【追記のお知らせ 2017年4月9日】
 記事「【5月7日】雁屋哲さんの講演+井戸川克隆さんと対談」に、「美味しんぼ『鼻血問題』に答える」から福島現地での鼻血の症状についての報告例を引用しました

2015年07月14日

備忘録:たちかぜ自衛官いじめ自殺事件の警告

 特定秘密保護法によって最初に被害を受けるのは、これに束縛される立場である公務員ではないか、と思う。組織の不正を暴こうとすればこの悪法によって投獄される。自衛隊の陰惨ないじめは隠蔽され、告発さえ許されなくなり、被害者とその家族は沈黙を強いられる。海上自衛隊護衛艦「たちかぜ」で起きた事件こそ、これを予見させるものだ。

 2004年10月、海上自衛隊横須賀基地の護衛艦「たちかぜ」の乗組員だった一等海士(当時21歳)が、先輩からのいじめを苦にして電車に飛び込み自殺した。
 彼は先輩(当時は二等海曹)から、殴る蹴る・至近距離からエアガンで撃たれるなどの暴力を頻繁に受けていた。アダルトビデオのCDを高額で売りつけられたこともあった。発見された遺書は海曹を名指しで「紙くず以下だ」と罵っていた。

◇ 自衛隊のいじめ (たちかぜ自衛官じめ自殺事件)不条理日記 2006年04月06日
◇ たちかぜ自衛官いじめ自殺事件 - Wikipedia
◇ 護衛艦たちかぜ暴行恐喝事件 - Wikipedia
◇ 海自たちかぜ事件 本県出身隊員自殺から10年 「不正許さぬ空気を」 母親が語る|下野新聞「SOON」

 加害者である海曹は、別の後輩への暴行や恐喝で逮捕され懲戒免職処分になり、05年に執行猶予付きの有罪判決を受けた。しかし彼の自殺についての海自の調査結果は「借金を苦にした自殺」という、事実を捻じ曲げたものだった。これに憤った母親は、海自が実態調査のためのアンケートを行っていたことを知る。05年、このアンケートの情報公開を国に請求したが、「破棄した」という回答だった。
 06年4月母親は、国と加害者に1億3千万円の損害賠償を求めて横浜地裁に提訴した。11年1月、いじめと自殺の因果関係を認めた上で精神的苦痛の慰謝料として国と加害者に440万円の支払いを命じる判決が下ったが、「自殺まで予測できなかった」として死亡への賠償は認めなかった。母親は控訴し、アンケートなどの証拠が意図的に隠蔽されたことを重視し、一審より2千万円多い1億5千万円を請求した。

 ところが一審で国側の代理人を担当した三等海佐は、アンケートが実際には破棄されていないことを知っていた。公益通報制度を利用し資料が隠されていることを防衛省に通報したが海自は態度を変えなかった。
 そして控訴審開始後に彼は決意し、母親側に海自が事故調査の資料を隠していることを告げた。彼は母親に「このままでは、自衛隊という組織が駄目になる。あくまでも、私たちのためにやるんです」と語った。母親も「葛藤があったと思う。強い正義感、国民のために仕事をする公務員の責任感に心を打たれた」と語った。
そして彼女は、特定秘密保護法によって「どんな不正も秘密に指定されれば、告発しようと思う人はいなくなる」「国が秘密があいまいな点につけこみ、都合の悪いことは何でも秘密するだろう」と語った(13年12月5日・東京新聞)。
 たしかに、自衛隊が特定秘密保護法を悪用すれば、組織のあらゆる情報が特定秘密に指定され、不正・不祥事を暴く手段は失せる。
 (特定秘密の保護に関する法律に於ける、特定秘密として指定可能な情報を示す「別表」には「防衛に関する事項」があり、「自衛隊の運用」「防衛の用に供する物の種類又は数量」「防衛の用に供する施設の設計、性能又は内部の用途」など幅広い項目がある。内部の不正や事件の証拠となる文書にこれらに触れる部分があれば公開は拒否されるだろう。もしくは黒塗りだらけだろう)
 自衛官が任務中に事故で死亡しても、パワハラ・暴力によって死に追い込まれても、真相は永遠に闇に沈む。


