2015年06月23日

「日本の名誉」などどうでもいいが、戦時性暴力被害者の名誉回復を!

 今更ながら去年の出来事を書いておく。というかこれはずっと続いている問題だけど。

 朝日新聞は2014年5月20日、(東電福島第一原発2号機が制御不能になりつつあった際)「東電社員らの9割にあたる約650人が吉田所長の待機命令に違反し、10キロ南の福島第二原発に撤退した」・・・と、吉田昌郎元所長の調書からの引用という形で報道し、後に記事を撤回し謝罪した。
 また同年8月5日「従軍慰安婦」についての特集記事を組み、かつての自社の報道についても検証を行った。今更ながら吉田清治氏の証言については虚偽と判断し、記事を取り消すことを宣言した。この件についても後に謝罪に追い込まれることになる。
 このように朝日は「吉田調書」と「吉田証言」についての報道で墓穴を掘った形になったが・・・ある種のメディアは「吉田証言」についての同社の対応に強く拘り、同社に対する非難(というか攻撃)を続けていた・・・。

 問題の8月5日の記事は俺も図書館でコピーしたが失くした(笑)。Web版で読めるからいいけど。それにしても何で唐突にこの特集をしたんだろ。しかも吉田証言などという、マニア?以外はとっくに忘れている話を持ち出したのか?解せないなあ。まあ特にどうってことはないけど、悪くはない記事だったな。
 吉田清治氏の証言については、ずっと昔から相手にされていないんだよ。たとえば「従軍慰安婦をめぐる30のウソと真実」(大月書店)でも、吉見義明教授が「(吉田氏の)回想は証言としては使えないと確認するしかなかった」と述べている。俺の手元にあるのは1997年の第1刷だ。
 しかしウヨの頭の中では「吉田証言はウソ⇒強制連行はウソ⇒慰安婦問題はウソ」という図式が出来上がっていて、同社が吉田証言の記事取り消しを宣言したことがよほど嬉しかったようだ。「朝日がやっとウソを白状した。これで慰安婦問題はウソ確定!日本の名誉が回復した!」とかね。なんと単純な、おめでたい奴らだろうか。
 もちろん右派メディアは同社の記事取り消しで満足することはなく、連日のようにバッシングを続けていた。他に書く記事ねえのか。朝日を叩いてさえいりゃ売れると思ったのか。もちろん俺も朝日は止めたし支持するつもりもないが、実に気持ちの悪い現象だった。
 読売は読者を奪うチャンスとばかりに朝日攻撃を続け、ビラや冊子、文庫本を配布するなどキャンペーンを行ったが、それが逆効果になったという分析もある。
◇ 読売の朝日叩きが見事な空振り、販売店に自社本購入を負担させる醜態 −「新聞業界のイメージダウンに」 - みんなの心にも投資 … ソーシャルインベスター(社会投資家)への道
 「キャンペーンを始めてから、朝日の購読をやめて読売に乗り換えたという朝日の元読者は1割にも満たない。それより深刻なのは、これを機に新聞購読そのものをやめるという“無読”の人がほとんどなこと。23区内では、8つの販売エリアに分かれて月に2回、本社販売局の担当者と販売店の所長が集まる会議が開かれますが、そこでも、『誤報のネガティブキャンペーンをやればやるほど、朝日というより新聞業界全体の信頼を失わせるだけ』『業界全体のイメージダウンにつながる』という意見が飛び交っています」
 なるほどねえ。「朝日ダメだ」「朝日バカだ」という連呼が、自社も含めた全ての新聞というメディアへの信頼を落す、と。当然だろうな。そしてその効果が下のような事態だ。
◇ 【特報】「新聞没落」、朝日は1年で44万部減、読売は60万部減、衰退する新聞広告の影響力 - Sakura Financial News 9999 –
 朝日止めたついでに新聞購読自体止めちまうのか、賢明な判断だな。今どき、新聞読まなきゃってゆうご時世じゃないし。俺は東京新聞をサヨク党派共通の機関紙のつもりで読んでるけど(笑)


 ついでに言えば朝日を叩いている側こそデマだらけだよな。たとえばこの記事↓
◇ 朝日謝罪会見でハシャぐ読売、産経の“トンデモ誤報”集|LITERA/リテラ 本と雑誌の知を再発見

