まずは2013年9月20日・東京新聞「不満募る退役軍人」より引用。
中華人民共和国の人民解放軍はかつて423万人を抱えていたが、段階的に削減を行い、現在は230万人程度だという。2011年4月に党軍事委は、さらに150万人までに削減すると発表した。「新型兵器やサイバー作戦などに対応できる人材の育成を進めている」。たしかに兵器のハイテク化によって高度な知識が必要になる一方、兵員は余るだろうな。
しかしリストラ対象となった軍幹部や一般軍人への保障は十分ではない。退役軍人らの再就職、医療、退役金補償などが、彼らの出身地の地方政府に押し付けられている。こうして退役軍人の不満が募り、今年3月には湖南省長沙で500人近い退役軍人が、「冤」(不当な扱い)と書かれたゼッケン?を付け、退役後の再就職と生活保障を求めてデモ行進した。
昨年4月には、北京市の共産党中央軍事委員会の陳情窓口に、全国各地の退役軍人代表ら200人以上が集まり、「民間企業への就職仲介」「退役軍人の合法的な権利」を求めた。退役軍人らは革命歌「私は一兵卒」を合唱するなど、騒然としたという。現在も陳情は続き「社会問題に発展している」。
政府系シンクタンク中国社会科学院の研究者は、「軍幹部を務めて退役した軍人の年齢は35歳以上で、この20年の急激な社会変化についていけない」と指摘。
退役軍人の就職が困難な状況である理由については、
1.社会的な知識の欠如
2.コミュニケーション能力と協調性の欠如
3.軍人の教育レベルが低く、出世する機会がない
と、手厳しい。
これ、分かるね。いまどき会社勤めしたけりゃ、たとえばエクセルに入力したり簡単な表を作る能力は必須だが、そういう初歩的なスキルも無いのかも。そもそも軍で習得したことは一般社会じゃ役に立たないだろう。恐らく十数年も軍人をやってるんだから、社会から取り残されるのは当然だな。
以前、俺の職場に元自衛官がいたが「(自衛官の)除隊後の転職先で多いのはトラックの運転手とか、警備です」と語っていたのを思い出した。どちらも比較的、経験や専門的な資格・知識が無くても就職しやすい職種だろう。自衛隊に入れば資格を取りやすいってのはウソ。自分で努力しなきゃ取れないのは同じ。
そもそも、入隊は二十歳前後だと思うが、人生の中で最も、いろいろな知識や社会的な能力、技能・技術を学ばなければならない年代だ。まだ頭が柔軟だから学べば身についていく年代だ(俺だってその頃は孫請け労働者だったが、電気の扱いを一から学んだぞ。今でも役に立ってる)。こんな大切な時期を軍隊で過ごすべきではない。ともかく中国政府は責任を持って、退役軍人に再就職先を斡旋するか手厚い生活保障を与えるなど、対策を急ぐべきだ。
■ 続いて2013年8月21日・東京新聞夕刊「米帰還兵の自殺 深刻」より引用。
アメリカの退役軍人省によると、統計を取り始めた1999年から2012年までに、21の州で少なくとも2万7千人の退役軍人が自殺している。しかもそれ以外の3万4千人の自殺者が、退役軍人である可能性がある。
「米イラク・アフガニスタン退役軍人会(IAVA)」は会員27万人を抱えるが、会員に対する調査で「最も重要な問題」の選択肢に、昨年から「自殺」を加えたところ、今年の調査ではこの「自殺」がトップになった。会員の中で自殺を考えたことがある人は30%、仲間が自殺したという人は37%に上る。
テキサス出身の元海兵隊員であるデレク・コイさんは、
『(イラクから)帰国してから1年半は心に問題を抱え、常に自殺衝動があった』
と語る。
「イラクの体験を分かち合う人がいない。周囲にとけ込めず、『だれも理解してくれない』と孤独になった」
『そもそも自分が問題を抱えていて助けが必要だと分かっていなかった』
彼はその後IAVAの存在を知り、他の帰還兵と悩みを打ち明け、カウンセリングも受け、精神的に立ち直った。退役軍人省は今までに帰還兵の電話相談89万件を受け付け、自殺の危険から救ったケースが3万件以上あるという。
「イラク・アフガニスタン帰還兵は国民全体の中ではほんのわずかだが、これは国全体に影響する問題。何が起こっているのかを多くの人に知ってもらうことが重要だ」
■ この問題について「ルポ 貧困大国アメリカ」(堤未果/著、岩波新書)より引用する。アメリカ軍は「学費を負担する」などと甘言を並べて貧しい若者を入隊させるが、最下級の新兵の年収は平均15万550ドル、貧困ラインギリギリの額。しかも月給から生命保険、制服代、学費の前金などが天引きされ、手元にはほとんど残らない。入隊しても貧困から抜け出せないのだ。