 三等海佐は提訴の数日後、情報公開担当の二佐に「アンケートは破棄したことになっている」と告げられた(妙な言い回しだな)。ところが彼はその後、横須賀地方総監部にある関連資料をコピーする際、「無い」はずのアンケートを発見してしまった。「たちかぜ」の全乗組員190人に、暴行や恐喝の有無を尋ねたものだった。
 三等海佐は07年に訴訟担当から外れたが、「心に引っかかっていたため」、アンケートの存在を証明する文章のコピーを自宅に持ち帰っていた。
 そして08年に防衛省の公益通報窓口に内部告発したが、翌年の調査結果は「アンケートを隠した事実はない」というものだった。
 あきらめきれない彼は、訴訟担当の首席法務官を訪問し、アンケートを公表するように進言したが「今さら出すきっかけがない」と拒否された。一審判決の当日だったという。
 さらに、自ら情報公開請求を行ってもアンケートの存在を否定された。再度法務官に進言しても「探してみる」と言われただけで回答は無かった。なお三佐が不開示に異議を申し立てたところ、内閣府の情報公開・個人情報保護審査会も「組織全体として不都合な真実を隠蔽しようとする傾向があった。情報公開制度の運用に大きな疑念を生じることになる」という答申書をまとめている。
 そして12年4月彼は決意し、東京高裁に「国はアンケートを破棄したというウソの説明をした」という陳述書を提出した。
 同年6月にやっと海上幕僚長が記者会見でアンケートの存在を認め謝罪した。海自は調査委員会を設置したが、9月に出た報告書は「担当者の勘違いだった」というものだった。
 なお三佐とは別の男性事務官は、12年にアンケートの原本を偶然発見し上司に相談すると「捨てろ。アンケートはないことになっている書類だ」と命令され、メールで「誰にも見られないよう、秘密裏に実施してください」と指示された。この事務官も高裁に陳述書を提出している。


 ところが、海自はあろうことかこの三佐を懲戒処分にしようとした。三佐が告発のために文書のコピーを持ち出したことなどを口実に事情聴取を始め、規律違反の疑いで審理することを三佐に通知した。三佐は「海自という組織はここまで腐っていたのか、と思い知らされた。違法な行為を何とか是正したかっただけなのに」・・・と嘆いたという。そもそも、アンケート調査結果を隠蔽していること自体が組織として恥ずべき行為ではないか。こともあろうにこの不正を糺そうとした者を処罰しようとするとは、たしかに果てしなく腐りきった組織だと言わざるを得ない。
 三佐は公益通報を行った後、「海自ではやや閑職とされる部署」に異動になったが、そこの上司から「君には組織の悪い点を指摘するような人物、という悪いうわさがある」と告げられた。「組織の悪い点を指摘するような人物」に圧力をかける自衛隊こそ、「悪い組織」ではないか?
 陳述書を提出すると別の上司から「そんなことをするなら海自を辞めるべきだ」と叱責された。組織ぐるみの隠蔽体質というか事なかれ主義がしみ込んでいるんだな。まあどこの役所も企業も似たようなもんだが。
 彼は「組織が違法行為を認めずにきたことで、私だけでなく自殺した隊員の遺族、隠蔽を指示された隊員ら、大勢の人生が歪められてしまった。内部通報者を守らなければ、組織はどんどん劣化していくだけだ」と語る。(13年12月7日・東京新聞 こちら特報部)


 二審では、アンケートや同僚への聞き取りメモなど200点以上の新証拠が提出された。これによって、一等海士が自殺するのではないかと心配されていたこと、彼の顔に空気銃で撃たれたようなアザが出来ていたこと、加害者への怒りを口にしていたことが明らかになった。彼が「自殺をほのめかしていた」という同僚への聞き取りメモも存在した。(14年4月23日東京新聞夕刊)
 13年12月11日、三佐が証人として法廷に立ち、「国民にうそをついてはいけないという信念で告発した」と語った。自分を懲戒処分にする手続きが行われていることについては「下っ端の私だけを処分しようとしている」と批判した。(13年12月12日・東京新聞夕刊)
 そして14年4月23日東京高裁は、一等海士の自殺はいじめが原因だと認め、死亡による逸失利益を約4380万円、精神的苦痛に対する慰謝料2000万円、調査結果の隠蔽に対する慰謝料20万円などを加算し、国と加害者に約7300万円の賠償を命ずる判決を下した。
 裁判長は「自殺は予測できた。上司が調査、適切な指導をしていれば、自殺は回避された可能性がある」と指摘。証拠の隠蔽については「遺族側がアンケートやメモに基づき主張立証する機会が失われた」と批判した。(14年4月23日東京新聞夕刊)
 なお、この判決に対し国も原告も上告せず判決が確定。三佐への懲戒処分は行われなかった。小野寺五典防衛大臣(当時)は判決翌日の記者会見で、この問題について「基本的に公益通報にあたると思っている。通報者に不利な取り扱いをすることはあってはならない」と述べたという。
◇ 海上自衛隊いじめ自殺訴訟は国側に7350万円の賠償命令!内部告発者の懲戒処分を取り消す、小野寺防衛相「基本的に公益通報」


