2007年03月03日

超人気ブログのお粗末な内容

現在人気blogランキングの政治カテゴリで1位の「博士の独り言」にて、西松建設の強制連行訴訟について取り上げていたことに気づいた。それが実にあきれたものなのである。

博士の独り言 - 中韓「戦時補償要求」小考 -


まず、
「大半、自由意思で居住 外務省、在日朝鮮人で発表 戦時徴用は245人」
という朝日新聞の古い記事を貼り付けているが・・・この訴訟の原告は韓国人ではなく、中国人であることも知らないのか?ま、これは参考程度ということで紹介したつもりだったと思うけどね。
しかしその後に続く文章も無知丸出し、アホ丸出しである。
国籍無き者に尽くす反日弁護士!

 戦時中に“強制連行”され、“過酷な労働を強いられた”。ゆえに、「損害賠償せよ」と日本の裁判所に提訴する。こうした裁判が、この広島をはじめ、長崎、福岡、長野など、各地で行なわれるようになった。

 弁護士は、日本に国籍を有する国民が抱える現争議の解決のために機能すべきである。その法曹に携わる者が、その本来の使命を亡失したかのように、他国民の権利を主張する。それを強調して“賠償請求”を援護する。これ自体が矛盾ではないか。
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「強制連行」は実在せず、「裁判」自体も成立せず!

 第1に、「強制連行」は存在しなかった。存在していたのは、世界のいかなる国家でも行なう「徴兵」「徴用」であった。これは、「徴兵」「徴用」の募集に対し、当事者が「志願」してその役に就くものであり、他虐的な「強制」ではない。

 第2に、「中国人」による“戦時賠償”を求める訴訟行動は、昭和47年(1972年)9月12日の「日中共同宣言」(日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明)が現時も有効とすれば、その第五項に「日本に対する戦争賠償請求の放棄」 との明示にもとづき「無効」である。

 第3に、仮そめにも、司法が、わが国の六法を適用すべき裁判と一考するにしても、各審理の中で指摘されている「消滅時効」がすでに成立している。つまり、裁判は成立しないのである。

正気でこういうことを書いたとは思えんが、一つずつ指摘してみるか。

●「日中共同宣言」にて日中間の賠償問題は放棄されたと主張しているが、肝心の文言はこのようなものである。
「中華人民共和国政府は、日中両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する」
中国政府は、日本国に対しての賠償を放棄しましたよということである。しかし中国国民個人の賠償要求については一言も触れていない。この訴訟は強制連行の被害者個人が原告なのである。個人の戦後補償請求に「日中共同宣言」を持ち出しても全く無意味である。
(しかし最高裁は西松建設の上告に対し、請求権の問題以外については棄却したので、「日中共同宣言」を巡る賠償放棄の解釈のみが争点となった。
最高裁が愚かしい判断を下し、あのブログを笑えないような事態にならないことを願う)

●日本の弁護士は日本国籍がある者のためだけに働くべきだと書いているが、では外国人が日本国内で起訴された場合、弁護士を立ててはいけないのか?母国から弁護士を呼び寄せなければならないのか?あるいは外国人が日本国内で裁判を起こしたときも日本人の弁護士を頼ってはいけないのか?全く寝言はやめて欲しい。

●「消滅時効」が成立しているので裁判として成立しない、と述べているが、この裁判では現実に裁判として成立し広島高裁では勝訴したことを知らないのか?
それに、しつこいが最高裁で審理されるのは請求権の問題のみであり、「消滅時効」については審理の対象外なのだが?

●強制連行ではなく「徴用」だったと述べているが、
「BIGLOBEサーチ Attayo - 辞書検索 -」によると「徴用」とは、
(1)戦時などに国家が国民を強制的に動員して、兵役以外の一定の業務につかせること。日本では1939年(昭和14)国民徴用令が制定され、敗戦まで行われた。
「―工」「―船舶」「軍需工場の工員として―される」
(2)強制的に物品を取り立てて使用すること。徴発して用いること。
という意味である。つまり政府が国民に対し何らかの労働を強いることや、占領地に於いて物品を取り立てることである。

