2007年06月26日

奴隷制度が招いた不幸な事件:中国人容疑者に寛大な判決を!

朝日新聞の6月24日特集記事「外国人研修生 借金漬け?」と、関連サイトから引用。
中国・黒龍江省の貧しい農家の次男で、月給500元(約7500円)の配管工などをしていた崔紅義(27)という男は、現在千葉地裁である事件の被告人になっている。

この男は2006年4月、「家計を助けるため」日本で働こうと思い立ち、「外国人研修・技能実習制度」を利用して来日。「千葉県農業協会研修センター」の斡旋を受け木更津市の養豚所で働いていた。
ところがこのセンターが名義を貸している「現地の送り出し機関」は、この男から「来日費用」として6万9600元(約104万円)を徴収していたのである(この金額は朝日の記事より)。俺の月給手取り20万円で計算してみれば2784万円である。税込み25万円で計算すれば3480万円である。土地やマンションが買えるような金額ではないか?

もちろんこの男はこのような金額の持ち合わせはないため、家と畑の「使用権」を売り、金貸しや知人から借金し、この金額を支払った(研修1年、実習2年の3年間を勤め上げれば保証金の名目の2万元が返還されるはずだった)。

この男は、日本では残業が多く高収入が得られると期待していたのだが、1年目は研修の名目なので残業は出来ず、最低賃金も保証されない。しかしこの男への待遇はそれ以上に厳しかった。
週40時間労働で月収は6万5千円(月160時間だと時給406.25円。ちなみに千葉県の最低時給は687円)。
支給されるのは5千円だけで残りは強制貯金。本来禁止されているはずの残業も月50時間を越えていたが、時給は450円。通帳、印鑑、パスポートは逃亡防止のため取り上げられた。

しばらくは大人しく働いていたのだが、同年8月に待遇を巡ってセンターに強く抗議したところ、強制帰国させられることになった(借金だけが残ることになる)。この処分に激昂して千葉県農業協会の常務理事である越川駿氏を刺殺、通訳ら二人も負傷させた。今月20日に千葉地裁木更津支部で、検察は懲役20年を求刑し、結審。判決は7月19日とのこと。

記事によると、低賃金で酷使される中国人研修生・実習生に対する、来日前の多額の費用負担は常態化しているらしい。
まず貿易会社などの「送り出し機関」が1万〜2万元(約15万〜約20万円)の保証金を課し、他にも「中国より稼げる仕事を紹介するのだから」といって約3万元(約45万円)の手数料を取る場合が多い。月500〜1000元ほどで家の権利を担保に取られる場合もある。保証金は実習・研修期間を終えて帰国すれば返還されるが、手数料はブローカーの懐に入る。
全統一労組には、鳥取県の縫製会社で働く研修生が、手数料と保証金合計7万8千元(約117万円)を払わされたという相談が寄せられた。茨城県の農家で働く研修生は、来日前に2万4千元(約36万円)を払わされるだけでは済まされず、2年目に中国の家族が1万5千元(約22万円)を払う契約を結ばされていた。

しかし、「今の研修・実習制度では現地での費用徴収を規制することはできない」という。
全統一労組の鳥井一平書記長は、
「ベトナムなどからの研修生も保証金を取られている例が少なくない。借金漬けで来日した研修生や実習生が、最低賃金以下で働いているのが研修生・実習生制度の実態だ」
と語る。

ところで「千葉県農業協会研修センター」が斡旋する制度の問題については、この殺人事件が起こるまで大きな問題にはなっていなかったらしいが、「二重取りに感づいた農家もいたようだ」。
つまり、センターは研修生を受け入れる農家から、「事前研修費や渡航費」という名目で一人当たり約50万円を徴収していたのである。

「ある農家は『一切の来日費用を負担していたつもり。研修生が費用を払っていたとは知らなかった』という。」
「『航空費が実費より高い』『使途がよく分からない』といった不満が数年前からくすぶっていた」


日中のブローカーが研修生から「来日費用」などの名目で大金を徴収し、しかも受け入れる農家からも同じ名目で費用を徴収していたのである。明らかに詐欺である。そもそも雇う側が雇われる側に金銭を要求すること自体が詐欺的だと思うのだが。
そしてこれらの金額の一部?が、殺された越川氏が役員になっていた「千葉県農業協会訓練センター」という会社や、「負傷した元通訳の中国人女性(45)の親族」に渡っていたというのである。

要するに「外国人研修・技能実習制度」とは、外国人労働者を違法な低賃金で酷使するために「研修」「実習」などという名目を用いる奴隷制度であり、そこに日中両国のブローカーが暗躍し詐欺で稼ぐという構図がある。
殺された越川氏を中心とするブローカー組織は詐欺罪で告訴されるべきだろう。この詐欺事件の被害者である崔容疑者が短絡的な行動に出たことは実に惜しまれるが、経緯を考慮し寛大な判決が下されることを願う。


参考にしたニュース:
◆木更津の養豚場殺傷事件、懲役20年を求刑
◆<養豚場死傷>中国籍被告に懲役20年求刑 千葉地裁支部
◆木更津養豚場殺人 中国人研修生に懲役20年求刑
◆中国人と農家から高額研修費を二重取り 殺された元理事
◆「外国人研修生木更津事件を考える会」結成  かけはし2007.5.14号
(保存)
posted by 鷹嘴 at 18:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働問題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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