 続いて、2014年10月29日・週刊金曜日臨時増刊号「特別編集『従軍慰安婦』問題」より引用。
〇 文芸春秋2014年10月号に、塩野七生とかいう作家の記事が掲載された。ここで塩野は、日本軍がジャワ島スマランにてオランダ人捕虜の女性たちを性奴隷にした事件について「オランダ人の女も慰安婦にされたなどという話が広まろうものなら、日本にとっては(欧米を敵に回すことになるので)大変なことになる」などと述べている。
 俺も一応現物を読んでみたら、本当にそのように書いてあって驚いたぜ(笑)。要するにこの塩野という馬鹿は、「ヨーロッパ人の女性を慰安婦にするなんて、そんなことあり得ない!ウソだ!」と言いたいのだろう。これだけ無知で日本軍の性暴力に言及するとは呆れたものだが、これを平然と掲載する文春の面の皮の厚さにも言葉が見つからない。嘘も百篇繰り返せば真実になる、ってか?

〇 大高未貴というジャーナリスト(笑)は、かつて「慰安婦」問題の調査を行ったソウル大学名誉教授・安秉直(アンビョンジュク)氏に面会を申し込み、安氏は「報道しないことを前提」に応じた。
 しかし大高はこのときの模様を2014年4月10日週刊文春に、安秉直氏の告白だとして掲載した。しかもそれは誇張と曲解だらけで、「当時の調査方法は、反省してみますと、全然ダメです」などと、安氏が口にしていないことが掲載されていた。
 安氏や山下英愛氏(文教大学教授。安氏の旧知)が、大高や週刊文春に抗議するも謝罪はなく、大高は「チャンネル桜」で自己の主張を展開し、安氏との面会の映像の一部を無断で公開したという。(渡部睦美氏、安秉直氏)

〇 産経新聞2014年5月25日付けの記事「慰安婦問題の原点 『日本だけが悪』 周到な演出 河野談話導いた平成4年のアジア連帯会議」は、この「挺身隊問題アジア連帯会議」(1992年8月)に出席していた舘雅子なる人物の回想?を紹介した。
 活動家らしき女性が、元「慰安婦」の女性に発言や振付の練習をさせていたところを目撃してしまった、

 「英国兵の方がもっと悪いことをした」というインドに住むタイ人女性に対し、日本語の怒号が飛んだ、

 台湾代表が個人補償は求めない考えを表明すると、ヤジが飛び会場は騒然となった

・・・という。
 しかしこの会議について同年11月に舘雅子自身が書いた報告書さえも、そのような騒動?は記されていなかった。この会議の参加者の報告書を読み合せれば(舘雅子の報告書を含めて)「会議がいかに整然と進められていたがよくわかる」という。
 しかも紙面に掲載された写真(舘雅子提供)には、白いチマチョゴリを着た女性と共に「問われる戦後補償 韓国遺族会第一回口頭弁論」というパネルが見える。要するに全く別の写真を貼り付けたのだ。インパクトを考えた意図的な誤用だろうか。(なお舘雅子の報告書には、会議の本当の写真が添付されていた)

 なお舘の回想?は、同年7月3日号の週刊新潮にも掲載されたが、上記のようにタイ人女性や台湾人女性の発言を妨害したという人物の名前が、産経の記事と異なり、なんと福島瑞穂氏だったというのだ!舘と新潮のどっちのアレが分からんが、有名人の名前を挙げたほうがインパクト強いのは分かる。それがこいつらの商売なんだよ。

※ 余談だが、福島瑞穂ちゃんは櫻井よしこにも作り話のネタにされたことがあったな。ウヨはどいつもこいつも嘘ばかりデマばかり並べて扇動するしか能がないんだな。まるで旧日本軍みたい。

 この荒唐無稽な作り話について、「第12回アジア連帯会議実行委員会」と「日本軍『慰安婦』問題解決全国行動」が、産経に対し写真誤用の抗議と会議の模様についての事実確認を求めた(14年8月)。一か月以上経った9月19日、産経は紙面でこの記事の「写真と写真説明を取り消す」とコメントしたが、舘雅子の回想?については訂正を拒否した。「改めて舘雅子氏に確認したが、舘氏自身が経験として述べていることであって、事実として認識」しているという。こいつら日本軍の戦争犯罪の被害者・加害者は鼻から疑ってかかるクセに、発言者の立場が違えば態度も変えるんだな。朝日を批判する資格はねえな。
 産経は「少なくとも事実と異なることを流布させたのだから、せめて謝罪や訂正があってしかるべきだ」(産経8月8日付け)という、朝日に対する苦言を自ら実践しなければならない
(梁澄子氏)

