけば必ず死ぬ』怪物をもてあそぶ・・・【捨て場なし】

 6月16日、日本政府は許しがたいことにが大飯原発再稼動にゴーサインを出した。格納容器にベント装置が無く、海水ポンプを津波から防ぐ防潮堤も無く、オフサイトセンターは海抜わずか2m!という信じられない状態のままの強行である。非常用電源車を集めたというが目の前の山肌が地震で崩れたら一巻の終わりだ。そもそも平地にある福島第一原発と違って大飯原発は山と海に囲まれている。土砂崩れで道路が塞がれば事故対応の車は近寄れない。近隣の住民は避難できない。全く狂気の沙汰だ。
 もっとも原発というのは大事故が起きなくとも、常に放射能を撒き散らし、労働者を被曝させ、処理方法の無い核のゴミを大量に生産する。だから安全対策の有無や程度に関わらず、全ての原発を今すぐ停止・廃炉にしなくてはならない。それにしても電力会社も政治家も官僚も、事故が起こった場合のことを考慮しないだけでなく、このまま原発を動かし続けた場合将来どうなるのか全く気にしていないようだが?
 使用済み核燃料を収容している福島第一原発4号機の冷却プールは危機的な状況が続いているが、そもそも使用済み核燃料の保存・処分方法は確立していない。去年や今年の東京新聞記事などから引用。


 まず2012年4月17日・東京新聞【こちら特報部】より。福島第一原発4号機は震災発生当時、定期検査中のため原子炉内に燃料棒は無かったが、水素爆発と火災で建屋は大きく損壊し、鉄骨がむき出しの無残な姿になっている。使用済み核燃料プールには1535本の燃料棒(使用前も含む)が貯蔵され、容器や冷却水の重さなども含めると総重量は1670トンだという(参考)
 燃料棒というのは一度核燃料として使用してしまえば、プルトニウムやストロンチウムなど厄介な放射性物質を生成し、崩壊熱を発生させながら使用前の一億倍の放射線を放つという(参考)。だいたい天然ウランをわざわざ分裂させて、放射線を出しながら崩壊する元素を生み出したんだから放射能が桁違いになるのは当然だ。燃料棒を原子炉で何年も使って用済みになれば、使用前と同じ形だが手のつけられない化け物に変身するんだよ。原子力発電とはこんな馬鹿げたものなんだ。
 しかも制御棒を挿入して核反応を停止させ原子炉から取り出した後も、循環水で何年も冷却しなければならない。もし4号機の冷却プールが崩壊して燃料棒が散乱すれば、それこそ首都圏の住民も避難せざるを得なくなるだろう。
 東電は昨年7月、4号機のプールの底を鋼鉄の支柱とコンクリートで補強する工事を行った。担当者によると『工事はなくとも問題はなかったが、補強で安全余裕度が二割増した。余震の備えはできている。これ以上の補強は考えていない』という。
 そんなこと言われてもいまさら東電の言うことなど信じられるわけがない。芝浦工大講師の後藤政志氏は『支柱を支える床の強度が保たれれば、簡単には崩れないと思う。しかし、大規模な余震がくれば、それも分からない』と危惧する。たとえば今年あたり、3.11と同程度の余震と津波が襲ったとしても不思議ではないだろう。
 「最悪のシナリオはプールの底が抜け、核燃料が飛び散ること。後藤氏は、『近づけば必ず死ぬ使用済み核燃料をどう回収し、水の中に戻すのか、現在の科学では対処は不可能だ』と話す」
 そうなったら日本列島の東半分は永久に放棄することになるだろうな。ってゆうか放置された核燃料は永久に地球を汚染し続けるだろう。
 東電によると、来年末から2年間かけて核燃料の取り出しを始め、3年後には安全な場所に移し終える計画だという。しかし「東北エンタープライズ」名嘉幸照社長(ゼネラル・エレクトリック元社員)は『4年で取り出しを終えるのは無理だ』と指摘する。
 『現場の感覚で言えば、準備に約3年、取り出し完了は最低でも5年後では。水面から核燃料が顔を出せば、近くの人間は即死する。クレーン一つとっても正確なコンピューター制御が必要だ。簡単じゃない』
 また名嘉氏は、福島第一は冷温停止状態にあるとデマをほざく政府が避難指示区域を再編したことを疑問視している。
 『4号機のプールで起きうる最悪の事態を回避する作業が終わっていないのに、帰還させてよいのだろうか』
 やっと故郷に帰ったと思ったら4号機プールが崩壊し放射能を浴びせられながらまた避難・・・という事態もあり得るだろう。というか今の段階で帰還など時期尚早どころか人体実験ではなかろうか?

