2015年04月29日

【自衛隊という密室】 田母神のトンデモ講演と隠蔽

 1年ぶりだが、「自衛隊という密室」(三宅勝久/著 高文研 2009年12月8日第二刷)からの引用を再開。
 田母神俊雄という愚か者については今更言うまでもないが、おさらい。2008年10月、航空自衛隊幕僚長という立場でありながら「真の近現代史史観懸賞論文」などというふざけたものに「日本は侵略国家であったのか」という幼稚なタイトルの論文(笑)で応募し、最優秀賞を得た。その内容は今までネトウヨが書き散らしてきた歴史歪曲を並べただけのものだった。歴代の最優秀賞自称者の顔ぶれを見てみるとその筋?の有名人ばかりで、選考など形だけのお遊び企画のようだ。
 これが発覚しても田母神は全く反省せず開き直るだけだった。直ちに更迭されたが、11月に定年退職し、6千万円ほど?の退職金を受け取ってしまった。

 その後に明らかになったことだが、田母神は2003年から翌年にかけて自衛隊の機関紙で「航空自衛隊を元気にする10の提言」を掲載し、「法令解釈で悩むな、好きなようにやれ、日本は悪い国ではない、反日サヨに負けるな、身内の恥は隠せ」・・・などという、自衛隊幹部としては決して許されないことを述べていた。
 しかもこいつは2002年から2004年にかけて、自衛隊の高級幹部を育成する「統合幕僚学校」の校長を勤めていたが、「大東亜戦争史観」「東京裁判史観」などという講義を設けていたという。以上は過去ログ参照。
 さらに田母神は2008年1月30日、熊谷基地を視察した際に「講話」を行っていた。同年の8月、三宅氏のもとに自衛隊関係者から送られてきた「航空幕僚長田母神空将熊谷基地初度視察/講話 我が愛すべき祖国日本」という記録によると、やはりトンデモなことを話していたようだ。「自衛隊という密室」の第U部第5章「田母神空幕長のトンデモ講話事件」より要約して引用する。二重括弧『』内はそのまま引用。


 以下はその講話記録から抜粋。 
自分は福島出身だがスキーが滑れないので北海道を希望したが、昔は意地悪で、九州のあとは沖縄に行かされた。三沢基地に配属になって2年間で62日もスキーに行って、やっと滑れるようになった
 ほう、俺もスキーが好きだぞ。気が合うかも(笑)
頭の腫瘍のため手術を受けたが幸いにして良性だった。手術で顔が歪んだが『3年半たってほとんどなくなり、いまはトムクルーズを超えたというところです』
 しかし妻には、『顔だけでなく、どうせあなたは心も曲がっています』と言われた
 笑えない冗談だな。それにしても妻の指摘は正鵠を得ているのでは(笑)

 自己紹介の部分はこのように冗談交じりだが、本論の部分では実に危険なことを述べている。
 情報公開法と機密保護法は先進国ではペアになっている。日本に機密保護法が無いのは安全保障上困るのではないか
・・・というのは恐ろしいことにこいつの願望通りになってしまった。三宅氏は『情報公開法を使って自衛官の不祥事や疑惑、田母神氏の出張のあり方を調べている身としては、いささか気になる発言である』と危惧している。たしかに特定秘密保護法によって自衛隊/防衛省のあらゆる不祥事が隠蔽されてしまう危険性がある。この悪法は絶対に廃止に追い込まなくてはならない。
東京裁判については、勝者が敗者を裁くというのは国際法上ない、アメリカが、日本が再び立ち向かわないように行った
 たしかに東京裁判など茶番だな。七三一部隊の石井四朗や昭和天皇裕仁を被告席に座らせることはなかったし。
 東京大空襲で10万人以上が焼け死んだ。これは国際法違反だ。これを指揮したカーチス・E・ルメイ少将は、戦後に航空自衛隊創設に貢献したということで勲一等旭日大綬章を与えられたが、『そういったことを知るとなかなか割り切れない思いになります』
 まあこれは同感だな。しかし三宅氏は、この男に勲章を与えるように働きかけたのは当時の小泉純也・防衛庁長官(小泉純一郎の父)や自衛隊幹部ら、田母神から見れば先輩筋の連中だったことを指摘する。

