■ モンサントは除草剤ラウンドアップとGMO種子を抱き合わせで販売する。全ての雑草を枯らせてしまうラウンドアップによって作物さえも枯らせてしまったら意味がない。ラウンドアップに唯一耐えられるのが「ラウンドアップ耐性(レディ)」のGMOである。これがGMO開発の大きな目的の一つだ。味や品質の向上ではなく、大量生産・コストダウンだけが目的だ。
ところが近年、除草剤を浴びても枯れない「スーパー雑草」の存在が確認されたという。最初に発見されたのは2001年、アメリカのGM大豆の畑で「ヒメムカシヨモギ」が発見された。その後15種類のスーパー雑草が確認され、2011年には全米800万ヘクタールの畑にスーパー雑草が伸び放題になったという(生活クラブ・スピリッツの白井和弘氏)。「パーマーアマランス」は一日に1インチ(2.54cm)成長し、6〜10フィート(183〜305cm)に達し、耕作機械を破壊し労働者を傷つける。
もう一つのGMO開発の目的は、作物自体が害虫を駆除できる毒物を生成するように遺伝子を組み換えることだ。しかしGMOに組み込まれた殺虫性毒素に耐性を持つ「スーパー害虫」も現れてしまった。アメリカのトウモロコシ畑のアワノメイガはGMトウモロコシに組み込まれた殺虫性毒素で駆除できたが、アワノメイガの幼虫の中で生き残ったものが子孫を残しスーパー害虫となった。
「科学の力よりも自然界の対応のほうが早く、生き残る力も強いということでしょう」(食政策センター・ビジョン21代表・安田節子氏)
インドの綿花畑ではコナカイガラムシというスーパー害虫が発生し、綿の収穫量が減少している。また、ワシントン州立大学・チャールズ・ベンブルック教授の報告によると、GM作物栽培が始まった1996年から2011年にかけての全米の農家で、除草剤使用量が約11%増加(約23万3900トン増加)している(市民バイオテクノロジー情報室の天笠啓祐氏)。GMOを使うことによって除草剤使用量が減るどころか逆に増えているのだ。
それにしても、雑草を枯らす強力な除草剤や害虫を殺すGMOを開発しても、それに耐性を持つ生物が現れるのなら、さらに強力な毒物を開発せざるを得なくなる。イタチごっこだ。そもそも雑草や害虫に耐性を持つ種が現れてくるのは、最初から分かっていたことではないか?
現在モンサントは「スマートスタック」という、複数の害虫・複数の除草剤に対応する8つの遺伝子を入れたGMトウモロコシを開発しているという。しかし組み込んだ遺伝子が相互にどのような作用を起こすか分からない。
GMOについては企業も政府機関も安全性検証を怠っている。企業は都合の悪い研究結果が発表されると潰しにかかる。日本で販売されている食品の原料にもGMOが含まれているが、それを表示させる規制がないのだ(白井氏)。
■ バイオテクノロジー企業は、農作物や畜産物だけでなく魚介類の分野まで魔の手を伸ばそうとしている。北大西洋サケにキングサーモンの成長ホルモン遺伝子を組み込んで成長を早くさせようとする開発が行われている。これは「フランケンフィッシュ」と呼ばれ、モンサント傘下のアクアバウンティ・テクノロジー社が開発している。
GMサーモンは成長が早くて食欲旺盛なため、環境中の有害物質を取り込みやすく、しかも成長ホルモンの分泌が活発で、食べると人間の細胞分裂が活発になり、「特にがん細胞の増殖を促す危険性があると言われています」(天笠氏)。
このGMサーモンは当然養殖場で育てられるらしいが(参考)、万が一逃げだして天然種と交雑すれば大変なことが起こる。それに今月投稿したように鮭は養殖場で育てられると大量の有害物質を吸収してしまうらしい。FDAはこの春にも認可しようとしたが反対意見が殺到したためまだ正式な販売許可は出ていないとのこと。
