2007年03月13日

テレ朝「ザ・スクープ」鹿児島志布志市の冤罪事件

3月4日(日曜日)の昼間、テレ朝の「ザ・スクープスペシャル」で、鹿児島県志布志市で起きた恐ろしい冤罪事件(参考過去ログ)を特集していた(ビデオに録画して見た)。
2003年の2月に鹿児島県志布志市の「懐集落」にて、県議選に立候補した中山信一さんが買収を行ったとして、志布志署は容疑者に厳しい取調べを行い6名を自供させたが、これは全く事実無根の冤罪だったのである。

買収容疑が明るみになったきっかけは市内の有力者からの買収の告発だった、と志布志署は説明していた。
同署の磯部一信警部は「有志者は被告5人の名前を挙げて、選挙運動をして非常に動いているようである」と、公判で証言した。
その「有志者」とは、商店主(当時は公民館の館長も務めていた)加藤秀雄さんだったが、しかし加藤さんによると「そんなことを言ったことはない、警察のでっち上げ」。
たしかに磯辺警部は加藤さんの店にやってきて質問したが、加藤さんは買収など知らない、と答えた(そもそもそんな事実は全くない)。すると磯辺警部は「知ってることを全部言え」と居座るので、仕方なく加藤さんは「藤本いち子さんと山下邦雄さんは、中山さんの農場で働いています」とだけ答えた。これが冤罪事件の幕開けだった。

こうして12名が取り調べを受け起訴されたが、これは肉体と精神に対する拷問だった。
懐智津子さんは長時間の取り調べで体調を崩し病院に運ばれたが、診察が済むとまた署に連れて行かれ、点滴を受けながら7時間も取り調べを受けた。
永利さんは連日の長時間の取り調べの疲労で倒れ、脳虚血症と診断された。刑事は妻のひな子さんに対して「天罰じゃ」と言い放ったという。
藤山忠さんは「お前を死刑にしてやる」と罵られた。
また、「兄弟全部、子供も全部調べる」「家族も逮捕する」「子供も逮捕する」などと、肉親に累が及ぶと脅迫された人も少なくない。

そして警察はニセの自白を強要した。
山中さんは、捜査官が調書を1から10まで書いて、その通り言えと命じられた。
藤山さんに対して捜査官は、「調書というのは刑事が作るもんでお前が作るんじゃないんだぞ」と言い放った。
そして「(現金授受の場所の見取り図は)私が書きますのでそれをなぞってください」と命じ、藤山さんに繰り返し練習させた。

テレ朝に内部告発の電話をした警察官の話だが、志布志署の黒健治署長は「捜査員同士でこういう事件の話をすること」を禁じ、口にすれば「地方公務員法違反で逮捕する」と脅した。
ベテラン捜査官が捜査の手段に意見を述べたところ、署長は激怒し、その捜査官をこの事件から外した。
この署長は、
「逮捕を繰り返せば(容疑者は)あきらめて認める」
「事件は無いけど、“あげ”だけは降ろせない」

と語っていたという。

さらにこの容疑を立件するために異常な行為が行われた。
藤山忠さんによると捜査官から、妻に手紙を書いてもいいがその条件として「もらった金でパチンコをしたことを書け」と命じられた。
信じられないことだが、この手紙は投函されず、検察側の証拠として裁判に提出されたのである。

懐さんが自殺未遂して助けられたとき「選挙のことで迷惑をかけた。死んでお詫びします」と語っていたと、懐さんを助けた男性が証言したことになっている。そのように供述調書が作られたが、これは全くの作り話だった。
その男性は法廷で「懐さんは『死んだほうがマシ』と言っただけだ」と証言した。
しかしあきれたことに検事は
「『死んでお詫びします』も『死んだほうがマシ』も一緒じゃないか」
というふざけた事を述べたという。警察と検察が結託して冤罪事件を作り上げていたのである。

しかし警察が作り上げたシナリオには杜撰なものだった。
この選挙区には何万人も住んでいるが、懐集落の住人はわずか20人である。そこで191万円もの買収が行われたという検察の主張は不自然である。しかも検察は金銭の授受が行われたという、犯行の場所と日時を特定できなかった。起訴から2年も経ってから4回の場所と日時を示したが、そのうち2回はアリバイがあった。
まず2003年2月8日に集落内で買収会合が行われたとしたが、その時中山さんは同窓会に出席していた。その会場と集落は20kmの距離があり、往復すれば1時間15分になる。同窓会と買収会合の両方に出席するのは物理的に不可能だった。
また同年3月24日にも会合が行われたとしたが、その時も中山さんは市内のホテルで懇親会に出席していた。こうして警察の作り話は崩れていった。
全く物証のないこの事件の公判では、自白の信頼性についての議論が延々と続けられたそうだが、先月23日鹿児島地裁は容疑者全員無罪の判決を下した。
そして8日、検察は控訴を断念、中山さんら12人の無罪が確定した。しかし被害者が失ったものは取り返せない。
一方志布志署の署長は本部長注意、捜査を指揮した磯辺警部は訓戒、という実に軽い処分だったという。
鹿児島地検が12人全員の控訴断念 県議選買収事件
2007年03月08日16時09分
 03年4月の鹿児島県議選で、投票依頼に絡んで現金を授受したとして公職選挙法違反(買収、被買収)の罪に問われ、鹿児島地裁から2月23日に無罪判決を受けた元県議の中山信一さん(61)ら被告12人全員について、鹿児島地検は8日、控訴しないことを明らかにした。9日の控訴期限を前に12人の無罪が確定した。

 起訴状では、中山さんは妻シゲ子さん(58)らと共謀し、03年2―3月、同県旧志布志町(現志布志市)の民家で4回にわたって会合を開き、住民11人に現金計191万円を渡して投票依頼をするなどした、とされた。うち6人(1人は公判中に死亡、公訴棄却)は捜査段階で容疑を認めたが、公判では「厳しい取り調べで自白を強要された」として否認に転じ、その後は12人全員が無実を訴えていた。

 鹿児島地裁は判決で、4回あったとされる買収会合のうち2回について、会合の「主催者」とされた中山さんのアリバイを認定。いったん容疑を認めた6人の自白についても「(取調官から)追及的・強圧的な取り調べがあったことがうかがわれる」として信用性を否定するなど、すべての争点について弁護側の主張を受け入れた。

*志布志署の黒健治署長について参考。
“正義”の暴走ストップブログ(仮)

*ここまで読んでくれた方には申し訳ございませんが、この番組はネット配信されています。
また、番組の後半ではフィリピン人女性のマナリリ・ロザールさん冤罪事件が紹介されました。

posted by 鷹嘴 at 00:13| Comment(0) | TrackBack(1) | 冤罪事件 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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