北海道警察の裏金問題を告発した原田宏二氏(元警視長)は、共謀罪について「警察の権限強化につながるだけで、これではテロの抑止にはならない」だけでなく、「警察の足腰はさらに弱まる」と警告する。
かつて捜査員らは「現場百回とたたき込まれ、聞き込みは何より大事」だったが、近ごろでは「事件が起きて最初にやるのが防犯カメラの映像集め」。既に導入されている「自動車ナンバー自動読み取り装置(Nシステム)」などデジタル捜査への依存がさらに深まるという。こういった捜査がさらに冤罪を生んでいるのは前の記事で示した通りである。
令状が無いままのGPS捜査が最高裁で違法と判断された件についても、「個人情報の収集を法律の根拠がないまま行うようになっている」と指摘。
2010年には警察が国内に住むイスラム教徒の個人情報を収集していたことが発覚。2016年には大分県別府市で県警が民有地に密かに監視カメラを設置していたことが判明したが、「共謀罪ができると今まで以上に、一般市民の日常生活を監視下に置くようになる」
こうした傾向の中で共謀罪が施行されたが、「組織犯罪が対象なので組織内の情報が必要。違法な情報収集がより横行しかねない」。
元警視庁警察官で警察ジャーナリストの犀川博正氏は、「共謀罪の端緒をつかもうとするあまり、GPS捜査や盗聴などが野放図に拡大し、何でもありになる恐れがある」と警告する。
「警察は競争社会。ほかのやつ、ほかの部署、ほかの都道府県警に負けたくないと考える。共謀罪ができてどこかが立件すれば、うちもやらなければと点数稼ぎに狂奔し、ブレーキがきかなくなっていく。現場にも相当なプレッシャーがかかるだろう」警官の点数稼ぎのためにデタラメな捜査で共謀罪で逮捕されたらたまんねえよな。
「手早く点数稼ぎに走るため、さらに技術に頼るだろう。共謀罪や捜査手法に疑問を抱き、まっとうに仕事をしようとする警察官ほど排除され、地道に人に会って情報を得ることがますますできなくなる」
※参考:ビラ配布 弾圧の裏-元公安警察官が語った-“プライバシー暴き、尊厳もてあそぶ日常でした”
そもそも共謀罪は計画の段階で取り締まろう、という法律だ。計画しただけで実行しなくても罪に問えるというトンデモない悪法だ。単なる口約束や相槌が共謀したと見なされる。言うまでもなく口約束を行った、という記録が残るわけがない。当たり前だよな。
「犯罪の計画が書面にもなっていれば別だが、普通は残さない。共謀を立証する支えは、言った言わないの言葉のやりとりになる。供述や自白に頼ることになっていく可能性はある」(原田宏二氏)たしかに、犯罪組織が「銀行強盗計画書」なんて書面を残すわけがねえよ、足がつくもんな(笑)だから虚偽の自白を強制して冤罪をでっち上げることになるだろう。
「警察では自白を引き出せる捜査官が『有能』とされ、法に抵触するすれすれの捜査をする者が評価されやすい。そういう組織風土を正しておかないと供述を無理に引き出そうとする危ない捜査になりかねない」(原田氏)
何が共謀罪に当たるかについては、当然だが全て権力が恣意的に判断する。たとえば元々はまともな事業の企業だったとしても「海賊版や偽ブランド品などを取り扱うように」なれば、「これも組織的犯罪集団になり得る。観念があいまいなうえに、警察が恣意的に判断する可能性があるからだ」。
しかし政府は共謀罪を「一般人には適用しない」と強調するが、「本気で言っているとすれば、『一般人』とは政府の方針に相反する主義主張をしない人、を指すのだろう」(原田氏)。これが共謀罪の本質だ。
要するに、点数稼ぎと政治弾圧のために、滅茶苦茶デタラメな捜査を行い、虚偽の自白を強制し、共謀罪で立件する。冤罪お構いなしだ。
・・・というかこれは、何もしていなくても話し合っただけで罰せられる法律だ。何もしていなのに罰せられるのは「冤罪」のはずだが、そういう法律なんだよ。いわば思想罪だな。