袴田事件支援団体の集会「無罪の心証」と元裁判官
静岡県で1966年、みそ会社専務一家4人が殺害された「袴田事件」で、袴田巌死刑囚(71)(再審請求中)に対する1審・静岡地裁の死刑判決にかかわった元裁判官の熊本典道氏(69)が9日、東京都内で開かれた支援団体の集会に参加し、「自分は無罪の心証だったが、裁判長ともう1人の裁判官を説得できず、2対1の多数決で死刑判決を出してしまった」と明かした。
熊本氏が、「評議の内容」を公の場で話したのは初めてで、再審支援に協力する意向も示した。
裁判官が、判決に至るまでの議論の内容など評議の中身を明かすのは裁判所法に違反するが、熊本氏は「高裁や最高裁が間違いに気づいてくれることを願っていたが、かなわなかった。人の命を救うための緊急避難的な措置」と話した。
また、死刑制度については、「元々、反対だった」とし、「死刑を言い渡す場合は、最低でも裁判官3人による全員一致の意見にすべきだ」とも語った。
(2007年3月9日23時35分 読売新聞)
「有罪はむちゃと思った」/袴田事件の元裁判官が吐露
2007/03/09 19:31
強盗殺人事件で死刑が確定した元ボクサー袴田巌死刑囚(71)が再審を求めている「袴田事件」で、1審静岡地裁で死刑判決を書いた元裁判官熊本典道さん(69)が9日、東京で開かれた勉強会で「少なくとも(公判に)出ている証拠では有罪にするのはむちゃだと思った」と述べ、あらためて無罪の心証を持った理由を説明した。
熊本さんは「死刑廃止を推進する議員連盟」の勉強会で経緯を説明した後、記者会見も行った。無罪の心証を持っていたことを、公の場で発言したのは初めて。
熊本さんは、取り調べた警察官に公判で質問した際、最初から袴田死刑囚を疑っていると感じたという。「警察官は『2人で袴田死刑囚を挟んで調べを続けた』と答えた。ボクサーでも20日間も密室で警察官に挟まれて過ごし、耐えられるかと(自供の任意性を)疑った」と説明した。
熊本さんは無罪の判決文を起案。ほかの裁判官2人にも見せたが、説得できず、死刑判決を書くことになったという。
袴田事件 元裁判官「心証は無罪だった」<3/9 22:31>
静岡県で66年に一家4人が殺害された「袴田事件」で、一審の静岡地裁で死刑判決を書いた元裁判官が9日午後、「心証は無罪だった」と明らかにした。
この事件は66年6月、静岡・清水市(現静岡市)でみそ製造会社専務・橋本藤雄さん一家4人が殺害され、2か月後に元プロボクサー・袴田巌死刑囚(70)が逮捕されたもの。
検察側は、袴田死刑囚がアパートの家賃欲しさに刃渡り12センチの「くり小刀」で4人を刺殺したと主張した。一審の静岡地裁は68年9月、この主張を認めて袴田死刑囚に死刑判決を言い渡し、80年に袴田死刑囚の死刑は確定した。
一審で死刑判決を下した3人のうちの1人、熊本典道元裁判官(69)は、当時、有罪との確信がなかったが、ほかの2人に従い、死刑判決を下したという。熊本元裁判官は「少なくとも、今まで出ている証拠で有罪にするのはムチャだと。結局、私が裁判長を説得できなかったのは私の力不足。僕自身の責任でもあると、今でも思っている」と語った。
袴田事件には、冤罪(えんざい)をうかがわせる疑問点が数多く残されていた。凶器とされたのは刃渡り12センチのくり小刀だったが、被害者には15センチ以上の深い傷が残されていた。逃走経路とされる留め金がついた裏木戸は、弁護側の実験では留め金がついたまま扉をくぐり抜けることはできなかった。また、くぐり抜けられるとした警察の検証では、留め金を外していた可能性が高いこともわかった。
さらに、みそ工場のタンクから見つかった犯人のものとされる血のついた衣服は「袴田死刑囚犯人説」の決定的な証拠とされた。しかし、血のついている位置が不自然で、袴田死刑囚の体格にも合わず、弁護側は警察による証拠のねつ造だと主張している。
弁護側は裁判のやり直しを求めたが、静岡地裁と東京高裁に棄却され、現在、最高裁に特別抗告している。
熊本元裁判官は「あの判決書きの表現は後からつけた理屈です。書いた本人がそう言って四十何年か悩んでいる」「私は言ってみれば(死刑判決を出した)殺人未遂犯ですよ。片棒を担ぎかけた。彼に会ったら黙っているしかない」と述べた。
ボクシング元世界チャンピオン・輪島功一さんらは、ボクサーへの偏見が袴田事件にはあるとして支援を続けている。輪島さんは去年12月、「これは冤罪だと。(袴田死刑囚に)寿命のあるうちに外に出てきてもらって、みんなでボクシングを観戦して『俺、頑張って良かった』と思ってもらいたい」と話している。
再び裁判への扉は開かれるのか。袴田死刑囚は10日、拘置所の中で71回目の誕生日を迎える。
*袴田事件:確定死刑囚・袴田巌さんの無実の叫び
負けました。納得いかないのですが、
京都市にも相談出来る団体は、有るのでしょうか?