■ そして日本ではGMイネ開発が進められている。花粉症対策に役立つ「花粉症緩和米」は、スギ花粉症をもたらす主要アレルゲンの人工遺伝子を作りイネに導入したもの。「独立行政法人 農業生物資源研究所」が手がけているという。
この米を食べると、体内の抗体が花粉が入ってきたと錯覚し、アレルギー反応を事前に抑制できるという。医薬品としての認可を目指しているが、こうした米が栽培されると田畑での交雑、流通過程での混入、家庭での混入が起こる危険性がある(*注)。しかも花粉症のアレルゲンを故意に摂取するから花粉症でない人にも花粉症を起こす危険性がある。「花粉症緩和ではなく花粉症引き起こし米になってしまいます」(天笠氏)
それに、交雑が発生すれば日本人が数千年間守り育ててきた稲の遺伝子が汚染され、元に戻らなくなる。もっともこの独法だって日本の農業・食文化を故意に破壊するつもりは無いと思うけどね。東電と同様に。
■ 日本政府の農業政策について白井氏は、「もはや国内の農業を重視していない」「現在の小規模農家が絶滅しても大企業が農業に参画すればいいという考え」「農村部の高齢化のため今後は選挙の大票田にはならないと判断」している、と厳しく指摘する。
政府は「(農家の)規模拡大で競争力を高めるとうそぶいている」が、そもそも日本の農家一戸当たり平均農地面積は2.27ヘクタール、アメリカだとその75倍の約170ヘクタール、オーストラリアは1309倍の約3000ヘクタールだ。生産量とコストで勝負になるわけがない。政府の本音は、農家を滅びるに任せて食糧自給率の改善を放棄し今まで以上に輸入に依存するか、企業を参入させ品質・安全性を犠牲にして輸入品と対抗し得るほどの低コスト・大量生産を奨励することだろうか。
今後、「世界の主要な穀物輸出国であるアメリカ、ブラジル、アルゼンチンではますますGMOが盛んになる」というが、既に日本は「世界で最も大量のGM作物を輸入している」。1億を超える人口を抱えながら食糧自給率は四割弱の「経済大国」であり、かつ宗主国アメリカに言いなりのこの国は、バイオテロ企業にとって絶好の市場だろう。TPP参加によって遺伝子組み換え表示も禁じられるかもしれない。それどころか一部の金持ちを除いて遺伝子組み換え食品しか手に入らなくなるかもしれない。こうして我々は健康を蝕まれ、作物の遺伝子は汚染され、環境は破壊されていくのだ。
■ しかしGMO拡大に対抗する動きが世界中で起きていることを天笠氏が指摘する。去年このブログにも書いたことだが、牛成長ホルモン・ポジラックを投与された乳牛は寿命が短くなり、その牛乳を飲めばがん発生率が高まることが指摘されていたが、モンサントもFDAもそのデータを隠していた。しかもFDAは国内の牛乳メーカーに、牛成長ホルモン不使用という表示は不要だという通達を出していた(*注)。しかし小規模酪農家や消費者団体の反対は激しく、データの隠蔽も発覚。大手スーパーのウォルマートやスターバックスが、ポジラックを投与された牛の牛乳の入荷を拒否。モンサントはこの事業を売却して撤退した。農民・労働者・市民の反対する声が、政・官・業・学が一体となった陰謀を粉砕したのだ。
GMO販売を禁止する「GMOフリーゾーン」の運動が世界中に広まっている。イタリアのワイン生産者から始まったこの運動はヨーロッパ全土に広まった。今ではEU参加の7ヵ国がGMO栽培を禁止している。
しかも2000年代初頭からジンバブエ、タンザニア、アンゴラ、スーダンなどアフリカ諸国がGMOとGM種子の食糧援助を拒否するようになった。
「一度GM種子を導入すれば瞬く間に広がり、生態系は破壊されていく。いわくつきの食料援助という目の前の“アメ”よりも、アフリカ諸国は国土の安全な将来を優先したのだ」