日本は中国を侵略し「満州国」など実質上の植民地や傀儡政権を設けたものの、中国大陸の一部を国土として編入したことなどない。戦時中政府が「国民徴用令」に基づいて日本人を、あるいは朝鮮人を「徴用」(その不当性についてはともかく)したような手段を中国人に対して用いることができるわけがない。
そもそも、
これは、「徴兵」「徴用」の募集に対し、当事者が「志願」してその役に就くものであり、他虐的な「強制」ではない。
こういう意味不明なことを書いて恥ずかしくないのだろうか。「徴兵」「徴用」は募集するものではないし、「志願」するものではない。個人の意思は関係なく引っ張られるのが「徴兵」「徴用」なのである。「博士の独り言」の管理人は博士を自称する前に日本語の勉強をした方がいいだろう。てゆうか何の博士なのだろうか(藁

一方「陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約」の52条では、「徴発と課役」について条件付で認めている。
第五二条(徴発と課役)現品徴発及課役ハ、占領軍ノ需要ノ為ニスルニ非サレハ、市区町村又ハ住民ニ対シテ之ヲ要求スルコトヲ得ス。
徴発及課役ハ、地方ノ資力ニ相応シ、且人民ヲシテ其ノ本国ニ対スル作戦動作ニ加ルノ義務ヲ負ハシメサル性質ノモノタルコトヲ要ス。
この「課役」が、「博士の独り言」の言う「徴用」に当たるのではないかという意見も出るかもしれない。しかし海の果ての島国まで連行して働かせることが「課役」と言えるわけがないであろう。そもそも当時の日本政府すら、中国人を「徴用」するなどという馬鹿馬鹿しい口実は用いなかったのである。

1942年11月27日、かねてからの土建業界の要求が受け入れられ「華人労務者内地移入に関する件」が閣議決定された。中国人強制連行政策の開始である。
「内地に於ける労務需給は愈々逼迫を来し特に重筋労働部門に於ける労力不足の著しき現状に鑑み左記要領に依り華人労務者を内地に移入し以て大東亜共栄圏建設の遂行に協力せしめんとす」
この政策の「要領」として、傀儡組織である「華北労工協会」などの現地機関が「募集又は斡旋」を行うとされた。つまり中国人強制連行は、「募集又は斡旋」という口実によって行われたのである。表向きは「募集」か「斡旋」だったのである。

もちろん実際は「募集」でも「斡旋」でもなかった。就労に当たって「華北労工協会」と労働者の契約が必要だったが、大阪大学の杉原達教授によると、「私が聞き取りをした限りでは、またこれまでの多くの調査結果を見る限りでは、この契約書に自ら署名した人はいなかったし、契約書の存在そのものを知っていた人も皆無」だという。
1941年7月8日の大政翼賛会調査委員会第10委員会にて、この政策を立案した企画院の中島第三部長は、
「(すでに)苦力に付手は満洲の方に於手も計画の半分位しか取れないやうな実情にある(中略)それでこれを内地から行つて取れるかと云ふ技術的な問題になつて来ると、これは多大な困難がございまして(中略)事実今普通の手段で以て連れて来ることは非常に困難だと思います」
と答弁していた。つまり日本政府は「普通の手段」で中国人を集めることは不可能であることを悟っていたのである。
そして暴力的な手段で中国人が連行されたのは言うまでもない。この裁判で争われた西島建設(当時は西松組)の事例であるが、広島県の安野発電所建設現場で西松建設によって働かされていた中国人は、かぼちゃをカゴに入れ天秤棒を担いで市場に行くところを日本兵に襲われたり、ネギを売りに行く時に銃声が聞こえ、八路軍だと思って油断していたら日本軍で、取り囲まれて連行された人々である(以上、杉原達/著「中国人強制連行」岩波新書785より引用)。「華人労務者内地移入」とは、北朝鮮による日本人拉致と同等の行為だったのである。

●この裁判についても、「請求権以外の部分」つまり強制連行・強制労働の事実、安全配慮義務違反の事実(及びこの件について時効の主張は認められないこと)は確定している。強制連行が事実だったことを日本の司法が認めたのである。

以上のことを全く無視している「博士の独り言」は妄想を呟いている程度のブログといえるだろう。このようなブログが政治ランキングで1位を保っている事実は嘆かわしいことである。これではこのランキングの価値は、ネットウヨが自己満足を得る程度のものではないか?参加者の一人として悲しいことである。

しかし「博士の独り言」に限ったことではないが上位を占めるネットウヨ系ブログは、字の読みやすさ、デザイン、適度な画像の挿入など、読み手にアピールする工夫を凝らしている。このブログもその点だけは見習いたいものであるw


*この裁判の原告団のサイトがあるので参考のこと。

*当ブログでも最高裁での審理再開決定について取り上げている。



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posted by 鷹嘴 at 16:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦後補償 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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