※ 以下はネタバレ満載なのでご注意下さい!
とある未来の世界。人々は「マナの光」というエネルギーを利用し、「戦争・格差・貧困・全ての闇が過ぎ去った世界」で幸せに暮らしていた。「マナの光」とは万能で無限のエネルギー、食品だろうが衣料だろうがあらゆる物質を虚空から生成するため、この世界では貨幣すら必要無い。かつ運送・移動や通信も行えるため、この世界にとってなくてはならない(唯一の)インフラ。
ただし、稀に出生する「ノーマ」と呼ばれる子どもたち(なぜか女児のみ)はマナが使えず、文明を破壊する化け物だとして人間扱いされず、社会から隔離されていた。たとえどんな身分の高い家に生まれた子であっても同じ扱いを受ける。
「ミスルギ皇国」の皇女である「アンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギ」(貴人だから長い名前だ。声優は水樹奈々サマ!)は、文武両道の美しいお姫様で、国民のアイドル的存在。しかし本人も気づいていなかったが(優れたマナ使いである侍女のモモカが世話をしていたせいか?)、彼女はノーマだった。
16歳の誕生日を迎えて「洗礼の儀」が行われた際、実兄ジュリオの策略によってノーマであることが発覚(権力闘争か?)。ノーマに対し激しい差別感情のある国民たちの罵声を浴びながら連行され、全ての身分を剥奪され絶海の孤島の「アルゼナル」へと移送される。
※ ところで、第1話だけは無料で視聴できる。ちなみに誰かさんが勝手に作った第1話のダイジェスト版(ニコニコ動画)が分かりやすい。
「アルゼナル」とは、ノーマの少女たちを集めて訓練し、異世界から現れる「ドラゴン」と戦わせるための施設。全ての身分を剥奪され単なるノーマとなったアンジュリーゼは、「アンジュ」と呼び捨てにされ、「パラメイル」(戦闘機みたいな形だがロボットに変身する)に乗る「メイルライダー」として最前線でドラゴンと戦う「死の第一中隊」に配属される。
お嬢様育ちだが「エアリア」(空中ラクロスみたいな?)の選手であり運動神経も体力も抜群なアンジュは、軍事訓練でもパラメイル搭乗シミュレータでも優秀さを認められる。しかし自分がノーマだという事実を受け入れられない彼女は、同志であるはずの他のノーマに対しても差別感情を隠さず、嫌われ者となる。司令官ジル(隻腕の美女)にミスルギ皇国への帰還を願い出るが受け入れられるはずがない。
初陣で敵前逃亡したため部隊は混乱に陥り、彼女のパラメイルは墜落・大破し(自身も負傷)、しかもゾーラ隊長(ガチレズ姐さん)ら3人の仲間の命が失われてしまった。しかしその直後ジルはアンジュに、「ポンコツ」と呼ばれていた古い機体の「ヴィルキス」での出撃を命令。ドラゴンの恐怖に失禁しながらも、包帯を巻いた額からの出血が母から譲り受けた指輪に滴り落ちると、この指輪とヴィルキスが共鳴・覚醒し、見事ドラゴンを殲滅。
そして長く美しい髪を切り落し、メイルライダーとして生きていく覚悟を決める。髪が長くても短くても可愛いよ!
「さようなら、お父様、お母様、お兄様、シルヴィア(妹)。かっこいいね!以上は第3話までの話。俺は第4話から観たから、3話まではスペイン語か何かの字幕が入ったのをYOUTUBEで観ただけ(とっくに消されてる)。正確な引用じゃないけど勘弁してね。
私はもう何もいらない。過去も、名前も、何もかも。
あなたたちみたいに簡単に死なない。
生きるためなら、地面を這いずり、泥水をすすり、血反吐を吐くわ」
その後のアンジュは手柄を独占するほど活躍するが(ドラゴン殲滅または貢献度によってギャラが決まる)、意地悪な「ヒルダ」(ガチレズ娘)の小細工によって墜落し無人島に流れ着いて、イケメンだけどドジでスケベな青年に助けられてツンデレになっちゃったり、侍女のモモカが密航して逢いに来たり、仲が悪いはずのヒルダと一緒に脱走しちゃったり・・・と、困難な闘いが続く。俺はロボットアニメってエヴァ以外は観たことないけど(ってゆうかエヴァは人工生命体だし)、この作品は非常に面白かった! ってゆうか「パラメイル」もロボットだか何だか分かんないまま全話終わっちゃった・・・。
前期オープニングテーマは水樹奈々さま!この曲かっこいい!
