ツイッターに書いた内容の焼き直しだけど、2017年11月22日・東京新聞【こちら特報部 冤罪生む監視カメラ 映像頼み 捜査に憶測】より引用。そういえば以前、NHKの報道特集で見たような気がするが・・
■ 2012年6月深夜、大阪府泉大津市のコンビニにてレジから現金1万円が奪い取られる事件が発生した。犯人はそのまま逃走し、監視カメラに残った映像以外の手がかりはなかった。しかし犯人はフードをかぶりマスクをしていたので人相を特定できない。
警察が疑ったのは当時芸能事務所に所属していた土井祐輔さんという若者だった。土井さんは事件当時知人と一緒にいたのだが、警察はこのアリバイを無視し2ヵ月後に逮捕した。土井さんには全く身に覚えの無い話である。「俺は何もしていないのにどういうことかと、頭が真っ白になった」。犯人と土井さんの「背の高いがっしりした」姿が似ているというが、体格が似ているだけで逮捕とは全く理解できない話だ。
警察の取り調べは「おまえみたいなもんが何が黙秘じゃ」「警察をなめんなよ」などと脅す一方、「さっさと認めたら執行猶予でちゃっちゃと出られるで」などと揺さぶりをかけるものだったという。そして逮捕から21日後に大阪地検岸和田支部が土井さんを窃盗罪で起訴した。検察が鑑定を依頼した「専門家」は監視カメラの映像から「高い類似性を有する」という見解を示したという・・・。検察の期待通りの報告をしないと次から仕事が来なくなるんだろうね。どこにでもいるよなこういう奴ら。
コンビニのドアから彼の指紋が検出されたが、だったらコンビニで事件があったら客は全員容疑者だわな。事件当時の店員も「犯人と目元が似ている」などとあやふやなことを証言したが(アリバイは無視するのにこういう話だけ採用するのか。権力ってこういうもんよ)、監視カメラの解析が土井さん無罪の決め手となった。
土井さんの母親が弁護団からコンビニの監視カメラ映像一週間分を入手し24時間分全てを確認したところ、事件の5日前に土井さんがこのコンビニを訪れドアに触れていたことが確認できた。(本当だったら警察が先にやるべき作業じゃねえか?)2014年7月、大阪地裁岸和田地裁は無罪を決定し、そのまま判決確定。
土井さんの拘束は302日間に上った。ダンスボーカルユニットのリーダーだったが事務所を解雇されてしまった。現在26歳の土井さんは SUN-DYU として音楽活動を続けている。また、国と大阪府を相手取り国家賠償請求を提訴したが一審二審で敗訴し上告している。
「謝ってほしいんです。捜査機関も人間だし間違いもあるけど、間違いをして謝らないのはいけない。相手の『ごめんなさい』の一言で、逮捕から続くこの事件を終わらせたい」
いや「捜査機関の間違い」というか・・・迷宮入りじゃ組織の信用が損なわれるから誰でもいいから真犯人に仕立て上げよう・・・というのが権力の本音だろうな。これは犯罪なんだよ。警察・検察の。
◇ 「1万円盗んだ」いわれなき嫌疑で勾留300日 無罪判決のミュージシャンが損害賠償請求訴訟 J-CASTテレビウォッチ
■ 2011年、広島市の元アナウンサーの煙石博さんは、市内の銀行の記帳台に置かれていた封筒から現金を抜き取った・・・という容疑で逮捕された。監視カメラの映像によると記帳台に近づいたのは煙石さんだけだったという。ということは近づいたことだけは確認できたんだろうが、それだけで逮捕というのが理解できない。電車の中で女性の近くにいたら痴漢か?そういうレベルの話だろ。
一審二審は懲役1年執行猶予3年の有罪判決だったが、最高裁は、一審二審の判決に「重大な事実誤認がある」「(被告が)封筒を取り上げる場面は確認できない」として無罪を言い渡した。
弁護団が映像を鑑定し直したところ、1秒に1コマの不鮮明な映像だったが煙石さんが封筒に触れていないことを証明できたのである。この件も、警察が最初から映像をしっかり解析していれば冤罪事件は起きなかったはずだ。
「映像を警察の解釈で切り取られ、自白を強要された。泣き寝入りしてもおかしくなく、無罪を勝ち取られたのはぎりぎりだった」
「映像を科学的に分析・解析し、公正中立に扱うのが捜査の大原則。自分のような被害者を二度と出さないでほしい」(煙石さん)
それにしても・・・冤罪事件が起こるたび、(冤罪の)被害者側が、当人は犯行に関わっていないことの証明を迫られる。それが無ければ冤罪だと認められない。これ逆だろ。検察側が、当人が真犯人だという確たる証拠を示すべきだろ。それが出来なきゃ無罪だ。全て権力側の都合が通ってしまう(許しがたいことだが裁判所も権力の一部に成り下がっているよな)。
■ 元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏によると、最近の事件捜査では聞き込みなどよりも真っ先に付近のカメラを押さえることが「鉄則」だという。
「ただ、民間のカメラ画像は不鮮明なものが多く、関係者が犯人を特定する際に髪形や服装といった風貌による間違いが起こりやすい。その映像を唯一の証拠にしてはならない」
「被害者側が苦労して映像を見つけ出し、冤罪を突き止めるような事態は、絶対に起こしてはならない。警察が捜査の手間を惜しまなければ、起きないはずだ」
それにしても今どき、どこに行っても監視カメラだらけだよな。顔認証という厄介な技術も出てきたことだし、いつなんどきどこに行って何をしていたか丸裸になるかも。そのうち「反原発デモに参加していたのが確認できたから、解雇!」とかなったりして?
小倉利丸・富山大名誉教授(監視社会論)は「公の場に野放図にカメラが設置され、人々の自由とプライバシー権が奪われている」と警告する。
「共謀罪法も施行され、容易に捜査に着手できるようになった。人々の不安と権利を切り売りし、警察とITセキュリティ産業が肥え太るような社会で良いのか。もっと自由で生きやすい社会へと変える挑戦が必要だ」
しかし・・・監視カメラが事件の捜査と犯罪抑制に役立っているのも事実だろう。たとえば最近はドライブレコーダーというものがあるそうだが、煽り運転をするような馬鹿には効果テキメンではないか。(それにしてもさ昔からあおり運転や交通トラブルの末の暴力ってよく聞くよ。警察って政治弾圧には熱心なクセに、取り締まるべきところを怠ってるんだよ)
街角で「*月*日*時頃この交差点でひき逃げ事件がありました。目撃された方は連絡してください」という看板を見かけるとさ、もっと監視カメラ増やせばいいのに、とか思うこともあるな。だけどそういう映像によってマークしている人物の行動を常にチェックし、よしこれで共謀罪で逮捕だ・・・とかなったら目も当てられねえな。
土井祐輔さんは、監視カメラについて「否定も肯定もできない。カメラの映像のせいで逮捕されたけど、映像で無罪になったから」と語る。
「捜査機関による映像の分析には、必ず捜査側の推測や思い込みが影響してくる。新たな冤罪も生み出しかねない。だから捜査側の人間のレベルを上げないといけないし、捜査側を監視する第三者機関のような存在も必要だ。現在の状況のまま、台数が増え続けるのは危険極まりない」
たしかに、技術が進歩するのはいいが、それを何に利用するか、どう運用するかが問題だ。今の警察には監視カメラの映像を捜査に用いる資格は無いかもな。
2017年12月07日
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