※ 参考
◇ 朝日バッシング週刊文春に不祥事 慰安婦問題インタビューを捏造? - vanacoralの日記
◇ 館雅子とアジア連帯会議 - 詳細表示 - 河野談話を守る会のブログ - Yahoo!ブログ
 舘ってのは「転向」したんだね。
◇ 第12回アジア連帯会議実行委員会が産経新聞に訂正要求書を送付 アクティブ・ミュージアム 女たちの戦争と平和資料館(wam)
 この会議には「タイ在住のタイ人女性が1名参加していますが、インドに住むタイ人女性が参加した事実はありません」とのこと。
 日本とイギリスの侵略行為を比較させたいから、インド在住女性の証言、というストーリーを作ったんだろうね。


※ 文章が長すぎて飽きると思うので画像貼りつけ。昨年9月に訪れたソウルにて。ソウル日本大使館前の「平和の碑」(いわゆる慰安婦像)
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 朝日の話に戻るが、あの新聞社伝統?の脇の甘さというか粗忽さ(笑)も、ウヨを引き付ける一要素だろうが、奴らの頭の中じゃ今でも朝日は「サヨク」「リベラル」の総本山(笑)なのだろう。実際には読売などと同じ体制内マスゴミに過ぎないが。
 朝日のような似非リベラルも・・・というか朝日が記事にする程度の、日本の戦争犯罪の追及や政権批判も、体制の枠内に必要な要素ではないか?戦後日本のアメリカに従属した政治・経済の体制は、戦前の軍国主義を否定するところから始まったわけだし、リベラル志向の「国民」も懐柔しなければならない。
 ところが昔から自民党などの「保守」勢力の中には真っ向から歴史歪曲・レイシズムに染まった奴らが多く、そいつらのタガが外れたせいでおかしなことになっている。愚かな政治家やメディアが、かつての加害事実を歪曲・美化しても、国際的な批判を浴びアメリカの機嫌さえも損ねるだけだ。しかしそれを理解できない筆頭格が安倍晋三という大馬鹿野郎だな。
 ところで、かつて「中国の旅」などで日本の中国侵略の実態を明かした本多勝一先生も、当時ウヨクからの嫌がらせを受けていた。七三一部隊の実態に迫った「悪魔の飽食」を執筆した森村誠一氏も、写真誤用が明らかになった際には激しいバッシングと嫌がらせ・脅迫を受けていたという。(単に写真を誤用しただけだが、内容すら虚偽であるかのようにバッシングされたという。こういう現象も昔から変わっていないな)
 最近はネトウヨがデカい面をする情勢になってきたと感じていたが、昔から歴史歪曲・レイシズムは世に蔓延っていた。というか、こういうカルト性は戦前から全く変わっていないのだ。
 GHQの方針によって天皇制が維持されてしまったのも大きな原因だが、奴らがひたすら日本の加害事実を否定し戦争被害者を侮辱・憎悪するのは・・・明治以降のアジア蔑視が根底にあるのではないかと。「アジア人は未開な民族なので大日本帝国に従わなくてはならない」・・・そして戦後は、「アジア人の分際で先進国である日本を侮辱するとは何事か」・・・などという。
 日本にとって、工業化と欧米化こそが「先進国」たる条件だった。ひたすら欧米を模倣し近づくことこそ近代化だった。これを遡れば黒船来航以来の白人コンプレックスにあるのではないかと。どんなに逆立ちしてもアメリカには敵わないというコンプレックスが、アジア諸国への蔑視に向かわせるのだろう。実に醜悪なことだ。