■ ところでアンジュは仲間たちから、「痛姫」「バカ姫」「銭ゲバ女」「下半身デブ」「筋肉ゴリラ」(皮肉たっぷりに)「皇女殿下」・・・などと様々に呼ばれているが、ネット上では「ゲス姫」と呼ばれることが多かった。どこがゲスかと思うと、まず初めて敵を殲滅した後は態度が一変して言葉遣いが悪くなり(失せろゴキブリ!とか、クソ女!とか叫ぶしw)、メイルライダーの中では一番の高給取りになったのですぐ金で解決しようとするところ、それと第3話までの高慢ちきぶり、差別感情丸出しの冷淡さ、ヘタレぶり、無責任さかな。
こういう育ちだから世間知らずというか冷淡なところがあった。まだ皇女の身分だった頃だが、ノーマだと発覚した子どもを国家権力に連行され、通りがかりのアンジュに助けを求める母親に、天使のような笑みを浮かべながら「次は正しい子どもを産みましょう」などと恐ろしいことを言うし。翌日には自分もノーマだとバレて連行されちゃうのに。まさに因果応報だな。アニメのヒロインって普通、優しい子だよな。これがクロスアンジュの面白いところw
もっとも、ああいう育ちだったし、だいたい国民全員がノーマは野蛮で危険だと教育されてたんだから仕方ないのかも。ツイッターで鋭い指摘を見つけた。
クロアンね、アンジュ姫様をゲス姫ゲス姫って言われるんだけどそりゃ育ちがそうしつけられたんだからノーマに対する態度がアレでもしゃーないというか、自分がノーマと分かった瞬間ノーマと手を取り合って仲良くしましょうな展開だったらそっちのほうがゲスいと思うのだがどうか。
— さとう@5/4 東3・メー49b (@satottoro) 2014, 11月 16
たしかに、そういう安易な展開はきれいごと過ぎてゲスだな。■ それにアルゼナルに来てからも、自分の立場が全然分かってない。第一中隊の仲間を紹介されたときも「これ全部ノーマですか?」とか言うし。食堂の飯が気に入らないらしく、先輩のロザリーに「よく食べられますね」とか言うし。先輩キレるよ。アンジュを慕う「ココ」(アンジュの美しさ・気品と、訓練での強さに憧れていた)にプリンを貰ったのに、自分の部屋のゴミ箱に投げ捨てるし。つーか、せっかく「ココ」と「ミランダ」が友達になってくれそうなかんじだったのに眼中になかったようだな。このゲス姫めw
初出撃では「ミスルギ皇国に帰るのです」とか言って逃亡しようとして隊列が混乱したせいで、彼女を慕うココとミランダがドラゴンに喰われるし、ドラゴンに怯えて隊長のゾーラに(パラメイルごと)すがりついたせいで自分の機体は大破しゾーラは死ぬし。そんで救助されて「お前のせいで3人も死んだんだぞ!」と責められても平然と「ノーマは人間ではありません」って言うし。自分もノーマじゃんかよ。こんなアニメのヒロインありえねーよ。これがクロスアンジュの面白いところw
そして・・・ミスルギ皇国には帰れない、ここの生活は最悪、私はどうすればいいのですか・・・とメソメソ泣くが、ジルと売店のおばちゃんのジャスミン(実は元司令官)に、
「ここでノーマの子たちがドラゴンを倒しているから、マナの世界は平和を謳歌できる。平和ボケしたアンタの世界はね、誰にも知られずに死んでいったノーマたちが守っていたんだよ」と諭される。(かつてシルヴィアちゃんはアンジュと乗馬してるときに落馬し車椅子生活になったため、アンジュは責任を感じていた)
「今度はお前の番だ」「お前は、お前たちが作ったルールに従ってここに来たんだ」
「皇女さまとしては本望だろ。世界を守るために闘えるんだからね」
「ココなんてまだ(アンジュの妹のシルヴィアちゃんと同じ)12歳になったばかりだというのに」
