「有罪」米兵の引渡し巡り、比大統領に批判噴出
2007年01月05日03時06分
フィリピンの地裁で有罪判決を受けた米海兵隊員の身柄の扱いをめぐり、アロヨ大統領への批判が高まっている。強姦(ごうかん)罪に問われた米兵は地裁判決に従い、いったんはフィリピン側に身柄を移された。しかし、米比間の協定を盾にした米政府の求めに比政府が応じ、再びマニラの米大使館に移送された。これに対し被害者の女性や支援団体は「政府は司法判断をふみにじった」と反発。上院からは協定の見直しを求める声が上がっている。
12月4日の地裁判決は、米兵に最長40年の禁固刑を言い渡すとともに、それまで米大使館内にいた米兵を比側に引き渡すように命令、米兵はマニラ首都圏の刑務所に一時拘束された。
これに対し、米兵側は「女性と合意があった」として控訴。米政府は、「比側の法的手続きが完了するまで、被告は米側の保護下におく」と定めた「訪問米軍に関する地位協定」に基づき、控訴中で刑が確定していないとして米兵の引き渡しを求めた。比政府は、司法判断を無視して米兵を米大使館に移送した。
その理由は、米からの圧力だ。米側は判決を受けて米兵が比側に拘束されると、米比合同軍事演習の中止を宣言、対比援助の縮小も示唆した。米軍基地は撤退したが、テロ対策など米軍の支援なしに治安対応できないフィリピンにとって、米との関係悪化は脅威だ。米側は、兵士の身柄が大使館に戻ると、すぐに軍事演習中止を撤回した。
アロヨ大統領は2日、米兵移送について「国益のために米比関係を損なわない道を選んだ」と理由を説明した。米兵側から拘束場所の判断を求められた控訴裁判所も3日、「地裁の判決は正しいが、司法は外交に介入できない」と、移送を容認する決定を出した。
しかし控訴裁判所は一方で、地位協定でいう「法的手続き」とは一審判決が出るまでを指し、控訴中は適用外だと判断し、米比両政府の解釈に異議を唱えた。また「地位協定は米兵を守るためではなく、米兵から我が国を守るためにある」と指摘し、地位協定が米側に有利に運用されることを批判した。
ただ、大統領側は控訴裁の判決を、政権の政治判断を認めた「勝利」とみなす。これに対し、上院からは「国家の尊厳と法秩序を犠牲にした『勝利』」(ピメンテル議員)、「国民の手本となるべき大統領自らが法秩序を無視した」(パンギリナン議員)と、批判の声が相次いだ。
強姦で有罪の米海兵隊員、米側に引き渡し 比政府
2006年12月30日19時34分
マニラの米国大使館の報道官は30日、フィリピンの地裁で強姦(ごうかん)罪の有罪判決を受けた米海兵隊員の身柄が地位協定にもとづき、米側に引き渡されたことを明らかにした。米兵の身柄をめぐっては、引き渡しに応じないフィリピン側に対し、米側が米比合同軍事演習の中止などを通告していた。
地裁判決によると、軍事演習で来比した沖縄駐留の海兵隊員ダニエル・スミス被告が昨年11月、ルソン島中部スービックでフィリピン人女性を強姦。4日、被告に最長40年の禁固刑が言い渡され、被告側は控訴した。
判決によりスミス被告の身柄はフィリピン側に送られたが、米側は地位協定を根拠に「刑が確定するまでは被告は米大使館の保護下に置かれるべきだ」と主張。引き渡しを求めていた。


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