2007年03月16日

強制連行中国人訴訟が最高裁で再審理決定、日中共同声明を捻じ曲げて解釈するな!

皆さんご存知と思われますが、以下のようなニュースがありました。
2004年広島高裁にて、戦時中強制連行された中国人を酷使していた西松建設に対し賠償を命じる判決がありましたが、これが最高裁で審理再開されるというのです。
(原告団のサイト)

強制連行訴訟 中国人側、逆転敗訴へ 最高裁が弁論再開
2007年01月16日06時01分
 第2次大戦中に強制連行され、広島県内の水力発電所の建設現場で過酷な労働をさせられたとして中国人の元労働者ら5人が西松建設を相手に起こした訴訟で、最高裁第二小法廷(中川了滋裁判長)は双方の意見を聞く弁論を3月16日に開くと決め、関係者に通知した。同社に総額2750万円の支払いを命じた二審・広島高裁判決を覆すとみられ、原告側が逆転敗訴する見通しだ。

 第二小法廷は、72年の日中共同声明で中国人個人の損害賠償請求権が放棄されたかどうかについて初判断を示すとみられ、従軍慰安婦訴訟など中国人の戦後補償訴訟すべてに決定的な影響を及ぼすことになる。

 弁論は、二審の結論を維持する際には開く必要がない。第二小法廷は、請求権放棄についての西松建設側の主張に論点を絞って上告を受理した。

 日中共同声明では、「日本国に対する戦争賠償の請求を放棄する」とされている。西松建設側は「請求権は放棄された」と主張。しかし広島高裁は「中国国民の加害者に対する賠償請求権の放棄までも当然に含まれているものと解することは困難だ」として、この主張については退けた。

 この裁判は、98年1月に広島地裁に提訴。原告側は、44年ごろに日本に連行され、1日12時間以上、トンネル工事などに従事させられたと主張した。02年7月の一審判決は、西松建設側が労働環境を整えるなど安全配慮義務を尽くさなかったと認めたが、時効により請求権は消滅したとして請求を棄却した。

 しかし、04年の二審判決は「消滅時効の援用は著しく正義に反し、権利の乱用で許されない」として、請求全額の支払いを命じた。

 戦後補償裁判の弁護団によると、中国人が原告の強制連行訴訟は下級審も含めて14件が係争中。慰安婦訴訟は最高裁で2件が審理中だ。

先日、百人斬り訴訟は最高裁への上告が棄却され、今度こそ原告側の敗訴が決定しました。しかしこの強制連行訴訟は上告が受理され審理再開が決定しました。(受け売りですが)このような場合、高裁判決が覆る危険性があります。というよりも高裁判決を覆すために上告が受理されたと見るべきでしょう。またその審理は日中両国間の請求権放棄の問題に限られると見られています。

1972年の日中共同声明にて中華人民共和国は、日本政府への賠償請求を放棄することを宣言しました。
「中華人民共和国政府は、日中両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する」
この文言を両国の国民個人についても賠償は放棄済であると拡大解釈されるかもしれないのです。実に馬鹿げたことに国家同士の取り決めを個人の賠償請求にも適用しようというのです。戦後補償裁判に長年取り組んでいる南典男弁護士は朝日新聞紙上(1月16日)にて、以下のように述べています。
日中共同声明で個人の賠償請求権も放棄されたとの解釈を最高裁が示せば、外交問題に直結する。戦後補償裁判は人道に対する罪を扱っており、国際的、人道的な観点からも問題だ。日中関係が大事な時期に性急な判断ではないか。95年には銭其琛外相が「共同声明で放棄したのは国家間の賠償であって個人の補償請求は含まれない」という趣旨の見解を示している。声明の合意内容に中国側の意向が反映されるのは当然で、こうした点について最高裁の吟味が足りないのではないか。
もし最高裁でこの訴訟が逆転敗訴するようなことになれば、他の戦後補償裁判もその判例に従うことになるかもしれません。現在でも従軍慰安婦問題、強制連行問題、毒ガス問題など様々な戦後補償裁判が争われていますが、「全滅」することになるかもしれないのです。
この重大な事態に対し、