 それに、使用済み核燃料の処置に悩まされているのは福島第一4号機だけではない。2011年4月22日・東京新聞【こちら特報部】に、全国の原発の使用済み核燃料貯蔵量(燃料プールあるいは乾式キャスクに既に貯蔵されている量)の一覧表がある(2010年9月末、電気事業連合会調べ)。スキャナーで読み込んだりしたら怒られそうだから手打ちで引用した。全原発の貯蔵量合計(13500トン)、各原発の貯蔵量・貯蔵能力使用率(貯蔵量÷全容量)が示されているが、ここから全原発の貯蔵能力使用率を勝手に計算すると約66.1%となる。残り約6923トン(約33.9%)だ。
 貯蔵能力使用率のワースト4は、福島第一(87%、1820トン)、東海第二(84%)、福島第二(83%)、柏崎刈羽(76%)だ。これらの原発を普通に運転していたら、核燃料プールは2〜3年で満杯になってしまう(満杯までのタイムリミットは、残り容量÷1回の燃料取り換え量)。それに言うまでもなく福島第一原発4号機の1535本は出来るだけ早く抜き取らなくてはならない。他の号機の燃料プールの燃料棒も速やかに抜き取るべきだが、それをどこに移せばいいのか?

 こういう人類を滅ぼしかねない危険なゴミをまた原発の燃料に変えようというのが、核燃料サイクル計画だ。青森県六ヶ所村の再処理工場に全国の原発から出る使用済み核燃料を集め、3年かけて100℃以下に冷却し、せん断・溶解し精錬してウランやプルトニウムを抽出し、新たな核燃料に作り変えようというのだ。要するに核燃料をぶった切って薬品で溶かし邪魔な死の灰(核分裂生成物)を除去し使えるものだけ抜き取ろうという危険な作業だ。人間が近づくだけで死ぬような物質をわざわざ粉々に分解して薬品で溶かすんだとよ。狂気の沙汰としか言いようがない。当然の如く事故が起きなくても大量の放射能を大気や海にばら撒くことになる。イギリスやフランスの再処理工場近辺では小児白血病が多発し、イギリスの再処理工場は廃液で海を汚染し、対岸のアイルランド政府がイギリス政府を訴えているという(参考)
 六ヶ所再処理工場は1997年に完成する予定だったがトラブル続きで18回も完成時期が延期され、2012年10月からの運転が予定されている。しかし、仮に稼動できたとしても予定の処理能力は年間800トン、全国の原発から出る使用済み核燃料は年間1000トンのため、毎年200トンが処理しきれず溜まっていくことになる。しかも再処理工場の貯蔵施設受け入れ容量は3000トンだが、既に2827トンが運び込まれている。
 こういう切羽詰った状況のため、同じく青森県下北半島のむつ市には「核燃料中間貯蔵施設」が建設されている。貯蔵能力は3000トンだが最終的には建屋がもう一棟建てられ5000トンになるという。水冷式ではなく「乾式キャスク」という空冷式で(大丈夫か?)、最長50年貯蔵する計画とのこと。この施設を建設する「リサイクル燃料貯蔵株式会社」(東電や日本原子力発電が出資)の担当者は『年限や容量などは地元との約束だ』と断言する。
 海岸からたった500mの距離だが、担当者によると東電の自社評価で6.3mの津波を想定、現場は海抜20メートルなので防潮堤は必要なく、万が一「キャスク」が固定の台から転落しても水没しても耐えられるという。信じられねえけどな(以上、2011年4月22日・東京新聞より)。
 つーか「リサイクル燃料貯蔵」ってのはブラックジョークだな。「死の灰貯蔵」じゃねえか。それに再処理工場に持ち込むまで最長50年保管ということだが、再処理工場は50年も使えるのか?(参考) つーか50年という約束もいつのまにか反故にされ、ここに貯蔵されっぱなしになるかもね。40年経った原発は廃炉とか言った舌の根が乾かんうちにウヤムヤにしようとしてるようにね。

