2010年12月から翌年1月にかけて、二人のスリランカ人労働者が短期入国ビザ(90日間)で来日した。スリランカ国内の人材斡旋会社代表だった日本人から、鮮魚の解体や物流管理の仕事が「日当6000円、食事代2000円で3年間」、入国後に「在留期間1年のビザに切り替える」と説明を受け、「斡旋料」としてそれぞれ180万スリランカルピー(約160万円)を支払っていた。
しかし実際の二人の仕事は静岡県袋井市の産業廃棄物処理会社だった。テレビや洗濯機などを解体し鉄、銅、レアメタルを取り出す仕事だった。毎日平均10時間以上働いたが、1日に支払われたのは食事代として2000円だけだった。時給200円弱か。(ちなみに当時の静岡県の最低時給は750円)
二人のビザの切り換えも行われず、11年7月の入国管理局の立ち入り調査で超過滞在が発覚、西日本入国管理センターなどに収用された。仮放免後、13年3月に産廃処理会社などを相手取り合計約300万円の未払い賃金などの支払いを求める訴訟を起こした。二人の弁護をつとめた指宿宏一弁護士は「最低賃金以下で働かせる搾取の目的で、だましてスリランカ人が連れてこられたのは『人身売買』に当たると、違法性を指摘した」。
同年12月に和解成立し、会社が二人に合計150万円を月8万円ずつ分割して支払うことになった。14年1月に最初の分割金が弁護士に振り込まれたが・・・それっきり支払いは行われず、連絡も取れなくなった。会社側の代理人弁護士も「会社側とは半年ぐらい前から連絡が取れない」。東京新聞の記者も社長や会社に電話をしてみたが連絡を取れなかった。
そして昨年12月18日、この二人は賃金を受け取れないまま、東京からチャーター機で他の外国人労働者と共に強制送還されてしまった(スリランカ人26人、ベトナム人6人)。指宿弁護士は「ブローカー経由で日本に来た例はなかなか表に出ない。今回は氷山の一角。似たケースは多い」と述べる。
法務省入国管理局警備課は二人の強制送還について「個別のケースには答えられない。一般論として、民事訴訟(の経過など)についてはできる限り把握し、配慮はしている」と言うが、実際は全く配慮していないな。ただお役所仕事をこなしているだけだ。
それにしても賃金を受け取っていない労働者を強制送還するとは、日本政府はこのような犯罪企業と結託している、と言わざるを得ない。
■ この悪質な経営者は、ビザの切れた外国人労働者ならば違法な低賃金であっても文句を言えないと高を括っていたのか、あるいはまともな賃金を払えるだけの売り上げが無かったのだろうか・・・。ともかく近年はコンビニに行っても飲食店に行っても外国人労働者を多く見かける。
外国人に日本で技術を学ばせて、帰国後に役立ててもらおう、という建前の「外国人技能実習制度」も、賃金不払い事件などが起きているという。実際には技能を学ばせるどころか最低賃金以下で長時間の重労働を強い、都合が悪ければ追放する、実態は奴隷制度だ。
「一日15時間労働、休日も働いて月給12万円」「パスポートと携帯電話を取り上げられた」などという悪質な事例が多く、13年の厚生労働省の調査でも約8割の事業所で法令違反が明らかになった。アメリカ国務省も14年6月の人身売買に関する報告書で、「実習制度が本来の趣旨から外れている」と批判した。国際的に奴隷国家であると認定されたようなもんだな。
しかもこれに恥じることのない安倍内閣は、外国人技能実習生の受け入れ期間を最長3年から5年に延長するための法改悪を閣議決定し、国会での成立を目指すという。
◇ 外国人技能実習、5年に延長 実習生の人権侵害防止策も:朝日新聞デジタル (魚拓)
「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」の鳥井一平事務局長は、
「見直し案は安価な労働力と見なす外国人を使い続けるという内容。外国人の取り締まりを担当する法務省が法案作成中心になることも、違和感」と指摘する。
たしかになあ、だいたい技能実習3年ってのも長すぎだろ?まあ世間には下積みの長い業界もあるけど、大抵は3年も勤めればそれなりの業務を任されるほどに、というか責任のある立場になってるだろ?これをもう2年延長するというのは・・・「実習」というのは建前で、実際は最低賃金以下で働いてくれる労働者を誘い込むだけの制度だと分かる。
もっともこの制度に頼らざるを得ない状況があるようだ。永山利和・元教授(労働経済論)という人は、次のように指摘する。