 ともかく朝日は圧力に屈して謝罪をしてしまったが・・・まあこれは一企業の営業判断だから俺がとやかく言うことではないが(笑)、朝日は、何に対して、謝罪するべきだったのか?謝罪すべき対象は、何だったのか?
 「吉田証言を記事にしたせいでバカウヨの付け入りどころを作ってしまいました。日頃バカウヨ駆除に忙しい皆さんにお詫び致します」という「謝罪」なら、納得してもいいけどさ(笑)
 かつての記事に対して謝罪する気があるのなら、(朝日だけじゃないけど)数多くの冤罪事件被害者に対し警察・検察の言い分を丸呑みにして真犯人扱いしていたことこそ、謝罪するべきだろ。
 それとも、「日本のイメージが傷ついた」とでも言うのかね?安倍のように。だったらそれ以前はどんなイメージだったのか問い質してみたいな。
 そもそも、吉田証言が虚偽だったということは、どういうことなのか、冷静に考えたい。ここから、(安易だが)植民地朝鮮に於いては官憲が「慰安婦」徴集に直接手を下すことは無かった・・・という判断を導くのなら、それは即ち、日本帝国主義は「慰安婦」徴集を民間業者に任せていたということになる。自ら手を下すよりよほど悪質ではないか?
 実際に植民地朝鮮では民間業者による就業詐欺が行われ、多くの女性が騙されて戦地の慰安所へと送られた。何度も引用するが吉見教授は、日本軍は民間業者に慰安所を「アウトソーシング」していた、と喝破した。「慰安婦」徴集も、慰安所の経営も、国策として行うべきことを下請けに任せていたのだ。業者がやっていたことだから国には責任は無い、というのは、それこそ橋が崩落しても自治体が「橋を造ったのは土木会社だから、うちの責任ではない」と開き直るようなものだ。

 小熊英二氏(慶応大教授)もこのように指摘している。
◇ ガラパゴス的議論から脱却を 小熊英二さん(慶応大教授):朝日新聞デジタル
 この問題に関する日本の議論はおよそガラパゴス的だ。日本の保守派には、軍人や役人が直接に女性を連行したか否かだけを論点にし、それがなければ日本には責任がないと主張する人がいる。だが、そんな論点は、日本以外では問題にされていない。そうした主張が見苦しい言い訳にしか映らないことは、「原発事故は電力会社が起こしたことだから政府は責任がない」とか「(政治家の事件で)秘書がやったことだから私は知らない」といった弁明を考えればわかるだろう。
 ウヨ連中は強制連行の有無だけに拘るが、仮に植民地朝鮮に於いては官憲による暴力的な連行が無かったにしても、騙して連れ出すことも「拉致」であり「誘拐」ではないか。日本政府+ウヨの言い逃れは海外では全く理解されていないようだが当然のことだ。連れ出された際の状況は問題ではない。戦地に送られた女性が性暴力を受けたことが、許しがたい人権蹂躙であり戦争犯罪なのだ。
 この件についても、吉見教授が橋下への公開質問状(2013年6月4日)で、次のように指摘している。
 警察庁は、北朝鮮による拉致の定義について、「警察において、拉致容疑事案としているものは、そのいずれも、北朝鮮の国家的意思が推認される形で、本人の意思に反して北朝鮮に連れて行かれたものと考えている」としたうえで、飲食店主が誘拐(甘言)により連行した日本人被害者についても拉致と認定していますが、あなたはこのことを知っていますか。
 暴力的に連れ出そうとも、騙して連れ出そうとも、拘束・監禁するのなら、「拉致」であり「誘拐」だ。当たり前のことだ。安倍らがどんなに国際的な理解を得ようとしても、理解されるわけがない。全く通じない。こんな愚かなことを言うのは日本だけだからな。