 また、戦後に日本軍の近い人間が公職追放されたことを批判している。
日本は悪くなかった、正しい国だったと、アメリカと議論するような人たちは、みんな追放された。
 そんな奴は追放するべきだろうよ。言っておくがこいつはありふれたネトウヨだ。東京裁判は許せない、太平洋戦争はアメリカの罠だ、などと述べてみても決して反米ではなく、骨の髄までアメリカ追従に染まっている。
 追放された人員の『穴埋めのために戻ってきた』のは『戦前追放されている人たち』、『いわゆる左翼と呼ばれる人たち』が多く、
 『脳みそが頭の左半分にしかないような人たちが皆それぞれ公職に戻ったわけです』
 脳みそが右半分しかないような田母神に言われたくないな(笑)
 今は東大教養部のすぐそばに住んでいて、毎朝その中をランニングしているが、 『どこの国の人間か、頭が狂っているんじゃないかというような看板がいっぱい立っている』。日本で一番金をかけて、国家のリーダーを育てるはずの大学が、『何か左翼に乗っ取られたような状況になっている。学校に行くほど今は悪い子になっている』
 頭が狂っているんじゃないかというような田母神に言われたくないな(笑)
 そういうわけでこいつは教育基本法を改悪した安倍に期待していたが『途中でやめられちゃいました』ことを残念がってみせる。悩ましいことにまた安倍が復活しているが。


 そして歴史歪曲を語りはじめる。
 南京大虐殺というのは『見た人がひとりもいない』、『伝聞の証言』だけ。東京裁判でも証明できなかった。松井石根大将は『悪さをする兵隊がいたら厳重に取り締まれ』と通達をだしてから南京城内に入った。孫文の墓があったところは戦略の要衝だが、そこに入ってはいけないと命令していた。『そういう人が虐殺の命令を命じるわけがないのです』
 当時は反日の機運でいっぱいだった国際連盟さえ、2万人の民間人が虐殺されたという中国側の訴えを受け入れなかった
・・・などと、どこかで聞いたような話を並べている。こいつも当時は自衛官だったのに、旧日本軍の資料を見ることは無かったんだな。日本軍占領下の南京に於ける捕虜の虐殺、避難民の虐殺(敗残兵だと疑って虐殺した)、それに強姦や略奪の事例が列記されているのだが。

 しかも『日本には言論の自由がない』んだとさ。
 南京大虐殺は嘘だと言った政治家や大臣が辞めた。『親日的な言論の自由がないのです。反日的な言論の自由はあるけど』
 何が『親日的』なのか理解に苦しむが、言論の自由はあるぜ。好きなだけ『親日的』な妄想を吐けばいいさ。但し公職にある立場の人間ならば、愚かな政治家や田母神のようにお辞めいただくしかないが。

 さらには「日本は核武装すべきなどと私が言えば問題になるから言わないが、そういう意見もある」として、伊藤貫とかいう核武装論者の主張を紹介している。
 核を持った方がより安全。自衛隊が日常的にアメリカ潜水艦の核兵器を操作していて、いざとなったらそれを渡せと言っておけば、非核三原則を守ったままで核抑止力が強化される
・・・という、自衛隊にも核攻撃の能力が必要だ、という伊藤某の意見に田母神本人も賛成なんだろ?
 「他人の言葉を借りてはいるが、言いたいのは自身の意見のようだ」(三宅氏)
 たしかにウヨの常套手段だな。要するに田母神はその辺に掃いて捨てるほどいる卑怯なネトウヨに過ぎないってことだ。
 それにしても、南京大虐殺の否定は日本の侵略行為の美化・正当化につながる。多くの「否定派」の目的はそこだろう。大勢の自衛官の前でこれを語るのは、それこそ再び侵略戦争を行うべしと呼びかけるための下準備のようなものではないか?妙な懸賞に応募したことよりはるかに危険であり、絶対に許せないことだ。