「制度の根本にある『人手不足』の中身が問題。低賃金など条件が悪く、日本人が手を挙げない内容だが、その条件しか提示できないところまで地方の中小企業は追い込まれている」
■ さらに日本政府は別の手段も用いて外国人労働者を呼び込もうとしている。昨年4月4日、東京で2020年に開催予定のオリンピック準備に伴う「一時的な建設需要の増大に対応するため、緊急かつ時限的措置(2020年度で終了)」として、「即戦力となり得る外国人材の活用促進を図る」ことが閣議決定されたという(建設分野における外国人材の活用に係る緊急措置=外国人建設就労者受入事業)。
「建設分野の技能実習修了者」に対し、技能実習終了後も国内に留まらせ(あるいは帰国後に再入国させ)、建設工事に従事させる。この「外国人建設就労者受入事業」の実施期間は「平成27年4月1日から平成33年3月31日」・・・つまり2021年の3月末で終了。オリンピックが終わればお払い箱、というわけだ。
「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」の鳥井一平事務局長は、
「実習制度の理念からすると、実習生の技術は母国で生かされるべきだ。雇い直すのは、単なる労働力としか見ていない証拠だ。日本では少子高齢化が進み、移民を含めた外国人労働者の受け入れが不可避だが、労働者の権利が確保されるのが前提」と指摘。実習制度の本質については言うまでもないが、この制度を利用というか口実にして安い労働力を呼び込もうとは全く厚顔無恥にもほどがある。外国人労働者を招きたいのなら日本人労働者と同水準の収入・権利と永住権が保障されなければならない。
それにしても、オリンピック開催強行のために外国人労働者への搾取をさらに強化・増大しようとは・・・ふざけるのもいい加減にしろと言いたい。大勢の外国人労働者を低賃金で酷使しないと開催出来ないオリンピックのどこが楽しみだ?日の丸がいくつ上がった、とか楽しめるのか?こんな馬鹿げたイベントは阻止しなくてはならない。2020年開催予定のだけじゃなくて、ね。
■ ところで、政府も財界も「少子高齢化」による労働力不足を危惧し、外国人労働者の大規模な導入を計画しているわけだが、ならば外国人が生活しやすい環境を作るために、この国に蔓延るレイシズムを一掃するべきじゃないか?しかし逆の方向を向いているような気がするなあ。きょうびの自民党議員の頭の中なんざザイトクと変わらんだろ。極右が台頭する欧州も同じだな。外国人労働者に働いてもらわなきゃ社会が成り立たないのに、レイシストを野放しにしてるのは実に不思議だ。・・・と思ったが、奴らにとっちゃ自国の労働者と外国人労働者が分断しているのが都合がいいんだろ。連帯して決起するようなことになっちゃ大事だからな。だからレイシストはテキトーに野放しにしてるんじゃないかな、とか思ったよ。
というか、日本のような借金大国はそのうち経済が完全に破綻して、外国人労働者を働かせるどころか日本人が出稼ぎする羽目になったりしてな。ネトウヨの連中も将来は中国や韓国に出稼ぎに行って搾取され差別されるかもな。因果応報ってやつだな。ネトウヨじゃ役に立たんかも?ともかく自分が安全な立場にいると勘違いして外国人排斥をほざく連中が不思議だ。いつかは自分の運命になると思わないのか?そういう想像力すら失うほど政府に飼いならされているんだな。まあこれは「日本人」全てに言えることだけどな。日本経済なんかもう崖っぷちだろ。
政府・資本家にとって、外国人労働者の生活環境や世間のレイシズムを懸念するどころか、彼らの労働者としても権利に興味がなさそうだな。極限まで搾取して使い捨てにするだけ。嫌なら出て行け別のを呼ぶから、ってつもりだろう。いっそ早めに交代してくれたほうが都合がいいんじゃねえの?タダ同然で酷使し、文句言うなら強制送還したいんだろ。
要するに日本や欧米など環境破壊先進国の経済は、そこまでやらなきゃ持たないんだよ。断末魔だよ。労働者に不当な扱いをしなけりゃ経済を維持できないなら、破綻しちまえばいいさ。それはともかく農林水産業や工業の根幹部分は、何らかの方法で衰退を防ぐべきだと思うんだけど。
「農業や製造業といった産業が実習生に頼り、短期的に人材を使いつぶす状況」について永山氏は次のように提言している。
「実習制度という方法で目先だけ会社が回っても、技能継承がうまくいかず、最後は国内産業の衰退につながる。日本人が就こうとするぐらいの待遇が提示できるようにするため、長期的なビジネスモデルの構築を考えるべきだ」
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