2013年05月09日

【刑事司法制度改革】捜査権限拡大で暗黒社会へ!

 刑事司法制度を改善するどころかさらに改悪しようとする議論が進んでいることについて、東京新聞その他から引用する。
 その前に、無実の星野文昭さんが冤罪被害者となった渋谷闘争(1971年)に於ける警察官死亡事件の取調べのなかで、極めて恐ろしく許しがたい事例について「国際労働運動」から引用する。
 デモ参加者Ar(当時16歳)は取調べに対し黙秘していたが、ある日取調室にArの父親がやってきた。そしてArの父親は警察官や中津川検事が見守るなか、息子の顔面をコブシで3〜4回殴った。これは控訴審第12回でArが証言している。
 Arが母親から聞いたところによると、「検事が殴るように言った」という。言うまでもなく見ていた検事は全く止めようとしなかった。この後Arは詳細な供述をするようになった(国際労働運動2013年2月号 第438号 P-20〜21)。これは暴行事件ではないのか?中津川検事や見ていた警察官は共犯者ではないのか?
 先月投稿したが福井女子中学生殺人事件の取調べの際にも警察は同じ手口を使っていた。前川彰司さんを真犯人に仕立て上げるため、任意同行した男性から目撃証言を得ようとして彼の知り合いの暴力団員を取調室に入れて恫喝させたのである。警察・検察は容疑者を自白させ起訴に持ち込むため(有体に言えば組織の体面を守るため)犯罪行為すら躊躇わないのだ(もっとも警察も検察も、常に冤罪や政治弾圧を繰り返している最悪の犯罪組織だが)。
 こうした不当な取調べを行わせないために、取調べの全面可視化が求められているのだが・・・国家権力は可視化の受け入れを期待させつつ、今まで以上に権力を増大させ容疑者の権利を奪おうとしているらしい。2013年1月31日・東京新聞 【こちら特報部 可視化口実に捜査機関焼け太り】や法務省の資料から引用する。

 2011年6月、法務省の法制審議会が刑事司法制度の改革を論じる特別部会をスタートさせた。大阪地検特捜部が「村木事件」を起こし、さらに足利事件などが冤罪だったと明らかになったことで、「検察のあり方検討会議」が「可視化の積極的な拡大が相当で、新たな司法制度を検討する場が必要」と提言したことを受け設けられたものだという。
 「法相名で設置を求めた諮問第92号」によると、「取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方の見直しや、取調べ状況を録音・録画する制度の導入など意見を承りたい」となっている。つまりは多くの冤罪事件を生んできた捜査方法を改善するための会議のはずだった。
 しかし2013年1月29日、この特別部会が「新たな刑事司法制度の基本構想」をまとめたが、その内容は当初の目的とは違ったものになった。
 「可視化を口実に、警察の長年の悲願だった捜査権限の拡大が盛り込まれた最悪の内容。捜査機関の権限を縛る目的だったはずが、全く逆になっている」(日弁連刑事法制委員長事務局長・山下幸夫弁護士)
 可視化については「原則、全面可視化」案と「録音・録画の対象範囲は、取調官の一定の裁量に委ねる」が両案併記されていた。「取調官の裁量」ならば全く意味がない。容疑者を怒鳴りまくり虚偽の供述を強要している部分は記録しなければいいだけではないか。ちなみに「先進国の多くで実施されている」取調べに弁護士立会いを認める案は排除されたという。
 しかもこの「基本構想」は、通信傍受拡大・会話傍受・司法取引の導入も言及している。「電話やメールの通信傍受」は現在のところ通信傍受法において「薬物犯罪、銃器犯罪、組織的な殺人及び集団密航」の4種類だけで可能だが、これを「振り込め詐欺や組織窃盗」などへも拡大するべきだという。
 しかも「傍受を行うには通信事業者との協議を行い、事業者の施設で事業者の立会いの下に行わなくてはならないことから迅速性に欠け、事業者の負担にもなっている」・・・などと不満を述べている。例えばNTTの電話回線を傍受したいのなら電話局に出かけてNTT職員立会いの下に行わなくてはならない。当たり前のことだ。
 これを簡略化するため、対象となる通信は、通信事業者から警察施設へ暗号化したデータを送信するべきだと提言している。つまり電話やメールの内容が警察に筒抜けになってしまうのだ。「関係ない通信は読めないようにするためスポット傍受し暗号を解く」などと書いてあるが誰が信じるもんか。詐欺や窃盗だけでなく政治弾圧にも用いられるだろう。

 もう一つ恐ろしいのが司法取引の導入だ。「基本構想」の文中では「刑の減免制度」「協議・合意制度」がそれに当たる。つまり、被疑者が自分や他人の犯罪事実について「重要な供述等の協力」を行えば罪を軽くする。「協力に見合った恩典」を「付与」しようというのだ。さらに、他人の犯罪事実についての「重要な供述等の協力」を行えば、検察官の判断によってその供述者を不訴追にするなどの措置を設けるという。
 つまり、ある事件でAとBを逮捕し、Bは下っ端だがAが主犯だと狙いを定めれば、BがAの行為について「重要な供述等の協力」を行えば、罪を許したり軽くする制度を設けようというのだ。己の訴追を逃れるために虚偽の供述を行い(あるいは強制され)、冤罪を生む危険性がある。