日本でもこうした動きが少しずつ始まっている。2006年に北海道がGMO栽培を規制する条例を設けた。北海道ではGMOの商業栽培は事実上不可能となり、研究・開発も一定の制約を受ける。(以上、天笠氏)
是非とも全都府県が北海道のように、GMOを拒否する姿勢を見せてほしいものだ。そして公約を違えてTPP参加しようとする自民党政権を、というかこの国の現在の統治機構を打倒しなくてはならない。自民党や民主党などの政治家や官僚にとって、市民の健康や食の安全など眼中にない。ひたすらアメリカの機嫌をとりつつ企業を肥えさせるだけが目的だ。
「今なら日本でもまだ非GMの食品を手に入れることはできます。しかし食品表示を見ただけでは判別できません。その食品の原料はなんなのか、ひとりひとりが自分で判断できる知識を持つこと。そしてGMではない国産の食料を確保するためにも、TPPを阻止しなければならないと思います」(白井氏)
※ 関連ニュース:米国で遺伝子組み換え小麦が見つかる、日韓で輸入一部停止 国際ニュース AFPBB News
栽培・販売が許可されるより先に汚染が広がっているようだな。
*注: 遺伝子組み換え情報室の論説より抜粋。
スギ花粉症緩和遺伝子組換えイネの問題点
イネは自家受粉植物であるといっても、イネ同士の交雑は日常的に観察されるところである。研究レベルでは1%以下なら問題にならなくても、実際の農業現場では問題になる。この7Crpペプチド含有イネが実際の田んぼで栽培されるようになれば、周辺の在来種との交雑は避けられない。現在さまざまな品種のイネが商業栽培され、実際の圃場で交雑が起こっても大きな問題にならないのは、それらがいずれも食品として認知され、わずかの混入は問題にならないからである。しかし、今回のような医薬機能を持つ人工的な成分を含むイネが交雑を起こせば、これまでとは次元の違う問題が生ずると思われる。有機農業農家にとってはもちろん、通常の在来農法の農家にとってもこのイネの商業栽培は大きな脅威となろう。
*注: 農林水産政策研究所の資料から抜粋。
海外諸国の組換え農産物に関する政策と生産・流通の動向
米国政府はGMO 表示制度を導入した国・地域に対して制度の撤廃を要求しつづけているが,GMO 表示不要論を確立したのはM ・テイラー氏であった。氏は1991 年〜 94 年までFDA 政策次長の要職にあり,GMO 由来製品(食品,動物用医薬品)の表示に関する政策決定の最高責任者であった。
問題は,テイラー氏がモンサント社の利益代弁者であったという事実である。同氏はFDA 政策次長に抜擢される直前までの7年間(1984 年〜 91 年),法律顧問としてモンサント社のために働いていた。またFDA 退職後はUSDA 食糧安全調査局長(1994 年〜 96年)を経て古巣の法律事務所に戻り,1996 年から98 年まで再びモンサント社の法律顧問を務めた。さらに1998 年から2000 年まで,同氏は渉外(public policy)担当副社長としてモンサント社に迎えられ,同社のためにその手腕を発揮した。
テイラー氏のこのような経歴が物語るのは,米国の市民団体(例えば,ピュア・フード・キャンペーン(PFC),反GMO 市民連合(ABI)など)によって告発された,FDAとモンサント社との不透明な関係(産官人事癒着構造)の存在である。同氏は1992 年5月のFDA 通達によってGMO 表示不要論の端緒を開き,1994 年2 月の「遺伝子組換え牛成長ホルモン(rBST またはrBGH :商品名ポジラック(モンサント社))使用表示は不要」とするFDA 通達によってGMO 表示不要論を確たるものにした。
市民団体がインターネットを通じて世界に配信している“癒着者リスト”には多数の氏名が示されているが,このように「Who」に着目することにより,米国政府が主張するGMO 表示不要論のルーツが明瞭になる。