「東京都千代田区隼町4−2
最高裁判所 第2小法廷
中川了滋裁判長宛」


に、愚かしい判断を行わないように葉書きで要請してみましょう。
(弁護団から正式な要請文書が送付される予定もあります)

(参考)
日本は中国人強制連行問題の適切な処理を 外交部2007年03月14日
 外交部の秦剛報道官は13日午後の定例会見で、中日関係などの質問に答えた。

 ――日本の最高裁判所は近く、西村建設の中国人労働者強制連行に関する弁論を開く。中国政府が自国民に対日賠償請求権を認めるか否かを焦点とする見解があり、今後の戦争賠償問題に重大な影響をおよぼす訴訟だ。中国側は、中国国民には依然として日本に対する個人賠償請求権があり、このために日本政府は誠意を示し、賠償問題を適切に処理するべきとの認識か。民間賠償請求に対する中国政府の立場は。

 1972年の「中日共同声明」署名時に、中国政府はすでに戦争賠償問題への立場を明確に表明した。この立場に変更はない。指摘しておきたいのは、労働者の強制徴用と奴隷的酷使は、日本の軍国主義が侵略戦争中に犯した重大な罪の1つだということだ。日本側が歴史に責任を負う姿勢に基づき、この問題に真剣に対処し、適切に処理することを望む。


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posted by 鷹嘴 at 10:00| Comment(2) | TrackBack(2) | 戦後補償 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは、
トラック・バックありがとうございます。
私見ですが……、
西松建設は被害者に丁重にお詫びし、損害賠償請求に応じるべきです。
理由は、大きく分けて、
人道上、人倫の大義にかえるべき。
法的には、72年の日中共同声明で中国人個人の損害賠償請求権は放棄されていないこと。
もし最高裁判所が異見を示す判決により原告敗訴にするようなことになれば、裁判所に対する国民の信頼はゆらぎます。
Posted by 一人閑 at 2007年01月27日 12:41
まず、人道上、人倫の大義などは、法治国家として判決理由に出来ません。
それでは、きちんとした法解釈上の理由はあるのか?
確かに、日中共同声明や日中平和条約を読むと、日韓基本条約と一体となる請求権条約とは違って、両国の国民や法人の請求権を放棄するとは明示されていない。
そして、中共政府が中華民国政府の正統な後継政権であるという主張を日本と中共の両国政府は認めているので、日華平和条約も参照すべきことは確かで、同条約では国民や法人の請求権については別途政府間で協議すべきことと定められている。
よって、銭其外相の解釈も理論上は成り立ちうる。
しかし、実はこの解釈を日本政府も受け入れた場合には、消滅時効の論点を別にすれば、日本人側に圧倒的に有利なのである。
なぜなら、日本人側の請求権の方が、圧倒的に中国人側の請求権よりも巨額だからなのである。
よって、中国人のダブルスタンダードぶりからはあまり考えにくいが、中国の裁判所が日本の本件二審裁判のように中国人側の消滅時効の主張を封じた場合には、私有財産を原則として否定して個人の財産権を承継した中共政府は、日本人からの巨額の請求権訴訟に怯えることとなるのである。
よって、この裁判で最高裁が二審判決を維持した場合には、日本人側から個人請求訴訟を中共政府ないし中国人に対して提起することが理論上可能になってしまい、かえって中共政府に悪いのである。
そのときに中国の裁判所が消滅時効や日中共同声明その他の条約等の外交文書を理由に日本人個人の請求を棄却した場合には、日本側からの中共に対する非難は今まで以上に大きくなることであろう。
Posted by わろす at 2007年01月30日 10:38
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Weblog: タカマサのきまぐれ時評
Tracked: 2007-01-26 08:19

西松建設に関する報道
Excerpt: 西松建設に関する報道 冒頭は引用である。  すでに各紙で報道されたとおり,最高裁判所第二小法廷(中川了滋裁判長)は1月15日,西松建設を被告とした広島での中国人強制連行訴訟について,双方の意見..
Weblog: 暘州通信
Tracked: 2007-01-27 12:13