2013年10月13日

【点検 秘密保護法案】・・・知る権利は奪われ、民主主義は崩壊

 今更俺なんかが言っても受け売りに過ぎないが、自民党が秋の臨時国会で成立を狙う「特定秘密の保護に関する法律」(秘密保全法とも秘密保護法とも)は、政府が都合の悪い情報を隠し市民の耳目を塞ぐための悪法である。これが成立すれば戦前のような暗黒社会をもたらすだろう。絶対に阻止しなくてはならない。
 以下は東京新聞10月4日〜9日特集記事「点検 秘密保護法案」、及び「特定秘密の保護に関する法律案の概要」(「特定秘密の保護に関する法律案の概要に対する意見募集について」からPDF文書を開ける)、その他より引用。


 この法に反して公表してしまえば最高で懲役10年になるという「特定秘密」は、「防衛、外交、特定有害活動(スパイなど)の防止、テロの防止」のうち、国の安全保障に著しい支障を与える恐れがあるもの」を、「行政機関の長」が指定する。何が公開不許可で何が公開許可なのかを恣意的に指定するのだ。この法案が成立すれば、たとえば自衛隊の不正や非公開情報を暴くことなど不可能になる。
 かつて日本共産党は自衛隊が市民団体の動向を秘密裏に調査していたことを暴いた。また東京新聞は航空自衛隊がアメリカ軍のB52爆撃訓練に参加していたことを暴いた。週刊金曜日は、さいたま市の陸上自衛隊化学学校でサリンガスなどが製造・管理していることを関係者の証言から暴いた(共産党の追及によって防衛省もこの事実を認めた)。
 これらの情報を提供した側も公表した側も厳罰に処されるだろう。オスプレイの欠陥、アメリカ軍基地による環境汚染、新基地建設計画に関する情報も同様だ。市民にとって重要な情報が一切明かされなくなる。

 10月12日・東京新聞読者投稿欄より受け売りするが、法律とは言うまでもなく国会で定められるものだ。そして憲法三十一条には、「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない」とある。つまり国会で定められた法律に寄らずして罰せられることはないと、この憲法三十一条が規定しているのだ。しかし「特定秘密の保護に関する法律」によれば、「特定秘密」は「行政機関の長」が指定する。つまり人を罰する基準を「行政機関の長」が恣意的に設けることが出来る。憲法と議会制民主主義を無視するものだ。

 それに、このような法律があれば権力側によっていくらでも好都合な運用が可能だ。たとえば事故を起こした原発の状況・放射能拡散状況や、原発の設備に関する情報が、「防衛」「テロ防止」に関わるものとして「特定秘密」に指定されかねない。TPP交渉など外交の情報は言うまでもない。
 また、「特定秘密」を扱う公務員や民間企業の労働者には、「適正評価」が行われる。犯罪歴・懲戒歴、薬物の使用、精神疾患、飲酒の節度、「経済状況」(借金の有無など?)、「情報取扱いに係る非違の経歴」、「テロ活動との関係」が調査されるという。「テロ活動との関係」については本人だけでなく、家族や同居人の氏名、生年月日、国籍まで調査される。
 言うまでもなく「特定秘密」を扱うことになるのは公務員だけではないだろう。個人情報が丸裸にされてしまう。仮にこれらの調査によって「特定秘密」を扱う資格無しとされても、それだけではなく別の差別や不利益を蒙るのではないか?それこそ「原発反対を主張する過激派と付き合っている」とされて公安の監視対象になるかも・・・?こういう調査が行われることだけでも不当だ。

