東電福島原発事故発生から5年が経ったが事故収束の日は遥かに遠い。福島の子どもたちを対象とした甲状腺検査では先行検査で115人、本格検査で51人の子どもたちが癌または癌の疑いと診断され、116人が摘出手術を受けている。この史上最悪の原発事故の被害は深く静かに進行している。
しかし日本政府と電力会社は原発再稼働に向けた動きを加速させている。2016年1月29日、関西電力は人民の反対の声を黙殺し高浜原発3号機を再稼働させた。 (なお福井地裁では2015年4月14日に高浜原発3、4号機運転差し止め仮処分決定が出ていたが、2015年12月24日、福井地裁は関電の異議を認めこの決定を取り消した。同時に大飯原発3、4号機運転差し止め仮処分申し立ても却下した)
2月24日、東京電力は原発事故発生当時、原子炉の炉心溶融(メルトダウン)を判定する社内基準に気付かず、5年経ってやっと気付いたと発表した。この社内基準に従えば事故の3日後には1、3号機についてメルトダウンの判定ができていたという。
◇ 炉心溶融の判定基準発見 東電、3日後に公表可能だった (魚拓)
そういえば東電はなかなかメルトダウンの事態を認めなかったな。なんて往生際が悪い奴だ、と呆れていたが。こんな企業が原発を扱っているのだから世も末だ。(しかも東電は1号機の炉心が露出する予測を震災発生の当日17時15分に行っていたが、法律で義務付けられている政府や県への報告を怠っていたという)
同じ2月24日、原子力規制委員会は運転開始から40年を超える高浜1号機・2号機について、ケーブルの保護などの追加工事を行えば新しい規制基準に適合し得るという審査書案をまとめた。原子炉本体や建屋の安全性の審査はまだ終わっていない。40年超の老朽原発でも電力会社と政治の都合で運転が続けられるのだろうか。
同原発の4号機は2月20日に水漏れ事故を起こしていたが、 2月26日、(4年7か月ぶりに)再稼働し、翌日には原子炉が臨界に達した。3号機と同様にプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)を用いた「プルサーマル発電」である。この時点で川内原発1号機・2号機と合わせて全国で4基の原発が稼働することになった。
ところが2月29日、この高浜4号機の主変圧器に異常が発生し緊急停止した。このため関西電力は全ての制御棒を挿入して冷温停止状態に移行させた。これは送電線の主変圧器のトラブルだが、これとは別の電気設備の安全性も疑いたくなる。原発での電気系の故障がメルトダウンと大量の放射能拡散につながりかねない危険性は周知のことだ。
しかしこの後、3号機も停止を余儀なくされる。3月9日、滋賀県大津地裁(山本善彦裁判長)は、滋賀県の住民による高浜原発3、4号機運転差し止め申し立てを認める決定を下した。関西電力も従わざるを得ず直ちに3号機の停止行程に入り、10日には完全に停止させた。至極当然の判決だ。日本政府+原発資本と闘う我々人民にとって追い風となるだろう(なお3月14日、福井県や愛知県の住民らが、高浜原発1、2号機の運転差し止めを求める訴訟を名古屋地裁に起こした)。こうした情勢の中で今年の3.11を迎えた・・・。
■ 当日は夜勤明け、仕事が手間取ってなかなか退社できなかったので、贅沢なことに上野から東北新幹線に乗ってしまった。間に合わないからね。昨年は大宮まで京浜東北線で行き新幹線に乗り換えたのだが。南浦和までは定期の範囲だし。昨年と比べてちょっと差額が大きいよ。上野駅で買った駅弁を新幹線の中で食ったけど、コンビニ弁当より3倍くらい高くて3倍くらい不味かった。
そう言えば今年は”Peace On Earth”のこと忘れてたな。福島に行ったから無理だったけど。今年はNAMBA69出なかったから別にいいけど。