 さて三宅氏が、この資料が本当に田母神講演の物なのか防衛省に問い合わせたところ・・・防衛省側は、2008年1月30日熊谷基地体育館で田母神が「全隊員にあたる約1200人」を前にして、「教育訓練」という名目で、「我が愛すべき祖国日本」というタイトルの「講話」を行った事実は認めたが・・・この講話記録の真贋については「わかりません」を繰り返すだけだった。
 しかし三宅氏は、この「講話」についての取材を始めた直後、現役の航空自衛隊隊員から電話を受けていた。
 先日のことですが、熊谷の講話を記録した文章をすみやかに廃棄するよう、メールと電話で上級部隊から指示がありました。上官が指示を受け、各部署に連絡していましたね。すぐにシュレッダーにかけたようです
 防衛省はこの隠蔽工作についても否定するので、三宅氏は文書の開示を求めて情報公開請求を行ったが(不開示になっても、公文書としての文書があれば、存在自体は確認できる)、1ヵ月後に出てきた回答は「不存在」だった。既に三宅氏の手元にある物さえも存在を否定するのだ。恐るべき隠蔽体質である。今後は特定秘密保護法によってさらに事実の追及が困難になるだろう。

 ところが田母神本人があっさり認めてしまった。08年11月11日参議院外交防衛委員会に、空幕長を更迭された直後の田母神が参考人として出頭し、共産党の井上哲士議員の追及に対し、「私見である」と前置きしながらも、(熊谷基地での講話で)『しゃべっている内容はたぶん論文(問題になった懸賞論文)に書いたのと私は一緒だと思います』と答えた。
 そして井上議員が浜田靖一防衛大臣(当時)に、『空幕長が憲法にも政府見解にも真っ向から反することを、幹部自衛官に対し職務権限として教育』していたことを糺した。浜田大臣は『大変重大なことだという認識の下に、今回お辞めいただいたということだと思っております』と答えたという。
 もっとも田母神が馬鹿げた懸賞に応募したため、どういう人間が航空自衛隊のトップの座にあるのかが明らかになり、防衛省として更迭せざるを得なかったのだ。大人しく組織の中でウヨク教育をしているだけだったら、リークが行われても(自衛隊の隠蔽体質のせいで)更迭までは至らなかっただろう。その方がよほど恐ろしい。


 なお田母神は恥知らずにも高額な退職金を受け取ったが、与党内からも自主返納を求める声が出ていた。しかし元自衛官で参議院議員の佐藤正久は、自身のブログ(2008年11月11日付け)でこれに反対する意見を述べていたらしい。
 田母神さんは、自衛隊法上の懲戒ではないが、空幕長から空将に実質降格されている。これは軍人にとっては、恥辱であり、これ以上の処分が必要か否か、冷静に判断すべきであり、法治国家であるわが国において、一部の政治的思惑により、法制度上、懲戒を受けていない者に対し、自主返納を要求するのは如何なものか
 こいつのブログの古い記事は大幅に削除されているようで、見つからなかったが。
 「恥辱」も何も、自衛隊幹部として許されないことを主張していたから更迭せざるを得なかったんだが。こいつも一般社会の常識が通用しないな。
 そもそも田母神のような言動こそ「軍人にとって恥辱」ではないのか?更迭されたのは「政治的思惑」だというのか?さすがは田母神のお仲間、恥知らずなことを平気で言える。そもそも「軍人」という言葉を普通に使っているところが恐ろしい。なお田母神も佐藤に10万円ほどの献金を行っていたという。
◇ “前空幕長更迭に異議”の異常-自民 佐藤議員 「軍人にとって恥辱」