 この訴訟の弁護団長を務めた岡田尚弁護士は「自衛隊は情報統制しており、マイナスからのスタートだった。三佐の告発がなければ、どうだったか。新証拠が闇に葬られたままで判断されたはずだ」と語る。
 北海道陸自真駒内駐屯地で格闘訓練中に死亡した隊員の損害賠償訴訟(参考)を担当した佐藤博文弁護士は、「遺族が情報公開を求めても、事故の態様など重要な部分は黒塗りした資料しか開示しない。過失や問題点が分からず、裁判がなかなか起こせなかった」と明かす。
 小野寺防衛相(当時)が指摘したように「公益通報者保護法は告発者への不利益処分を禁じている」。「公益通報に詳しい」阪口徳雄弁護士は、「今回の訴訟では、内部告発の威力で真実が解明できた。告発者は徹底して保護すべきで、懲戒したら大問題になる」と海自を批判。
 しかし特定秘密保護法によって、「仮に自衛艦の欠陥で死亡事故が起きた場合」でも、「原因は機密情報に指定され、遺族にも公表されない。公益通報者保護法は吹き飛ばされ、内部告発したら刑事罰に問われるだろう」と警告する。
 たしかにそうだろうな。アメリカから買ったオスプレイが墜落しても原因は操縦ミスのせいにされ、遺族が真相究明を求めても門前払い、関係者がオスプレイの欠陥を告発しようとしただけで投獄だ。
 また岡田弁護団長は、特定秘密保護法の委縮効果で機密でない情報の告発も出にくくなる事態を危惧する。「告発しようと思っても自己規制してしまう。このままではブラックボックスが広がる」(14年4月24日東京新聞)
 それが、この悪法を作った奴らにとって主要な目的の一つだろう。


 (ソースが不明だが)加害者である海曹はヤクザのような風貌で、数千万円の借金を抱えて自己破産しても懲りずに、キャバクラ通いのため「街金」に手を出し毎月10数万円の返済をしていた。どうしようもないクズだが、この男の異常性だけが事件の原因だとは思わない。軍隊という組織の暴力性、閉鎖性がこのような犯罪を生み、それが隠蔽されるのだ。
 軍隊とは、兵士たちを命令一つで殺人が行われる装置に育て上げるため、思考力を奪い人間性をはぎ取る。こうした環境が兵士たちの精神を蝕み、犯罪に向かわせ、時には自ら命を絶つ。軍隊という組織がある限り、兵士にとっての「平時」など存在しない。軍隊がある限り平和は無いのだ。
 それにしても組織内の不祥事・不正(隊員による暴力・恐喝行為とその放置、及びそれらに関する資料の隠蔽)を告発した者をこともあろうに懲戒処分にしようとは、自衛隊の隠蔽体質には恐れ入る。というか軍隊というものは、内部事情・不正を隠し通さなければ組織が成り立たないのではないか?かつて旧日本軍が人民を欺いたように。まあ侵略戦争を始めるとき秘密を貫くのは当然だな。


 ところで現在安倍政権が強行採決を企んでいる戦争法案について、「集団的自衛権」の行使の基準について大きな疑問がある。
 6月29日の衆院特別委員会などで民主党が、(朝鮮半島有事の際に)『日本への武力攻撃が切迫している中、自衛隊と一緒に活動する米艦が攻撃されれば、(集団的自衛権ではなく)個別的自衛権で反撃できる』と指摘した。これに対して中谷元・防衛相は、個別的自衛権で対処できる場合があることを認め、「個別的・集団的自衛権のどちらに基づいて反撃するかは『非常にあいまい』」と答えた。
 7月3日の特別委で安倍は『米艦への攻撃をわが国への武力攻撃の着手と考えるのは難しい』と言いつつも、「国民の生命や権利が根底から覆される明白な危険が『ない』と判断できなければ、行使に踏み切る可能性にも言及した」。
 「ない」と判断できなければ攻撃開始ですか。まるで旧日本軍やアメリカ軍のようだな。ちょっとした事態でも勝手に解釈して戦争始めるんだろうな。「国民の生命や権利が・・・」の部分は単なるこじ付けだ。だいたい、他の国が攻撃されると「存立が脅かされる」事態が本当に考えられるとしたら・・・そんな国は亡びちゃえばいいのさ。
 そもそも集団的自衛権というのは・・・戦争はしたいけど、昔と違って近隣諸国を侵略できるようなご時世じゃねえから、せめてアメリカの侵略戦争に参加させてほしい。参加するまでいかなくてもアメリカの手下になってイキがりたい・・・ってことだ。安倍のような馬鹿の願望だ。そんなにイキがりたきゃ、まずアメリカに三下り半を突きつけてみろってんだ。
 それはともかく7月1日の特別委で中谷は、
 「集団的自衛権を行使するかどうかの判断の前提となる情報について『特定秘密が含まれる場合もある』
 
『情報源や具体的な数値は明記しない』
と述べた」。
 (15年7月5日・東京新聞)

・・・ということだ。アメリカの侵略戦争に参加する判断など決して世間に明かさない。何が何だか分からんまま戦争開始だ。その判断を暴いた者、探ろうとしたものは懲役刑だ。特定秘密保護法とは集団的自衛権と一体だ。戦争のための物だ。ということがはっきりしたな。
 戦争法案を絶対に阻止し、自民党政権を打倒し、そして特定秘密保護法を廃止に追い込むために闘わなくてはならない。最近俺はすっかり出不精になっちまったが、もうちっとマメに国会周辺に足を運ばなきゃ、って思ってる。











posted by 鷹嘴 at 01:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 日本軍(1950〜) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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