これは2014年3月。このとき俺はクラウドサーフィングを試みる若者たちの下敷きになってましたw
郡山駅に到着し、路線バスで開成山公園に向かった(適当に乗ったら偶然にも正解だったw)。今年は2014年の体育館でも、2015年の立派なホールでもなく、野外音楽堂だ。予約が取れなかったらしい。取れなかったのか、取らせてくれなかったのか、事情は知らんが。
先に到着していたうちのユニオンの仲間と合流し、ほどなく集会が始まった。福島県の闘う労働者、ふくしま共同診療所院長の布施幸彦さん、診療所建設委員会の佐藤幸子さん、実行委員会の椎名千恵子さん、全国各地で再稼働阻止のために闘う労働者、動労水戸委員長の石井真一さん、三里塚空港反対同盟と全国農民会議、全学連が登壇し、力強く反原発を訴えた。
全学連。この時点で京大反戦バリケードストライキで弾圧された学生は奪還されていなかった
◇ 原発再稼働と戦争の安倍倒せ 3・11郡山 帰還と被曝の強制許さない 動労総連合など労組先頭に1050人 - 『前進』
この郡山集会に2年ぶりに希望の牧場代表の吉沢正巳さんが参加。この日も力強く訴えた。
3.11反原発福島行動開成山野外音楽堂。希望の牧場の吉沢さん、残りの人生かけて原発止めるためにかける!と。実力で止めよう!と。心にずんと響く。 pic.twitter.com/nd5Etm6yIL
— 東京北部ユニオン (@swu_kawa) 2016年3月11日
14時46分には全員で黙祷を捧げ、15時からデモに出発した。
整備中の公園の片隅にはフレコンバックの山
線量はなかなか下がるもんじゃないよね
警察の規制も比較的穏やかで、妨害行為も特になかったようだ。郡山駅前の交差点に日の丸を掲げたおっさんが無言で立っていたが
郡山駅に到着!
動労福島委員長の橋本光一さん、大活躍でした!
希望の牧場の皆さん、お疲れ様でした。今年も充実した集会だった。全原発廃炉させるぞ!団結してガンバロー!!
■ 俺にとって、12年、14年、15年に続いて4度目の3.11郡山デモだった。この時期は5年前を思い出すよな。東北各県を襲った想像を絶する津波、福島第一原発の全電源喪失、水素爆発。ガソリンスタンドに並ぶ車の長い列、食品が消えたスーパーマーケット、連日行われた計画停電・・・。我々のこの社会は実に脆い砂上の楼閣であり、これを維持するため地方に重い負担を強い、環境を破壊し、多くの労働者を犠牲にしてきたことを思い知らされた。しかし日帝と資本はこれに学ばず、未だに原発にまつわる神話を捨てない。
3月17日、関西経済連合会副会長・阪急電鉄会長・角和夫が、「なぜ一地裁の裁判官によって、(原発を活用する)国のエネルギー政策に支障をきたすことが起こるのか」、「こういうことができないよう、速やかな法改正をのぞむ」と発言した。
◇ 怒る関経連「なぜ一地裁の裁判官が」 高浜原発差し止め (魚拓)
東京新聞がこの男に取材したところ、
「エネルギー政策は国の根幹だ。日本は三権分立だが、(仮処分ではなく)本訴で最高裁まで争い、『原発を停止すべきだ』『原子力を止めるべきだ』となれば納得がいく。しかし、一人の裁判官の判断で国のエネルギーセキュリティーまで侵されてしまうリスクがある。大半の人が望んでいないし、政府も望んでいない」などと答えたという。仮に最高裁で同じ決定が出ても、こいつはそれすら攻撃するんだろうな。
この男の暴言について、東京電力の記者会見で取材を続けるジャーナリストの木野龍逸氏は「最高裁の判断なら従うということだが、仮処分も法律に基づいた権利。三権分立や三審制を無視した発言だ。すごいとしか言いようがない」と憤る。(2016年3月24日・東京新聞【こちら特報部】より)
まあ「財界人」の社会的常識の無さから思えばこの暴言も不思議はない、と言ったらそれまでだけどな。司法に対する圧力のつもりだろうか。