 三宅氏は、田母神本人に確かめたいことがあったという。上記の参考人質疑の中で「私も今回びっくりしていますのは、日本の国はいい国だったと言ったら解任をされたと・・・」という言葉の真意だ。
  『日本の国はいい国だった』
――この意味を考えているうちに、ひとつの推論に達した。
 『旧日本軍はいい軍隊だった』
 ほんとうは、田母神氏はそう言いたかったのではないか。あるいは、軍国主義の日本はいい国だった、と。
 マネージャーを通じて取材を申し入れたが当時の田母神は多忙だったせいか返事は無かったという。
 しかし田母神の著書「田母神塾」が、三宅氏の疑問を解決した。「自衛隊は栄光ある日本軍の末裔である」という項には次のような記述がある。
 旧日本軍は悪いことなどしてはおらず、世界的に見ても優秀な軍隊だった。その旧日本軍の伝統を、陸海空自衛隊はそのまま引き継いでいます。「日本は悪かった」という前提に立ってモノを言っているから、「旧軍と自衛隊は別物だ」という苦しい言い訳をしなければならなくなってしまう。自衛隊を批判する人たちは大前提からして議論がまったく喰い違っています
 やはり三宅氏の推論の通りだった。田母神にとって戦前の日本の軍国主義イコール日本国である。これはウヨクに共通した宗教?だが。ネトウヨを相手にしていると「そんなに日本の悪口言って楽しいか」などと話が通じないことを言い出すが、要するにネトウヨにとって旧日本軍イコール日本国だからな。
 さらには「日本はいい国」であり、即ち「いい国である日本の軍隊はいい軍隊」なのだ。そして自衛隊はその「いい軍隊」を引き継ぐ組織だというのだ。たしかに「自衛隊」を名乗ってはいるが実質的に軍隊だ。安倍の「わが軍」という発言(2015年3月)は、安倍ら自民党政治家の本音と、自衛隊の本質を示すものだろう。つまり自衛隊は「国防」のためにあるのではなく、旧日本軍のように侵略戦争を行い他国・自国の区別なく人民を虐殺し(あるいはそれらの行為に加担し)、政権だけを(あるいは自らの組織自体を)守るためにある組織だ。古今東西のあらゆる軍隊と同様に。

 去年この著書から引用したが、1978年に統合幕僚会議議長だった栗栖弘臣が「超法規発言」で更迭された。この男でさえも退職前の記者会見で「旧軍や関東軍のような考え方は私以下、自衛隊は一人も持っていない」と述べていたという。それに比べて田母神のなんとまあ露骨なことか。
 もっとも三宅氏は、こういう人間を幹部に据えて好き放題を許してきた自衛隊という組織と「時の政権」こそ、「責任を問われるべきだ」と指摘する。
 30年を経て、制服組トップが公然と旧軍を讃えるまでに時代は変わった。この変化を世に知らしめてくれたという意味において、田母神俊雄・前空幕長の”功績”は大きいと、本当に思う
 つまりは田母神のような自衛官が出現するほど時代が悪化しているということか。


 それにしても田母神という男の軽薄さには呆れるが、何をトチ狂ったか政界進出を目論み、昨年2月の都知事選でなんと61万票も獲得。12月の衆院選でも3万9千票を獲得するが落選(最下位)。しかも選挙資金のうち使途不明金があり、同志だったはずの水島総氏から名指しで激しく非難されている。田母神自身が飲み食いやバクチに使っちまったわけじゃねえだろうけど、どうもこういう面でおおらかというかルーズというか・・。
◇ 【使途不明金問題で内紛】後援者が怒り「田母神氏はウソつき」
◇ 田母神氏の政治資金3000万円が高級コリアンクラブに消える チャンネル桜・水島社長「田母神は大嘘つき野郎のエセ保守」 自由速報(じゆそく)

 一方、田母神はよせばいいのにツイッターなんぞをやっていて、数々の暴言やデマで顰蹙を買っているようだ。

◇ twitterのニュース - この状況で“後藤さんは在日“攻撃!田母神はやっぱりただのネトウヨだった - 最新芸能ニュース一覧 - 楽天WOMAN
◇ 田母神氏 翁長知事関連ツイートし「デマ」指摘される - 夕刊アメーバニュース
◇ 西村茂樹さんによる「翁長・沖縄県知事の娘にまつわるデマ」の真相 - Togetterまとめ

 既にデマだと明らかになっていることを、あえて拡散しようとするのは・・・よっぽどネットの動きに疎いのか、それとも自分が笑われてもいいからデマを広めたいという悪意の塊なのか?単に馬鹿なだけか?
 それはともかく、(一部の)自衛官幹部の本音と、自衛隊という組織の本質が明らかになったのは田母神の協力?もあってのことだ。
 それに今後も田母神がツイッターで悪態をつきデマを拡散して非難の嵐を浴び、選挙に出れば選挙資金がどこかに消え、同志からも憎まれて極右陣営を分断することは実にありがたい。旧日本軍を礼賛するような人物の本性をさらけ出し、かつ元空幕長という肩書の利用によって自衛隊自体の評価を下げてくれることも期待できる。そういうわけで田母神閣下の今後の活躍を期待しております(笑)
posted by 鷹嘴 at 01:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本軍(1950〜) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/418103062
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック