2015年01月24日

【東電原発事故聴取記録】 朝日の記事なんかより重要なことは・・・

 東電原発事故に関する政府事故調査・検証委員会による聴取記録の引用の続き。2014年9月25日・東京新聞より引用。

 2011年3月14日から15日にかけて、東電福島第一原発2号機が制御不能になりつつあった際、「東電社員らの9割にあたる約650人が吉田所長の待機命令に違反し、10キロ南の福島第二原発に撤退した」・・・と、吉田昌郎元所長への調書から引用という形で報道(2014年5月20日)したのが天下の朝日新聞様(笑)だが、この当時の状況について吉田氏は調書の中で「(必要最小限の要員以外は)バスで退避させました。2F(福島第二原発)の方に」と語る。かつ、「15日の午前中には、GM(グループマネジャー、幹部)クラスはほとんど2Fから帰って」きたという。言うまでもなく2Fとは東電福島第二原発のこと。もっとも吉田氏は、2Fに行けとは言っていないという。
 「本当は私、2Fに行けと言っていないんですよ。ここがまた伝言ゲームのあれのところで、行くとしたら2Fかという話をやっていて、退避をして、車を用意してという話をしたら、伝言した人間は、運転手に、福島第二に行けという指示をしたんです。私は、福島第一の近辺で、所内にかかわらず、線量の低いようなところに一回退避して次の指示を待てと言ったつもりなんですが、2Fに行ってしまいましたと言うんで、しようがないなと。2Fに着いた後、連絡をして、まずGMクラスは帰ってくれという話をして、まずはGMから帰ってきてということになったわけです」

 要するに、吉田氏の言葉を東電本店や官邸が勘違いして「全面撤退」などと騒いでいた如く、この時も「行くとしたら2Fかという話」が、「福島第二に行けという指示」になってしまい・・・吉田氏は「しょうがないな、まずGMクラスは帰ってくれ」と指示を出した・・・ということだ。

 しかし吉田氏は、社員たちが2Fに退避したことは正解だったと述べる。
 「2号機が一番危ないわけですね。免震重要棟はその近くですから、ここから外れて、南側でも北側でも、線量が落ち着いているところで一回退避してくれというつもりで言ったんですが、確かに考えてみれば、みんな全面マスクしているわけです。それで何時間も退避していて、死んでしまうよねとなって、よく考えれば2Fに行った方がはるかに正しいと思ったわけです。いずれにしても2Fに行って、面を外してあれしたんだと思うんです」

 それはともかく、整理すると朝日は吉田調書から引用の形で「社員らが吉田所長の命令に違反して福島第二に退避した」と報じたが、実際の吉田調書には「社員らには、福島第一の近辺に退避して待っていろと言ったつもりなのに、福島第二に行ってしまった」と、記されているのだ。吉田氏も明確に「近辺に退避しろと命令した」とは述べていないので、「命令違反」とまでは言えないが・・・福島第二に退避しろと命じたわけでもないし・・・微妙なところだな。
 これについて朝日は2014年9月25日の紙面で社長の名前で謝罪を述べている。それは民間企業の判断だからどうでもいいけどさ。一応その日の朝日新聞を買ったけどさ、謝罪と経緯報告にかなりの分量が費やされていて読むのが面倒だ(笑) 読者が知りたいのは朝日のヘマの経緯なんかじゃなくて吉田調書の内容、つまり東電原発事故の実相だろ。

 それにしてもさ、朝日のヘマなんかより、吉田調書を含む聴取記録が今まで公開されなかったことの方が重大だ。困難を極めた事故対応、原発の恐ろしさを伝える貴重な資料であり、(当人の同意が得られた時点で)順次公開するべきだったはずだ。しかし今後はこういった情報が一切公開されなくなるかもしれない。
 昨年末に施行された特定秘密保護法によって、原発の警備情報も「テロ防止」という名目で「特定秘密」に指定可能だという。ならば、この聴取記録のような原発事故に関する記録も、原発敷地内の配置や構造への言及があれば「特定秘密」とされ隠蔽されるのではないか。それどころか原発事故自体が隠蔽されるのでは、という気もする。まあそこまで酷くはならないと思うが?
 それにしても安倍政権の、電力会社・大企業は優遇する一方でマスコミは脅し、市民生活を圧迫し、人権などどこ吹く風・・・というあからさまな姿勢を見ていると、もしも今後どこかの原発が大事故を起こしても、情報公開は(民主党政権時代も酷かったが、より酷く)制限されるのではないか・・・と思う。放射能拡散情報も汚染状況も隠蔽され、避難地域の指定も狭く、早々の帰還を迫るのではないか。
 そのような事態を迎えないためにも、一刻も早く安倍政権を打倒し特定秘密保護法を廃止させ、全ての原発を廃止させるため、闘わなくてはならない。
posted by 鷹嘴 at 13:59| Comment(2) | TrackBack(0) | 原発 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「吉田調書」は、そんなものが「ある」ことを報道したことがスクープであり、正しいのであって、中身の枝葉末節で「朝日新聞」を捏造扱いするなど、もっての他…
 管理人さんが書くように、「吉田調書」からは「原発で過酷事故が起こったら、どうにもならない」ということ…それをちゃんと学ぶべきだ!
Posted by あるみさん at 2015年01月24日 20:03
たしかに・・・朝日が報じるまでこの資料の存在自体が知られていませんでしたね。
Posted by 鷹嘴 at 2015年01月26日 00:19
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