また3月18日に関西電力社長の八木誠は、高浜原発3、4号機運転差し止め仮処分を上級審で覆し勝訴確定した場合、「一般的に(原発停止に伴う)損害賠償請求は、逆転勝訴すれば考えられる」と述べた。
◇ 勝訴なら賠償請求も 高浜原発運転停止で関電社長 (魚拓)
そういえば川内原発差し止め仮処分決定申し立てでも、九州電力が勝訴したら原告に損害賠償請求を行う考えを示し、半数近くの原告が申し立てを取り下げたことがあった。
◇ 巨額賠償恐れ仮処分申請から離脱 川内原発再稼働差し止め (魚拓)
電力会社・財界の、人民に向けた卑劣な恫喝だ。なお鹿児島地裁は2015年4月22日、この申し立てを却下した(前田郁勝裁判長)。
そして2016年4月6日、福岡高裁宮崎支部は、この再稼働差し止め仮処分申し立ての即時抗告を棄却した(西川知一郎裁判長)。
◇ 川内原発稼働等差止仮処分即時抗告審福岡高裁宮崎支部決定要旨を掲載します – NPJ
要旨なのに長いからもっと簡単に言うと・・・「巨大噴火などせいぜい1万年に1回だ。滅多に起こらないことには安全性を確保する必要はない、という社会通念がある。だから川内原発が稼働しても問題はない!」・・・ということだ。
震災前ならば東電だって同じことを言っただろうね。防波堤を超える津波なんか来るわけない、発電機もバッテリーもあるから全電源損失なんか起こるわけがない、と。
そりゃカルデラごとぶっ飛ぶような大噴火(参考)なんて滅多に起こらないだろうが、記録に残っている規模の地震や噴火であっても、安全面への致命的な影響を危惧しなくてはならない、はずだ。
この決定について、高浜原発仮処分申請の弁護団長である井戸謙一弁護士は、
「安全性の判断で社会通念を基準にすることはあってもいいが、決定は一般建築で火山災害発生の確率が考慮されていない点を『社会通念』の根拠にするなど、方法論があまりにも間違っている」と指摘する。(2016年4月7日・東京新聞)
普通の住宅やビルで火山災害を考慮することはないだろうが、この「社会通念」を原発に持ち込むことはあまりにも愚かだ。
そりゃ大噴火や大地震など滅多に起こるものではないが・・・と思っていたら、4月14日以降、熊本を複数回の大地震が襲った。49人が犠牲になり、避難生活の中で亡くなった「災害関連死」と考えられる犠牲者も19人に上るという。多くの建物の倒壊、恐るべき規模の山崩れ・・・またしても地震の恐ろしさを見せつけられた。
この地震は中央構造線の延長上で起きたと指摘されているが(参考)、この地球の裂け目のほぼ真上には愛媛県の伊方原発があり、川内原発も遠くない。被災者の皆さんには申し訳ないが、熊本で大地震発生と聞き、真っ先に川内原発の状況が気になった人々も多いのではないか。この日本列島、いつどこに大地震が襲ってくるか分からない。プレートとプレートが衝突している真上にわざわざ住んでいるんだから、それなりの過ごし方があるはずだ。原発など冗談にもならない。
それにしても何度も強い地震が発生し震源地も拡大しているのに、川内原発を止めようとしない九州電力と自民党政権のなんと愚かなことか。原発は安全だ、日本には原発が必要だ・・・という迷信・イデオロギーの前では、どんな事態も黙殺される。
我々は依然として3.11以前の世界に生きているのだろうか。これから真の破局を迎えるのだろうか。2012年、1万6千人が結集した郡山市・開成山公園球場で、福島の農業の男性が、
「生産者と消費者を分断するのではなく、都市も農村も力を合わせて、大資本中心の日本のあり方を変えましょう。『頑張ろう日本』ではなく『変えよう日本』。今日を転換点にしよう」と訴えたことを忘れてはならない。あれから4年、日本は変わっていないどころか逆方向に進んでいるように見える。今こそこの流れを食い止め、全ての原発を廃止に追い込むため、国家と資本の支配を終わらせるため、闘わなくてはならない。