◆勤労挺身隊韓国人訴訟、2審も賠償請求棄却・名古屋高裁
◆元朝鮮挺身隊員の控訴棄却/日韓協定で請求権消滅
(保存)
支援サイトで判決全文と要旨が紹介されている。
◆名古屋三菱・朝鮮女子勤労挺身隊訴訟を支援する会
しかし、「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」(1965年6月22日 署名)によって、大韓民国の国民が日本政府や日本企業に対し補償を求めることは出来ない、と判断することは誤りである。
この協定の第二条は、
一 両締結国は、両締結国及びその国民(法人を含む。)の財産、権利及び利益並びに両締結国及びその国民の間の請求権に関する問題が、千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第四条(a)に規定されるものを含めて、完全かつ最終的に解決されたことを確認する。となっている。たしかに全ての補償問題が「解決」されたと述べているようであるが、日韓の両国民に対し請求権を失わせるものではない。
二 この条の規定は,次のもの(この協定の署名の日までにそれぞれの締約国が執った特別の措置の対象となったものを除く。)に影響を及ぼすものではない。
(a)一方の締約国の国民で千九百四十七年八月十五日からこの協定の署名の日までの間に他方の締約国に居住したことがあるものの財産、権利及び利益。
(b)一方の締約国及びその国民の財産、権利及び利益であって千九百四十五年八月十五日以後における通常の接触の過程において取得され又は他方の締約国の管轄の下にはいったもの。
三 二の規定に従うことを条件として,一方の締約国及びその国民の財産、権利及び利益であってこの協定の署名の日に他方の締約国の管轄の下にあるものに対する措置並びに一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対するすべての請求権であって同日以前に生じた事由に基づくものに関しては、いかなる主張もすることができないものとする。
たとえば、「日ソ共同宣言」は日韓の協定と同様に、両国間の「すべての請求権を、相互に、放棄する」と記さているが、日本国民からソ連政府への「請求権」についての国会答弁は次のようになっている。国会会議録検索システムより。
120 - 参 - 内閣委員会 - 3号このように、日本国民がソ連政府に対し財産の返還なり補償なりを要求することまで、放棄したわけではないと答えているのである。
平成03年03月26日
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○説明員(高島有終君) 私ども繰り返し申し上げております点は、日ソ共同宣言第六項におきます請求権の放棄という点は、国家自身の請求権及び国家が自動的に持っておると考えられております外交保護権の放棄ということでございます。したがいまして、御指摘のように我が国国民個人からソ連またはその国民に対する請求権までも放棄したものではないというふうに考えております。
個人の請求権の問題については、「従軍慰安婦と戦後補償」(高木健一/著 三一書房)のP-148〜153に詳しい説明があるので引用する。
「国家間でその清算が問題となる権利」には、以下の3種類がある。
1.国が持っている権利。例えば、国の在外財産、あるいは国の請求権この中で国家間の条約によって規定あるいは清算が可能なものは1と2である。日韓条約締結後に外務省の職員も参加して作成された解説書「日韓条約と国内法の解決」(「時の法令別冊」)の中には次のように記されている。
2.国が個人に関して有する外交保護権。例えば、これは個人の請求権に関して国が外交権を発動する権利である
3.国とは関係ない個人の見地。例えば、個人の財産権ないし補償請求権である
「国として、憲法二十九条との関係で国内補償義務を負うことになるかに関して、協定第二条第三項の規定の意味は日本国民の在韓財産に対して、韓国の取る措置または日本国民の対韓請求権(クレーム)については、国が国際法上有する外交保護権を行使しないことを約束するものである」韓国に残された日本国民の財産などについての請求権は、日本政府がその保護を韓国政府に求めることはない、というだけなのである。当然、韓国の国民の日本政府に対する請求権についても韓国政府が日本政府に注文をつけることはない、というだけである。
また、法政大学教員の杉山茂雄氏も「法律時報」(1965年9月号)にて、同様のことを述べている。
「その条項は、双方の固有財産については相互に放棄したことを意味すると解されるが、私人の国内法上の財産請求権に関しては、ただちに消滅するとは解しがたい。それは両国が、自国民の財産請求権について、相手国に外交保護権の放棄を約したものと解されるに止まるのではなかろうか」以上は「従軍慰安婦と戦後補償」より引用。
さらに、この日韓の協定について1991年8月の参院予算委員会で当時の外務省条約局長が次のように答弁している。
121 - 参 - 予算委員会 - 3号このように「いわゆる日韓請求権協定」に於ける「個人の請求権」の扱いは、
平成03年08月27日
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○政府委員(柳井俊二君) ただいまアジア局長から御答弁申し上げたことに尽きると思いますけれども、あえて私の方から若干補足させていただきますと、先生御承知のとおり、いわゆる日韓請求権協定におきまして両国間の請求権の問題は最終かつ完全に解決したわけでございます。
その意味するところでございますが、日韓両国間において存在しておりましたそれぞれの国民の請求権を含めて解決したということでございますけれども、これは日韓両国が国家として持っております外交保護権を相互に放棄したということでございます。したがいまして、いわゆる個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたというものではございません。日韓両国間で政府としてこれを外交保護権の行使として取り上げることはできない、こういう意味でございます。
日本政府が韓国政府に対し、あるいは韓国政府が日本政府に対し、
自国民の財産の返還や被害の補償を要求することはない、ということを宣言しただけなのである。
日本国民が韓国政府に対し、あるいは韓国の国民が日本政府に対し、財産の返還や被害の補償を求めることは、この協定とは無関係なのである。
・・・この名古屋三菱・朝鮮女子勤労挺身隊訴訟に於いても原告は、
「日韓請求権協定の法的効果については、外交保護権の放棄の範囲にとどまり、その効果は、国内法の基づく個人請求権には及ばない」(第一審の最終準備書面)
と主張していたが、判決はその「日韓請求権協定」を理由に「その請求に応じる法的義務はない」として退けている。
弁護団は一審判決に対し、
「戦争責任を隠蔽・回避し続けてきた被告らの不正義を看過するものであって、司法の正義に対する信頼を裏切る極めて重大な不公正であると言わざるを得ない」
と、抗議する声明を発表している。
原告の準備書面によると、そもそも「日韓請求権協定」は個人の請求権を放棄するものではない、という当然の解釈が締結以降通用していたのは、戦争で在外資産を失うなど被害を受けた日本人に対して説明しなければならない都合があったという(個人が相手政府に要求することも出来ないとなると、日本政府に対し補償が要求されることを恐れたのだろうか?)。
それが1990年代からアジア各国の被害者からの戦後補償訴訟が相次いだため、一転して個人の請求権も放棄していると解釈されるようになった、という。いつの時代でも条約や法律など都合のいいように解釈されるものである。
ところで高裁判決の要旨によると、「朝鮮女子勤労挺身隊」は強制連行であり、強制労働であったことを認めている。強制連行されたのは炭鉱などで働かされたり戦場へ動員された男性だけでなく、うら若い女学生もその被害者だったのである。学生の軍需産業への動員は強制連行というべきものだったのである。日本の加害事実に対する認識を世に問う上では、この裁判も大きな役割を果たしたと言えるではないだろうか?(上告するかは不明)
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