さらに戦場から帰還しても、不安症・不眠症・統合失調症などのPTSDに苦しめられ、就職できずホームレスになる者もいる。ホームレス・シェルターの優先順位のリストに「帰還兵」というカテゴリーは無いため後回しにされ、路上生活を強いられる。
2007年の時点でアメリカ全土のホームレス350万人、そのうちの50万人が帰還兵だという。退役軍人協会(VA)のサービスを受けているのはそのうち2割に過ぎない。また、2004年のニューヨークタイムズによると、イラク駐留兵士の6人に1人が深刻な精神障害を抱え、「その数字はすぐに3人に1人になるだろうと予測されている」。
民間人を殺した罪悪感、戦場でのいつなんどき敵が襲ってくるかもしれないストレスによる精神的ダメージが帰還兵の心を蝕み、薬物やアルコールに依存し、自殺率が上昇するという。人間の精神は、戦争という殺し合いに耐えられるほどタフではないのだ。
テロと戦う英雄だとか散々煽っておきながら、この扱いだ。政府・軍にとって兵士など使い捨ての兵器に過ぎないのだ。除隊後の面倒を見るわけがない。どこの国の軍隊だって同じだ。
■ 何度でも言うが、軍隊とは市民を守るものではない。支配者(あるいは軍の組織自体)を守るために市民の命など平気で踏みにじる存在だ。自衛のための軍隊などあり得ない。
そして戦争とは支配者同士が領土や利権を巡る争いであり、市民を守るための戦争などあり得ない。アジア・太平洋戦争を経験した我々日本人は嫌というほど身に染みているはずだずだ。我々はこの支配者同士の争いに巻き込まれてはならない。
支配者は、自分たちの支配を維持・強化するために軍隊を維持しようとする。貧しい若者を巧みに勧誘し、戦地に送り込む。隣国の脅威などを煽る支配者や経済界の連中、そしてそういう奴らに騙されて威勢のいいことを言う連中は、決して自分の身内を軍に入れようとはしない。祖国防衛のために軍隊が必要ならば、なぜ自分の身内を志願させないのか?なぜ自分自身が志願しないのか?
この構造は原発労働も同じだ。再稼働が必要だと唱える連中は、今すぐ自分自身が全国各地の原発に出向いて被曝作業を志願すればいい。東電原発事故収束作業のせいで人員が不足するだろうからな。しかし連中は絶対にそんなことはしない。結局は嫌なことは他人(貧しい若者や失業者)に押し付け、自分は安全な場所にいたいのだろう。
それに軍隊は、常に二十歳前後の若者を入隊させ、新陳代謝を図ろうとする。体力は勿論のこと、軍の方針と上官の命令に素直に従わせなければならないので若年者が好都合だ。我が軍は正義の軍隊だ!敵国はテロ支援国家だ!悪魔だ!などと刷り込み、思考停止させるのだ。こうして歪んだナショナリズムが生み出され、非戦闘員であろうと平気で殺せるように育てられる。しかしそういう体験は徐々に精神を蝕んでいく。
そして、上で書いたように除隊後の就職は困難だ。軍隊とは失業・貧困を生み出すものだと言える。俺はこれらの理由で、全ての軍隊は今すぐ無くすべきだと考えている。
■ ところで石破のバカたれが、命令に従わない自衛官は死刑あるいは懲役300年などとほざいたが、それが自民党政権の本音なんだろうね。例えばまたアメリカが中東で侵略戦争を行い、集団的自衛権などと抜かして自衛隊を派遣することになったとき、それを拒否する自衛官は牢獄送りにしたいのだろう。だから全ての自衛官に呼びかけたい。戦場で殺されたくなければ、今すぐ辞めろ!と。
いや、自衛官だけでなく全世界の兵士に呼びかけたい。軍隊などにいても退役後の就職が困難になるだけだ。いざ戦争が始まれば最前線に送り込まれる。任期が過ぎれば知らん顔されるだけだ。国家にとってあなたたちは使い捨ての駒なのだ。用済みになれば棄てられるのだ。だから今すぐ辞めろ!と。
参考:
◇ 命令に従わない自衛隊員は「死刑」/自民党・石破 茂(いしばしげる)幹事長「憲法9条改正を語る」 – @動画
◇ 自衛官の階級と定年年齢
◇ 退職自衛官雇用ガイド:自衛隊の退職制度について
◇ 現役や元陸上自衛隊の方教えて下さい 定年後の職についてです 転職のQ&A【OKWave】
2013年09月25日
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