 もっとも権力は、容疑者や参考人の利益に関わることで揺さぶりをかけるような卑劣な捜査手段を長年行ってきた。狭山事件・冤罪被害者の石川一雄さんは、逮捕後も1ヶ月は容疑を否認していたが警察は「仲間も自供したぞ」などとありもしないことを言って自白を迫り、さらには「おまえじゃないなら、犯人はおまえのお兄さんだ」などと言い出した。石川さんは、被害者が殺害された日は兄が夜遅く帰ってきたことを憶えていた。兄が逮捕されれば一家は生計が立たない。こうして石川さんは「おまえがかぶれば、お兄さんは逮捕しない」「(刑務所を)十年で出してやる」などという脅しに屈し、虚偽の自白をしてしまった。
 石川さんは貧しい家庭に育ったため学校にはほとんど通えず、字が書けなかった。弁護士という職業があることを知らず、「警察官から弁護士はうそつきだと言われ、接見にきても追い返しました」。一審判決(死刑)のあとも、警察官の言った10年で出所できるという嘘を信じていたという(2013年4月28日・東京新聞【こちら特報部】)
 先月投稿したが福井女子中学生殺害事件・冤罪被害者の前川さんの知人は警察官に、「お前の容疑は見逃してやるから、(前川さんの)控訴審で調書の通り証言してくれ」と要求されたという。
 星野文昭さんが冤罪被害者となった渋谷闘争の捜査でも、検察はある男性に対し、殺害に加わったとされる冤罪被害者を鏡越しに見せられ、見覚えがあるかどうか迫った。男性が記憶にないと述べると検察官は「お前一生しゃべらなかったらつけねらってやる」「絶対お前のことを殺人罪で起訴してやる」などと脅したという(星野さん再審請求棄却決定に対する異議申立補充書 P-25〜26)
 星野さんらしき人物を目撃したという旨の虚偽供述を強制されたKrは、逮捕前の1972年1月4日に蓄膿症の手術を受け、逮捕された2月2日もまだ通院が必要だった。権力は通院の許可という「恩典」と引き換えに虚偽供述を強制したのだ。
 言うまでもなくこのような不当な捜査が許されるわけがないが、「基本構想」に沿った司法改悪が行われれば、取調室という密室でこのような取引が正当化され、虚偽供述が強制され、冤罪が多発するだろう。「村木事件」や足利事件などの冤罪を受けて司法制度を見直すはずの会議が、逆に警察権力を肥大させ冤罪を生む環境を作り出す議論を行っているのだ。
 「司法取引も問題が山積みだ。自分や共犯者の犯罪を明らかにすれば、処罰や量刑を軽くするというが、罪を逃れるために虚偽の供述で無実の人を冤罪に追い込む危険性をはらんでいる。そもそも検事が求刑を軽くしても、判決を出すのは裁判官や裁判員。求刑を超える判決もあり得る」
 『結局、冤罪防止のために改善しなければならない自白偏重が放置されたまま、新たに利益誘導による自白(司法取引)を法的に正当化しようとしている内容だ』(日弁連刑事法制委員長事務局長・山下幸夫弁護士)

 ちなみに全面証拠開示については拒否する構えだ。「証拠開示の適正な運用に資するため,被告人側の請求に応じて検察官が保管する証拠の標目等を記載した一覧表が交付される仕組みとすることを検討する」とあるが、警察が保管している証拠については言及がない。
 このように部会の議論が「捜査機関の焼け太り」へと進んでいる原因には、「法制審の構造的な欠陥がある」。委員のメンバーには「警察庁や法務省に一定数が当て職として」確保されており、数の上で弁護士や民間人を圧倒する。当たり前のことだが自らの属する組織に有利なように議論を進めるのに決まっている。
 さて、政府・法務省・警察の思い描くように刑事司法制度が改悪され、さらに数で圧倒する自民党政権が共謀罪や秘密保全法を成立させれば、どんな世の中が訪れるだろうか。
 市民団体や一般合同労組の内輪のメールやり取りが警察に筒抜けとなり、「無許可デモを計画していた」「関係者しか知りえない秘密情報をキャッチしていた」などと言いがかりをつけられて弾圧される。そして厳しく自白を強要され、「首謀者の名前を言えば刑が軽くなる」などと取引を持ちかけられる。こうして組織は一網打尽となり、重刑が課される。自民党憲法改悪案の「公益及び公の秩序」云々の成立を待たずして、市民団体や労組は壊滅するだろう。まるで北朝鮮や戦前の日本のような社会が訪れる。この国の政府と行政はそれを狙っている。裁判所は言いなりになり、マスコミは追従するだけだ。
 二度と冤罪事件を起こさせないため、全ての冤罪被害者を救うため、刑事事件の容疑者・被告・受刑者も含めた全ての市民の人権を守るため、言論の自由を守るため、この企てを絶対に阻止しなくてはならない。国家権力の横暴を市民の力で監視し抑えなくてはならない。刑事司法制度を本当の意味で改善させなければならない。

 それと我々市民の心の中にも、俗にいう「犯罪者」は自分たちと違う異質な存在だから叩き潰すべきだ、厳罰に処すべきだ・・・などという感情があることを自覚しなくてはならない。そういう感情があるからこそ、言論の自由を脅かし、また刑法を厳罰化し重大事件の公訴時効を廃止するなど(過去ログ参照)、自分たち市民の権利を奪っていくような政治を育ててしまっているのではないか?政府にそのように仕向けられているのではないか?
 「犯罪者」は我々と異なる特別な存在などではない。自転車や車をぼやっと運転していて人を殺してしまうこともあり得る。生きていればいつなんどき刑事事件の容疑者になるかもしれない。他人事ではないのだ。
 政府は「犯罪者」を特別視するような排外的感情を我々市民に植えつけ、分断して統治しようとする。そして警察発表をそのまま垂れ流し容疑者への憎悪をかき立てるような報道を行うマスコミは政府の単なる幇間であり、いわば政府のための洗脳機関ではないか。そりゃマスコミだっていろんな種類があるだろう。最低でも、権力批判をしなかったり、アベのなんちゃらと煽っている報道機関は一切無視するべきだね。

posted by 鷹嘴 at 00:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 権力 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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