しかしなおも「シルヴィアとは違います!」などと尚も駄々をこねるが、ジルに
「ノーマは人間じゃない、ってか?だったらお前は何だ!皇女でもなく、マナも無く、義務も果たさず敵前逃亡し、年端もいかぬ仲間を殺したお前は、一体何なんだ!」などと説得され、結局「死にに行く」と、ヴィルキスでの出撃を決心。このシーン何度観ても感動するぜ。最強の使徒ゼルエルがジオフロントに侵入しているのに尚も意地を張るシンジ君を加持さんが説得するシーン、まどかがほむらを助けるため=キュウべえと契約するため避難所を後にしようしたとき、それを制止する母親を説得するシーンすると並んで、アニメ界3大説得シーンに数えたいw (もっともジルがアンジュに期待していたのはドラゴンを倒すこと、だけではなかったが)
「死んだ仲間の分も、ドラゴンを殺せ!それが出来ないなら、死ね!」
ってゆうか、最強のパラメイルであり世界を救う鍵となる「ヴィルキス」は、ジル(元はメイルライダーだった)や、ゾーラ亡き後の隊長となった夢見る少女?のサリアちゃんにはまともに操縦出来ない。アンジュだけが可能だった。まるで、エヴァ初号機はシンジ君以外には操縦が不可能だったようにね。
そして前述のようにドラゴンの恐怖に泣きじゃくりお漏らししながらも覚醒し巨大ドラゴンを殲滅。アルゼナルの指令室(なんかエヴァのセントラルドグマみたい)に無線を通じてアンジュの嗚咽が響き渡る。エヴァが再起動しゼルエルを殲滅するシーンを彷彿とさせる衝撃だった。その数日後(?)、自分の部屋のゴミ箱に入ったままのプリン(とっくに腐ってんだろ?)を拾って食ったが「不味い!」と叫ぶあたり、安定のゲス姫っぷりだな。お漏らししたパンツよこせよw
ともかくアンジュはこれ以降ドラゴンを殲滅する戦士としての覚悟が据わる。まるでほむらが眼鏡を捨てた後みたいに。もう誰にも頼らない。もう他のメイルライダーには戦わせない。全てのドラゴンは私が倒す!みたいなw ゾーラ隊長に可愛がられてたヒルダたちの嫌がらせ・妨害にも決して屈しない!
■ というわけでアンジュはあっという間に最強のドラゴンハンターへと成長した。世界を守るためにアンジュたちノーマが犠牲になって戦い続けるわけだ。彼女たちはいつドラゴンとの戦いで命を落とすか分からない。
それにしてもさ、アンジュたちがドラゴンを片付けていれば、マナを使う人間たちの世界は安泰だよな。つまりノーマがドラゴンを倒せば倒すほど、ノーマを差別し奴隷として使い捨てにする体制はより強固になるわけだ。
クロスアンジュがまどマギぐらいヒットしたら「ノーマは原発作業員」ぐらいの話が社会学者から出てくるだろうか。
— ヴィー (@wie1973) 2014, 10月 31
というか、この物語の中で「人間」というのは、マナを使える人間のことを指す。ノーマは人間ですらないのだ。それにしてもさ、アンジュたちドラゴンを殺しまくってるが、本当にそれでいいの?ってゆう疑問を最初のほうから感じていたわけだが・・・。■ ところで、ほとんどのノーマは生まれた時点でノーマだと判定されアルゼナル送りになるが、アンジュのように生まれた家庭で育てられていたがノーマだと発覚し隔離される者もいる。ヒルダやジルも同様。彼女たちは元の世界の生活を知っているだけにアルゼナルの境遇が堪えがたい。ヒルダってとんだ性悪女だと思ってたけどさ、アンジュと一緒に脱走するときなんか
「このために何年も待ったんだ。生き残るためにゾーラのオモチャになった。面倒な奴らと友達になってやった。ずっと待ってたんだ、この日を。絶対に帰るんだ、ママのところに!」って叫びやがってこの親孝行娘が!おっちゃん泣けてくるよ!
会いたいときにはどうする?