 日本原燃は六ヶ所村に、再処理工場だけでなく「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター」、「MOX燃料工場」、「ウラン濃縮工場」、「低レベル放射性廃棄物埋設センター」の5つの設備を運営している。「低レベル放射性廃棄物埋設センター」は、低レベル廃棄物の国内唯一の最終処分場であり、全国の原発で使われた水、金属、プラスチック、布、紙、防護服やマスクなどが持ち込まれている。液体は水分を蒸発させて濃縮し、固体は焼却・切断・溶解させ、セメントなどで固めてドラム缶に保存するという。処理のときに出る放射能はどうするつもりだろうか?
 既に200リットルのドラム缶24万本が保存されている。全国の原発で発生する低レベル放射性廃棄物は年間3万本だが、「およそ百年」分は受け入れ可能だというが、放射能が「自然界と同じになる」300年間、放射線の調査や監視が必要とのこと。300年も経ったら日本国なんて消えてるかも?つーかこの列島に人間住んでないかもね。
 また「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター」には、イギリスとフランスから返還された核廃棄物が貯蔵されている。日本の電力会社は1990年以降、約7100トンの使用済み核燃料を両国の再処理工場に委託。再処理工場で生産されたMOX燃料はプルサーマル発電の原発に運ばれる。利用方法のない核のゴミは、高レベル廃液にガラスを混ぜた「ガラス固化体」に加工される。これを収納する「キャニスター」が六ヶ所村に運ばれ、約1400本が貯蔵されている。2020年までにイギリスからあと800本弱が返還されるという。日本に処理する技術が無いからこんなわけの分からんことやってんだ。「キャニスター」の中のガラス固化体は、この貯蔵所に搬入された時点では表面温度200℃だが、30年から50年間貯蔵し、自然の空気で100℃以下に冷やしてから、(まだ建設場所も決まっていないが)最終処分場に持ち込む計画だという。(以上、2012年2月10日・東京新聞)
 もちろん六ヶ所再処理工場でも日本でもガラス固化体の生産を実施する予定らしいが、避妊するつもりだったのにゴム付けるの忘れたレベルの失敗でなかなか軌道に乗らないそうな。
 それにしても原発は「トイレのないマンション」とはよく言ったものだ。まさに、トイレがないからバケツや洗面器をトイレ代わりにして、あふれそうになったから「この糞尿、どうにかして食えないだろうか」と悩んでいるようなものだ。

 2012年6月18日、六ヶ所再処理工場の「ガラス固化試験」が3年半ぶりに再開された。これは日本原燃ってゆうか核燃料サイクルを実現させたい愚かどもにとって「背水の陣」になるという(参考)
 そもそもガラスと混ぜ合わせる高レベル廃液とは、使用済み核燃料を薬剤で溶かしてウランやプルトニウムを抽出したあとの残りカスだ(参考)。核燃料から使える成分を抜き取り再利用したいために、わざわざ『近づけば必ず死ぬ』ような怪物を粉々に砕いて薬品で溶かすという馬鹿げた作業を行い、その残りカスの処分で苦労してるんだ。原子炉から抜き取った形のまま保管したほうがよっぽど楽で安全なのに。
 どっちにしろ核のゴミは、イギリスやフランスから返還されたガラス固化体と一緒に最終処分場で地底深く埋める計画だが、周知の如くどこの自治体も声を上げない。基本的な調査だけでも6年間で最大90億円の電源三法交付金が手に入るというが、当たり前のことだがそんなトンデモないゴミを自分のところに引き受けたいわけがない。いままで応募したのは2007年の高知県東洋町だけだが、住民の猛反対によって3ヵ月後に撤回している(以上、2012年2月10日・東京新聞)。
 なにしろ核のゴミは、毎時1500シーベルト(ミリでもマイクロでもない!)という凄まじい放射線を放つってゆうからな。人間なんざ20秒で殺せるってよ。元のウラン鉱石の放射線量と同程度になるまで数万年だってよ(参考)。最低10万年は地底に眠らせておきたいんだろうけど、だいたい日本なんて地震だらけ火山だらけ、しかも3.11以降地殻変動が活発化している。いくら深く埋めても何万年か経てば地表に顔を出すかもね。
 この問題について2年前に原子力委員会から依頼を受けた「日本学術会議」が検討委員会を組織し、「十万年間安全だと説明しても住民の理解は得られないとみて、地層処分からの方針転換を議論」。要するにどんなに安全だとウソついても札束を見せつけても住民が納得するわけがないってこと。当たり前だ!
 「五十〜数百年に渡って暫定的に貯蔵し、その間に抜本的な解決策を得る」という無責任な案も出たとさ。数百年ってこれもまた気の遠くなるような年月だな。日本人なんかサルに戻ってたりしてね。
 検討委員会は8月下旬に報告書を提出する予定だが、メンバーの一人は「脱原発を進めても核のごみの問題の議論は避けられない。われわれの検討結果が、国民的な議論を呼び起こすことを期待している」と語ったってさ(以上、2012年6月18日・東京新聞)。
 そうだね、まずこれ以上核のゴミを増やさないために大飯原発再稼動を撤回し、全ての原発をこのまま廃炉にするのが第一歩だな。それにしてもさあ、政治家も官僚も電力会社も原発関連企業も、原発を運転してりゃ核のゴミが増えて処分しきれなくなるのを分かってるくせに、高速増殖炉計画も核燃料サイクルも到底無理だって分かってるくせに、つーか幼稚園児でも分かるような簡単なことなのに、なんでまだ原発を動かし、増やそうと企んでるんだろうか。なんで立ち止まれないんだろうか?

posted by 鷹嘴 at 21:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 原発 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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