 「特定秘密」を「欺き、暴行、脅迫、窃取、施設絵の侵入、不正アクセス等」などの手段で「取得」した者の懲役は上限10年だが、「未遂、共謀、教唆又は煽動」も処罰される。「特定秘密」を暴けなくとも罪になるのだ。「そそのかし」(教唆)も「あおり向ける」(煽動)も罪となる。たとえば記者が「特定秘密」を扱う官僚と「酒を飲みながら、言葉巧みに説得し、持ち上げたり、しつこく懇願したりして」情報を聞き出そうとする行為も、「行き過ぎだと判断されれば」、たとえ聞き出せなくても処罰されるのだ。こんなバカなことがあるか!
 それどころか、市民団体などが行政機関に重大な情報を公開せよと執念深く迫ることも罰せられるかもしれない。電凸してつい言葉が荒くなれば「脅迫」して取得しようとした、として罰せられるかもしれない。
 そもそも、何が「特定秘密」で、何が秘密ではないのか、明かされるわけがない(秘密ではなくなるからな)。つまりは、秘密にする必要のない情報の公開を求めていたつもりでも、実は「特定秘密」に指定されていたとしたら・・・この法律で罰せられるかもしれないのだ。マスコミの取材や市民団体の活動が著しく阻害されることだろう。何も言えない何も出来ない社会になる。
 「わたしたち国民が、たとえば福島原発事故によって放出された放射線量に関するデータの情報公開を求めてデモ行進を呼びかけることも、『不法な方法』による『特定取得行為』として、取締りの対象になることも考えられます」
(日弁連のパンフ「エッ!これもヒミツ?あれもヒミツ!あなたも「秘密保全法」にねらわれるQ&A」より)

 現行でも、政府が市民から情報公開法に基づく開示請求を受けても、政府が「国の安全が害される」と判断した場合は公開されない。「特定秘密」の指定を受けた情報の公開も、政府の裁量に委ねられるだろう。しかも「特定秘密」の指定期間は5年だが、何度も更新できる。政府が更新を何度も繰り返せば永久に公開されない。
 あるいは「特定秘密」の情報が、公文書管理法(保存期間終了後に首相の判断で破棄するか、国立公文書館に保存する)の適用対象から外れれば、各省庁の勝手な判断によって破棄されてしまうかもしれない。永久にマスコミや市民の目に触れることはないのだ。

 国会は国政調査権によって政府に資料提供要求が出来るが、この法案では「国家の安全保障に著しい影響がある」として、秘密保全が優先される。政府が拒否すればそれまでだろう。例外として非公開の委員会(秘密会)には提供できるとしているが、その実現も難しい。
 憲法51条では、国会議員が議会で行った演説・討論について院外で責任を問われない、としており、これに従えば、「秘密会」で「特定秘密」を知った議員がマスコミに公開すれば単純に罰せられるが、本議会や別の委員会で明かしても罪は問えない。だとすれば「秘密会」に提供された情報は公開に繋がることになり、最初から提供しなくなるだろう。国会の意味がなくなる。
 「国会が行政を監督するのに必要な情報を得られなくなり、議員内閣制は崩れてしまう。情報を持つものが、持たない者を支配する『官僚政治』が進み、国民が主人公の国ではなくなる」
(この特集の最終回より、法案に反対する伊藤真弁護士の指摘)
「重要な情報が特定秘密にされてしまえば、国民の代表が政府を監視する国会の機能は削がれ、政府の歯止め役にならない。国会がこの法律を成立させることは、自らの手で憲法で与えられた役割や権利を放棄することになりかねない」
(最終回担当者)

 こうして政府と安倍自民党は、都合の悪い事実は隠蔽し、民主主義を崩壊させ、我々市民の知る権利を奪い、委縮させ、監視・統率しようとしている。戦況の悪化を語っただけで検挙された戦前戦中のような社会が訪れるだろう。
posted by 鷹嘴 at 00:59| Comment(1) | TrackBack(1) | 悪法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
特定秘密保護法は軍事国家の入り口
日本が民主主義でなくなってしまう
国民主権と矛盾する
特定秘密保護法に反対する国民が着実に増えている
Posted by 特定秘密保護法 反対 at 2013年10月13日 17:42
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特定秘密保護法案を粉砕せよ!
Excerpt:  秋の特別国会で安倍政権が成立を狙っている重要法案の一つに、「特定秘密保護法」が
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Tracked: 2013-10-17 21:35