脱走する
#crossange
— 吉良◎ (@kira0246) 2014, 11月 29
しかし「人間」たちは、自分たちの世界はノーマが犠牲になることによって維持されていることを全く知らない(トップシークレット)。この世界の虚構が露わになるからな。それにノーマに対する差別感情の激しさには背筋が凍る。アンジュがヒルダと一緒に脱走してミスルギ皇国の宮殿に侵入し(妹のシルヴィアちゃんを助けるつもりだったが、兄のジュリオの罠だった。シルヴィアちゃんもグル)、結局拘束されて公開処刑されそうになったとき、アンジュの友人だった少女たちを先頭に「吊るせ!吊るせ!」コールだもんな。それにしても薄情な奴らだな?俺だったら佳子ちゃまがたとえノーマでも忠誠を誓います、なんちゃってw (ちなみにアンジュの母の王妃は官憲の銃弾からアンジュをかばって亡くなり、王は拘束され、ノーマを皇族の一員に加えていたという口実で絞首刑にされたらしい)。
つーか何なのあいつら?アンジュがノーマだと分かった瞬間に態度を変えやがって。お前らだって超美人のアンジュ姫のファンだったんだろ。可哀想とか思わないのかよ。ちょっとマナの光が使えないだけで、同じ人間じゃねえかよ。すっげえ気分悪い。もっともミスルギ皇国の国民を笑える立場じゃないな。今この瞬間にもネットにはヘイトクライムが溢れているし、俺たち人類はこのように、マイノリティに対する差別・迫害・虐殺を繰り返しているじゃねえか。
まあアンジュの場合は特権階級の頂点だったから因果応報って感じもするけど、ヒルダが可哀想すぎるよ。せっかく「ママ」に逢うため家に帰ってきたのに(ヒルダが連れ去られてから産んだ子か養女だか知らんけど)「ヒルダ」という名前の女の子がいるし、「生まれてこなきゃよかったのよアンタなんか!帰ってよ!帰れ!」って怒鳴りながらパイを投げつけるし。てめえが腹を痛めて産んだ娘じゃんかよ。すっげえ気分悪い。全くこの回(第9話)は、ダミープラグ制御下の初号機によるエヴァ参号機(鈴原トウジが乗っていた)殲滅や、マミさん首チョンパや「さやか」魔女化に匹敵する絶望感だ。
恐らくヒルダの母親は、密かにノーマを育てていたことが発覚してから、地域社会から激しい差別と迫害を受けたのではないか。支配者が植えつけた差別構造は、肉親の情さえ踏みにじってしまうのだ。これも作り話だけの世界じゃねえな。それにしてもこういう重いテーマが出てくるアニメってかなり珍しい方じゃないの?それともにわかアニメファンの俺が知らないだけか?
ところでさ、差別を行っている側は、支配者側にそのように仕向けられていることに気付かない。支配される側同士が敵対していることが、支配する側にとって都合がいい。自分たち自身も被害者であることに気付かない。物語が進むにつれて、この構造が徐々に明らかになっていく。
(つづく)
今頃ノーマであることを知らされても、アンジュがそうすんなりと受け入れられるわけがなく、周囲とトラブルを引き起こすのも無理ありません。
ジルの叱咤とヴィルキスとの出会いなどを通じて、やっと自身がノーマであることを受け入れたものの、それでも他のノーマへの差別意識を改めることはなく、一見身勝手にも思えますが、これは人間不信の裏返しでもあったのでしょう。
ノーマという事実を受け入れたことで、これまでの人生が、全部嘘で塗り固められた偽りのモノで、尚且つそれに騙され続けてきたことを思い知らされた為、彼女は他人を信じることができなくなったのだと思います。
それでもタスクとの出会いを通じて、徐々に人間不信は改善されていき、ミスルギで処刑されかけたのを機に、彼女は不仲だったヒルダと、反省房の中でマナ社会をぶち壊すことを決意すると同時に和解。
敵だったサラたちと、恩讐を越えて固い友情を結んだり、タスクとの恋が結ばれるようになったことで、私の中のアンジュに対するイメージが良くなってきました。
ココとミランダとゾーラの3人を、脱走という身勝手な行動で巻き添えにする形で死なせた件についても、当初は全く反省の色はありませんでしたが、今となっては、14話での以下のアンジュの台詞を通じて、反省していることを示唆しています。
「私は血まみれ。人間を殺し、ドラゴンを殺し……(以下省略)」
ここでの「人間」とは、前述の3人のことも含めているということです。
3話のラストシーンにて、一度はゴミ箱に捨てた、ココから貰ったプリンを改めて口にした時、泣きながら「不味い」と言うシーンについても、本当に不味いから泣いてたのではなく、あんなに自分のことを慕っていたココとミランダを死なせてしまったことを、激しく後悔して泣いたのだと思います。
ヒルダ母についてなんですが、あんなに可愛がっていた彼女をあそこまで拒絶していたとなると、6年間も育てていたことが露見したせいで、周りからかなりの嫌がらせを受けていたのかもしれません。
精神的に追い詰められたことで、これ以上の嫌がらせを受けないようにする為にも、ヒルダとの過去と決別するしかなかったのだと思います。
ご指摘していただきましたが、アンジュの葛藤と内面的な成長を、今一度確認してみたいと思います。