※ 文章が長すぎて飽きると思うので再び画像貼りつけ。昨年9月に訪れたナヌムの家・歴史館にて。
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 それに植民地朝鮮以外で「強制連行」が行われていたことも明らかになっている。前述のようにジャワ島スマランにてオランダ人捕虜の女性たちを性奴隷にした事件が有名だが、他にも中国で女性を強制連行した事例が確認されている(これも公開質問状を参照のこと)。奴らはこの事実に目を向けることはない。
 そもそも、なぜ日本軍は慰安所を必要としたのか。(特に南京攻略戦前後の)占領地での将兵による強姦事件の多発によって、対策を迫られたためだ。
 仮に(ネトウヨの妄想の如くに)全ての「慰安婦」は本人の同意済みで、途中で帰国することも可能で、常識的な報酬を得ていたとしても・・・「慰安所」の存在が、将兵による性暴力が抑えきれなかったことを示す。強姦常習犯が逮捕されることを恐れて風俗通いを始めたようなものだ。強姦魔だったことに変わりはない。奴らは「日本の名誉を取り戻す」などと言うが、兵士の性欲を満たしていなければ続けられないほど愚かな戦争のどこに「名誉」があるのか?
 侵略戦争さえ行わなければ将兵による性暴力など発生しなかった。慰安所など必要なかった。「慰安所も必要だった」などとほざく連中は、日本の戦争は侵略戦争であったという認識が全く欠けている。
 もちろん「慰安婦」となった女性の中には、どのような「慰安」が求められているのか納得した上で赴いた女性もいただろう。しかし日本軍が慰安所設置を迫られた経緯から考えれば、日本軍の慰安婦制度とは本質的に、将兵個人による性暴力が、日本帝国主義による組織的な性暴力へと拡大されたものだと、見るべきだ。
 そもそも、「慰安婦」などという言葉はいいかげん止めるべきだ。「慰安所」とは集団強姦所であり、「慰安婦」とは性暴力被害者であり日本軍性奴隷(Sexual slavery)だ。
 なぜ日本軍は「慰安婦」という言葉を用いたのか。「売春婦」では体面が悪いと感じ、その本質を隠す言葉を選んだのではないか。故にこの、当時から使われていた言葉を使い続けることは、日本軍による加害事実を隠蔽・美化することになるだろう。


 しかし日本軍による性暴力を隠蔽したがる安倍らクソウヨ政治家は恥知らずにも「河野談話」の撤回を画策しているようだが、このような元オランダ大使の東郷和彦氏は次のように警告している。週刊金曜日「特別編集『従軍慰安婦』問題」より。
 私も、ホロコーストと慰安所が同列かと言えばそうは思わないし、今独り歩きしている感のある「20万人のレイプセンター」という主張にも反対です。しかし、そういうふうに世界の世論を変えるには、最新の注意をもって対応しないといけない。不用意な主張をすれば、世界の世論の中に、本当に、人道に対する罪で日本を訴えるべきではないかという考えすら誘発しかねないと思います。
 今こそ、まったく別の闘い方で日本の名誉を守らねばならないと思います。そうでないと、日本は世界で「歴史問題」ではどうにもならない国、相手にもしたくない国へと自らを追い込みかねません。
 要するに河野談話を撤回したら世界中から相手にされなくなるというのだ。当然のことだろう。そして東郷和彦氏は「別の闘い方」についてこのように述べる。
 「河野談話」の堅持から始めることです。この談話で最も評価すべきなのは、加害者として、道徳的立場からの反省を認めている点です。それを外したら、「慰安婦」問題について日本国家として責任がないということになる。
 最後の一行は、河野談話の根幹部分を捨てれば、この戦争犯罪についての責任の否定を宣言することになる、ということだろう。加害事実を無視し開き直るテロ国家認定されるだろうな。
 もし日本政府が、国際的な「日本のイメージ」に拘るのなら、最低限でも「河野談話」の踏襲を明確にするべきだろう。しかし政府や右派メディアが歴史歪曲に手を染めれば染めるほど、「日本のイメージ」は悪化することに、奴らは気付かない。
 いっそこのまま、日本の国際的立場が奈落の底に落ちてしまえばいい、とも思ったが・・・そんなものと同時に日本軍による性暴力被害者の名誉が損なわれてはならない。ヘイトクライム国家・日本の「イメージ」など泥に沈めばいいが、戦争被害者の名誉は回復しなければならない。そのためには、まずは我々が出来る範囲で地道に取り組むべきだ。小さなことであっても。


 今年埼玉県新座市で起こった事件だが、市民団体「にいざジェンダー平等ネットワーク」が小中学校の春休みの間に「ふるさと新座館」の1階ロビーにて「中学生のための『慰安婦』展」と題して写真やパネルなどを展示する企画を新座市教育委員会に申請した。しかし教育委員会はこれを不許可とした。この施設内の会議室で開催するならば許可できるが、ロビーに展示することは「啓発的な事業」に該当するので、市の使用要領に従い不許可にしたというのだ。下らないこじ付けだ。
 ところがこの「使用要領」とは異なる判断も不許可決定に影響していたようだ。教育委員会の小山忠彦教育総務部長は次のように語った。
 「市で使用している中学校向け教科書で触れていない慰安婦問題について展示するのはいかがかと判断した」

 また金子広志教育長は次のように語った。
 「『慰安婦』は世論を二分している。中学生に向けたアピールについて市教委として判断した」

 「ロビーは、人通りが多くふさわしくない。会議室で行ってほしいと伝えてある。中学生や子どもがこのような展示を見て、帰宅して親に聞かれても困る。『慰安婦』は教科書にも指導要領にも載っていない」

 実際のところ「慰安婦展」だから不許可にしたのだろう。
◇ 新座市教委、「慰安婦」展開催を認めず 市民団体が抗議文
◇ 埼玉・新座市の「慰安婦」展拒否-党市議ら撤回求める 教育長と面会

 教科書が触れていない歴史・社会問題こそ、教育する価値があるではないか。「世論を二分」というが、その一方は安倍ネトウヨ政権とそのシンパによる歴史歪曲攻撃だ。これに毅然とした態度を示すことこそ教育委員会の責務ではないか。「親に聞かれても困る」というのは、生徒の親の中にネトウヨがいて、クレームを付けられたら困るということか。あるいはそれが不許可処分の柱かもしれない。巷のネトウヨや右派メディア、そして県や国からの圧力を恐れたのかもしれない。

 この件について俺も新座市教育委員会に電話で問い合わせてみた。電話に出た教育委員会の職員は、
 「展示場所は1階ロビーだから、子どもからお年寄りまで不特定多数の人々が行き来する場所であり、そういった写真などの展示は公民館を借りて実施してほしい。文化・芸術活動なら展示している」
 と言うが、市教委の小山忠彦教育総務部長の「市で使用している中学校向け教科書で触れていない慰安婦問題について展示するのはいかがかと判断した」という見解も、「総合的な判断に入っている」というのだ。
 呆れ果てて、一体慰安婦問題をどう考えているのか?と問い質してみると、
 「報道されているように賛否両論があるし、朝日の誤報問題もあるし、事実が分からない」
 などとほざきやがった。こいつ「朝日の誤報」とはどういうものか理解していないぞ。そもそも教育委員会が歴史事実について「分からない」ってどういうことか?
 こりゃ、埼玉県新座市教育委員会が歴史歪曲に与するようなもんだな、って言ったら、
 「いや私個人の見解です。あなたが言えって言ったんでしょ?」と逆切れしやがった。だったら最初に「個人的な見解ですが」って言えよ。個人的な見解だったとしても、こういう人間が教育委員会に勤めているのは情けなかった。「アンタはどんな仕事してんの?」って訊けばよかったw
 それでは教育委員会としてはどんな見解なのか訊ねると、「今は答えられる人はいません」。小山って奴も不在だとさ。ふざけやがってw

 その後、俺はすっかり忘れてしまって尻つぼみになっちまったが・・・当事者である「にいざジェンダー平等ネットワーク」からは、教育委員会に対し抗議声明が行われたはずだ。
 相手がマスゴミであろうと行政だろうと、おかしいと思ったら出来る範囲で抗議すべきだ。ちょっとはネトウヨのマメさを見習って(笑)、おかしいと思えば抗議しなくちゃね。



※ 遅くなったが追記。2015年6月30日・東京新聞より。「にいざジェンダー平等ネットワーク」が、「ふるさと新座館」1階ロビーにて「中学生のための『慰安婦』展」開催を申請したが、新座市教育委員会が拒否した件について続報。
 教育委員会はこの企画を、「にいざほっとぷらざ」の1階から4階の「生涯学習センター」で行うことを許可した。
◇ 東京新聞「慰安婦」展 8月に開催 新座市教委 一度は拒否も社会(TOKYO Web)
 8月19日〜23日に、「戦後70年フォーラム 女性の人権と平和を求めて」というタイトルで、「女性たちの戦争と平和資料館」(wam)からパネルを借りて展示し、また日本軍性奴隷問題に取り組む弁護士などの講演も行うという。
 ところでこの企画は、建物のどこの部分で行われるのだろうか(3階と4階には会議室、3階にはギャラリーがあるらしい)。上で引用したように、教育委員会は3月の段階で市民団体側に「ロビーは、人通りが多くふさわしくない。会議室で行ってほしいと伝えてある」のだ。
 もしこの「生涯学習センター」の3階や4階の会議室で行うことが許可されたのなら、問題の根本的な解決にはならない気がするが・・・。
posted by 鷹嘴 at 00:30 | TrackBack(0) | 歴史認識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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